魔法少年育「性」計画   作:クソザコ陰陽師

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 平凡なサッカー少年「岸辺颯太」は、今日も部活でくたくたに疲れた体を引きずりながら家路を急いでいた。本当なら家に帰ったらシャワーを浴びてすぐベッドに飛び込んでしまいたいところだが、この後も外で活動しなければいけない理由が彼にはあった。彼こそがN市の平和を守る魔法少女「ラ・ピュセル」だからだ。


第1話

 繁華街の片隅、人気もなく闇の支配する路地裏で、一人の少女が数人の男性に囲まれているのが目に入った。ラ・ピュセルは踵を返し、すぐさまそちらに向かう。ビルの屋上から視線を向けると、男たちの誘う声が聞こえた。困惑している少女に対し男たちは引き下がらず、しつこく食いついている。誇り高き女騎士にとって、このように他者への思いやりに欠けるような連中は男としても、同じ人間としても許しがたい。ラ・ピュセルは剣を両手に構え、上空から少女と男たちの間に割って入った。

「おい、そこのお前たち!女の子が困っているじゃないか、愚かなことはすぐにやめるんだ!」

 男たちはラ・ピュセルの姿を視界に認めると、形相を変え引き下がっていった。一人がそれでも食い下がらない様子を見せたが、仲間に引っ張られ夜の街に消えていった。これで一安心だ。ラ・ピュセルは少女のほうに振り向き、もう大丈夫だよと口を開こうとした。

 見覚えのある顔だった。しかも少女ではない。少年だ。動揺かはたまた安心感のせいか、ラ・ピュセルは変身を解除した。

「って、馨じゃないか!なんでここに!?」

 少年の名前は小山内馨。またの名を、魔法少女「ステラ・ルル」。颯太が初めて、そして唯一出会った男性魔法少女だ。

「颯太くん!会いたかったよ!」

颯太の顔を目にした馨は、有無も言わさず颯太に抱き着いてきた。

「うわっ!?」

 馨のさらさらした髪が流れる。フローラルな匂いが鼻腔をくすぐる。顔が熱くなり、心臓の鼓動が速まるのを感じた。いや待て、こいつは男だぞ。何を動揺する必要がある。そのようなことを考えていると何故か小雪の顔が脳裏に浮かんだ。おかしいだろ!と思った颯太の鼓動はさらに速くなる。

 颯太は慌てながら馨の身体を離し、マラソンを終えた後のように体を鎮めるべく肩で息をした。しばらくして心拍も落ち着いてきたころ、ようやっと颯太は口を開いた。

「にしても、なんで馨がここにいるんだよ」

抱き着かれてヒートアップした身体をしずめてもなお、馨がこのN市にいるという現実に対する驚きは隠せない。

「実は、しばらくここで任務をすることになったんだ」

そんな颯太をよそに、馨は前会った時と同じような、飄々とした言い方で答えた。

「この前のビルの件あったでしょ?詳しいことは言えないけど、あれに関連していろいろ調査しなきゃいけないことが出てきたから、しばらく滞在することになったんだよ」

「そうか、それは大変だな…」

我ながら気の利いた言葉が出てこないのが、颯太は恥ずかしくなった。そして「君に会えてうれしい」と言おうとしてさらに恥ずかしくなり、口をパクパクさせながら視線を泳がすという醜態を晒してしまい恥ずかしさがピークに達した。

「颯太君にまた会えて僕、うれしい」

そんな颯太とは対照的に馨は姿勢を全く崩さず、よどみなく言い放った。

「ぼ、僕もうれしい…よ」

やっぱり気恥ずかしそうに、颯太は馨から目をそらしながら言った。

「で、頼みがあるんだけど」

馨は颯太に走りより、手をとった。

「N市に長いこと暮らしている颯太くんにも、この任務に協力してほしいんだ!」

肌のなめらかさが直に伝わってきて、馨の手の冷たさにもかかわらず体温の上昇を感じる颯太。とられた手を強く握り返した。

「協力?まあ、別に問題ないけど…どういうことをすればいいのかな?」

「協力といっても簡単なことだよ、N市のことや市内の魔法少女について、こっちの知りたいことを教えてほしい」

相変わらず飄々とした態度で馨は答える。

「それくらいのことなら喜んで協力するよ!」

颯太の声もだんだん、馨に合わせて溌溂さが増してきた。

「ありがとう!」

そういって馨は再び抱き着く。

「ひゃあぁ!?」

二度目のハグに颯太は、思わず馨を押し出してしまった。刹那、颯太は自分がしてしまったことを理解し、慌てて謝る。

「ごめん、そういうわけじゃなくて…なんというか、恥ずかしいから」

「えーでも男同士だよ?」

このような状況を作り出してもなお飄々としている馨に対し、颯太は早口になって言葉を返す。

「いや男とか関係ないよ…とにかく、こういうの慣れてないからわからなくて」

だんだん自分でも何を言ってるかわからなくなってきた。

「言い忘れてたけど、これは魔法少女ステラ・ルルじゃなくて、小山内馨としての頼みだからね。会う時も私服で頼むよ!」

 そういってほほ笑んだ馨の笑顔は、いつまでも颯太の心に焼き付いて離れなかった。

 

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