銀時達はその重厚な扉を押し上げて中へと足を踏み入れた。
塔の巨大な扉は、ゆっくりと軋み、重々しい響きを伴って開かれていく。厚い金属が擦れる低い音が塔内に反響し、閉ざされた空間全体が震えるように感じられた。開かれた隙間からは冷たく乾いた空気が流れ出し、まるで塔そのものが深く息を吐いたかのように銀時たちの肌を撫でた。その瞬間、背筋にぞわりとした悪寒が走り、空気は緊張で硬直した。
銀時が迷いなく一歩を踏み出し、塔の暗がりに足を踏み入れたその時だった。
雷鳴を思わせる轟音が内部に響き渡り、耳をつんざくような銃声が連続して弾けた。弾丸の雨が嵐のように彼を襲い、火花を散らしながら床と壁に無数の傷跡を刻んでいく。空間を裂く弾丸の風圧は、まるで空気そのものが敵となったかのように鋭く肌を切り裂いた。
「パピー!」
「神楽ッ!」
反射よりも速く、夜兎の二人が銀時の前へと飛び出す。重厚な番傘を同時に開き、銃弾の嵐を受け止めた。鉄と鉄がぶつかるような甲高い衝撃音が幾重にも響き、弾丸が傘の表面を激しく弾く。その瞬間、塔の内部は一変し、耳を劈く発砲音と弾丸が弾ける金属音とで埋め尽くされた。銀時、新八は咄嗟に傘の影へ身を潜め、ただひたすらにその殺意の豪雨を避ける。
「キリがねぇぞ」
「分かってますよ」
魈雲は冷静に呟きながら、スーツの裾に手を差し込み、小さな金属製の筒を取り出した。彼はそれをためらいなく宙へと放り投げる。直後、弾丸がそれに掠り、甲高い音を立てた瞬間、紫色の煙が瞬く間に辺りを覆い尽くした。煙はまるで生き物のようにうねりながら広がり、視界を奪うと同時に、鼻を突く異様な匂いを漂わせる。
数秒後、銃声が次第に途絶えていく。続けざまに、重いものが床に倒れ伏す鈍い音が連続し、やがて辺りは静寂を取り戻した。紫煙の中からは兵士たちの呻き声もなく、ただ死んだような沈黙が支配する。安全を確かめるように夜兎親子が番傘を軽く振り払い、煙を弾き飛ばすと、そこには銃を構えていた兵士たちが一斉に地面へと崩れ落ちていた。
「辰羅にとっては勝利が全て。手段は選びません」
「こりゃ毒か……?」
「ええ」
「え!? 僕らも吸っちゃったんですけど!?」
「貴方達は失神している間に抗体を打ち込んでおいたので問題ありません。もしもの時に備えてね。ちょっと副作用で強めに魘されてたけどまあ良いでしょう、死ななかったんだし」
「あの悪夢お前のせいアルか!?」
「アンタ勝手に何してくれてんだ!?」
新八が声を裏返らせて慌てふためく一方で、星海坊主だけは僅かも動揺を見せなかった。彼の目はただ塔の奥を鋭く見据え、その口元から低く言葉が漏れる。
「辰羅の小僧がそう出るって事は、どうやら奴さん達には想定済みだったらしい」
その視線の先。煙が完全に晴れた時、そこに立っていたのはただ一人の女だった。
「裏切りましたね、魈雲さん」
塔の中央、光を反射して赤く染まるその姿は、異界から降り立った戦鬼のようだった。赤い肌は血潮を纏ったように鮮烈で、盛り上がる筋肉は岩のように強靭。彼女の体躯は180センチを優に超え、その巨躯だけで周囲の空気を圧倒していた。
頭からは二本の角が突き出し、そこから放たれる金色の瞳は猛獣そのもの。美しい輪郭を持ちながらも、牙を覗かせる唇と獰猛な視線は一瞬で見る者を戦慄させる。腰まで伸びた黒髪は艶やかに揺れ、鎧で覆われた胸元の下には鍛え抜かれた腹部が露わになり、そこには龍のトライバルタトゥーが刻まれていた。黒のロングスカートには大胆なスリットが入り、そこから覗く強靭な太腿には鉄の鎧が光を弾いている。
