術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
ーーーーーーーー
ショタ恵、眼福すぎて、血反吐吐く。
季語はない。強いて言うなら、ショタ恵をただ目で愛でる私という存在が春の季語である。
「……津美紀」
「え、な、なにぃ?」
「見られてると食べにくい」
「あ、あーっ! ご、ごめんなさいぃぃぃ」
全力で謝る。反射的に頭を床に擦り付ける。
ごめんなさいごめんなさい! 許してください、私はショタコンではありません! 断じて違います! 別にショタ伏黒くんにあーんをしてあげたいとか、できることなら咀嚼した朝御飯をそのまま(自主規制)。
「フゥゥ、フゥゥゥゥ……」
「…………」
味噌汁をすすりながら、ショタ伏黒くん……ショタ黒くんは一言。
「なんか、今日の津美紀……キモい」
「ありがとうございますッ!!!」
「は?」
「ん?」
ショタ黒くんの教育に悪いことは……絶対にしないッ!!
「……恵、そろそろ時間でしょ。学校に遅刻するよ」
「……ん、ごちそうさまでした」
「ン、ンンンンっ」
礼儀正しく手を合わせて、ごちそうさまを言うショタ黒くんイズ天使。悶えるのもしゃあなし。
「津美紀も早くしろよ」
「え? あ、うん」
そうか、彼が小学生だというなら津美紀も勿論、小学生だ。私も学校に行かなくてはならない。私は残りのおかずを爆速で平らげ、登校の準備をするのだった。
ーーーーザザッーーーー
「あれ?」
一瞬のノイズと共に、場面が飛んだ。登校途中のようで、近くには校舎が見えている。ええと……意識を失いやすい私ではあるが、今回に関しては意識明瞭。なんだ、これ?
「津美紀?」
ふと気づくと、さっきまでよりも少し成長した伏黒くんがいた。それを見るに、十数分のことではない。数年単位で場面が飛んでいることに気づいた。
「なにが、なんだか……」
「おい、聞いてんのか」
「え、あ、うん」
ランドセルが少し不釣り合いになっているところを見るに、小学校高学年くらいか。生意気そうな視線をこちらに向けてくる。こうしていると、至って普通の小学生に見える。既に呪術の世界に飛び込んでいるとは思えないほどに。
「…………あいつから聞いた。津美紀は来るなよ」
「え……?」
「津美紀もあの若白髪から話は聞いてるだろ」
「…………うん」
「津美紀にも術式がーー」
ーーーーザザッーーーー
「っ、また……」
また場面転換……ってここは私にも見覚えがある。この場所は2人の母校の中学校のはずだ。つまり、この場面転換は、時系列が進んでいるということだろう。十中八九、私の術式の影響でこうなっている。
てことは!
「…………いた!」
この時間軸の伏黒くんは、ちょうど突っ掛かってくるヤンキーたちを返り討ちにして、不良タワーを建設しているところだった。尖っている伏黒きゅんもよきかなよきかな。
まぁ、これはこれで眼福ではあるが、伏黒津美紀として取るべき行動はひとつ。
「恵!」
「あ?」
不良タワーの上に座する伏黒くんの名を叫び、睨み付ける。すると、彼もこちらを睨み返してくる。うん、滾るわぁ。
「はぁぁぁ♡」
「またかっ…………お前、ちょっと来い」
「きゃっ♡♡」
彼に強引に腕を引かれて、その場から連れ出される。
え!? な、なに、この展開ッ! も、もしかして告白!? 告白なの!? ま、待って。今の私は伏黒津美紀。でも、中身には私がいる。この場合、告白されてるのはどっち!?
