術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る   作:藍沢カナリヤ

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第16話 術式解放『いえねこ』

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術式解放『いえねこ』。

羽々場ねこに刻まれた呪霊『ねこ』(仮)の術式で、羽々場ねこの生家にあった『井戸』にいた『ねこ』を呼び出す。この術式に殺傷力はない。しかし、『ねこ』を視た相手には、『ねこ』がいるということへの観念に囚われるようになる。つまりは、思考の強制的な統一化である。

 

 

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「術式解放『いえねこ』」

 

『ねこはいますねこですよろしくおねがいします』

 

 

私が呼び出した『ねこ』は、出現と同時に『言葉』を伝える。『縛り』の影響で、私には『ねこ』の姿は見えないし、その呪力も感じられない。その上、『ねこ』の声は、私の耳の中で反響して位置も分からない。けれど、

 

 

「は? なに、そいつぅ? 毛もないし、なんかきもいんだけど」

 

 

重面春太にはちゃんと見えているようだ。視線を辿れば、『ねこ』の位置は大体分かる。

 

 

『ねこです』

 

「しかも、喋るとか一体ねこです…………あ、あれ?」

 

 

始まったね、思考の強制統一が。

 

 

「は、なにこれねこ、ねこはいますねこ、です」

 

『ねこはいますよろしくおねがいします』

 

「ねこねこは、いるねこはいます……ねこです」

 

『ねこはいますねこはいます』

 

 

時間経過によって、『ねこ』の術式効果は重面の思考を支配していく。その間、私は『ほのぼのにゃんにゃん』を使えないし、ほとんどの行動ができなくなるけれど、それでもこの術式は強力だ。だって、もう重面はーー

 

 

「ねこはいますねこですよろしくおねがいします」

 

 

ーー支配されている。『いえねこ』の術式を受けた人間は『ねこ』のことに頭を支配される。術師であれば、脳のリソースもそちらに割かれるから、術式を封じることすら可能。行動もだ。だから、この術式が通用すれば、相手は無抵抗になる。勿論、それなりの条件はあるけれど。

 

 

「…………術式解除」

 

 

ゆっくりと呪力を絞り、『結界』を解き、『ねこ』を消滅させる。私には見えていないから分からないが、『天元』様曰く、ちゃんと消えているとのこと。

 

 

「ねこですねこはいますねこです」

 

「ちゃんと、残ってるな……」

 

 

術式効果は『いえねこ』を解除した後でもしばらくの間残るらしい。実戦で使うのは初めてだったから、それが分かっただけでもよしとするか。さて。

 

 

ーーぐっーー

 

ーードゴッーー

 

「…………」

 

ーーぐっーー

 

ーードゴッーー

ーーゴッ、ガンッ、ドゴッーー

ーーバギィッ、ゴッ、ドゴッーー

ーーガンッ、ドゴッ、ガンッーー

 

「…………」

 

 

思考の停止した重面を蹴り倒した後、馬乗りになる。それから、ただ無心で拳を振り下ろす。一撃、ニ撃目は荒くなっていった息が、回数を重ねるごとに小さくか細くなっていく。もう少しかな?

……うん、重面はもう白目を向いていて、ストックした『奇跡』の証である目の下のマークも消えている。呪力を込めた拳をもう一発叩き込んで……よし。

 

 

ーーぐっーー

 

 

ーーがしっーー

 

 

振り下ろした拳が奴の顔面に直撃する前に、止められる。そんな野暮なことをするのは誰かと振り返れば、

 

 

「やりすぎだよ、羽々場くん」

 

「……冥さん」

 

 

冥さんがいた。ということは、

 

 

「特級の方は?」

 

「終わったよ。虎杖くんと東堂くんが撃退した。それにその呪霊と組んでいた呪詛師も五条くんが捕縛した」

 

「……じゃあ、こいつは殺してもいいですよね」

 

「いいや、捕縛して情報を聞き出す。情報は金に直結する。情報を聞き出せる相手は多い方がいいからね」

 

「………………」

 

 

まぁ、いい。こいつは『渋谷事変』で、伏黒くんを殺しかける。それが間接的に伏黒くんの心の死に繋がるから、この男はここで殺してしまいたかったけれど。同じく高専に捕まっていた組屋鞣造は『渋谷事変』でも表に出てこなかったし、高専に拘束させてもいいか。

 

 

「分かりました」

 

「聞き分けがよくてなにより」

 

 

馬乗りになっていた状態から私は立ち上がる。

 

 

「随分と派手にやったものだけれど、この呪詛師に恨みでもあったのかな」

 

「…………いいえ、別に」

 

 

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姉妹校交流戦の合間に強襲してきた特級呪霊『花御』。

それに着いてきた2名の呪詛師・組屋鞣造と重面春太を高専内に拘束した。

 

……やっと、やっとだ。伏黒くんを救うためのターニングポイントの1つを達成することができたんだ。

ともかく、これで重面春太が『渋谷事変』で伏黒くんを刺すことはなくなった。とすれば、『宿儺』に伏黒くんの『切り札』を見せることもなく、その『切り札』と『宿儺』の戦闘もなくなったはずだ。

勿論、まだこれは運命を変える一因でしかない。だから、安心するのはまだまだ早いけれど、それでも……。

 

 

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「野球の時間だぁぁぁぁ!!!」

 

 

高専のグラウンドに響き渡る声。東京校・京都校の全生徒(歌姫先生も含む)が野球のユニフォームを着て、ポジションについていた。私も今回は参加する。ポジションは勿論、伏黒くんとお揃いの外野である。

 

 

「伏黒きゅぅぅん、私ぃ野球のこと分かんないから、教えてほしいなぁ♡」

 

「まず俺から離れろ」

 

「はーい♡」

 

 

渋々離れて、グラブを構える。

さて、今回私がやることは野球知識がないと言いつつ、大活躍をかまして伏黒くんから一目置かれること! 野球知識がないと言ったな、あれは嘘だ。私はWBCをちゃんと見たからな!

 

 

「よっしゃー! ホームランだぁぁ!!」

 

「いや、今は守備だ」

 

「ん? ホームランってのがいいんでしょ?」

 

「…………はぁ」

 

「?」

 

 

私の言動にため息を吐く伏黒くん。やっとこの日常が帰ってきた感じがして、思わず頬が緩む。その後、『玉犬』と『猫』がボールの取り合いをしたり、東堂葵にボールが直撃したりと色んなハプニングがありながらも試合は進み、

 

 

ーーカキィィィンッーー

 

 

虎杖くんのサヨナラホームランで、今年度の呪術高専姉妹校交流戦は幕を閉じたのだった。

 

 

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短めですが、交流戦編終了です。
次回から番外編を挟みつつ、話は『起首雷同』編、『渋谷事変』編へと進んでいきます。

番外編挟んでもよいでしょうか?

  • よい。日常回もあり。
  • よくない。本編を頼む。
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