もう1人のバカ兄貴   作:佐倉シキ

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バカ兄貴

 

 

 

 

 

赤い目を爛々と輝かせた燕心が、正面に立つ銀時へとゆっくりと歩を進めた。その瞳には明確な殺意と、燃え盛る剣呑な光が宿っている。振り上げられた拳はすでに赤黒く染まり、血と鉄錆の匂いが空気を濁らせ、辺りに重苦しい緊張を広げていた。

銀時はその圧を一身に受けながらも、わずかに目を細め木刀を構え直す。背後では神楽と新八が息を呑んで彼を見守り、空気は張り詰め、崩れ落ちた瓦礫の上を微かな風が吹き抜けただけで音を立てる。

 

「やめろヨ江鷹!! 死んでしまうヨ!!」

 

必死の叫びが響いた。

 

「……大丈夫……。使命は、果たしますので……」

 

掠れた声で応える燕心の瞳は、どこまでも狂気と責務に縛られている。

 

「もう関係ないだろ!! しっかりしろバカ!! バカ兄貴!! コッチを見てヨ! ねぇッ! 兄ちゃんッ!!」

 

“兄ちゃん”、その言葉が燕心の脳を揺さぶる。

 

目が大きく見開かれ、思わず耳を塞ぐ。彼の脳裏に、血に濡れた亡霊たちの影が押し寄せた。首の落ちた幼い子供達が、自らの頭を抱えたまま立ち現れる。その瞳は怒りに燃え、冷たく彼を睨み据え、お前のせいだと恨みの言葉を囁く。幻覚。だがその幻覚はあまりにも鮮烈で、現実よりも現実らしかった。

 

「ああッ……ごめん、ごめんなぁ……俺のせいだ……次はちゃんとするから、もうやめてくれよ……許してください……頼むからッ……」

 

燕心は両耳を塞ぎながら膝を折り、右手で頭を抱え、左手で胸を掻き毟る。口からまた鮮血がこぼれ落ち、床に黒々とした染みを作った。その苦悶の姿を見て、神楽は泣きそうに顔を歪める。

 

長くは持たない。銀時は瞬時にそう判断すると、躊躇なく踏み込んだ。木刀が唸りを上げ、空気を切り裂く。鋭い斬撃のような一撃が振り下ろされる。燕心は反射でそれを受け流し、そのまま銀時の鳩尾へ拳を叩き込んだ。轟音と共に衝撃が走り、銀時の身体が大きく仰け反る。喉奥から血が溢れ出し、吐き出される。だがその拳に走った激痛は燕心自身をも苛んだ。軋む骨、裂ける筋肉、焼けるような痛み。

 

銀時が膝をついた瞬間、燕心は追撃に転じようと足をわずかに動かした。しかしその間合いに、迷わず神楽が割って入った。かつて辰羅が用いた戦法、立ち位置で相手を封じる。

神楽がそこに立つ限り、燕心は自由に足を振り上げられない。舌打ちを噛み殺し、彼は拳で殴りかかった。神楽はそれを紙一重で躱し、逆に腕を取って投げ飛ばす。だが燕心は獣のように身を翻し、軽やかに着地した。すかさず神楽が距離を詰め、蹴りを叩き込む。燕心は涼しい顔で受け止め、逆に拳で反撃した。凄まじい衝撃が神楽を後退させ、靴底が瓦礫を削る。しかしその一撃を放った燕心の腕は震えていた。鈍い痛みが骨を砕き、筋を裂いている。限界は刻一刻と近づいていた。

 

そこに新八が踏み込む。渾身の力で木刀を振り下ろす。だが燕心はその刀を素手で掴み、軋ませた。木が裂ける音が響き、新八の顔に驚愕が走る。その隙を逃さず、燕心の拳が胸を貫かんと迫る。しかし直前で銀時が木刀を振り下ろし、その手を叩き落とした。骨が砕ける嫌な音が辺りに響く。燕心の腕が震え、血が滴った。

 