うーん…………うん、この場合は私だな!(断定)
ーーーーーーーー
連れていかれたのは、中学校近くにある古い橋の下。勿論、八十八橋とは違うところである。
ふむ、告白の場所としては、中学生ということを加味すると可もなく不可もなくだ。人通りはほとんどないから邪魔はされないだろうが、ロマンチックさには欠けるといったところ。それでも、
「ドキドキ♡ ウキウキ♡」
「なんでこの状況でそんな様子なんだ」
「え?」
突然そう訊ねてくる伏黒くん。そんなの当たり前じゃないと返そうとして、止める。雰囲気がいつもの感じじゃない。それどころか今の彼は呪力の気配すら纏っていて、
「…………お前、津美紀じゃないだろ」
そう言い放った。
「ナ、ナンノコトカシラァァ??」
「嘘が下手だな……『玉犬・白』!」
伏黒くんの白い『玉犬』がこちらに襲い来る。けれど、遅い。『今』の伏黒くんの『玉犬』よりもずっと。
「ほっ!」
ーーガシッーー
「なっ!?」
『玉犬』の下に滑り込んだ私は、そのまま下から『玉犬』を捕まえて、そのおなかに顔を埋める。はぁぁぁ、犬吸いは脳にキくなぁぁ……伏黒くんの匂いはさらに効くんだろうなぁぁ。
「すぅぅ、はぁぁ、すぅぅ、はぁぁ……フフフフ……フヒヒっ」
ーーどぷんっーー
「っ、ワケが分からないッ、『鵺』ッ!」
『玉犬』を解除した伏黒くんの次手は『鵺』。帯電する翼をもつ式神で私の動きを止めるつもりなんだろう。だけど、うん。
「ふん!」
ーーバギッーー
「『鵺』まで……っ」
中学生の彼の『鵺』ならば『黒閃』を経た私の蹴りで十分。接触せずに蹴り飛ばせた。うん、痺れはない。
「ダメだよ、伏黒くん。少し離れているとはいえ……『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』」
とりあえず『帳』を降ろす。血気盛んなのはいいけれど、この辺はちゃんとしないとね。そうしなきゃ、あとで伏黒くんが怒られちゃうし。
「『帳』まで……お前、本当に何者だ?」
「…………まぁまぁまぁまぁ、その辺は別にいいじゃない?」
「いいわけあるかっ!」
そう言った彼の呪力が一段と引き上がる。
……まぁ、大事な家族だもんね。その中に異質なものが入り込んでいたら、そりゃ必死にもなる。でも、大丈夫だよ、伏黒くん。
「たぶん……あと少しだから」
「は? 答えになってないっ!!」
感覚的に、恐らくこれが最後だろう。
ーーーーザザッーーーー
次に目を開けたとき、私は横たわっていた。身体がダルくて、異様なほどに冷えている。川、かな。ここは八十八橋で、津美紀さんはそこの呪霊に呪われたんだ。それは原作で見た展開。そして、
「…………やぁ、意識はあるかな?」
倒れた私に話しかけてくる女性がひとり。この顔も知っている。
彼女は虎杖香織。本来は虎杖くんの母親であり、この時点で既に死んでいるはずの人物。その正体は平安の呪詛師・『羂索』。
「『呪い』を受けているね。この川に肉体を縛りつける『呪い』……今はそれほど強くないが……ふむ」
彼女は私を助けるでもなく、冷たくなっていく私を観察している。私の意識が薄くなり、手足の感覚も完全になくなった頃、彼女は口を開いた。
「そろそろ頃合か。君にはこの呪物がいいだろう」
取り出したるは『髪の束』。それを私の口にねじ込んでくる。苦しい、気持ち悪い。
「これには『万』という呪術師が宿っていてね。彼女の燃えるように迷惑な『宿儺』への愛はきっと君の冷えていく体温を補ってくれるだろう」
「………………」
「…………うん、あとは馴染むのを待とう」
私が『それ』を飲み込んだことを確認した『羂索』は、私の体を川から引き上げて川原へと寝かせた。
「しばらくしたら、禅院の術式を継ぐ彼が君を見つけてくれるだろう。いつか君とまた会えるのを楽しみにしているよ、『万』」
「…………」
彼女が去っていくのが分かる。程なくしてーー
ーーーードクンッーーーー
「ッ」
川にずっと浸かって寒いはずなのに、熱い。
……来た。きっとこれだ。身体の内側から何か得体の知れないモノが汲み上げてくる感覚。自分が自分でなくなるような感覚に、私はーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「捕まえたぁぁ」
ーーザクッーー
『っ』
『舌抽』を津美紀さんの身体に突き刺した途端に、彼女の内側に引っ掛かりを覚えた。それを一気に引き抜く。『舌抽』は津美紀さんの体を傷つけずに、ただその中から黒い塊をずるりと引き摺り出した。
『…………なにを、した……ッ』
黒い塊……『万』が苦しそうに聞いてくる。いきなり肉体を失い、魂だけ剥き出しになったのだ。それはそれは苦しいだろう。うん、念のため、津美紀さんの身体に『万』が戻らないように、術式を開示しておこう。私の術式の本当の姿を。
「私の術式『ほのぼのにゃんにゃん』。その術式効果は『意識誘導』でも『思考の統一化』でもないんだ」
「『
「それが私の本当の術式『井戸小屋の意識猫』の術式効果だ」
さぁ、術式の開示は済んだ。
「じゃ、殺すね」
ーーーーーーーー
完全ギャグ回かいてもいいですか?
-
伏黒狂いのねこが見たい
-
本編を頼む