もう1人のバカ兄貴   作:佐倉シキ

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再会

 

 

 

 

 

 

地下都市の外れ、街の灯りが届かぬ影の底に、ひっそりと古びた倉庫が幾つも並んでいた。そこは喧騒と無縁の閉ざされた一角であり、まるで時が止まったかのように冷たい空気が支配していた。積み上げられたコンテナは煤け、錆びついた鉄柵はまるで長年人知れずあり続けたかのように赤黒く染まっている。風すら通らない淀んだ空気の中、耳に届くのは重苦しい鎖の擦れる音と、どこからともなく響く低くくぐもった呻きのような声だけ。

 

「あれは……」

「多分商品」

 

小さく洩れた新八の声に、ベルが硬い表情で頷く。

 

「商品って、まさか人身売買の」

「ウン。見覚えある人いる。あの人、私が乗った船にイタ」

 

その言葉に新八はぎゅっと唇を結び、望遠鏡を目に当てる。視界の先に映ったのは、見るに堪えぬほど痛ましい姿の人々だった。乱れた髪、痩せこけた体、絶望に濁った瞳。誰もが鎖で無惨に繋がれ、力なく引きずられている。彼らの顔からは、生きる力も自由の輝きも完全に奪われていた。新八は助けに飛び出したい衝動に駆られるが、歯を食いしばり堪えた。今すべきことはベルの兄を探すこと。焦ってはならないと己に言い聞かせ、望遠鏡をさらに深く覗き込み、猫耳を持つ少年の姿を必死に探す。

 

やがて巨大なコンテナが軋んだ音を立てて開かれる。そこから吐き出されるように現れたのは、老若男女問わず、異なる容姿の人間たち。皆一様に無表情で、諦めを背負い込んだような顔をしていた。冷たく硬い鎖は彼らの手足に食い込み、自由を奪う。僅かな抵抗さえ許されず、ただ無慈悲に引きずられていくばかりだ。

 

「酷いアル……」

「ウン、心配」

 

彼女は番傘をぎゅっと握りしめ、その先にいる者たちを鋭く睨み据える。作業に従事しているのは青い髪を持つ男たち。白いマントのような衣を纏い、表情という表情を失った彼らは、まるで人形のように無感情に動いている。その手つきは無駄がなく冷徹。次々と囚われ人を檻へと押し込み、重々しい錠をかけていく。檻の中から微かなすすり泣きが響いても、彼らは眉一つ動かさない。

 

「あれ、辰羅だよね」

「そうアル。そんでボスは……あのガキアルな」

 

神楽の指先が一人の少年を捉える。辰羅の男たちに命令を下すその姿。黒のスーツに、龍の意匠が施されたストール。波打つ青髪、尖った耳、眼鏡をかけたまだ幼い顔。間違いなく辰羅の血を引く者。しかし、その若さは異様だった。新八とそう変わらぬ年頃、いや、少し上程度か。それほどの年齢でこの場を仕切っていることに、新八は思わず息を呑む。

 

白いマントの男たちは淡々と人を檻に押し込み続け、悲鳴も嗚咽も、すべてコンテナの奥へと消えていく。

 

「よう」

 

不意に、背後から軽い声が降った。

 

「うわっ!」

 

神楽、新八、ベルは同時に飛び上がるように驚き、神楽は反射的に振り向きざま拳を叩き込む。その拳を受けた男は短く悲鳴を洩らし、「ぶべらッ!」と情けない声を上げながら後方へ吹き飛んだ。銀色の頭が床に転がる。

 

「あ、ごめん銀ちゃん」

「ちょっと! 驚かせないで下さいよ!」

 

新八は声を抑えながらも怒気を滲ませる。銀時は赤く腫れた頬をさすりながら、「悪ぃ悪ぃ」と軽い調子で謝った。

 

「そっちはどんな感じよ?」

「ルイここにはいない。もう連れて行かれたかも……」

 

ベルの声には絶望の色が濃く滲んでいた。その小さな肩は落ち込み、今にも折れてしまいそうだ。そんな彼女に神楽は真っ直ぐな声を投げる。

 

