術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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「……ダイジョブですか、伊地知さん」
「は、はい。助かりました、羽々場さん」
読み通り、重面ではない呪詛師が伊地知さんを殺そうとしていたところに、間一髪間に合った私は、呪詛師を排除し、伊地知さんの窮地を救うことができた。
「…………うん、確かに変わってる」
確かな手応えがあった。重面春太を倒し、そして、今も向こうの思惑を1つ潰すことができた。連絡手段が確立されれば、高専側も動きやすくなる。これは大きなアドバンテージだ。
「伊地知さん、1つお願いがあるんですけど」
「はい?」
「『帳』の中に入ると電波が通じないんですよね?」
「はい、だから、私達補助監督と窓を総動員して連絡網を確立します。術師の皆さんが『帳』にいても、私たちを通せば連絡ができるように」
「……分かりました。なら、伊地知さん、この電話番号、登録しておいてください」
私はそう言って、紙切れを渡す。そこにあるのは、来栖華の電話番号だ。
「これは?」
「私の助っ人です。私から連絡があったら、もしくは補助監督を攻撃してくる輩がいたら、こいつに電話してください。こいつなら『術師を入れない帳』も無視して駆けつけられます」
「!」
「詳しくは聞かないでください。説明する時間も惜しいので」
「……分かりました」
「頼みます。あと少し……他の呪詛師が来ないことを確認したら、私は伏黒くんのところに向かいます。そこに『術師を入れない帳』を降ろしてる呪詛師がいると思うので」
すぐに彼の元へ駆けつけたい衝動を抑えて、少しの間、私はその場に留まった。
……うん、大丈夫そう。『裏梅』は来ないようだ。まぁ、来たとしても来栖がいれば、恐らく受肉体だろう『裏梅』にも多少は対抗できるはずだ。
「よし、行ってきます、伊地知さん」
「……お気をつけて」
伊地知さんのいる歩道橋から飛び降りた私は、呪力感知をしながら、伏黒くんの元にーー
「ナナミーーーーーン!!」
突如、渋谷一帯に響き渡る声。流石は虎杖くん、恐ろしいほどの肺活量だな。少し笑ってから、私は虎杖くん・伏黒くんと合流すべく、声の元へと向かった。
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ナナミンもとい七海さんが一級でしか通らないことを申請にし、『帳』から出た後。私と伏黒くん、虎杖くん、そして、猪野さんは次のプランを練る。七海さんに頼られたことで、猪野さんはいつになく張り切っているようで、話をドンドン進めてくれる。ここに関しては、私が口を挟むまでもない。
無事、話がまとまり、
「……羽々場、さっきの話だけどさ」
「虎杖くん、今は目の前のことに集中しよう。話は全部が終わったら、ね?」
「……あぁ」
虎杖くんの言葉を躱す。実際、すべてが終わったタイミングで話すのが一番だろうから。
「猪野先輩、ちょっといいですか?」
「ん? お、おう、なによ?」
先輩風の擬人化こと猪野さんに声をかけ、情報を共有することにする。
「虎杖くんからの情報にもありましたが、『術師を入れない帳』を守っている術師は恐らく3人います。それに対して、こっちは4人だから、2人ずつに分かれるのがいいと思うんですけど、どうですか?」
「いいんじゃないか」
「ありがとうございます。それで組分けですけど、経験の浅い虎杖くんと先輩である猪野さん。私と伏黒くんで組むのが安定かと」
「後輩にしてはいい案だな。それで構わないぜ」
「2人もそれでいい?」
「おう」
「……あぁ」
よし、上手くいっている。『帳』を守っているのは、あべこべ爺と降霊術ばばあとその孫。ならば、マッチアップはーー
ーーーー渋谷Cタワー上ーーーー
原作通り、伏黒くんの『鵺』を使っての奇襲。違うのは猪野さんの代わりに私がいること。作戦通りに虎杖くんはあべこべ爺をワイヤーでビル下へ引き摺りおろし、そのまま下へ。タネは伝えてあるから、虎杖くんと猪野さんなら余裕で倒せるだろう。
問題はこっちだ。
「ほっ、と!」
ビルの上に着地する。隣には『鵺』の影を伝って来た伏黒くんが呪具の刀を構え、立っている。初めての共同戦線。正直、アがってます! 刀もなんかウェディングナイフに見えてきた!!