「お前はもう奴隷じゃねぇ! あの女のおもちゃでもねぇ!! 家族が迎えにきたんだ! 思い出せッ! 本当の名前を!! 大切な記憶をッ! しっかりしろよッ!! バカ兄貴ッ!!」

 

銀時の頭突きが激しく命中する。衝撃で燕心の身体が仰け反る。その一瞬を逃さず、銀時は魈雲から託されたものを彼の体に突き刺した。だが燕心は倒れなかった。命令がある、負けてはならない。恐怖が刻み込まれている。血に濡れた両拳を握り直し、なおも戦意を燃やし続ける。

 

再び拳が振り下ろされる。銀時はギリギリで躱したが、床に叩きつけられた拳から鮮血が滲み、亀裂が走った。腕には無数の裂傷が走り、筋肉は悲鳴を上げ、骨は砕けかけている。それでも燕心は止まらない。呼吸は荒く、目の奥は狂気に揺らめきながら、ただ命令に従う機械のように拳を振るい続ける。

 

避けられた銀時の胴へ鋭い蹴りが突き刺さる。瞬間、さらにこめかみ、顎、側頭部へと連撃が畳みかけられた。銀時の体がぐらつく。しかしそれでも彼は踏みとどまった。だが燕心はそれすら予測していたかのように渾身の拳を叩き込み、銀時の身体を壁に吹き飛ばした。轟音と共に壁が砕け散り、瓦礫が崩れ落ちる。常人ならば即死の衝撃。しかし銀時は、血に濡れながらも立ち上がった。

 

その姿を見て、燕心は目を見開いた。

 

「さぁ、後何発で思い出す?」

「なんで……立ち上がる……?」

 

赤い瞳が銀時を真っ直ぐに捉える。先程までの焦点の定まらない亡霊のような目ではない。確かに今、銀時その人を見ている。

 

「は、ようやくこっちを見たかよ。過去の幻覚じゃあ無く、今を見ろ江鷹。お前の受けた痛みも、苦しみも、俺にはわからねぇ。だから何も言わねぇよ、言えねぇ。俺にはとても推し量れねぇからな。それでも、今のことは言う。こっちを見ろ! まっすぐ前を、今を見ろッ!!」

 

銀時の叫びに、燕心は眉を顰め、不愉快そうに奥歯を噛み締めた。

 

「テメェの前に立ってるのは奴隷商人でも殺されたガキでも龍宮でもねぇ。ただの家族と、ただの万事屋だ」

「俺は……俺は……ッ」

 

折れた拳を無理やり構え、燕心はなおも前へと踏み出そうとした。砕けた骨が悲鳴をあげるたび、血の気が引くような痛みが全身を走り抜ける。だが、それでも彼は殴りかかろうとした。その腕を、新八が渾身の力で木刀を振り上げ、骨ごと打ち据えた。乾いた衝撃音が響き、燕心の喉から呻きが漏れる。痛みに顔を歪めた彼の背後に、神楽が素早く回り込み、全身を捻って組み付いた。 

 

だが、同じ手を二度と喰らうほど燕心は甘くない。怒りに歪む表情のまま背を反らし、神楽の小柄な体を壁に叩きつけた。壁が軋み、振動とともに神楽の喉から苦鳴が溢れる。衝撃で口から血が飛び散り、床を赤く染める。それでも彼女は食い下がるが、燕心は何度も叩きつけ、ついには組み付きが緩む。その刹那、彼は筋肉の悲鳴も無視して力任せに振り解き、神楽の体を無造作に掴んで新八へと投げ飛ばした。

 

次の瞬間、銀時の木刀が燕心の伸び切った腕を刺し貫く。木が軋み、肉を裂く感覚とともに大量の血が飛沫のように舞った。しかし燕心は痛みなど意にも介さず、木刀を逆に掴んで手繰り寄せると、強靭な脚力で銀時の胴を蹴り飛ばした。銀時の体が宙を舞い、床を転がる。燕心は息荒く、腕に刺さった木刀を引き抜いた。肉を裂く音とともに鮮血が噴き出し、床を濡らす。大量の出血により一瞬視界が揺らぎ、頭がくらりと傾いた。