「大丈夫アル。兄貴は絶対私達が助けてやるアルから」

「それは無理な話ですね」

 

突如、冷たい女の声が空気を裂いた。銀時は即座に木刀を抜き放ち、振り抜く。だがそれは甲冑を纏った逞しい腕に軽く受け止められる。木刀が震え、力ごと弾かれた。

 

「マジかよッ!?」

 

銀時の視界に現れたのは、赤い肌を持つ女だった。長い黒髪を翻し、頭からは二本の鋭い角が伸びている。その豊満な体は黒鉄の鎧に覆われ、しかし腹部だけは大胆に露出し、そこには龍を模した刺青が妖しく刻まれていた。角、異色の肌、黒い瞳。銀時は即座にその種族を悟る。

 

「荼吉尼かッ」

 

全員を押し退けて後退しようとするが、女の動きの方が速い。彼女は両手で巨大な金砕棒を握りしめ、唸りを上げて振り抜いた。

 

次の瞬間、世界が爆ぜた。轟音と共に暴風のような衝撃が辺りを薙ぎ払い、地面ごと震わせる。銀時達の体は容易く吹き飛ばされ、辰羅たちの前へと叩きつけられる。肺の奥を鷲掴みにされたような衝撃に銀時は咳き込み、胃液が逆流する。内臓が揺さぶられ、全身の骨が軋んだ。神楽と新八は辛うじて無事に立ち上がるが、ベルの姿はそこにはなかった。

 

「ベルッ!!?」

 

神楽が喉を裂くような悲鳴を上げた瞬間、頭上から冷ややかで芝居がかった声が降ってきた。

 

「全く、危ないですよ夕染さん」

 

それは、先程まで辰羅の兵たちに指示を飛ばしていたスーツ姿の少年の声だった。コンテナの天井に悠然と腰を下ろし、片足を組んだその手には、ぐったりと意識を失ったベルの襟首が握られている。小柄な体が玩具のようにぶら下がり、少年の指の力だけで支えられていた。

 

「商品になり得る子供まで巻き込んで殺そうとしないで下さいよ。これだから荼吉尼と夜兎は野蛮で嫌ですね。仕事はもっとスマートに行わなければ」

「それは失礼した。貴方の様子をコソコソと4人で伺っていたので全て敵かと、敵であれば全て始末するのが我らの役目でしょう」

「それはそうですが……。こういう子供はあのお方もお好きでしょう。折角なので献上するのも配下としての勤めの一つだとは思いませんか?」

 

殺してしまっては勿体無い。少年は口角を持ち上げ、愉悦を隠そうともしない。そう言うと彼は軽くコンテナから飛び降り、手にぶら下げたベルを地面に叩きつけるでもなく無造作に抱え直した。その姿を見て神楽が怒り、吠える。

 

「ベルを物のように扱うなヨッ!!」

 

だが辰羅の少年は意に介さず、澄ました顔のままだ。

 

「魈雲さん、この者らは私が始末しましょうか? 貴方の仕事の邪魔は致しません」

「いいえ、結構です。どうやら僕たちの客人のようなので、我々が誠意を持って対処させて頂きますとも」

「そうですか。では任せます。代わりにその少女は私が檻に運んでおきます」

「……ではお任せします。塔にいる適当な辰羅に預けていただければ良いので」

 

魈雲と呼ばれた少年は、微笑を絶やさぬままベルを夕染へと預けた。

 

「返せよッ!!」

 

怒号と共に神楽が突進する。だが足元に刃が突き立てられ、彼女は反射的に飛び退かざるを得なかった。そのわずかな隙を突き、夕染はベルを抱えたまま姿を消す。銀時は舌打ちをし、神楽は怒りで血走った瞳を光らせる。

 

「貴方たちはどうやら花屋敷の客人ではない様子だ。大変申し訳ありませんが、赤龍に逆らう反乱分子の皆様方には死んでいただきたく存じます」

 