彼女は両手で巨大な棍棒を構え、その存在はまるで山が立ちはだかっているかのようだった。挑む者を圧倒する覇気が空間を覆っていく。
「これはこれは夕染さん。先日振りですね」
魈雲は余裕の笑みを浮かべ、変わらぬ調子で応じた。その背後には龍宮の手勢である配下たちがずらりと並び、冷徹な視線を向けている。
「どうもガキばっかに見えるな」
「龍宮は子供好きですから。夕染さんもああ見えて18歳ですよ」
「そのトカゲ女、相当なペド野郎と見たぜ」
「貴様ら……親方様を侮辱したな……ッ」
怒号とともに夕染の足が地を踏み抜いた。轟音と共に床石が粉砕し、破片が四散する。彼女は唸り声をあげながら棍棒を軽々と持ち上げ、肩に担ぎ直した。その目は黄金に光り、怒りで燃え盛っている。
「万死に値する。2度と地上には戻れないと思えッ!!」
その声を合図にするように、配下の兵士たちが一斉に武器を構えた。塔の広間が殺気で満ち、刃の光が一斉に煌めく。銀時たちも同じく構えを取り、互いの間合いを詰める空気が張り詰める。しかし魈雲は静かに一歩前に出て、冷然とした声を放った。
「こんな所で無駄に疲れられては困ります。集団戦は辰羅の得意とするところ。ここは僕に任せてください」
そう言い放ち、指を鳴らした瞬間、床と壁の影から辰羅の戦士たちが次々と飛び出した。彼らは夕染の兵たちへと一斉に襲いかかり、激しい火花と怒号がぶつかり合う。剣と棍棒、刃と刃がぶつかる音が広間を震わせ、戦場の熱が瞬時に膨れ上がった。
魈雲は振り返り、銀時たちを仕掛けの壁際へ導く。仕組みを作動させると、先程までは存在しなかった階段が静かに現れた。
「正気ですか!? 殺されますよ!?」
「後手に回れば勝機を逃す。貴方達は真っ直ぐ上を目指し龍宮を倒してください」
「でもッ!!」
「2度言わせないで下さい。集団戦、乱戦。ここは辰羅の戦場です。巻き添えで毒殺でもしてしまったら台無しだ。さっさとここから去ってください。まだ死ぬ気はありませんよ。僕は勝つつもりです」
魈雲は一歩前に立ち、剣を引き抜き、さらに暗器を握り締めた。その瞳は恐怖や焦りを抱えながらも確かな決意を宿している。振り返りざまにただ一言を放った。
「行け」
その瞳には、恐怖、焦燥、疲労、怒り、そして希望が重なり合っていた。銀時はその目を一瞬見据え、小さく頷いた。そして振り返らずに階段を駆け上がっていく。星海坊主もまた神楽と新八を抱えるようにして背を押し、力強く階段を駆け上がった。
「パピーッ!!」
「魈雲の覚悟を無駄にするわけにはいかねぇ。必ず龍宮を倒す」
非難の声を上げた神楽を、星海坊主が低くも揺るがぬ声で諭した。その声音には怒りも焦りもなく、ただ重い決意だけが込められていた。やがて銀時たちの足音が階段の奥へと遠ざかり、完全に聞こえなくなったのを確認すると、魈雲はわずかに息を吐き、恐怖を塗りつぶすように不敵な笑みを浮かべる。
「いつまでも僕らの事を馬鹿にしやがるあのクソトカゲ、今日こそ地べたを這わせてやる」
「吐いた唾は飲み込めないぞ魈雲」
夕染の声は鋭い刃のようだった。その逞しい腕が動くと同時に、巨大な棍棒が唸りを上げて振り払われ、空気を裂く轟音が戦場全体に響き渡る。その一撃が開戦の号砲となった。
瞬間、塔の内部は地獄絵図と化す。怒号、咆哮、剣と金棒が衝突する甲高い金属音が一斉に響き渡り、石壁に反響して凄まじい轟きを生んだ。空気は血の匂いと鉄の匂いに満ち、戦場は熱気と殺気で燃え上がる。
