術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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姉妹校交流戦1日目、団体戦。
この勝敗について私は興味もないし、介入する気もない。だから、参加を辞退した。けれど、『その後』は別だ。
特級呪霊『花御』による高専への強襲。
この展開において、私にはしなくてはいけないことがある。むしろ原作を知っている私にしかできない使命と言っても過言ではないだろう。それはーー
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呪詛師・組屋鞣造が嘱託式の『帳』を降ろしてからの約15分間、私はとある場所を探し続けていた。場所を特定するのに、アニメや漫画から判断できる材料は少なかったから、こうしてそれっぽい場所を求めて走り回っていた。そこで行われる戦闘は『呪術廻戦』の物語において重要ではなかったから、描写がほぼない。正直、困り果てていた。だから、その場所で彼女と出会った時、胸が踊ったね。私は彼女の名前を呼んだ。
「歌姫先生!」
「なっ!? なんでこんなところに!」
「よかったぁ、ここで会えて!」
「っ」
硝子さんと連絡を取りながら、奔走していた京都校の先生・庵歌姫に会えたこと。それは本当に僥倖だった。
「もしかして、貴女が……?」
「?」
と思ってたんだけど、なにやら歌姫先生の様子がおかしいぞ? 学生思いな歌姫先生である。保護のために、私に近寄ってきてくれてもいいはずなのに、むしろ距離を取られてしまった。なんか戦闘態勢にも入ってるし。んんんんん???
「えっと、あの……」
「動かないで! ひとつ聞くわ……貴女が『内通者』?」
「あっ、えぇ?」
何故かは分からないけれど、歌姫先生は、私を呪詛師及び呪霊と繋がっている『内通者』だと誤解しているらしい。まぁ、私自身、自分がイレギュラーな存在ではあるのは自覚してる。でも、私がイレギュラーなのって、学生ながら冥さんと行動を共にしていたり、『帳』が降りる前に急にモニター室を出ていったり、団体戦に関係ないのに『帳』の中にいたりしたことだけじゃないですか!
………………って、ん?
「あれれ? 私ってもしかしなくても怪しいのでは?」
そんな自覚をしてしまい、少しショックを受けていた私だったが、すぐに持ち直す。今はショックを受けている場合ではない!
「私は『内通者』じゃないです!」
「証拠は?」
「ないですけど! とにかく違います!」
「残念だけど、信じられないわ」
えぇ、『内通者』じゃない証拠を示せなんて、悪魔の証明じゃないですかぁ……。くそぅ、メカ丸が『内通者』ですとでも言ってやろうか、この野郎。この非常事態にそんなことを言っている場合かと思いながらも、歌姫先生からしたら疑わしい私をこの場に野放しておく訳にもいかないかと納得はする。でも、本当にそんな問答をしている場合ではないのだ。だってーー
ーーブンッーー
ーーキィィィィンッーー
彼女に斬りかかる凶刃を、私は呪力を纏わせた両腕で止めた。そう、本来はこの場所で、彼女を呪詛師が襲撃するのだから、本当に問答してる場合じゃないのだ。しかも、こいつはあの……!
「あれぇ? 絶対不意を突いたと思ったんだけどなぁ」
「っ、ハハッ、ハハハっ」
「? なに?」
「…………会いたかった。会いたかったぜぇぇ」
目の前の人物に、私は最大級の笑顔でそう言い放つ。
「んん? どこかで会った? 女の子にそう言ってもらえてうれしいなぁ」
私は吐き捨てるように、そいつの名前を叫んだ。
「重面春太ァァ!!!」
重面春太。
この男は偽夏油や特級呪霊たちの一派の呪詛師である。今回の襲撃においての役割は陽動と嘱託式の『帳』の経過観察。だから、原作では、『帳』が上がり次第、すぐに撤退した。歌姫先生や後に合流する野薔薇ちゃんと禪院真依も、深追いはせずに逃がしている。その判断は、その場では最適解ではある。だが、私にとってそれは最悪手なのだ。こいつはーー
「私が殺すッ!!」
『渋谷事変』にて、この男は伏黒くんを刺す。そして、瀕死の重傷を負わせる。さらに、それが引き金となって、伏黒くんは制御不能の式神を呼び出して、『宿儺』に手の内を見せてしまうことになる。つまり、こいつが生きていると、推しの危機に繋がるのだ。
「歌姫先生! たぶん近くまで野薔薇ちゃんとそっちの学校の禪院真依が来てます。合流してください! ここは任せてください」
「な、なんでそんなこと分かるのよっ! それに怪しいあなたを放置はできないっ」
あー、もうめんどくさいっ!! 重面春太の攻撃に耐えながら、後ろにいるであろう歌姫先生に叫ぶ。
「私には『予知』の術式がありますっ! それで少し先の未来を見ることができるんですよっ!」
「!!」
勿論、嘘だけどさ。まぁ、原作を読んでたから近いことはできるので、よしとしてほしい。
「だから、ここは任せて……いや、この呪詛師だけは何がなんでも私が殺しますッ」
一瞬考えた後、歌姫先生は駆け出した。私の必死さ……目の前のこいつへの殺意が伝わったのか、術式を理解してくれたのか分からないが、どうやら一応は信用してくれたみたいだ。
「あらら、お姉さん行っちゃったぁ、残念」
「うるぁぁっ!!」
ーーブンッーー
「おっと!」
大振りを躱し、重面は私から距離を取った。
