術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
最終章、投稿開始します。
更新自体はかなり遅めにはなるとは思いますが、お付き合いください。
第31話 愚者生存ー壱ー
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『宿儺』『裏梅』『羂索』。
呪術廻戦という物語において、残る敵はこの3人にまで絞られている。
それに対して味方側の戦力は以下の通り。
主人公・虎杖悠仁。原作では死ぬ運命にあったヒロイン・釘崎野薔薇。『天使』・来栖華。
特級呪術師・乙骨憂太。東京校3年・秤金次。鬼人・禅院真希。
京都校には、東堂葵、三輪霞、加茂憲紀、西宮桃。
『脹相』。冥冥。憂憂。日下部。七海。猪野。
現状、かなり多くの高専側呪術師が戦える状態で、さらに、高羽や日車など『死滅回游』で覚醒した游者数名も味方に引き入れることができた。
それに来栖が『獄門匣』を解放したことで、あの五条悟も戦線に復帰した。
十分……というわけではない。相手はあの『宿儺』だ。手練れは何人いてもいいし、何人いても足りない。けれど、私にできることは全てした。
あとはーー
ーーーー来栖華視点ーーーー
「ダメ。私からの電話にも出ないわ」
「そう、ですか……」
ため息を吐きながら電話を切る釘崎さん。それにつられて、私も肩を落とす。『万』を祓った後、救い出された恵の姉・伏黒津美紀は無事、目覚めた。一時記憶が混濁して、恵のことを忘れていたようではあったが、それも時間の問題だろうというのが家入硝子の見解だった。
あとは彼の内に巣食う『堕天』ーー『宿儺』を引き剥がし、祓うだけ。勿論、それに至るまでに『裏梅』と『羂索』という障害はあるけれど、それでも状況は大分シンプルになった。それもこれも……。
「羽々場のお陰だっていうのに……」
本人には伝えられない言葉が、不意に零れる。
「釘崎~!! 来栖~!! 五条先生、準備できたってよ!」
「おう! ほら、行くわよ、来栖」
「はい……」
五条悟が『宿儺』と戦う準備ができたのだろう。少し離れたところから呼ぶ虎杖くんの呼びかけに応え、私達は彼の方へと向かった。
「あれ?」
ふと自分のスマホに1件の音声メッセージが入っているのが分かった。さっき見た時にはなかったものだから、きっとたった今受信したものなのだろうけど。訝しげに思いながら、私はそれを再生した。
「…………」
案の定、というか、メッセージを送ってきたのは、彼女だった。その内容は……。
「…………バカ」
ーーーー羽々場ねこ視点ーーーー
時は過ぎ12月24日。
突如として現れた異常な呪力。遠く離れたこの場所ですら感じ取れる呪力量。『宿儺』のものではない。そうなれば残るは、
「五条悟」
ここまでバカでかい呪力の持ち主はそうはいないから、まず間違いないだろう。つまり、
「始まったんだね、最後の戦いが」
五条悟対『宿儺』。頂上決戦とでも言うべき戦いの火蓋が切って落とされた。
正直、ここからの展開は私にも読めない。理由は単純。私が知る漫画『呪術廻戦』は対『万』戦までだからだ。伏黒くんの体を乗っ取った『宿儺』が、津美紀さんごと『万』を殺し、『宿儺』の狙い通り、伏黒くんの魂は折れて、底に沈んでいく。
その様子を見て、私も心が折れたのだ。絶望する彼の姿が辛すぎて。それで次週に掲載されている話を読むか読まざるべきか悩んでいる内に、私はこちらに転生した。
……まぁ、そもそも私が『万』を倒し、津美紀さんを助けたことで、この後の展開も変わってくるはず。だから、その後は予想するだけ徒労に終わるだろう。
ならば、今、私はやるべきことをやろう。私はやっと見つけたその人物に声をかけた。
「初めまして、『羂索』」
「……予想外の人選だよ」
広大な岩手県を駆け回り、辿り着いた。
私が戦うべき相手、『羂索』。
コロニーになっているとはいえ、面積の広い岩手を移動しては呪力を感知する。その繰り返しの中で、呪霊とおぼしき呪力が消えたり現れたりする不自然な場所をやっと見つけ出すことができた。
「ところで……誰だったかな」
「羽々場ねこ。呪術高専1年、準二級術師……まぁ、今はその肩書きもほぼ無意味なものだろうけどね」
「…………」
私の自己紹介を受けて、『羂索』は額の縫い目をカリカリと掻く。特級どころか一級ですらない呪術師を、自らの相手に当てたことへの疑問と苛立ち、かな?