夕染の背後に従う戦士たちは、若いながらも鬼神のような威容を誇っていた。筋肉は岩のように盛り上がり、その全身は戦場に生きる者だけが纏う覇気を漂わせている。額から伸びる角は獰猛な獣のようで、鋭く光る瞳には血に飢えた戦意が宿っていた。鎧を纏う異形の戦士もいれば、裸身に近い姿で己の肉体そのものを武器とする者もいる。そのいずれもが龍宮の精鋭、戦場を渡り歩くためだけに育てられた化け物たちだった。
彼らの手に握られるのは剣、斧、ナタ、槍。いずれも重厚で、ただ一撃振り下ろすだけで地面を抉る威力を誇る。力任せに突進するその姿はまるで飢えた獣が獲物に襲い掛かるようで、塔の床は次々と粉砕され、破片が飛び散った。
(だから何だというのか、辰羅を舐めるなよ)
魈雲の目に浮かぶのは揺るぎない自信だった。戦士たちの猛攻を前にしても辰羅は怯まない。むしろ、彼らはその力の奔流を利用するかのように動いていた。辰羅の兵は幽鬼のごとき俊敏さで戦場を駆け、突進を紙一重でかわし、その隙を正確に突いていく。
巨漢の戦士が斧を天井に届かんばかりに振りかぶり、思い切りそれを振り下ろす。しかし、その軌跡には誰もいない。辰羅の兵があっという間すり抜け、瞬時に懐へと潜り込む。鋭い短剣が閃き、戦士の横腹を深々と切り裂いた。痛みに咆哮を上げる巨漢の喉に、別の辰羅が放った毒針が突き刺さる。次の瞬間、その巨体は硬直し、膝を砕いて崩れ落ちた。
別の戦士が怒号と共に槍を構え突進する。だが目の前の辰羅は囮に過ぎない。気づいた時には背後に影が立ち、鋭い毒剣が音もなく喉笛を貫いていた。戦士は呻く間もなく崩れ落ち、辰羅は冷ややかな眼差しで剣を布で拭い去り、次なる標的へと視線を移す。
辰羅は数ではなく連携で戦う。二人一組で標的を囲み、一方が正面から圧をかけ、もう一方が死角から致命打を与える。遠距離の仲間は全体を俯瞰し、指のわずかな合図で矢や針を放つ。その矢は寸分違わず正確に飛び、戦士たちの移動を阻害し、自由を奪っていく。刻一刻と状況は変わり、戦場は次第に辰羅の色に染まりつつあった。
「どうですか、辰羅も捨てたものではないでしょう」
「そのようですね。ですが貴方は一つ失念している」
「何をです?」
「有象無象の連携など、圧倒的な個の前ではただ無力だという事をッ!!」
夕染が吠えた瞬間、世界が揺れた。渾身の力で振り下ろされた棍棒が、数人の辰羅の肉体を一撃で粉砕する。骨が砕け、肉が弾け飛び、床は赤く染まる。そのまま彼女は巨体をものともせず棍棒を振り回し、竜巻のごとき一撃で周囲の兵を次々と撲殺していく。
圧倒的な“個”が、たった一瞬で戦況を覆した。通常の人間であれば有り得ない。だが天人に限っては、その怪物的な身体能力が常識を易々と打ち砕くのだ。
故にこそ、この怪物を止められるのは、自らしかいない。魈雲は覚悟を決め、刃を構え直した。
彼は風のように滑り込み、一太刀、二太刀と矢継ぎ早に斬撃を繰り出す。細剣の閃きは首筋を狙い、同時に左手の暗器が影のように腹部を襲う。しかし夕染は棍棒を細やかに操り、力強くも正確にそれを受け止める。剣を払い、暗器を空中で掴み取るその動きは怪力と精密さが一体となった完璧な防御だった。
(さすがに一筋縄では行かないよな……)
互いに一歩引き、鋭い眼差しを交わす。魈雲は夕染の怪物的な力を認めつつも、その瞳には恐怖ではなく闘志が燃えていた。夕染もまた、その細身の戦士を軽んじることなく、全神経を研ぎ澄ませていた。