 

その一瞬の隙を銀時は見逃さなかった。床を蹴り、音もなく間合いを詰めると、奪い取った木刀で燕心の顎を強烈に殴り上げた。乾いた破砕音が響き、燕心の頭が大きく仰け反る。

 

(なんなんだコイツら……なんでこんなに立ち上がってくる……)

 

肉体は明らかに限界を超えているはずなのに、銀時も神楽も新八も、倒れない。圧倒的に自分の方が強い。それなのに、追い詰められているのはなぜか。気味が悪い。

 

「お前がどんだけ強くてもッ、それでもッ私たちは負けないアル!」

 

血を吐きながらも、神楽が雄叫びのように声をあげた。彼女は地を蹴って駆け寄り、拳を振るう。燕心はその拳をかわし、逆に神楽の体を掴んで床に叩きつけた。だが神楽は即座に跳ね起き、止まらぬ嵐のような連撃を浴びせかける。鋭い連打が雨のように降り注ぎ、燕心は腕で受け流し、拳で受け止め、ついには反撃の蹴りを鳩尾に突き刺した。

 

「がはッ」

 

神楽の体がくの字に折れ、血が喉を突いて噴き出す。確実に肋骨を砕いたはずの一撃だった。これで倒れる。そう確信した瞬間、彼女は歯を食いしばって踏みとどまり、血に濡れた瞳で睨み返してきた。

 

「まだ、まだ……アル……ッ」

 

その声とともに、神楽は燕心の髪を乱暴に掴み、引き寄せると自らの額をぶつける。轟音とともに衝撃が燕心の頭蓋を揺さぶり、呻きが漏れる。その隙を逃さず神楽は全身を捻り、燕心の側頭部を蹴り飛ばした。燕心は床を転がり、血を飛び散らせながら止まる。

 

だが、ふらつきながらも再び立ち上がる。口から血を垂らし、足元は覚束ない。それでも瞳に宿る闘志は消えない。床を踏みしめ、攻撃に移ろうとした瞬間、神楽の手刀がその目に打ち込まれた。

 

「ッ──!」

 

焼けるような痛みが走り、燕心は思わず右手で両目を押さえる。一時的に視界を失った。だが音がある。呼吸がある。足音がある。目を閉じても、敵の居場所はわかる。

 

燕心は迷わず神楽の横腹へ蹴りを叩き込み、転がる音の方へ駆け寄った。今度こそ仕留める、そう思った瞬間。

 

「ッ!!?」

 

鳩尾に突き上げるような衝撃が襲った。内臓を揺さぶられる痛みに息が止まり、視界が揺らぐ。

 

「目を瞑ったままだから、大事なもん見落とすんだ」

 

低く響く声。銀時だ。神楽が転がった方向に身を潜め、燕心が突進してきた瞬間、木刀の柄で鳩尾を突き上げたのだ。燕心の勢いそのものが衝撃を倍増させ、内臓にまで響いた。燕心の体は宙を舞い、地面を転がって止まる。血が喉から溢れ、ドクドクと赤黒い流れが広がる。

 

鼓動が乱れ、意識が暗闇に引きずり込まれる。呼吸は荒く、視界は霞み、全身から力が抜け落ちていく。

 

それでも、燕心は立ち上がろうとした。膝が折れ、腕が震え、体は崩れ落ちようとしても、なお四肢に力を込める。敗北は認めない。生き残ることも許されない。戦えと、刻みつけられた恐怖が命令する。

 

「もういいアル」

 

神楽が歩み寄り、血に濡れた彼の肩に手を置いた。声は震えているが、真っ直ぐに響いていた。

 

「もう頑張らなくていいアル」

 

燕心の赤い瞳が神楽を捉える。獣のように荒んだ目で、それでも揺れていた。

 

「お前を縛るものはなくなる。自由になれる。もう私達の顔も見たくないって言うなら、それでもいい。寂しいけど、それでもいいアル。ただ、自分勝手かもしれないけど、お前を思う家族がいたって事だけは、覚えといてほしいヨ」

