術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る   作:藍沢カナリヤ

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第25話 渋谷事変ー陸ー

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「伏黒っ!?」

「なっ!?」

 

「………………ッ」

 

 

視界がぼやける。耳鳴りもしてきた。頭がぐらぐらする。あり得ない、あってはならない彼のその姿を見てしまったことで、私の脳が理解するのを拒んでいるのだ。立っていることすら……。

 

 

「ぐ……っ」

 

『アハァァ! これだ、これだよ! 俺こそが『呪い』だッッ!!!』

ーーブンッーー

 

「っ、ねこッ!」

「羽々場ッ!」

 

 

ーーーーーバヂバヂバヂバヂィィッーーーー

 

『『黒閃』!!』

 

 

 

ーープツンッーー

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「羽々場?」

 

「え、あっ……伏黒くん」

 

 

ねずみの耳を着けた伏黒くんがこちらへ顔を向けた。虎杖くんと野薔薇ちゃんの悪ふざけにも関わらず、ちゃーんと付き合って耳を着けてくれる彼も律儀な人である。その2人は既にどこかへ行ってしまったけど。

 

 

「どうした、上の空だったようだけど」

 

「え、えっと……」

 

「……今日はお前と虎杖の高専復帰祝いだ。無理してるなら」

 

「ううんっ、楽しい、楽しいよ!」

 

 

そう言う伏黒くんだって、交流戦での傷は完全に癒えた訳じゃないはず。それでも私のことを気遣ってくれるなんて……しゅき♡

 

 

「って、そうだ! 虎杖くんと野薔薇ちゃんは?」

 

「フリーパスだからってはしゃいで先に行った。虎杖も無傷じゃないだろうに……あいつの体力はどっから来てるんだ」

 

「ふふっ」

 

 

呆れたようにため息を吐く伏黒くん、そう言いつつも彼はどこか楽しそうで。だから、私もついそれがうつって、笑う。

 

 

「あっ、そうだ、伏黒きゅぅぅぅん」

 

「ん? なんだ?」

 

「あのさぁ……? 私の復帰祝いだって言うならさぁ……?」

 

「?」

 

 

徐に私は右手を彼に差し出した。

 

 

「手を繋いでくれてもいいんだよぉぉ♡♡」

 

「…………はぁ」

 

 

呆れの対象が今度は私に変わる。なんで俺の同級生には録な奴がいないんだと1人ごちる伏黒くん。うーん、可哀想にねぇ、大変だねぇ。

 

 

「お前がその筆頭だ」

 

「ハハハ、ナンノコトヤラ」

 

「……お前なぁ」

 

 

私の求愛と彼の拒否。この2年間続けてきたやり取り。

もちろん、彼には私へのそういう感情はないことは分かってる。脈はない。そもそも『そういう人』を作るつもりはないんだろう。今はきっと津美紀さんにかかった『呪い』を解くことが彼にとっての最優先で。

うん、私もこの気持ちをすぐに受け入れてもらえないのは承知の上だ。それでもいつか彼が振り返ってくれたらいいな……なんて。

 

 

「……悪いな、いくら言われても俺はそういうつもりはない」

 

「うん。ふふっ、それをちゃーんと言ってくれるんだから、伏黒くんは優しいね」

 

「…………うるさい」

 

「あーんっ、もうっ♡ 伏黒きゅんはかわいいなぁぁ♡」

 

「言って損した」

 

「ふふふっ、ははっ」

 

 

彼の不器用な、それでも誠意をもって私に接してくれてるのが伝わって、嬉しくなる。嬉しくなって思わず笑みが零れーー

 

 

「はは、は……っ」

 

「羽々場……?」

 

「あ、れっ……おかしいなぁ……?」

 

 

嬉しい。嬉しいはずなのに……。

 

 

「うっ……うぅぅ……」

 

「お、おい。なんで泣いてるんだよ」

 

「ごめんっ、ごめんね……っ」

 

 

涙が溢れて止まらない。泣いてる私を心配してくれる伏黒きゅんなんていうチョーレアな姿を見れるというのに、なぜか私は彼のことを見ることができなかった。見たら、もっと泣いてしまう気がして。