次の瞬間、戦いは再び動き出す。夕染が金棒を振り下ろすと、地面は粉砕され、石片が飛び散る。その瓦礫を再び棍棒で弾き飛ばし、鋭い弾丸のように魈雲へと投げつけた。魈雲は軽やかな身のこなしで跳ねるように避け、瓦礫を踏み台にして逆に反撃の機を探る。
夕染が一足飛びに間合いを詰め、嵐のように金棒を細やかに操って叩き込む。空気が爆ぜるたび、魈雲の細剣が必死に防ぎ、暗器が隙を探す。だがその勢いは凄まじく、徐々に魈雲の足が押し下げられていった。
(ああ嫌だ。掠っただけで骨が軋みそうだ)
金棒は獣の咆哮のように唸りを上げ、地面を砕き、空気を切り裂きながら魈雲を追い詰める。その衝撃が伝わる度に塔の内部に亀裂が走る。鈍重に見えて一撃一撃は稲妻のように速く、避け損ねれば肉も骨も一瞬で粉砕されるだろう。だが魈雲の双眸は恐怖に揺らぐことなく、研ぎ澄まされた刃のように細められ、ただ隙を探り続けていた。
(ここかッ──!)
夕染が大上段から渾身の力で金棒を振り下ろした瞬間、魈雲は横へと弾けた。白刃が閃き、細剣が鋭く脇腹を狙う。決まる、そう思えた瞬間、それは夕染の誘いであった。
夕染は甲冑で覆われた手の甲をわずかに捻り、その細剣を弾き飛ばす。次の瞬間には、金棒を手放しながらも拳が魈雲の腹部を直撃した。
「ガハッ……!」
鈍い衝撃音が響き、魈雲の口から鮮血が飛び散る。砕けた肋骨が肉を裂き、内臓を無理やり揺さぶられるほどの一撃。身体は糸の切れた人形のように吹き飛ばされ、床を滑って転がった。それでも魈雲は痛みに顔を歪めながらも、すぐさま体勢を立て直し、血で滑る口元を拭いながら暗器を放って距離を取る。
夕染は再び金棒を掴み直し、その暗器を豪快に弾き飛ばした。その軌跡を見た彼女の表情に、微かな警戒の色が浮かぶ。魈雲の放つ暗器には強力な毒が仕込まれている。ほんの一撃でさえ、命を奪いかねない。夕染はそれを理解しているが、攻め手を緩めることなく、なおも巨躯を揺らして迫った。
「ここまでですね。貴方達の枯れ枝のように脆い骨では私の攻撃には耐えられない」
「さて、どうかな……?」
「トドメを刺してあげます。苦しまないように、一撃でその頭骨を粉砕してやる」
夕染が棍棒を構え直す。その刹那、彼女の足首に鋭い痛みが走った。
「ッ!?」
「僕の……僕達の勝ちです」
目を落とすと、足首には毒針が深々と突き刺さっている。夕染の瞳が驚愕に見開かれる。その前で、腹を押さえながら立ち上がった魈雲が不敵に笑みを浮かべていた。
そう、彼は戦場を計算し尽くしていた。転がる死体の位置まで考慮し、夕染をそこへと誘導したのだ。そして死体に紛れて潜んでいた仲間が、絶妙の一瞬を突いて毒針を打ち込んだ。
夕染は針を引き抜き捨てるも、その瞬間には毒が血流を駆け巡っていた。胸に鋭い痛みが走り、喉を切り裂くような吐血が迸る。巨躯が膝を折り、支えを失った棍棒が床に重く転がった。
「……ッ!」
声にならぬ叫びが漏れる。
「貴方……ッ、正々堂々って……」
「ええ。正々堂々毒殺させて頂きます。それが僕達辰羅の戦い方ですから」
視界がぼやけ、魈雲の輪郭が闇に溶けていく。
(やられましたね……。態々“正々堂々”などと口にし、苛烈に攻め込んで来たものだから……私の意識は自然と目の前の相手に縛られてしまっていた……。戦場と、仲間達への警戒を削がれたのは……私の落ち度だ……)
魈雲は常に冷静だった。圧倒的な力に晒されながらも、最後まで計略と冷徹な判断を崩さなかった。その結果がこれだ。しかし、
それでも──────ッ
ヒールを履いた足が床を砕き、大地を震わせる。
(私はッ、負けないッ!!)