「危ない危ない。キミ、女の子なのに力強いねぇ」
「死ねっ!」
「口悪ぅ……可愛くないーーなぁ!!」
ーーブンッーー
再び悪趣味な刀を振るう重面。
ーーキィィィィンッーー
「硬ったぁ……」
「そんなもん効くかッ!」
「えいっ!」
ーーキィィィィンッーー
ーーキィィィィンッーー
ーーキィィィィンッーー
何度も何度も、重面は攻撃してくる。なんのつもりか知らないけど、その程度の攻撃じゃ一切私には通らない。私はーー
「えい!」
ーードゴッーー
「っ」
「隙、できたじゃ~ん」
不意打ちの蹴りが、私の腹に入ったのを見て、ニヤニヤと笑いやがった。本当にクソ野郎だ。野薔薇ちゃんの言じゃないけど、こいつモテる要素が1つもないね。
ーーガシッーー
「!」
「捕まえた。今度はお前が受けろよ」
ーーググググッーー
奴の脚を掴んだ私は拳を固く握り、さらに呪力を込める。
「死ねッ!」
ーーブンッーー
ーーゴッーー
私の拳は残念ながら、奴の顔面には入らなかった。その代わりに、私の脳が揺れる感覚。
「ぐっ」
「ハハッ、当たった~」
歯を食いしばり、眼球を回し、奴を睨み付ける。くそっ、分かってたのに忘れてた。こいつの刀は呪力を流せば自動で動く。蹴りに意識を向けてたからだ。けど、終わりじゃない。
ーーブンッーー
「おっとぉ! 危ないなぁ、ホント」
「……『ほのぼのにゃんにゃん』」
『にゃーん?』
『にゃぁぁ』
脳震盪が収まるまでの時間稼ぎに術式を発動させる。『猫』では、こいつを殺せない。こいつの術式は『奇跡』を蓄える術式。つまりは、残基があるんだ。残基を貫通して、確実に仕留めるためには『黒閃』を撃つか『アレ』を使うかしかない。どちらにせよ、奴の手首刀でやられた脳震盪が収まるまでの間は時間を稼げ、『猫』たち。
「え、なに~? 猫じゃん! 俺、猫好きなんだよねぇ……だって、こいつら蹴ると凄くいい声で鳴くんだよぉ」
そう言って、刀を振り回しながら『猫』を追い回す重面。発言といい、とんだゲス野郎だ。
『にゃ~!』
「待て待て~」
「…………」
効いてはいる。奴が『猫』に気を取られている間に、私は目を閉じて、意識を集中させていく。深く深く。運任せの『黒閃』では心許ない。だから、こいつを確実に行動不能にする『アレ』を呼び起こせ。
「…………すぅぅ、ふぅぅ……」
ーーーー回想ーーーー
「君のそれは『受肉』とはいえないね」
「そうなんですか?」
「ああ……『結界』消えているよ」
「っ、うっす」
『天元』様の作り出したサウナ室にて、『結界』を保つ訓練をする私に、『天元』様はそう語りかけてきた。他人から話しかけられても『結界』を保つのは初歩中の初歩だから、ミスったのが少しバツが悪い。でも、どうしても気になってしまったから『結界』に意識を割きながらも、会話を続ける。
「でも、私の中にあの『ねこ』が入り込んでるって冥さん言ってましたよ? それに乗っ取られた状態の私とも戦ったって」
「彼女の言葉に嘘はないだろう。ただ前者については、私は違う見立てをしている」
「『受肉』ではなく?」
「基本的に『受肉』をしても魂は交ざり合わない。だが、君の中の『ねこ』は、君自身の魂と交ざっているように、私には見える」
「う、うーん……?」
正直、よく分からない話だった。けど、1000年生きる術師が言うことだ。間違ってはいないだろう。
「『呪霊化』とも呼ぶべき現象だろうね。君自身が『呪霊』になり始めている」
「え、ちょ、まじっすか」
「あぁ、まじだ」
「まじかぁ」
衝撃の事実である。私、呪霊になっちゃうのかぁ。
……伏黒くん、呪霊になった私でも愛し続けてくれるかなぁ? まぁ、まだ愛し合ってないけど。
「勿論、まだなり始めている段階だろうから、止める方法はいくつか考えられる」
「! なんですその方法って!」
「…………『結界』」
「うっす!」
食いつきすぎて集中が途切れた私に釘を刺す『天元』様。私が『結界』を張り直したのを確認してから、話を進めてくれる。
「君と『呪霊』との間に、不可侵の『縛り』をつけるんだ」
「『縛り』ですか?」
「そう。これ以上の侵食を防ぐための『縛り』……一番手っ取り早いのは、『呪霊』の術式を使わないことだが……」
「決めなきゃいけない局面なら、私は使いますよ」
「……そういうと思っていたよ。だから、もうひとつの方法を提案しよう。恐らく君の中にいる呪霊の術式は『視られる』ことでその術式を発動するタイプだ。だから、君から視られないようにするというメリットを与える代わりに、その術式効果を下げるんだ」
「?」
「まぁ、そのためのこの訓練だから、時が来たらその『縛り』についても実践を交えて教えよう」
「うっす」
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「……ふぅ」
ーーパシュンーー
「あれ? もう追いかけっこは終わり? まだ俺、蹴り殺してないのにぃ」
頭がクリアになってきたタイミングで、私は2匹の『猫』を解除した。意識がそちらへ奪われていたことにすら気づいていない、こちらを舐め腐った態度。あぁ、そうしているがいいさ。私が格下だと思っている今、ここが使い時だ。
さぁ、満を持していこうか。
「術式解放『いえねこ』」
『ねこはいますねこですよろしくおねがいします』
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ねこですよろしくおねがいします