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寝惚け眼でフラつくメローネを半ば引きずるようにして一階へと降り立つと、談話室の方からミアの罵声が聞こえてきた。
なんとも不機嫌そうな声である。
部屋へ行けば案の定、ほとんど手つかずの状態で放置された談話室のソファに座り、ぶつくさ文句を言っているミアの姿が見えた。
「なにしてんだよ」
「ん? ああ、起きてきたのね」
「
「
なにか嫌なことでもあったのか。そもそも『早朝』という時間帯が悪いのか。不機嫌そうな態度を隠そうともせずにゴーストたちを指さすミア。
「コイツら、またオレ様たちにイタズラしようと戻って来やがったんだゾ!」
「失礼だなぁ」
「そもそも、この寮に先に住んでいたのは俺たちの方なんだぞ」
「そうだそうだ。あんまり生意気なこと言ってると、本当にゴーストにしちまうぞ~?」
「そ、そんな脅し! ちっとも怖くねーんだゾ!」
ギャイギャイと朝っぱらから喧嘩……というよりかは、グリムが一方的にゴーストにからかわれている光景にミアはすぐに興味をなくしたらしく、「まあ、なんでもいいわ」と適当な調子で息をついた。
「で、オメーは朝っぱらからなにキレてんだよ」
「キレるもクソもないわよ。この寮、ボロいにもほどがある! 雨漏りや隙間風は当然のことながら、部屋の電球は切れてるし、シャワーからお湯が出ないときはあるし、扉は建付けが悪いうえに鍵はサビだらけのボロッボロで使えたもんじゃあない。なにが『掃除すれば寝泊まりくらいは出来る』よ! ただ汚いだけならともかく、こんな不揃いな設備で生活なんて出来ないわ!」
「すげー不満タラタラなんだゾ……」
ミアの口からポンポンと飛び出してくる不満の数々にグリムの耳がペタッと倒れる。
「化粧道具の一つも置いてないし……。せめてアイラインとリップぐらいは用意しておいてほしいものだわ」
「アンタはそのままでも十分
「
二人の会話を聞いているうちにようやく頭が冴えてきたらしいメローネが眠たげに言えば、さらりと受け流したミアが呆れたように頬杖をつく。
「化粧なんかしてもしなくても大して変わんねーだろ」
「周りがどう思うかなんて関係ないの。重要なのは『私の心が納得するかどうか』。ただそれだけ」
「へいへい、そうかよ」
ああ言えばこう言う。
なんともまあ、ワガママ放題のじゃじゃ馬っぷりではあるが、こんな彼女の態度も彼らにとっては日常茶飯事なので、特に反論することなくギアッチョは肩を竦めた。
「でも、『建物がボロすぎる』っていう意見には、オレ様も同感なんだゾ。昨日の夜だって、ベッドに寝そべったら底が抜けてビックリしたし」
「あら、話の分かる子猫ちゃんね」
「ムッ! オレ様を赤ん坊扱いすんじゃねぇ!」
「そういえばアンタたち、昨日は結局同じ部屋で寝たの?」
「ああ、そうだぜ。オレとギアッチョ、二人まとめて一つのベッドだ」
「あら、それはそれは……ずいぶん仲がよろしいのね?」
メローネの誤解を招きかねない発言に便乗するかのようにニヤつくミアに、思わず「あ゛?」とギアッチョが反応する。
「っざけんな! まともに掃除出来ていた部屋があそこしかなかったから仕方なく同じ寝床で寝ただけだ! 大体、そこの猫もどきも一緒だったろーが! 気色悪ぃ言い方してんじゃあねーぞ、メローネ!!」
「気色悪いもなにも……オレは別に『そういうつもり』で言ったわけじゃあないぜ? ギアッチョが勝手に勘違いしただけだろ? 『ナニ』を『どう』勘違いしたのかは皆目見当もつかないが……なあ?」
「テメ~~……どうやらまだ寝惚けてるみてーだなァ~~……!?」
相変わらず、仲が良いのか悪いのか分からない調子で口喧嘩を始めた二人に対し、自分から話を振っておいて我関せずであくびを零すミア。
そんな三人の姿にグリムがやれやれとため息をつけば、玄関の方からなにやら物音が聞こえてくる。
「おや、皆さんお揃いで。おはようございます。よく眠れましたか?」
しばらくして開かれた扉の先にはクロウリーが立っており、場違いなほど清々しい笑顔で挨拶してきた。
「冗談。こんな劣悪な環境でまともな睡眠なんてとれるわけないでしょう」
「こいつはアホみてーに爆睡かましてたけどな」
「『アホみたい』はないだろ」
「異世界に飛ばされてきたというのに図太くて大変よろしい! さて、そんなわけで本日のお仕事についてお話があります」