「不満?」
「いいや、失望さ。私を相手取るなら最低でも乙骨憂太かそれに並ぶレベルだろう。だが、受肉した術師でも覚醒した術師でもない。彼らに比べても、数段落ちる三流を私に当てる」
相手は『宿儺』。戦力を温存しているつもりかもしれないが、これは明らかに失策だ。そう言って嘲笑する『羂索』。奴は呪術全盛の平安の世から生き続ける呪術師だ。呪術師としての矜持は相当に高いだろう。だからこそ、私は告げる。
「御託はいいから構えろよ、三流呪術師」
「…………」
見え透いた安い挑発だと自分でも思う。この挑発に乗ればそれはそれで儲けものだ。イニシアチブを取れる。だがまぁ、当然そう簡単にはいかないようで。
「まずは小手調べだ。低級呪霊の群れをどう捌く?」
ーーズズズズズッーー
挑発には乗らず、奴の取れる手の中でも最も戦力を消費させない低級呪霊でこちらの手の内を探ろうとしてきた。流石はキレるね。数にして20……いや、40は出てきたか。『羂索』が返した掌から零れ落ちた呪霊は地を這い、こちらへ向かってくる。それをーー
「術式反転『裏猫』!」
ーーすり抜けるように奴の懐へ。低級呪霊どもはまるで私のことが見えていないかのようで。
「!」
「捌く必要なんてないよ」
ーーブンッーー
「っ」
ーーグググググッーー
下顎目掛けて振り上げた『舌抽』が奴に突き刺さる前に止まる。お得意の呪霊による防御ではない。なるほど、これが『反重力機構』か。
「なら、これだ。おいで、『猫』」
『にゃぁぁ』
『にゃっ』
「?」
掌印と共に呼び出した『猫』たち。掌印を省略しないことと顕現する時間を1秒間にするという『縛り』をつけることで、防御不可避の意識誘導に成功していた。
『羂索』の意識が一瞬だけそちらへと向く。重力が緩んだ隙に、さらに一歩踏み込む。重力で落とされた『舌抽』の代わりに、己の拳をーー
「ふんっ!!」
ーードゴッーー
「ッ」
ーーズズズズズッーー
「あぶなっ」
右ストレートは奴の顎に入った。だが、浅い。奴は呪霊を自らの周りに排出することで私に距離を取らせてくる。
「なるほど。意識を強制的に向けさせる順転と意識の外へ外す反転。近接戦闘に特化している悪くはない術式だ」
「……それはどうも」
「ただし、事近接戦闘においては、九十九由基には遠く及ばない。やはり低級呪霊で十分だ」
「えー! 重力の術式だって使ったくせにぃ~! 強がりは止めなよ、逆にダサいですけど~?」
「ククッ、安い挑発だ。私に強い呪霊を使わせたい魂胆が透けて見えているよ」
ーーズズズズズッーー
「チッ」
言葉の通り、『羂索』が使ったのは再び低級呪霊。冷静で嫌になるね、まったく。
「『裏猫』っ!」
先ほどと同じく術式反転『裏猫』を使う。『羂索』の分析通り、意識を強制的に誘導する『ほのぼのにゃんにゃん』を反転させることで、その逆、つまりは自らを敵の意識から外すことができるんだ。『羂索』からは勿論、呪霊からも私の姿は認識できない。
「先人からの助言をひとつ。狙いが分かっている攻撃をするべきではない」
ーーズズズズズッーー
ーードバッーー
「そっちも芸がない……なッ!」
ーーダンッーー
全方位への呪霊の波。それを私は踵落としで割った地面の一部を盾代わりにして防ぐ。
「芸がなくていいさ。意識の介しない波状攻撃相手ならば、君の術式でも介入できないはずだ」
「っ」
「……さて、何秒保つかな」
呪霊の放出を止めない『羂索』。呪力を通しているとはいえ、所詮は土壁。ガンガン削れて、やがて崩れる。だがーー
「!」
ーー既にそこに私はいない。土壁の破壊の瞬間に、私は上に跳んでいた。
「避けるのはいい。だが、そこは身動きのできない空中……愚策だろう」
ーーズズズズズッーー
「あぁ、分かってるよ!」
こちらに襲いかかる呪霊。それに対して放つは、
「術式解放『いえねこ』」
『ねこはいますねこです』
『いえねこ』。呪霊どもの前に放り投げるような形で顕現させる。次の瞬間には『支配』が完了し、奴らはこちらを襲うという意思を失った。慣性のみの勢いならば、呪力強化で難なく耐えられる。
「で、何が愚策だって?」
「なるほど。術式をもう1つもっていた訳か」
勝ち誇る私。対峙する『羂索』の表情は未だ変わらない。
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