術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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2つの術式『ほのぼのにゃんにゃん』と『井戸小屋の意識猫』。
どちらも『猫』がモチーフの式神として使役する術式ではあるが、その根底は全く異なる。
出自の違う2つの術式をもつ人間は多くはない。『羂索』や乙骨憂太のような例は稀有で、通常の人間であれば2つの術式の処理に脳が耐えきれず、廃人に、最悪の場合は死亡する。
ならば、なぜ『羽々場ねこ』はそれを所持し、行使できるのか。その答えはただ1つ。彼女が別の世界から介入している人間であるからだ。
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「1つの肉体に複数の術式。術式が『模倣』と同じでなければ、残る答えはシンプルだ。君の身体には、複数の魂が宿っている。それ自体はないことではない。今の『宿儺』や私、この千年間でも何人かは見ていた。ただ、君のそれは『受肉』とも違う」
「人をじろじろ観察するな……よッ!!」
ーーグッーー
こちらを見定めるような視線が気持ち悪く、それを切るために、私は足元の石に呪力を込め、投げた。勿論、攻撃力は皆無。『羂索』に届く前に、呪霊の壁に阻まれる。
「失礼。千年も呪術に向き合って尚珍しい対象だったからね」
ーーパンッーー
そう言って、ククッと笑った『羂索』は、1つ手を打ち合わせた。
「さぁ、小手調べといこうか」
ーーザザザザザザッーー
「っ、なんだ……?」
不意に聴覚に違和感。左の耳にノイズのような音が響き続けている。
ーーガクッーー
「っ」
ふらつき、膝をついてしまった。
「聞こえているかい」
「……なにを、した?」
「なに、私の手拍子に合わせて君の耳のなかに呪霊を放っただけさ。概念系ではないが、人体の内側に発生する強力な呪霊だ。普通の呪術師にはーー」
「『井戸の意識猫』」
奴の言葉を聞き終える前に、私は『自身の術式』を解放した。解放と同時に、対象の全てを支配下に置く術式。これで私の耳の中にいる呪霊を支配下に置き、自滅させて身体の自由は取り戻した。だが、同時に音が遠退き、消える。
「ーーーー」
ーードゴッーー
「っ!?」
一瞬の動揺を『羂索』に狙われた。呪力を帯びた一撃が腹に入ってしまう。
「ーーーーーーーー」
「チッ」
恐らく耳の中に入った呪霊の術式なのだろう。絶命と引き換えに聴覚をもっていかれたようで、『羂索』が何を言ってるのかは分からない。ただその余裕は崩れていない。手札はまだあるとでも言いたげな表情。さっきも言っていたが、小手調べのつもりなのだろう。
「舐めやがって……」
苛立ちをそのまま呪力へ変換し、再び『井戸小屋の意識猫』を使う。次の対象は自分自身。自身の肉体を支配して……。
「治ったようだね」
「おかげさまで」
「術式を反転させていたのを見るに『反転術式』は習得しているだろうが……それは『反転術式』とは別物」
「…………さっきからブツブツブツブツと、考察厨かよ」
「考察は呪術戦において重要だろう? それにーー」
ーーズズズズズッーー
またも低級呪霊の大群を放つ『羂索』。強い呪霊を使ってこないのは、こちらとしてもありがたい。しかし、千年間、呪術の世界に身を浸してきた呪術師にしては芸がない。
「っ!」
「ーー後々使えるかもしれない相手なんだ。その術式を知っておいて損はないだろう」
ーーグンッーー
群れに紛れて、姿を現した『羂索』の手を寸でのところで避ける。
「どうした? 触ろうとしただけじゃないか。私の術式は『呪霊操術』と『反重力機構』。『真人』のように即死級の威力はないというのに何を警戒しているんだい」
「…………」
「ククッ……どうやら考察の甲斐があったようだ」
『真人』の術式ではないから、普通の人間にとってそこまでの害はない。そんなことは分かっている。
……普通の人間なら、ね。残念ながら、私はその普通には該当しない。肉体の呪霊化。それはいつか『天元』様に指摘されていたこと。旧羽々場邸を訪れた時、井戸にいた『いえねこ』との接触により、私の肉体は呪霊に変わっていった。だが、結界と『縛り』をつけたことにより、その問題は解決したはずだった。
だが、『井戸小屋の意識猫』に至り、自身の本質と向き合ったことで別の問題が発生していたんだ。それこそがーー
「『君』、呪霊だろ」
『羽々場ねこ』ーー私は呪霊だ。
つまり、奴の『呪霊操術』の効果対象なのだ。
「……それが何か問題でも?」
「ククッ、人語を介する呪霊は数多く見たが、人間に擬態する呪霊は初めてだ。君、面白いよ。ぜひ調べてみたいものだ」
「……調査協力でもしようか。1時間5000円で考えてやるよ」
「魅力的な申し出だが、それには及ばない」
ーーギュルルルルルルルッーー
『羂索』は両の手を合わせる。その隙間にやがて出来上がる極小の『うずまき』。それが膨れていく。
「っ」
「数にして千。いつか彼が乙骨憂太に放った『うずまき』よりは少ないが十分だろう?」
「…………上等」
私は自らの呪力を最大まで解放する。まずはこの『うずまき』をさばいてーー
「………………意識がそちらに向いたね」
ーースッーー
「ッ」
私の死角。背後から不意に現れた奴は、その掌で私の身体に触れた。瞬間、意識が薄れていく。
「君のおかげだ。その『猫』の術式を見て、思い出したよ。意識をずらす術式をもつ呪霊のストックが私にもあることをね。勿論、君の『それ』よりは使い勝手のかなり悪いものだが」
「…………」
「ククッ、皮肉だな。自らの術式と似た術式で敗北する……滑稽でもあるね……と言っても、もう聞こえてはいないか」
視界は暗く、周りの音も消える。奴が何を言っているのかも理解できなくなっていく。身体が溶けて、大きなものの一部になる感覚を覚えて。
「また会おう。呪霊の身でありながら、人になろうとした『
ーーごくんっーー
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『
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