暗チ問題児トリオは捻じれた世界で奔走する   作:雨言

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第4話 キレる若者

 その後、二名の生徒の手によって室内の炎は鎮火され、問題児であるグリムの身柄も確保された。

 捕獲後、クロウリーから

 

「どうにかしてください! 貴方たちの使い魔でしょう!」

 

 と責められた三人だったが、思い違いも甚だしいと丁重に否定してやった。

 すると彼は罰が悪そうな顔をしながら、グリムを学園外に追い出し、入学式の締めくくりに入る。

 途中、式に参加していない生徒の話題が上がったりいろいろとあったが……とにもかくにも三人は元いた場所へ還される運びとなった。

 自分たちはどうしてここにいるのか? 誰が連れて来たのか? その目的は?

 ……と、色々と明らかになっていない点は多いが、まあ、元いた場所に帰れるというのであれば、どうでもいい。

 

「おいカラス男。本当に帰れんだろうなァ? もし嘘だったらタダじゃあすまねーぞ」

「だから! きちんと帰しますって! 全く、このやり取りもう何度目ですか!? 少しは私のことを信用してくださいよ!」

 

 相も変わらず不信感剥き出しで詰めてくるギアッチョにうんざりとした様子のクロウリー。

 そんな彼に促されるまま三人は自分たちが入っていた棺へ再び入り、自分たちの帰る場所を思い浮かべる。

 

「さあ闇の鏡よ! この者たちをあるべき場所へ導きたまえ!」

 

 暗闇の中、クロウリーの高らかな声が聞こえる。

 どうやら鏡に向かって話しているようだ。

 しかし、いくら待てども三人の身体に変化が訪れることはない。

 

「ゴ、ゴホン……もう一度。闇の鏡よ! この者を……」

「どこにもない……」

「え?」

 

 再び声を上げたクロウリーの言葉を遮るように、鏡が呟く。

 

「この者たちのあるべき場所はこの世界のどこにも無い……無である」

「なんですって? そんなこと有り得ない! ああ、もう今日は有り得ないのオンパレードです」

 

 一体今日だけで何度目だろう。

 またしても告げられた鏡の爆弾発言に、クロウリーは頭を抱える。

 

「ねえ」

 

 背後から聞こえてきたのは一人の女の声。

 妙に甘く、それでいてどこか不機嫌さを感じさせるその声に、クロウリーはビクリと肩を震わせた。

 

「これは一体、どういうことかしら?」

「オレらの聞き間違いじゃあなければ、そこの鏡……『オレたちの帰る場所はない』って言っていた気がするんだが?」

 

 振り返った先にいたのは案の定。こちらを鋭い目つきで見つめてくる魔力無し(仮)三人組。

 彼らは揃いも揃って先ほどより警戒心を強めた様子でクロウリーを睨んでいる。

 いや。正確に言えば、敵意マックスなのはギアッチョだけで、他の二人は警戒こそしているが、そこまでキレているわけではないようだ。……パッと見では。

 

「テメ〜〜……やっぱり最初っからオレたちのこと、黙そうって腹だったんだな……!?」

「だーかーら! 『違います』って何度言えばわかるんですか! 大体、貴方たちのような魔力もない子供を騙して、一体どんなメリットがあるっていうんです? 変な言いがかりも大概にしてください!」

「だったらゴタゴタ言ってねぇで、さっさとオレたちを元いた場所に帰しやがれッッ!!」

「それが出来たら苦労しませんよ! 私が学園長になってから、こんなことは初めてでどうしていいかわからないんですから!」

 

 一難去ってはまた一難。

 ここ数時間の間で連続して起こる前代未聞なトラブルの数々に、さすがのクロウリーも疲弊しているのか、言動が半ばやけくそになってきた。

 

「そもそも貴方たちはどこの国から来たんです?」

「ハッ、白々しいこと言いやがって……。元はと言えばテメーが仕掛けたことだろォが。どんな手使ったんか知らねぇが、ナメやがってよォ~~……」

「ですから!!」

 

 そんなクロウリーになおも食ってかかるギアッチョを、少し離れた位置で眺めるミアとメローネ。

 

「……あのアラビアータ(怒りんぼ)、少し黙らせたほうがいいわね。話が全然進まない」

「だとよ。てなわけだ、ギアッチョ。いったん落ち着こうぜ」

「あ゛!? なんだテメーら。オレはまだこのクソカラスと話をして……オイ! なに引っ張ってんだメローネ! オイ!! 聞いてんのかオイ!! メローネ!! メローネェ!!!」

「うっさ」

 

 ギアッチョがいちいち突っかかるせいで一向に話が進まないことに痺れを切らしたミアが、そばにいたメローネに視線を送る。

 すると彼は特に面倒臭がることもせず、暴れるギアッチョの服を引っ張ってクロウリーから距離をとらせた。

 どうやら三人の中ではこんなゴタゴタも日常茶飯事らしい。

 

「それで、『どこの国から来たか?』という質問についてだけれど……とりあえず、『イタリア』とだけ答えておくわ」

 

 ギャング……それも暗殺者という仕事をしている以上、むやみやたらに自分たちの居住地を明かすわけにはいかない。

 ましてやこの自称・学園長を名乗る男は素性が分からないだけでは飽き足らず、自分たちの敵である可能性まで残されているのだ。

 どこかの誰かさんのようにあからさまな敵意は示さずとも、引き続き警戒しておく必要はある。

 

(アジトに帰るための『扉』はなぜか開けないままだけど……まあ、イタリアかその周辺国まで戻ることが出来れば、あとはなんとかなるでしょう)

 

 背後で、飽きもせずにギャンギャンと吠えまくっているギアッチョを見ながらミアが答えれば、クロウリーはなぜか怪訝そうに首を傾げた。

 

「……イタリア、ですか?」

「ええ、そうよ」

「……聞いたことのない地名ですね」

「え?」

「私は世界中からやってきた生徒の出身地は全て把握していますが、そんな地名は聞いたことがない」

 

 予想だにしていなかった返答に今度はミアが驚く番であった。

 最初はなにかの冗談かと思った。

 だってイタリアだぞ?

 確かに国そのものの大きさは世界的に見ても小さい部類に入るだろうが、それを除いたとしても決して名前を聞かないような国ではないはずだ。

 しかし、何度尋ねてもクロウリーは首を横に振るばかり。

 それどころかフランスやドイツ、スペインと言ったイタリアに近く、より国土の広い国々までもがわからないと言う。

 

「……あなた、それ、マジに言っているの? もし冗談で言っているのであれば、ただじゃあ済まさないわよ」

「なんです? 今度は貴方まで私を疑うんですか!? 全く、最近の若者ときたらこれだから……少しは他人を信用することも覚えたらどうです?」

「……じゃああなた、好きな食べ物は?」

「は? 好きな食べ物ですか? 強いて言えば『ジビエ』ですが……」

「思いっきりフランス語じゃあないのマヌケッ! ふざけるのも大概にしなさいよ!」

「痛ッ!? ちょっと! いきなり蹴らないでください!!」

 

 ついにはキレ始めたミアの蹴りを喰らう羽目になったクロウリー。

 さきほどはギアッチョを諫めていた彼女だったが、実のところ彼女自身それほど気が長いほうではない。

 むしろプライドが高い分、平均よりも短いほうである。

 そんな彼女がこんな意味不明な展開を長く受け入れ続けられるはずもなく、宥めにきたメローネに羽交い絞めにされながらも

 

テスタ ディ カッツォ!(バカげたことしやがって!)

 

と罵倒し続けていた。

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