術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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私、
元26歳の独身女。この『呪術廻戦』の世界に転生して2年が経ち、今は15歳の女子中学生……いや、今日から東京都立呪術高等専門学校の生徒だ!
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「不合格だ」
「は?」
歳上の人間には敬意を払う私も、思わずそんな言葉が出てしまった。私に高専不合格を告げたのは、この呪術高専東京校の学長・夜蛾正道その人である。
「ち、ちょっと待ってください、夜蛾学長! 私、なんで不合格なんですか!? 伏黒くんはすぐ合格になったじゃないですか!?」
私の横にいるいつも通りのクールな表情の彼のことを例に挙げ、抗議する。勿論、伏黒くんの術式『十種影法術』に比べたら、私の『ほのぼのにゃんにゃん』が弱いのは百も承知。けれど、『呪術廻戦』の主人公がそうであったように、術式で合否を決めないことを私は知っている。だからこその抗議だった。
「ね! 伏黒くんも学長に言ってよ!」
「…………はぁぁ」
なぜか伏黒きゅんはため息を吐き、目を伏せる。
え、なに? もしかして私と目を合わせるのが恥ずかしいのかなぁぁ! うぅぅぅん、可愛いぃぃぃ♡
「学長」
「なんだ」
「彼女は思考はアレですが、実力はあります。術式は決して戦闘向きではない。その分のフィジカルを冥冥さんに鍛えられてます」
そう、彼の言う通り。私はこの2年間、冥冥さんを師として、修行を重ねた。冥冥さんの『黒鳥操術』も烏を操るという弱いものである。その点で私の術式も似たようなものだったから、彼女を師とするのは我ながらいい考えだった。
術式が使い物にならない分、呪力操作と体術で補う。それが、私がこの世界で生き残るために考えた方針だった。流石に、彼女のように自分の術式と向き合う時間は2年間では足りなかったので、彼女の域には全く達していないが。
伏黒の言い分は尤もだが、と学長はさらに口を開いた。
「そうじゃない。精神の話だ」
精神論だぁ? そんなもんドブに捨ててしまえ……と言いたいところだが、よくよく考えれば、どこぞの誰か曰くこの学長は脳筋の割にそういうところに頭が回るという。
「もう一度聞く。羽々場ねこ、お前はなぜ呪術高専に通う」
学長がサングラス越しに再び訊ねてくる。だから、私は宣言する。その動機に恥ずべき点はない。堂々と胸をはって答えた。
「伏黒きゅんの側にいたいからです!!」
「…………」
「…………」
声を大にして言う私と黙る男達。頭を抱えてる伏黒きゅんも可愛いねぇ。
「認められないな」
「なぜですか! ま、まさか私と伏黒くんの仲を引き裂くおつもりですか!? 出るとこ出ますよ!」
「どこに出るんだよ……」
「え、役所?」
「羽々場、本当にお前は……」
「…………羽々場」
またも頭を抱える伏黒くんを観察していると、それを遮るように学長は再び問うてくる。
「呪術師は常に死と隣合わせの場所にいる。もしお前が呪術師として死ぬとき、お前は伏黒にその原因を押し付けるのか?」
「…………」
……なるほど。これが主人公の彼の言う「やなこというなぁ」か。確かに嫌な質問ではある。けれど、私はハッキリと答えられる。
「NOです。私をそんじょそこらの伏黒くん推しと一緒にしてもらっては困ります……推しのために死ぬのならば本望!!」
「…………いや、そういうことではない。呪術師にはーー」
「後悔のない死などない、ですよね」
「…………」
分かっている……つもりだ。沢山の呪術師の死を見てきた。見て、その度に一喜一憂してきた。勿論、フィクションとしてだけれど。それでも私は、推しが心を殺されるのを、黙って見ていられるほど大人ではない。
あの時の絶望は味わいたくない。
「いいんじゃないですか~」
ふと学長室に声が響いた。軽薄そうな男の声。その場にいた全員が声の主の方へと視線を向ける。そこにいたのは、白髪長身の目隠し男。
「悟」
「五条先生」
五条悟。
この世界に4人しかいない特級術師の1人で『最強』の男。
「や! で、その子が恵の同級生になる女の子?」
「な、なんですかぁ……」
「ふぅん……面白い術式だ」
整った顔、色素の薄い髪と目立つ蒼色の瞳。そして、『最強』に相応しい実力。流石は数々の女オタク・通称『五条の女』を量産してきた男だ。これは確かに至近距離で見ると、その破壊力が理解できる。この男の顔面力は、まぁ、そりゃあ強い。最強である。
「すみません。それ以上近づかないでもらっていいですか」
「つれないなぁ」
「歳上、好みじゃないので」
前世でも昔から歳上の男には辛酸を舐めさせられてきた。いくら顔面偏差値の激高男とはいえ、歳上の男は近づくだけでも気分が悪くなるってもんよ。
「悟、入学試験には口を挟まないという決まりだろう」
「あぁ。それでも彼女を逃すのは惜しい。それに、彼女たぶんいくら不合格と言われようと諦めないでしょ。彼女、恵から聞いてる限りだと、恵のストーカー一歩手前みたいだし」
「…………」
「それに若人から青春を取り上げる年寄りにはお互いなりたくないでしょ」
そんな五条悟の言葉を受け、学長は眉間に手を当て考え込む。しばらくして、彼は口を開いた。
「2ヶ月だ。2ヶ月後に、もう一度この質問を投げる。それまでに答えを見つけておけ」
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かくして、私は呪術高専に入学(仮)することができたのだった。
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「無事、入学はできたようだね」
「はい! 冥さんのおかげです」
都内のマレーシア料理店にて、私は冥さんに事の顛末を報告していた。ここに来るのも慣れたものだ。冥さんと並んで、肉骨茶をすする。
「入学してもらわなきゃ困るよ。ちゃんと覚えているね?」
「分かってますよ。私の呪術師としての収入の1割を冥さんにお渡しする。その約束で稽古をつけてもらったんですから」
私の答えに満足したのか、冥さんは軽く微笑み、店員に追加のスープを頼んでいた。私も倣って注文をする。正直、苦しいは苦しいが、体術の基礎となる肉体を作るためだ。食べなくては!
「うっぷ……」
「無理はしなくていい。あと数年もすれば肉体はできるさ。問題は術式の方だ」
「……それ、なんですけど」
学長との面談の際、五条悟が私を逃すのは惜しいと言っていたことを伝えた。あの五条悟がそう言っていたのだ。恐らく私の術式にはなにかがある。
私の話を聞いたあと、冥さんはククッと軽く笑い、続ける。
「彼の『六眼』は特殊だからね。私には分からない君の術式の真価にも気づいたんだろう」
「じゃあ、五条悟に聞くのが手っ取り早いですかね」
「あぁ。君の呪術師としての価値を上げるためにもそれがいい」
好都合だ。1年生の担任はあの五条悟になるはずだ。歳上男性と関わるのは拒絶反応が出るほどに嫌だが、この世界で生き残るためだ。まずは五条悟から私の術式について聞き出してやろう。そう決意した。
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