 

神楽は膝をつき、彼と視線を合わせた。

 

「最初、私の目を潰せなかった時点で分かってたヨ。お前じゃ私を倒せないって。今だって首を折るなりなんなりすれば倒せるのに、私の話を黙って聞いてる。昔からずっとそうだったアル。江鷹は文句一つ言わず私のわがままに付き合ってくれた。私のつまらない話を、楽しそうに聞いてくれた。お前が忘れても、私はずっと忘れない。死ぬまで」

 

神楽は血塗れの兄をそっと抱きしめた。燕心は驚いたように目を見開き、その小さな体を見つめる。

 

「私、ずっとずっと言いたかった事があったヨ。ずっとずっと心残りだった事があるんだヨ」

 

聞いてくれるアルか?

そう呟きながら神楽は、返事を待つことなく語り始める。抱擁を緩め、血と汗に塗れた顔を正面から見つめた。昔のような無邪気な優しさはそこになく、影を宿した瞳を、ただ真っ直ぐに。

 

「あの時、1人で逃げちゃって本当にごめんヨ。ずっと1人にして、見つけられなくて、本当にごめん! でも、でも……生きててくれて良かったアル……また会えて……良かったアルッ!」

 

泣きながら声を振り絞る神楽の声は、これまでの強がりも怒りも消え去り、純粋な悔恨と安堵だけで震えていた。すんすんと鼻を鳴らしながら涙を流す神楽を、燕心はただぼんやりと見つめていた。その赤く爛れたように充血していた瞳は、もう剣呑な色を帯びていない。血管が破れて赤化していた強膜は静かに治まり、かつての落ち着いた色に戻っていた。その変化を目の端で確かめた銀時は、ようやく薬が効き始めたのだと小さく息を吐く。

 

戦いが始まる前、魈雲から託されたもの……それは活性アンプルの解毒薬だった。アンプルを開発したのが魈雲である以上、当然ながら解毒薬も彼の手によって作られていたのだ。銀時は心の奥底で、あの男の備えに初めて感謝していた。

 

「そう言えば、俺も……ずっと気掛かりだったことがあったっけな……」

 

譫言のように呟く燕心。その声は先ほどまでの獰猛さが嘘のように掠れて弱く、どこか遠い記憶を手繰り寄せるような響きがあった。「何が?」と神楽が問いかけると、燕心の翡翠色の瞳がまっすぐに神楽を捉える。

 

「何だったかな……確か、むかしの……ずっと、まえの……」

 

語る声は次第に覇気を失い、ぼんやりとしていった。焦点を結ばなくなりつつある瞳に、それでも神楽の姿だけは映っていた。その輪郭が、幼き日の記憶と重なる。幼い彼がゴミ箱の中に押し込み、必死に逃がした少女。無事に逃げ切れたのか、ずっと心の奥底で気になっていた存在。

 

「……無事で……良かったよ……」

 

その一言を最後に、燕心の身体は力を失ったように意識を手放した。がくりと前へ弛緩するその身体を、神楽は咄嗟に抱きとめる。力なく横たわる彼を支えると、神楽の大きな瞳からは堰を切ったように涙が溢れ出す。唇を震わせ、もう堪えきれないとばかりに、わんわんと子どものように泣き声を上げた。その泣き方は、万事屋でさえ見せたことのないものだった。

 

銀時はその光景を背にして歩き出す。広場の方へと重い足を向け、振り返らない。「銀さん……」と新八が声を掛けるが、銀時は低く答えた。

 

「そっとしといてやれ、今は」

 

足元に転がっていた手頃な布を拾い上げると、戦いで砕け血に濡れた掌と木刀を固く結びつける。

 

「やらなきゃいけない事が、まだある」

 

その瞳には濁りのない決意が宿っていた。足を進めれば、そう遠くないうちに広間へ戻れる。近づくごとに、塔全体を震わせるような轟音と振動が増していく。やがて辿り着いた広間に広がっていたのは、まさしく災厄の名にふさわしい光景だった。

 