「おい、羽々場」
「なに? ダーリン♡」
「……どっちを倒せばいい」
私の愛も完全にスルーする伏黒くん。もう、真面目なんだからぁ♡
仕方がないから私も真面目に答えるとする。
「後ろのばばあが交霊術の使い手。前にいる男はその依り代のはず」
「……なら、ばばあから叩けばいいな」
「……うん、でも、降霊術を使うまでは殺さないで。それと降霊した相手、かなり強いから気をつけて」
「は? なら、尚更降霊術を使う方を倒した方が……」
「考えがあるんだ」
「…………分かった」
2人並んで構える。それに対して向こうも迎撃体勢に入った。
「孫よ」
「うん、分かってるよ、婆ちゃん」
まずはこの孫の動きを止める。
「フッ!!」
「はぁっ!!」
一気に距離を詰め、2人で孫に攻撃を仕掛ける。伏黒くんは刀で脚へ。私は顔面へ拳を叩き込んだ。ダメージあり。でも、孫は怯む様子はない。
「もう一発!!」
ーードゴッーー
「っ」
今度は腹に命中。一瞬だけど、孫の動きが止まる。
「伏黒くん!」
ーーズバッーー
言うまでもなく、伏黒くんは孫の脚の腱を切断した。ナイスコンビネーションだ! これぞ夫婦!!
「おい、羽々場。これからどうする?」
「…………うん、たぶんそろそろーー」
ーーぞわっーー
「「!!」」
来た、この圧倒的なプレッシャー。降霊術が完成したな。
「おい! アレ、いいのか!?」
「……うん、想定内だよ」
「孫、もうええぞ」
「分かってるよ、婆ちゃん」
孫はばばあの言葉に頷き、懐から何かを取り出す。そして、それを飲み込んだ。
「来るよ、伏黒くん。ここからは制限時間いっぱいまで生き残ること、とにかく死なないことが勝利条件だから」
「あぁっ……羽々場も死ぬなよ」
「『禪院甚爾』」
私と伏黒くんの目の前で、その男は降霊した。
禪院甚爾。天与の暴君。
「どうじゃ? 孫」
「うん、いいよ、婆ちゃん。今までにない」
肉体の感覚を確認するように、ぐーぱーする孫。うん、まだ、まだだ。
「伏黒くん! 『脱兎』!」
「っ、『脱兎』っ」
ーーポポポポポポポーー
「『ほのぼのにゃんにゃん』!」
策はある。けど、今は逃げの一手だ。時間いっぱいまで、孫の攻撃に耐え続けるんだ。
「ニィッ」
ーーゴゴゴゴゴゴッーー
「なっ!? 『脱兎』が一瞬でっ」
一瞬だった。視界を覆っていた『脱兎』が約半分消し飛んでいた。
「『猫』!」
『脱兎』は本体の1匹が消えるまでは増え続ける。その時間を稼ぐため、私は『猫』に呪力を送る。意識の強制誘導。数秒でも視線を『猫』に向かわせられれば!