血が口から、鼻から、さらには目からさえ流れ落ちる。それでも夕染は立ち上がった。血管が浮き上がるほどの力を込め、金棒を握り締めて咆哮と共に振り抜く。
「な、」
魈雲の瞳が驚きに見開かれる。その瞬間、彼を庇うように部下の辰羅が身を投げ出した。次の瞬間、夕染の一撃が直撃し、肉も骨も粉砕され、血と肉片が戦場に飛び散る。魈雲は歯噛みし、舌打ちを漏らした。
「普通、死んでますよ」
魈雲は根性論も精神論も好まない。だが今、目の前にあるのはまさにそれ。夕染は戦場に立ち続けるという執念だけで動いていた。荒い呼吸を吐きながらも、再び棍棒を構える。その双眸にはただ一つの誇りが宿っている。
夕染は奴隷だった。荼吉尼族の女として、力を持ちながらも戦士としては見なされず、鉱山の労働奴隷として酷使された。だが龍宮が彼女を見出した。
“貴女の輝ける場所はここじゃないわぁ。だって貴女、強くなれるもの”
その一言で彼女は労働奴隷から龍宮の臣下となった。龍宮の指示に従い戦い続け、裏切り者を殺し、不要な者を殺し、反乱者を殺し、敵を殺した。勝ち続けた。夕染は負けを知らぬ荼吉尼の戦士となった。
だからここで負ければ龍宮に捨てられると分かっている。だがそんな事は今は些末な事だ。
彼女にとって重要なのはただ一つ。負けないこと。勝つこと。強い相手に勝ちたい、それだけだ。
「私は荼吉尼の戦士ッ、夕染だッ!!」
龍宮も、忠義も、全てを忘却した。今この瞬間、ただ一人の戦士として目の前の相手に負けたくなかった。だが、
「戦況は感情ではひっくり返せない」
魈雲の声と共に辰羅の男達が殺到する。夕染は余力を振り絞り、金棒を振り回して彼らを弾き飛ばした。しかし次の瞬間には、魈雲の姿はそこにはなかった。
(後ろかッ──!)
背後に気配。振り返る視界は霞み、黒い影が映る。渾身の力で振るわれた金棒は空を裂いたが、手応えはあまりに軽い。
(スーツの、上着ッ……!)
その直後、腹を貫く冷たい異物感。鮮烈な激痛が全身を襲う。魈雲が脱ぎ捨てた上着で目を欺き、一瞬の隙を突いて背後から横っ腹を刺し貫いたのだ。
毒が一瞬で血流を駆け巡り、夕染の巨体は遂に崩れ落ちる。魈雲は血に濡れた剣を軽く一振りし、静かに勝敗を受け止めた。
その時、塔の上階から轟く炸裂音と破壊音が響き渡る。銀時たちの戦いが始まったのだ。魈雲は血に濡れたまま立ち尽くし、深い息を吐くと、生き残った部下を従えて上階へと向かった。
命を賭してでも龍宮を討つ。その為に仕込んできた。全てを終わらせるために。
「僕達は勝ちますよ。必ずね」
激痛を押し殺し、魈雲は足早に闇の階段を駆け上がっていった。