術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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『起首雷同』編。
埼玉県にある鯉ノ口峡谷、八十八橋に根付いてしまった呪霊による一般人3人の呪殺を発端にして始まった章である。原作『呪術廻戦』において、この話は非常に短い章だが、かなり重要な話であると言える。『呪胎九相図』の受肉。野薔薇ちゃんの『黒閃』。そして、伏黒くんの『領域展開』と今後のための伏線と味方陣営の強化がここに詰まっているのだ。
なによりーー
「尖ってる伏黒くんが見れるじゃんっ!!」
「うおっ!?」
「び、びっくりしたぁ」
私が突然声を張り上げたことに、虎杖くん&野薔薇ちゃんコンビの体が跳ねる。あー、びっくりさせちゃったねぇ。
「伏黒、羽々場なんか言ってるけど」
「放っとけ、いつものことだろ」
「それはそうね」
「(ToT)」
軽くするされて、ねこ悲しい。
ま、そんなこんなでやってきたのは、さいたま市立浦見東中学校。何を隠そう伏黒くんの母校である。ちなみに、呪殺された被害者3人の共通点であるこの中学校にて、1年生ズ4人&補助監督の新田ちゃんで情報収集するのが目的だ。
早速中学校に入ると、渡り廊下に2人の少年がいた。それを見て、野薔薇ちゃんが一言。
「おっ! 分かりやすいのがいるわね。ぶん殴って更生させましょ」
「なんで!?」
流石の喧嘩っぱやさである。だが、その必要はない。
「お、お疲れ様です!!」
「お、お疲れ様です!!」
少年たちはこちらを見るなり、お辞儀をした。見事な直角お辞儀である。それを受け、虎杖くん&野薔薇ちゃんは自分のオーラに感化されたものだと思い、得意気にしているが……。
「卒業ぶりですね、伏黒さん!」
「…………」
「…………」
「俺、中学、ココ」
早く言えとぎゃーぎゃー言われる伏黒くん。バツの悪そうな顔をして、顔を反らしているのがとても可愛くていいと思います。その反応を不審に思った野薔薇ちゃんが少年たちに、何をされたか訊ねると、彼らは答える。
「俺ら、っていうか、この辺の不良・半グレ・その他諸々、伏黒さんにボコられてますから」
「…………」
「…………」
「……ボコッ……た」
カタコトな伏黒くんもイイネ! かわいいなぁ、かわいいなぁ♡
そんな茶番をしていると、何をしているんだと校務員さんが駆け寄ってくる。新田ちゃんが説明をして事なきを得た。伏黒くんも顔見知りの校務員、武田さんから例の被害者3人について話を聞き、共通点『八十八橋にてバンジーをしたことがある』ことが判明して。そして、学校を去る直前、
「伏黒くん、津美紀くんは元気か?」
「…………はい」
武田さんのその質問で、伏黒くんの表情が曇るのを私は見逃さなかった。
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一度八十八橋に行き、呪霊が出ないのを確認した後、私たちはコンビニに立ち寄っていた。状況を整理していると、例の少年の1人がお姉ちゃんを連れてやって来た。そこで知る真実ーー伏黒くんの義姉(私にとっても未来の姉)である津美紀さんも八十八橋に行っていたこと。それを聞いて、伏黒くんの表情は変わる。その後、伏黒くんは少し外すと言い、私たちから距離を取る。
「…………伏黒、なんか隠してるだろ」
「そうね。あのムッツリにはここで話すのは難しいでしょ」
「そんで、羽々場はなんか知ってる?」
そう振ってくる虎杖くん。勿論、知っている。一瞬、話したものかどうか考える。でも、まぁ、この後分かることだしな。そう結論付けた私は、2人に伏黒くんの姉が『呪い』によって、寝たきりになっていることを話した。だから、八十八橋の呪霊の特性から、今すぐ祓った方がいいことを伝えた。さらに、それを祓える可能性のある術師が今、高専にはいないことも。