魈雲が両手を大げさに広げると、待機していた辰羅の戦士たちがぞろぞろと姿を現し、銀時たちを完全に包囲した。

 

「それでは皆さん。やりなさい」

 

広げた腕を優雅に流し、舞台役者さながらの動きで指示を下す。その合図を皮切りに、辰羅の戦士たちは一斉に飛びかかった。

剣、ナイフ、鉤爪、鎖鎌。無数の刃が音を立てて迫り、練り上げられた連携で四方八方から銀時たちを挟み込む。息を合わせた連撃はまさに殺戮の舞踏のようだった。だが、

 

ドンッ───!

 

重低音が地下倉庫を震わせ、衝撃波が魈雲の髪を逆立てた。「なっ」と、思わず魈雲が目を見開く。

 

わずか一太刀。銀時の木刀が振り抜かれただけで、辰羅の兵たちがまとめて薙ぎ払われていた。

 

「うおらァァァァァッ!!!」

 

銀時の咆哮と共に嵐が巻き起こる。木刀が振るわれる度に乾いた破砕音が響き、肉体が宙を舞う。木刀はしなやかに、だが鋭利な刃物以上の攻撃力を誇り、首筋や鳩尾を正確に撃ち抜いていく。彼の動きには一切の停滞がなく、次の瞬間にはさらに二人、三人と倒されていた。風を裂く音が鋭く地下に響き渡り、戦場を銀白の嵐へと変える。

 

「これは、驚きましたね」

 

魈雲は眼鏡の位置を直し、口元に笑みを浮かべたまま冷静に状況を見ている。

 

「インテリぶってる所悪いな、テメェらの殺し方はもう知ってる」

「一体どこで知ったというのか、困ったものです」

 

だが魈雲の目には焦りの色はなく、冷たい光だけが宿っていた。視界の端では神楽が夜兎の怪力を惜しみなく振るい、傘を鞭のように振り回しては次々と辰羅を叩き伏せていく。敵が数人でかかろうとも、その一振りでまとめて宙に舞い、骨を軋ませ地へ叩きつけられた。

新八もまた必死の防御と反撃を繰り返し、汗を滴らせながらも確実に敵を倒していく。

 

「これ以上倒されると困ってしまいますね。我らの倒し方を知っているというのなら、貴方達も知らない戦い方をする迄です。

作戦は変更です! お前達、辰羅の真の恐ろしさを地球の田舎者に教えておやりなさいッ!」

 

そう言うと魈雲は軽やかな動きでコンテナの上に飛び乗った。彼の言葉を聞いた瞬間、辰羅達の動きが変わる。銀時達は警戒を露わにし、空気が張り詰める。

 

動いたのは、辰羅だった。

彼らは直接対決を避け、半分以上が後退すると遠距離からの攻撃に徹する戦術へと移行した。

 

まず、静寂を切り裂くように放たれたのは一本の矢。それは銀時の側頭をかすめて飛び去り、すぐにその背後から二本目の矢が迫る。木刀で何とかその矢を弾いたが、その背中に冷たい感触が走った。振り返る間もなく、今度は左右の暗がりから毒針が飛び出し、彼の腕に刺さった。瞬間、銀時は肩に広がる鈍い痛みとともに、自らの動きがわずかに鈍るのを感じた。

 

「ッ……毒かッ!」

「正解です。辰羅の仕事は夜兎や荼吉尼のように正々堂々、真正面から戦うことではありません。我々の仕事は勝つ事です」

 

矢が、針が、煙が。次々と死角から襲いかかる。神楽は傘を振り払い敵をなぎ倒すが、攻撃に移ろうとする度に別の角度から矢が突き刺さろうと迫る。戦場の空気はさらに重く、鋭く、限界まで張り詰めていった。

 

(動きを制限されるアル! やりにくいネ!)