…………あぁ、分かってるよ。これは回想の皮を被った空想だ。

『もし伏黒きゅんが生きていたら』……そんな空想だ。だって、私は至近距離で見て感じ取ってしまったから。彼の『死』を。

だから、私の涙は止まらない。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「…………はっ!?」

 

 

急激に意識が覚醒し、飛び起きた。痛みはない。やられたのはあの肉体だけ、なんだろう。

 

 

「っ、羽々場! 起きましたか。気分はどうですか?」

 

「…………」

 

 

私に声をかけたのは、来栖華その人だった。気分、気分……ね。

 

 

「最悪だよ。彼が……伏黒くんが死んだ」

 

「!? 趣味の悪い冗談はっ」

 

「そんな冗談を言うように見える……?」

 

「っ」

 

 

こと伏黒くんに関して、私が性質の悪い冗談を言わないことを彼女は分かっている。なにより今の私はきっと酷い表情をしている。その表情で、来栖も察したんだろうな。

 

 

「羽々場、案内してください。彼の元へ」

 

 

下唇から血が出ている。そんな風にして必死に泣くのを耐え、来栖はそう言った。彼女の気持ちは痛いほど分かる。だから、

 

 

「……ダメだ」

 

 

私はそう答えた。

 

 

「っ、なにを言ってるんですっ。早く彼の元へ向かわなくちゃッ!」

 

「来栖が使えるのは『術式を消滅させる術式』。『反転術式』じゃない。そもそも『反転術式』を使えたとしても、もう彼はーー」

 

「ーーごちゃごちゃうるさいッ!!!」

 

 

私の胸倉を掴み、来栖は吠える。目は血走り、暗にこれ以上言うなら殺してやると、そう告げていた。

 

 

「早く恵のところに連れていけッ! 羽々場ねこッ!!」

 

「…………ダメだ」

 

「ッ」

 

 

ギリッと歯を食い縛る来栖。そして、

 

 

ーーバギィィッーー

 

 

ぶん殴られた。

 

 

「もう知りません。自分で勝手に探します、『天使』!」

 

『呪力が濃いところに向かう。そこに恐らくーー』

 

 

 

ーーぞわっーー

 

 

 

「『!?」』

 

 

渋谷駅の地下五階で突如として解放されたその邪悪な呪力で、恐らく来栖も『天使』も気づいてしまっただろう。

 

 

『この呪力はっ、『堕天』ッ!?』

 

「『天使』、今は……!」

 

『いや、微弱だが、彼の呪力もそこから感じる。伏黒恵の近くに『堕天』がいるはずだ。どちらにせよ、すぐにそこに向かわなくては!』

 

「う、うんっ」

 

 

 

「術式解放『いえねこ』」

 

 

 

私は今にも飛び立とうとする来栖に向けて、『いえねこ』を解き放った。彼女の視界に入る『いえねこ』。

 

 

「なっ!? 羽々場、なにをっ!?」

 

 

『いえねこ』の術式効果は彼女に伝えてある。味方としての情報共有のつもりだったんだけど、まさか術式の開示として使うことになるとは思わなかった。

 

 

「ごめん、来栖」

 

「ねこです羽々場。ねこはいますよろしくふざけないでしますねこです」

 

 

よかった。『邪去侮の梯子』を使われる前に『いえねこ』が侵食できた。

 

 

「大丈夫、危害を加えるつもりはないから。ただ、少しの間眠ってて……『宿儺』が伏黒くんの中に入るまで」

 

 

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『『契闊』』

 

『覚えているか? 面白いものが見れると……言ったろう、小僧』

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

2018年10月31日、23時25分。

渋谷駅地下5階にて、『両面宿儺』が伏黒恵に受肉した。その後、伏黒恵はその場から逃走。現在もその行方は分かっていない。

 

特級呪霊『真人』は、その場にいた虎杖悠仁、釘崎野薔薇、東堂葵、羽々場ねこにより祓除寸前まで追い込んだが、特級呪詛師『夏油傑』の『呪霊操術』により取り込まれ、その逃走を許した。

 

 

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『渋谷事変』閉門。

殺伐としてきてるので、1年生それぞれとの日常パート入れていいですか?

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