「なるほど。そういうわけなら俺達の出番だな!」
「それを伏黒くんは望まないよ」
「えっ!? なんで!」
「1人で背負いこむ奴だってこと。でしょ、ねこ」
「うん、そういうこと」
協力すると提案しても断られて終わりだろう。だから、私は提案をする、までもなく。
「んじゃ、伏黒を尾行するか! それで八十八橋直前に声かければいいっしょ!」
私も野薔薇ちゃんも、彼の言葉に頷いたのだった。
ーーーー夜・八十八橋下ーーーー
「ふーっ」
「!?」
ーーぶんっーー
「おっと!」
考え込む伏黒きゅんの耳元に息を吹きかける。反射的に振るってきた拳を軽く避ける。
「羽々場っ!?」
「だけじゃないよ、伏黒くん。他の人も言いたいことがあるって」
「自分の話をしなさ過ぎ」
「だな」
「っ、お前らまで」
心底驚き、さらに呆れている様子の伏黒くん。私達の尾行に気付かないってことはかなりテンパっているのだろうと言う野薔薇ちゃんに、虎杖くんも頷き、続ける。
「別に何でも話してくれとは言わねぇけどさ……せめて頼れよ、友達だろ」
「…………」
「うんうん、そして、恋人でしょ」
「それは違う」
その後、伏黒くんは津美紀さんのことについて話してくれた。だから、すぐに祓いたいとも。
「でも任務の危険度が上がったのはーー」
「はいはい。もう分かったわよ」
「はじめっからそう言えよ」
「…………」
いい友達をもったね、伏黒きゅん。後方彼女面をしながら腕組みをする私にも、伏黒くんは言ってくる。
「羽々場も無理せず帰ってもーー」
「却下。私を舐めないでほしいね」
「死ぬなよ」
「もち!」
彼の言葉に頷いて、私達は一歩踏み出した。同時に、『生得領域』が展開される。そこら辺にふじつぼが張り付いている。その中の1つから呪霊が顔を出していて、こちらを見てニヤリとした、気がする。
「出たな!」
「祓い甲斐がありそうね」
ーードプンッーー
『あ"? なんだぁ、先客かぁ?』
突如として、私達の背後から『そいつ』は現れた。
『血塗』……交流戦で高専から盗まれた特級呪物『呪胎九相図』の受肉体だ。その目的も、正体も知っている。けれど、残念ながら、それを簡単に口に出すわけにはいかず。
「伏黒、コイツ別件だよな」
「……あぁ」
「じゃあ、オマエらはそっち集中しろ……コイツは俺が祓う」
虎杖くんの発言に私達は頷き、『八十八橋の呪霊』と対峙する。原作と同じ流れで進んでいく。それから少しして、野薔薇ちゃんが『領域』外からもう一体の受肉体『壊相』に引きずり出され、それを追うように『血塗』と虎杖くんも出ていった。そうして『領域』内には……。
「ふたりきり、だね♡」
「状況考えろ、馬鹿」
私の言葉に、いつになくシリアスに返してくる伏黒くん。そんな彼に、私は笑いかけてあげる。
「……大丈夫。2人は強いからね。それより問題はここからだよ」
「は? こっちはたった今、終わっただろ」
ーーズリュッーー
ーードチャッーー
私達の目の前で『それ』は産み落とされた。『それ』はいつか見た姿形で、けれど、以前の『それ』とは呪力の質も量も段違いだった。
「少年院のっ!?」
「うん。でも、感じてるでしょ? あいつはそれよりも数段ーー」
ーーギィィィィッーー
ーーバツッーー
「っ、強いッ」
そうだ、相手は確実に『特級』相当の呪霊。強くて当然、格上も格上だ。2人揃ってどうにか対抗できるかどうかの相手。今だって、
『イヒヒヒッ』
ーーバシュッーー
ーーバキィッーー
「っ」
「重、すぎっしょ」
超高速で移動し、攻撃してくる呪霊。更に追撃してくる呪霊の攻撃を『玉犬』で躱し、『鵺』を呼び出した伏黒くんだったけどーー