星海坊主が傘を振るうたびに大地が軋み、壁が砕け散る。その苛烈な乱撃を、龍宮は鉄扇を広げ舞うように捌いていく。強烈な攻撃は受け流し、弱い攻撃は受け止め、そして隙を突けば即座に攻勢へ転じる。流れるようなその応酬は、まるで舞踏のように美しく、しかし殺意と破壊の奔流そのものだった。だが、わずかに優勢なのは星海坊主である。巨腕から繰り出される打撃は徐々に通り始め、龍宮の衣服や髪を乱し、肌にかすかな傷を刻んでいた。

 

「どっちも化け物かよ」

 

銀時は眉をひそめた。脳裏に蘇るのは、己が彼女と対峙した時の光景。あの時の自分は、まるで遊ばれていた。どれほど工夫し、角度を変え、隙を突こうとも、その全ての攻撃は鉄扇で軽々と受け止められ、無造作にいなされ、最後には蚊でも払うように投げ飛ばされる。一畳の畳の上から一歩たりとも動かすことができなかった。銀時の激しい連撃は、その小さな畳の範囲で全て封じられていたのだ。

 

だが今、その相手を星海坊主は片腕で追い詰めている。龍宮が傘の攻撃を鉄扇で防いだ刹那、それは囮だった。巨体が弾丸のように回転し、星海坊主の蹴りが龍宮の肩を強打する。

 

「あらぁ、服が汚れたわぁ」

 

龍宮はわずかに眉を寄せながらも軽やかに飛び退き、白い指で肩に付いた汚れを払った。

 

「星海坊主さんの蹴りを喰らって、それだけ?」

「ダメージが入ってねぇ訳じゃねぇ、ただアイツの体は硬すぎる。木刀じゃあまるで歯が立たなかった」

「当然です。彼女はドラゴンなんですから」

 

銀時と新八のやり取りに割って入ったのは魈雲だった。どこから現れたのか、乱れた衣服をまとい、呼吸は荒く、しかし致命傷は負っていない。そしてその手には三本の真剣が握られていた。

 

「かき集めてきました。彼女と戦うのならこちらを使用してください」

「もう結んじゃったよ。もっと早く持ってきてくれよな」

「うるさいですよ。あるだけ感謝してください」

 

渋々ながら銀時は布を解き、砕けかけた木刀を外し、新たに刀を結びつける。白銀に輝く刃は息を呑むほど美しく、冷たく鋭い気配を放っていた。新八も一本を手に取り、余った一本は銀時が腰へ差す。

 

その時、

 

「ッ……」

 

空気が裂ける音と共に、広間に鮮血が飛び散った。星海坊主の拳が遂に龍宮の顔面を捉えたのだ。額から血が滴り落ち、龍宮は苦悶の表情で後退する。星海坊主はその隙を逃さず追撃し、横腹へ重い蹴りを叩き込んだ。

 

「いつまでその姿でいるつもりだ」

 

肩に傘を担ぎ、巨躯の男は龍宮を鋭く睨み据える。

 

「息子が世話になった礼だ。全力のテメェを叩き潰してやる」

「へぇ?」

「さっさと元の姿に戻ったらどうだ。この宇宙最強の掃除屋が、テメェの事をぶっ潰してやるよ」

「そっかそっか、じゃあ……簡単に踏み潰されないでね?」

 

龍宮は唇の端を釣り上げ、妖艶な笑みを浮かべると、纏っていた衣服を静かに脱ぎ捨てた。「はわっ!?」と銀時が間抜けな声を上げ、慌てて新八の目を塞ぐ。しかし布で結びつけられた刀の鍔が勢い余って新八の顔面に激突し、「ぐふっ」と呻き声を上げた。

 

見たいけれど見たいなんて言えない。いや、そもそも隠されるほど子供じゃねぇ! と、妙な感情が新八の胸に渦巻いた。

 

だがその場にいる他の者たちは、そんな下らない葛藤を抱く余裕などなかった。龍宮の肉体が、女としての美を保ちながらも、次第に人の枠を超えた異形へと変貌を始めていたからだ。

 

 

 

 

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