 

神楽は心中で舌打ちした。攻撃を仕掛けようとすれば、必ずその瞬間に辰羅たちが動きを読んで妨害してくる。わずかな踏み込み一つ、振り上げる傘の角度一つでさえ、彼らは徹底的に潰しにかかる。立ち位置を絶妙に変え、囲み、揺さぶり、攪乱する。次第に神楽はじりじりと追い込まれ、苛立ちが募っていく。

 

かろうじて放たれた矢をかわした瞬間だった。背筋を焼くような冷気が走り、次の瞬間には肩に鋭い衝撃が突き刺さっていた。金属が肉を割く感触、骨にまで響く冷たい痛み。神楽の口から鋭い吐息が漏れる。矢ではない、短刀か? いや違う、針だ。肩に突き立つのは細長い針。

 

「っ……!」

 

瞬間、ただの痛みでは終わらなかった。傷口からじわりと熱が広がり、血流とともに全身を侵食していくような鈍い痺れが走る。膂力が抜け、握った傘が重く感じられる。力を込めて振るおうとしても、筋肉が思うように応じない。かつての力強い一撃は影を潜め、身体は確実に蝕まれていた。

 

「クソッ!!」

 

神楽の怒声が響く。視界の端で新八が崩れ落ちるのが見える。地面に倒れ伏し、全身を痙攣させながら呻く姿。鼻から血が垂れ、目からも赤い雫が伝い落ちる。呼吸は浅く、喉が鳴る音は死の間際のように弱々しい。

 

「新八ィッ!!」

 

銀時の叫びが、遠く響く。神楽の耳に届いたその声も、霞んで聞こえるほどに感覚が鈍っていく。

 

「テメェらぁぁぁァァァアア!!!」

 

怒りのままに銀時が爆発した。毒に蝕まれながらも、残された力を叩きつけるように、眼前の辰羅たちを木刀で一気に吹き飛ばす。踏み込みと同時に砂塵が舞い、魈雲めがけて斬りかかる。

 

だが、その一撃は空を裂いた。

 

魈雲は即座にステッキを翻す。仕込まれた刃が閃き、銀時の木刀を受け止めると同時に流れるような動作で力を逸らす。その受け流しの技量は洗練されており、銀時の全力をまるで撫でるように弾き返した。勢いを奪われた銀時は一瞬体勢を崩すが、咄嗟に前転で受け身を取り、土を蹴って再び立ち上がる。血を吐きながらも、その眼光だけは死んでいなかった。

 

「我々辰羅は誇り高き傭兵部族。どこで辰羅と戦いその倒し方を身につけたのかは知りませんが、あまり我らを舐めないで頂きたい」

 

魈雲の声音は冷ややかだった。しかしその瞳の奥には苛立ちの炎が宿っていた。一度の戦いで辰羅を知った気になり、己らを見下す者への怒り。まだ若く、青さを残す彼だからこそ、その侮辱は許し難かった。夜兎や荼吉尼に比べ、自分たちが劣ると判断されること。それは耐え難い屈辱だった。だからこそ、この場で叩き込む必要があった。辰羅というものの、本当の恐ろしさを。

 

「ッ……!」

 

銀時は毒の痛みに呻きながらも、木刀を構える。しかし魈雲の指示で辰羅たちは攻撃の手を緩めない。矢が、毒針が、銃弾が四方八方から飛び交い、まるで逃げ道を塞ぐ網のように襲いかかる。

 

前方から切りかかる影を受け止めれば、背後から銃声が響き、側面から毒針が突き刺さる。神楽が傘で弾こうとすれば、死角から別の矢が飛び込んでくる。毒がさらに回り、全身が熱を持ち、足は鉛のように重くなる。息を吸うたびに胸が焼けつくようで、視界は赤黒く霞み、心臓の鼓動が頭蓋に響く。

 

時に、地に伏した“死体”が突如として動き出す。絶命したと思った敵が蘇り、隙を突いて毒針を突き立てる。銀時はその刃を受け、歯を食いしばる。傷口から毒が再び流れ込み、血管を這うように灼熱の痛みが全身を走った。

 

「がッ……!」

 

