術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る   作:藍沢カナリヤ

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第13話 受肉

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呪術師が死後『呪い』に転じることはある。勿論、呪術によって、術師を殺せばその限りではない。

 

 

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「はっ!」

 

 

急激に覚醒し、体を起こした私。既視感があるが、ここは高専ではなく、『羽々場ねこ』の故郷である例の村であった。そして、目の前にいたのも、この間とは違って五条悟ではなく、

 

 

「やぁ、起きたかい」

 

「冥さん……」

 

 

瓦礫の上に座る冥さんが私を見下ろしていた。いつもに増して、気だるそうな雰囲気を醸している冥さんに、どこか体に異常がないか聞かれ、大丈夫だと返す。

 

 

「それは何よりだ」

 

「あ、もしかしなくても、冥さんが助けてくれたんですよね。ありがとうございます」

 

「……気絶する前の記憶は残っているかな」

 

「そう、ですね」

 

 

少し痛む頭に手を当てて、記憶を呼び起こす。

……そうだ。『ねこ』だ。旧羽々場邸の地下の小屋。その中にポツンとあった『井戸』の中に、私は落ちて、『ねこ』に遭遇した。異様に目力の強い奴だった。あれは一体……?

 

 

「旧羽々場邸……この村にいた頃の君の家だね」

 

「あ、はい。その地下に『井戸』があって……」

 

「…………後ろを見てみるといい」

 

「?」

 

 

冥さんに言われて振り返ると、そこには瓦礫の山があった。冥さん曰く、ここで戦闘があり、旧羽々場邸はそれに巻き込まれて壊れてしまったとのこと。それ自体は気にしていないけど、

 

 

「私も何かあるだろうと周辺を探ったが、地下に続く穴なんてどこにもなかった」

 

「う、うそんっ!?」

 

 

地面を這いながら確認しても、ない。靴箱の裏に隠されていた穴はない。でも、確かに私はそこを降りて、あの『井戸』に辿り着いたはず! 夢、か? それとも、あの呪霊の能力か?

 

 

「まぁ、後者の可能性が高いだろう。君の言う『ねこ』と戦ったけれど、『領域』を使ってきた。羽々場くんが見た『井戸』も『生得領域』の1つと考えれば納得はいく」

 

「なるほど」

 

 

あの『ねこ』と戦ったという冥さんが言うのだから、恐らくそうなんだろう。私は自分をそう納得させて、思考を打ち切った。

 

 

「それにしても、夏油くんが事件を起こした村でのことといい、今回のことといい、君はよく気絶するね。一度、硝子に見てもらった方がいいんじゃないかな」

 

「ハハハ……」

 

 

渇いた笑いを返すしかなかった。

しかし、本当によく助かったものだ。得体の知れないあの『ねこ』の呪霊と邂逅し、私の術式を乗っ取られて。それからの記憶がないのだから、きっと私はまたそこで意識を手放していたのだろう。にもかかわらず、生きているのだ。脳機能は不安だが、運だけはいい。

 

 

「ところで、羽々場くん」

 

「『黒閃』の修行ですか? すみません、冥さん。流石の私も今は少し休ませてほしいと思うんですけどぉ……」

 

「いや、その話じゃないさ」

 

「?」

 

「君は呪物の受肉についての知識はあるかい?」

 

 

唐突な質問だった。冥さんらしくもない金の絡まない質問……いや、実は金に繋がる話なのかな。そんなことを思いながらも頷く。

 

呪物の受肉。

虎杖悠仁を器として受肉した呪いの王『両面宿儺』。

特級呪物『呪胎九相図』が受肉した存在である『脹相』『壊相』『血塗』。

そして、『死滅廻游』編で受肉した過去の術師たち。

それらはすべて現代人に受肉するという形で原作に登場しているから、知識としては知っている。ただ、それを今のタイミングで聞くのが謎すぎる。冥さんの真意が分からない。頭にはてなが何個も浮かぶ私に向けて、知っているなら話は早いと冥さんは口を開いた。

 

 

「羽々場くん、君の身体に『ねこ』が受肉してるよ」

 

 

「は?」

 

「ん? 聞こえなかったかい? 君が見たという『ねこ』の呪霊が君の内に入り込んでいる。そう言ったんだ」

 

「…………え、え、いや、ちょっと待ってください」

 

 

フリーズしていた脳が動き出す。あの『ねこ』が私の中にいる?

 

 

「いやいやいやいや、そんなわけないですって!」

 

 

『私』自身の意識はちゃんとある。それに虎杖くんのように中にいる何かの声だって聞こえないし、感じないんだ。そんな受肉してるなんて……。

 

 

「間違いないよ。私はさっきまで君と戦っていたんだからね」

 

「な!?」

 

 

混乱する私に、冥さんは情報を突っ込んでくる。更に受肉されていたであろう私が『領域展開』をしていたこと。それにより、憂憂が負傷したことも判明し、私の脳ミソはいよいよオーバーヒートし出す。正直、信じられないし、信じたくはない。自分が何か得体の知れない化け物に乗っ取られていたなどということは。けれど、次の冥さんの発言で、

 

 

「私と戦っていた君はずっと呟いていたよ」

 

「『ねこはいます』とね」

 

 

それを受け入れなければならなくなった。だって、『井戸』の底で出会った呪霊・『ねこ』は繰り返しその言葉を呟いていたのだから。

 

 

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憂憂が療養を終えるまでの3日間。

『黒閃』を出す修行に戻った私は、とにかくそれに打ち込んだ。余計なことを考えたくなかったからだ。残念ながら『黒閃』を打つには到らなかったが、私達は高専に帰還することになった。

 

「君の中の呪霊『ねこ』を制御する術を学んだ方がいい。あれを表に出すのは危険だ」

 

冥さんの言葉通り、目的を一時的に変更することにしたからだ『ねこ』自体の戦い方、その性質は実際に戦った冥さんからある程度教えてもらった。あとは制御する術を学ばなくては。

そのために、『師』を変える必要がある。だから、私はとある人物を訪ねることにしたのだ。その人物とはーー。

 

 

 

ーーーー呪術高専東京校地下最深部ーーーー

 

 

 

「こんにちはー! 手土産持ってきましたー! 薄皮饅頭です! あと桃のポテトチップスもあります! 美味しいですよー!」

 

「おーい! いないんですかー! 『天元』様ー!」

 

 

『天元』。

呪術高専の最深部・「薨星宮」本殿にいる呪術師である。存在そのものが日本の呪術界の基盤と言われるほどの人物であり、日本国内のあらゆる結界の強化・行使を行っている。私はその知識にこそ、『ねこ』制御の鍵があると思ってる。

叫び続けること十数分。根負けしたのか私は『そこ』に招待された。

 

 

『…………はぁ』

 

 

目の前には件の『天元』様がいた。何故か頭をため息を吐いている彼女に向かって、私は言う。

 

 

「お茶を淹れてください! おやつの時間にしましょう!」

 

 

時間は15時。おやつの時間のことであった。

 

 

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こいつ(羽々場)はまぁまぁイカれていると思います。
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