術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
第20話 渋谷事変ー壱ー
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2018年10月31日 19:00。
東急百貨店 東急東横店を中心に半径およそ400mの『帳』が降ろされる。
呪術総監部は後に『渋谷事変』と名付けられるこの事件を、五条悟単独で平定することを決定した。
ーーーー青山霊園ーーーー
「五条先生1人にやらせるぅ!?」
冥さんと憂憂、私。そして、虎杖くんの冥冥班は『帳』の近辺、青山霊園にて待機していた。五条悟のバックアップが他の術師の役目だが、どうやら虎杖くんはいまいち説明を飲み込めていなかったよう。
「理屈は分かるけどさ! 俺達にもできることがあるでしょ! バックアップとか!」
「うん。だから、それをしに今から渋谷に行くんだよ」
「あっ、そーなの!?」
と原作通りのやり取りをする2人。そこに憂憂も口を挟む。まぁ、こっちはいつも通りのシスコンムーヴでキモいことこの上ないけどね。
「……なにか文句でも、ねこさん」
「べっつにぃぃ? 相変わらず姉離れのできないお子ちゃまだと思ってねぇぇ」
「はぁぁぁ???」
「ち、ちょっと、言い争ってる場合じゃなくない!? 冥冥さん、これ、止めなくていいんすか?」
「いつものことだよ」
私と憂憂のメンチ切り合いを初めて見る虎杖くんがそれを止めにかかる。勿論、冥さんからしたら見慣れた光景なので、全スルーでスマホを弄っていた。恐らく株価でも見てるんだろう。
ーーヴゥゥゥーー
「!」
そこで冥さんのスマホが震えた。通話ボタンを押し、二三話す冥さん。話し終わるとすぐに私達にその内容を伝えてくれる。曰く、明治神宮前駅に、渋谷に降りたのと同種の『帳』が降りたという。
「私達はそちらに向かう。走るよ、ついておいで」
「押忍」
「了解」
ーーーー明治神宮前駅 2番出口側ーーーー
私たち4人が明治神宮前駅に着くと、そこには補助監督の女性が待機してくれていた。現状分かっている話をこちらへ共有してくれる。『帳』についての情報と、そして……。
「『帳』の間に改造された人間がいます」
それを聞いた瞬間に、虎杖くんの纏う雰囲気が変わる。それはそうだろう。それは彼の宿敵、特級呪霊『真人』がいるということなのだから。そのまま私達はメトロの入口へ。冥さんは視覚共有をして、駅構内の状況を把握した。
「大体分かった。虎杖くん、羽々場くん」
「うっす」
「はい」
「弱い改造人間を沢山殺すのと強い呪霊を1体祓うのどっちがいい?」
「!!」
君の場合は後者だよね。虎杖くんの反応を見て、冥さんはそう告げる。さらに、私にも訊ねてくる、どうするかと。冥さん、それは愚問だよ。
「グズグズしてたら地下4階の一般人が死にます。なら、私と冥さんで組んで、地下4階の改造人間を速攻で殺すのが理に叶っています」
「……そうだね」
そうして、虎杖くんは『帳』を降ろしている呪霊を祓いに、私と冥さん、憂憂は地下4階に直通してる7番出口から降りて、一般人の救出することに決めた。
「……虎杖くん」
「なんだ、羽々場」
「隠し球に気をつけて」
「ん? お、おう」
原作でも蝗GUY相手に圧倒していた虎杖くんだ。私が忠告しなくても大丈夫だろうけど、一応ね。
「さ、行きましょうか、冥さん」
「あぁ、期待してるよ」
ーーーー地下4階ーーーー
逃げ惑う一般人とそれを追いかけ回す改造人間。地下4階はまさに地獄絵図だった。
「反吐の出る光景だ」
「大丈夫かい、羽々場くん」
勿論、大丈夫だ。私は虎杖くんと違って、改造人間を殺すことに躊躇はない。殺せる。
「まぁ、君は注意を引いてくれればいい。あとは私がやるよ」
「……私、『猫』を出しながらでも戦えます。冥さん、変な気遣いはいりませんから」
「………………」
冥さんは静かに頷き、大斧を構えた。
「『ほのぼのにゃんにゃん』」
私も同時に術式を発動する。2匹の『猫』はそれぞれ改造人間の間を駆けていった。それに釣られて、改造人間の意識は一般人から『猫』にうつる。『白猫』は冥さんに向かって、『黒猫』は私に向かってくる。
ーーバギイッーー
「…………」
ーードゴッーー
「…………」
ーーブスッーー
「…………」
1匹、2匹、3匹……キッチリ殺していく。元々は人間だから、心臓や頭を潰せば、素手でも殺せるのが幸いだ。数えるのも面倒になってきた頃、やっと全部殺し終えた。
「…………ふぅ」
「お見事」
「ありがとうございます、冥さん」