銀時と神楽は必死に抗う。しかし体力は削られ、動きは次第に鈍り、重くなる。反撃は乏しく、防御も追いつかない。攻撃の嵐に翻弄されるうちに、膝が折れ、二人は荒く息を吐きながら地に沈んでいった。口から血を吐き、鼻から垂らし、瞳からさえ赤い涙のように血がにじむ。

 

辰羅たちはじわじわと獲物を嬲る狩人のように彼らを追い詰める。まるで蜘蛛が絡め取った獲物の動きを奪い、毒で蝕み、確実に仕留めていくように。

 

「これで分かったでしょう? 辰羅は強いんです」

 

魈雲がゆっくりと歩み寄る。

 

「ああ、素晴らしい! パーフェクトな戦略でした、さすが僕。後で映像で確認したいくらいです。誰かウイスキーを用意してくれませんかね、勝利の美酒と行きましょう」

 

ふっふっふ。自惚れた笑みを浮かべ、ドヤ顔を晒しながら、剣を銀時の首筋へと突きつける。だが、

 

ドカンッ、と背後で爆ぜるような轟音が響いた。砂煙が舞い、振り返る。

 

「銀ちゃんッ!!!」

 

神楽が立ち上がっていた。血に塗れ、毒に侵されながらも、夜兎の本能に従い、残された力を振り絞る。辰羅たちを吹き飛ばし、銀時のもとへ突進する。魈雲の眉がわずかに動いた。

 

(夜兎にはやはり毒の効きが薄いか……)

 

舌打ちをしたその時、耳に届いたのは軽快な足音。瓦を蹴る音。鋼を擦る硬質な響き。甲冑を纏った者特有の足取り。そして、この速度、この重さ。魈雲の顔が険しくなる。

 

「面倒な人が来た」

「ッ───────」

 

神楽の背後に、影が降り立つ。燕の羽のような漆黒の長髪が宙を舞い、濁った翡翠の瞳が鋭く光った。

 

「敵は、殺す」

 

低く響く声は、冷酷そのものだった。言葉に宿る殺意は重く、空気を凍らせる。神楽が咄嗟に振り返った時には、すでにその男の足が振り上げられていた。首を狙う、必殺の蹴り。

 

「江、鷹ッ」

 

名を呼ぶ声。だが刹那、狙いがわずかにぶれる。蹴りは神楽の側頭部を直撃した。轟音と共に衝撃が走り、彼女の身体は軽く吹き飛ばされる。空気を切り裂く音と共にゴムボールのように地を跳ね、数度弾んだのち、無惨にもコンテナへと叩きつけられた。

 

「かぐっ……!」

 

銀時が声を上げようとした瞬間、喉に血が逆流し、咳き込み、赤黒い液を吐き散らす。声は途切れ、嗚咽のような音だけが残る。

 

一方、神楽を蹴った男はその場に佇んだ。雨粒を確かめるように、虚空へと手を伸ばし、やがて耳を塞ぐ。

 

「悲鳴をあげたか?」

「……あげてませんよ。蹴りが当たった時点で失神したのでしょう」

「そうか」

「いつもの幻聴ですか……さっさと薬を飲んで休んだらどうですか? 元より貴方の助けなど不要でした」

「なんだよ、助けてくれた先輩に礼の一つもないのかい?」

「あっす」

「コンビニかよ」

 

燕心が呆れ顔を浮かべる。魈雲はそれを無視し、銀時たちの処理を部下に指示する。燕心は手を貸そうとしたが、魈雲は首を振って拒絶した。

 

「そんな事よりも、貴方には急ぎで頼みたい事があります」

「何?」

「燕心さんはすぐに龍宮様の元へ向かい、客人達と商品の避難をお願いして下さい」

「は? なんで?」

「星海坊主がここに来ます」

 

その名を聞き、燕心の瞳が見開かれる。数瞬の静寂ののち、彼は口元を吊り上げた。

 

「いいよぉ、伝えてきてあげる」

 

そう言い残し、軽やかな足取りで来た道を戻っていく。その背を見送りながら、魈雲は深く息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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