ーードゴッーー
彼は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまった。
「伏黒くん……っ」
分かっていたことだ。けれど、目の前で推しが傷つけられるのは……。
ーーぎりっーー
我慢ならない。こちらへ向かってくる呪霊を睨み付けながら、私は呪力を……いやっ、だめだ。ここは耐えなきゃならない。ここで私が加勢し、協力しながら戦うのは簡単だ。恐らく『いえねこ』も有効だろうし。でも、それじゃあ伏黒くんは……。
『ニィィィッ』
「っ」
一瞬の隙に、呪霊は私の目の前にいて、気味の悪い笑みを浮かべていた。間に合わないっ!? 思わず目をつぶってしまい、
ーーバギッーー
攻撃を覚悟した。でも、痛みはない。恐る恐る目を開けると、目の前にいたのは『玉犬』。
「っ、伏黒くんっ!」
「……だい、じょうぶか……羽々場」
「っ」
意識を取り戻した伏黒くんが術式で私を守ってくれたのだ。王子様のようなムーヴに感激、したいところだけど……うん。そうだね。
「…………すぅぅぅ、ふぅぅぅ」
1つ深呼吸をして、私は告げる。
「伏黒くん、いつか私は言ったよね。君には『領域』を使える実力がある。でも、無意識の内にそれに蓋をしてしまっている。まぁ、『魔虚羅』があるから、そりゃそうなるよ」
「………………」
「きっと、今の君は思い出してるんじゃない? 五条悟に言われたことを。『死んで勝つ』と『死んでも勝つ』は違う。本気でやれよ。もっと欲張れ……私が前に言ったこと、あの『五条悟』も言ったでしょ?」
「っ、本当にお前は、何者なんだよ……」
「だから言ってるじゃん。君のことが好きな女子高生だってさ」
答えになってねぇよ。伏黒くんはそう言って少し笑った。そして、覚悟を決めたギラついた表情をして。
……ああ、そう。その表情ーー
「しゅきぃぃぃ♡♡」
「やってやるよ!!」
「領域展開『嵌合暗翳庭』」
彼は無事『領域』を習得した。翳の庭から際限なく湧き出てくる式神は、特級を翻弄していく。すべてが翳そのもの。攻撃が通じないと理解した特級は、伏黒くんを攻撃するもそれすら翳。私のことを狙っても、それも翳に成り代わっていた。
やがて、痺れを切らした特級が周りすべてを呪力で吹き飛ばしてて、
ーードスッーー
特級の背後に音もなく回り込んだ『玉犬』が、その肉体を貫いた。そして、特級の『生得領域』が消失した。
「…………疲れた」
「お疲れ様、伏黒くん」
倒れこむ彼を抱き止める。
「羽々場……俺、は…………」
「うん、大丈夫。分かってるから」
今の伏黒くんは薄れゆく意識の中で、色んなことを考えてるんだろう。特級が取り込んだ『宿儺』の指のこと。津美紀さんのこと。
……うん、分かってる。大丈夫だよ。君の気持ちは分かってるから。だから、
「今はおやすみ」
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結論から言おう。
『起首雷同』編において、私はなにもしなかった。
私が何かをしなくても物語は進むからだ。むしろ私が何か手助けすることで、伏黒くんたちが成長しなくなる。手出しをしなかったことで、すべて恙無く進んでいる。
伏黒くんの『領域』。
野薔薇ちゃんの『黒閃』。
そして、虎杖くんの『九相図』殺し。
みんな、原作通りの強化は果たした。
だから、私も計画を1つ進めよう。
ここから『渋谷事変』が起こるまでの間に、私は伏黒津美紀の中にいる平安の呪術師・『万』を抹消する。
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次回は本当に番外編(コラボ)を挟みます。
よろしくおねがいします。