術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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術式解放『いえねこ』。
羽々場ねこに刻まれた呪霊『ねこ』(仮)の術式で、羽々場ねこの生家にあった『井戸』にいた『ねこ』を呼び出す。この術式に殺傷力はない。しかし、『ねこ』を視た相手には、『ねこ』がいるということへの観念に囚われるようになる。つまりは、思考の強制的な統一化である。
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「術式解放『いえねこ』」
『ねこはいますねこですよろしくおねがいします』
私が呼び出した『ねこ』は、出現と同時に『言葉』を伝える。『縛り』の影響で、私には『ねこ』の姿は見えないし、その呪力も感じられない。その上、『ねこ』の声は、私の耳の中で反響して位置も分からない。けれど、
「は? なに、そいつぅ? 毛もないし、なんかきもいんだけど」
重面春太にはちゃんと見えているようだ。視線を辿れば、『ねこ』の位置は大体分かる。
『ねこです』
「しかも、喋るとか一体ねこです…………あ、あれ?」
始まったね、思考の強制統一が。
「は、なにこれねこ、ねこはいますねこ、です」
『ねこはいますよろしくおねがいします』
「ねこねこは、いるねこはいます……ねこです」
『ねこはいますねこはいます』
時間経過によって、『ねこ』の術式効果は重面の思考を支配していく。その間、私は『ほのぼのにゃんにゃん』を使えないし、ほとんどの行動ができなくなるけれど、それでもこの術式は強力だ。だって、もう重面はーー
「ねこはいますねこですよろしくおねがいします」
ーー支配されている。『いえねこ』の術式を受けた人間は『ねこ』のことに頭を支配される。術師であれば、脳のリソースもそちらに割かれるから、術式を封じることすら可能。行動もだ。だから、この術式が通用すれば、相手は無抵抗になる。勿論、それなりの条件はあるけれど。
「…………術式解除」
ゆっくりと呪力を絞り、『結界』を解き、『ねこ』を消滅させる。私には見えていないから分からないが、『天元』様曰く、ちゃんと消えているとのこと。
「ねこですねこはいますねこです」
「ちゃんと、残ってるな……」
術式効果は『いえねこ』を解除した後でもしばらくの間残るらしい。実戦で使うのは初めてだったから、それが分かっただけでもよしとするか。さて。
ーーぐっーー
ーードゴッーー
「…………」
ーーぐっーー
ーードゴッーー
ーーゴッ、ガンッ、ドゴッーー
ーーバギィッ、ゴッ、ドゴッーー
ーーガンッ、ドゴッ、ガンッーー
「…………」
思考の停止した重面を蹴り倒した後、馬乗りになる。それから、ただ無心で拳を振り下ろす。一撃、ニ撃目は荒くなっていった息が、回数を重ねるごとに小さくか細くなっていく。もう少しかな?
……うん、重面はもう白目を向いていて、ストックした『奇跡』の証である目の下のマークも消えている。呪力を込めた拳をもう一発叩き込んで……よし。
ーーぐっーー
ーーがしっーー
振り下ろした拳が奴の顔面に直撃する前に、止められる。そんな野暮なことをするのは誰かと振り返れば、
「やりすぎだよ、羽々場くん」
「……冥さん」
冥さんがいた。ということは、
「特級の方は?」
「終わったよ。虎杖くんと東堂くんが撃退した。それにその呪霊と組んでいた呪詛師も五条くんが捕縛した」
「……じゃあ、こいつは殺してもいいですよね」
「いいや、捕縛して情報を聞き出す。情報は金に直結する。情報を聞き出せる相手は多い方がいいからね」
「………………」
まぁ、いい。こいつは『渋谷事変』で、伏黒くんを殺しかける。それが間接的に伏黒くんの心の死に繋がるから、この男はここで殺してしまいたかったけれど。同じく高専に捕まっていた組屋鞣造は『渋谷事変』でも表に出てこなかったし、高専に拘束させてもいいか。
「分かりました」
「聞き分けがよくてなにより」
馬乗りになっていた状態から私は立ち上がる。
「随分と派手にやったものだけれど、この呪詛師に恨みでもあったのかな」
「…………いいえ、別に」
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姉妹校交流戦の合間に強襲してきた特級呪霊『花御』。
それに着いてきた2名の呪詛師・組屋鞣造と重面春太を高専内に拘束した。
……やっと、やっとだ。伏黒くんを救うためのターニングポイントの1つを達成することができたんだ。
ともかく、これで重面春太が『渋谷事変』で伏黒くんを刺すことはなくなった。とすれば、『宿儺』に伏黒くんの『切り札』を見せることもなく、その『切り札』と『宿儺』の戦闘もなくなったはずだ。
勿論、まだこれは運命を変える一因でしかない。だから、安心するのはまだまだ早いけれど、それでも……。
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「野球の時間だぁぁぁぁ!!!」
高専のグラウンドに響き渡る声。東京校・京都校の全生徒(歌姫先生も含む)が野球のユニフォームを着て、ポジションについていた。私も今回は参加する。ポジションは勿論、伏黒くんとお揃いの外野である。
「伏黒きゅぅぅん、私ぃ野球のこと分かんないから、教えてほしいなぁ♡」
「まず俺から離れろ」
「はーい♡」
渋々離れて、グラブを構える。
さて、今回私がやることは野球知識がないと言いつつ、大活躍をかまして伏黒くんから一目置かれること! 野球知識がないと言ったな、あれは嘘だ。私はWBCをちゃんと見たからな!
「よっしゃー! ホームランだぁぁ!!」
「いや、今は守備だ」
「ん? ホームランってのがいいんでしょ?」
「…………はぁ」
「?」
私の言動にため息を吐く伏黒くん。やっとこの日常が帰ってきた感じがして、思わず頬が緩む。その後、『玉犬』と『猫』がボールの取り合いをしたり、東堂葵にボールが直撃したりと色んなハプニングがありながらも試合は進み、
ーーカキィィィンッーー
虎杖くんのサヨナラホームランで、今年度の呪術高専姉妹校交流戦は幕を閉じたのだった。
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短めですが、交流戦編終了です。
次回から番外編を挟みつつ、話は『起首雷同』編、『渋谷事変』編へと進んでいきます。
番外編挟んでもよいでしょうか?
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よい。日常回もあり。
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よくない。本編を頼む。