ーーバシュンッーー
「っ、また一瞬でっ!」
縮地にも似た動きで『白猫』に近づき、平手で叩き潰される。死にはしない。けれど、再発生までに数秒のインターバルがーー
ーーバシュンッーー
『白猫』の再発生までの時間で『黒猫』が破壊された。つまり、私の『ほのぼのにゃんにゃん』は一時使用不能になってしまったというわけだ。
「ヤバっ」
「羽々場! 下がれ!」
「うんっ」
それでも『脱兎』が増える時間を少しだけ稼げたようで、伏黒くんの指示に従い、群れの中に身を隠した。その間も増え続けている『脱兎』のお陰で、少しだけ会話できる余裕ができた。
「っ、なんだよ、あの化物……あれを降霊させるのが考えかっ!?」
「……う、うん。想定の数倍は化物だったけどね」
こうして隠れている間にも、『脱兎』が消されていく音が響いてる。
「どうする、『脱兎』が消されるのも時間の問題だ。『満象』で押し潰す……のも無駄か」
「うん」
ここで伏黒くんの呪力を無駄に消耗させたくはない。あと少し、あと少しなんだ。数分もすれば、肉体の主導権は孫から『禪院甚爾』に移るはず。その数分をどうやって…………いや、考えるまでもない。
「…………はぁ、仕方ないや」
「羽々場?」
「伏黒くん、『脱兎』の影に隠れてて。そんで絶対に私を見ないでね」
「は?」
「合図したら出てきてくれたらいいから」
「ち、ちょっと待て……!」
伏黒くんの制止を振り切り、私は『脱兎』の中から飛び出した。
「婆ちゃん、出てきたよ」
「殺せ、孫」
「うん」
まだ意識は孫のままだ。数分。数分だけでいい。
「すぅぅぅ……よしっ!」
深呼吸を1つして、私は呪力を解放した。
「術式解放『いえねこ』」
ーーーー『ねこですねこはいます』ーーーー
私の呼びかけに応じて現れる『いえねこ』。相変わらず気味の悪い姿と眼をしていた。
「孫」
「うん」
また式神を出したのだと思ったのだろう。ばばあの言葉を受け、孫はまた瞬間移動のような速度で『いえねこ』の側へ。そして、
ーーブンッーー
全力で拳を振り抜いた。私の体に感じる風圧で分かる。式神ならば一撃で破壊される威力だ。けど、
『ねこはいますねこですよろしくおねがいします』
「ん?」
『いえねこ』はそこにいた。外したと思ったのだろう。孫はさらに2発、3発と攻撃を加えていく。だが、『いえねこ』は依然として消えない。
「なんだよこれ……婆ちゃ……」
「孫よ、ですねこ……本体をいますねこです」
「は?」
「ねこですねこはいますねこですねこですよろしくおねがいします」
「婆ちゃん!? 婆ちゃんっ!!」
予想通り。禪院甚爾の肉体に『いえねこ』は効かない。呪術に対する完全耐性があるから。けど、降霊ばばあの方は違う。なまじ術式がそっちよりなのだ。むしろ『いえねこ』の影響をもろに受けるだろう。そして、孫はそれに狼狽えるはず。そこをーー
ーーザクッーー
「『舌抽』」
『舌抽』で貫けばいい。脳天に刺した『舌抽』に死傷能力はない。
この呪具は人間の魂を分離させる術式を有している。禪院甚爾の魂はここにはない。その代わり、孫の魂を分離させてやれば、天与の暴君の肉体による支配が始まるはずだ。
ーーぞわっーー
「っ」
私の目論見は当たり。次の瞬間、凄まじい悪寒が私の全身に走った。
『あ? テメェ、誰だ?』
その視線だけで殺せるような鋭いそれで確信する。彼ーー禪院甚爾が復活した。
『誰の頭にそれぶっ刺してんだッ』
「っ」
咄嗟に全呪力を腕に集め、ガードする。だが、これは無駄だ。これでは防げない。下手をしたらこの一撃で死ぬ。だから、
「恵ッ!! 助けてぇぇっ!!!」
『っ』
「羽々場っ!!」
伏黒くんへの合図。と同時に、禪院甚爾の動きが一瞬だけど止まる。そして、『脱兎』の後ろから突っ込んできた式神『鵺』。帯電した『鵺』が禪院甚爾の体にぶつかる。だが、それも一瞬。禪院甚爾は『鵺』の翼を握り、
「伏黒くん! 消して!」
「っ」
ーードプンッーー
破壊される前に『鵺』を解除できた。ついでに、少しだけ禪院甚爾から距離をとることに成功する。勿論、彼にとってそれはあってないに等しい距離だけど、今はそれでいい。
「おい、羽々場! これからどうするつもりだ」
「……フッ、見てて、伏黒くん。私の秘策を!!」
そう、私には秘策がある。
目の前に顕現した天与の暴君を止める唯一の秘策が!
「…………」
『?』
私は『舌抽』を手放し、両手をあげる。攻撃されないように、抵抗の意思がないことを示しながら、膝を折り、その場に正座した。そして、両手を揃え、頭を下げた。そう。土下座である。そして、私は言い放つ。
「伏黒甚爾さん! いえ、お義父さん!!」
「息子さんを……ここにいる恵くんを私にください!!!!」
「は?」
『は?』
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ふざけてると思うじゃん?
これ、本気なんだぜ?
殺伐としてきてるので、1年生それぞれとの日常パート入れていいですか?
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見たい
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本編を進めてくれ