「手際がよかったよ。この事件が無事終わったら一級に推薦してもいい、羽々場くん」
勿論、金次第だけれどね。そう付け足す冥さんに苦笑を返す私。
「姉様、ほとんどの一般人が無事のようです」
「そのようだね」
見れば、怯えたり血で汚れたりしている人はいたが、そこまで酷い怪我をしている者は少ないようだった。中には私と同じくらいの女子高生もいるみたい……って。
「っ」
「あ……」
露骨に目を反らされてしまう。
……まぁ、そうか。一般人から見れば、私達は殺されかけた人智を超えた化け物を簡単に殺した人間だ。恐怖を感じる人間もいるだろう。うん、それが普通の感覚だよね。
ーーバシュンッーー
「あっ」
「……姉様」
「あぁ、『帳』が上がったね。虎杖くんを待って、地下5階に向かおう」
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虎杖くんと合流後、私達は明治神宮前駅地下5階のホームに向かっていた。その間、冥さんが虎杖くんをもう実力では一級レベルだと誉めたり、謙遜した虎杖くんを憂憂が威嚇したりと原作通りのやり取りが続く。
「羽々場は? 大丈夫だった?」
「ん?」
不意に話がこちらへ向いた。
「…………うん、平気」
「……そっか」
思うところはまぁ、少しはある。だけど、今はそうも言ってられない。今は大丈夫だ。
そうこうしてる間に、ホームへ現着する私たち4人。
「遅かったかな」
「おい、そこの人! 大丈夫か? 他の人達はどうした?」
そこにいたのはうずくまる1人の男性。冥さんの言う通り、もう手遅れだってことを私は知っている。
「みんな……化物に……電車……に乗って……私は」
『満員だッカラいらない"って!!』
「アイツがいたんだ!! クソッ!!」
……知ってる光景だった。ここの人間は全員『真人』に変えられた。そして、渋谷駅に電車で送られてしまった。『真人』もそちらへ向かい、五条悟との戦いに加わる、と。
「五条先生が危ないッ、冥冥さん! 渋谷駅に向かおう!」
「ああ」
五条悟の危機を察知し、虎杖くんも冥さんと憂憂も線路へと飛び出した。それを私はーー
ーーガシッーー
「羽々場……?」
駆け出そうとした虎杖くんの腕を掴む。なにしてんだ、急がないとと虎杖くんは言ってくる。
「虎杖くん、私は伏黒くんのところに向かうよ」
そう告げる。
「な、今はふざけてる場合じゃ……!」
「……今から五条悟は封印される」
「は!?」
「羽々場くん……?」
「夏油傑のガワを被った偽者が『獄門彊』って呪物を使ってね。たぶんそれは止められない。特級3体相手にできるのも、五条悟くらいでしょ。彼でどうにもならなかったんだから、私が行ったところで無駄だ」
何を言っているのか分からない。そんな表情を私以外の全員がしている。そりゃそうだろう。現代最強の呪術師・五条悟が封印されるなど、そんな絵空事を信じるわけがない。
「信じなくてもいい。虎杖くんも冥さんも、とりあえずこのまま渋谷駅に向かってください。それは必要なことです。あ、始末しにくる呪詛師には気をつけてくださいね」
その行程は必要だ。スペアのメカ丸が虎杖くんと合流するには、彼が渋谷駅へ線路沿いに向かう必要があるのだ。だから、ここは私だけ地上に戻る。
「羽々場くん」
私の発言で固まっていた時間が、冥さんの一言で動き出す。彼女からは殺気を感じる。
「……君が内通者なのかな」
まぁ、そうもなるか。この状況、タイミングで、五条悟が封印されるだの、始末しに呪詛師が来るだの言い出すんだから。
「いいえ。私はただの伏黒くん推しの女子高生ですよ」
「…………」
「分かった、信じる」
沈黙する冥さん、そして、私の目を見て頷く虎杖くん。こういうとき、全面的に信じるって言える虎杖くんは……少し眩しいな。
「ありがとう、信じてくれて」
私はそれだけを応えて、踵を返し、走り出した。
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目指すは、伏黒くんのところと言いたいところだけど、一応、補助監督の人たちを確認しに行かなくてはならない。
原作では、重面春太が補助監督を殺害して回っていた。けれど、あいつは私が殺し……いや、高専で拘束されているはずだ。それでも高専側の連絡体系を断つために、奴らは手を打ってくるはず。だから、私はその目論見を潰してから、伏黒くんと合流すればいい。
「……頭を回せ」
ここからは、きっと原作とは違う展開だ。
羽々場ねこ、脳をフル回転させろ。
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