テニスの試合で先輩に勝ったら粘着されたんだが   作:ガラクタ山のヌシ

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久しぶりに書いてみましたです。


第3話

あの頃からずっと喉に魚の小骨が引っかかったような感覚。

或いは傷一つも無かった宝石にたったひとつ出来た小さな欠けのようなそれは日に日に夜神月という男の心の中に広がりつつあった。

 

その証拠に彼は授業中に考え込むことが多くなったり、体育のサッカーではうっかりゴールを外したり、或いは家でもぼうっとする時間が日に日に増えた。

 

何をするにも億劫になり、グレないまでもやや荒れた心持ちになってしまった。

 

幸いテストの成績に影響は出なかったものの、時たま教師陣から心配されてしまうようなこともあった。

とは言え、進学先の偏差値には充分…というより、余裕であったためそちらの心配をされることは無かったのだが。

 

そして彼自身、その原因は分かりきっていた。

表向き立ち直ったように見えても、心の奥深くにまで根付いた屈辱感は時間の経過だけで拭い去ることは出来ない。

 

「こうなってしまった以上、僕がすべきことは一つしかない…」

 

自室の勉強机に肘を乗せ、鋭い目つきでひとり呟く。

あの後輩…郡山純一に徹底的に現実というモノを分からせなくてはならないという負けず嫌いから来る使命感。

 

つまりは自分が格上であるという事実を突きつけてやらねば前には進めないというやや幼稚な確信があった。

 

「母さん。お願いがあるんだけど…」

「あら珍しい。ライトからお願いだなんて…」

 

そう決心を決めた月はその日、恐らくかなり久しぶりに親にモノをねだった。

母である夜神幸子は一瞬目を丸くしたものの、ほぼ二つ返事で「なにが欲しいの?」とたずねられた。

 

それはテニスのボールであり、ラケットに新たに張るガットであり、新品のシューズであり…とにかくテニスに関する物ばかりだった。

 

そして、特に頼み込んで入会したテニス教室に通い始めてひと月もすればカンを取り戻し、ふた月もすれば更なる成長さえ実感した。

 

月はそろそろ勝てるだろうとタカを括り郡山を探す。

自分から引退した部活や一年の教室には赴かない。

あの試合での負けを引きずっていることを悟られることは彼の高すぎるプライドが許さないからだ。

 

あくまでも下校の際、偶然を装って郡山に話しかけ、さりげなくテニスをする流れに話を誘導する。

そして鮮やかに勝利してみせる。

 

彼自身が気持ちよく卒業するにはそれしか無い。

そして、そうしてようやくお遊びから解放されるのだと胸に誓った。

 

しかし月はひとつ失念していた。

 

つまりは……

 

月が成長をしたように、彼を打ち負かした後輩である郡山もまたグングンと尋常ならざる成長をしているのだということを。




続くといいなぁ…
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