術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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五条悟が『宿儺』に敗北した。
次に『宿儺』と対峙した鹿紫雲一との戦いの中で、『宿儺』は受肉を再開、『反転術式』を使わずしてその傷を回復させた。
それはつまり、伏黒恵の肉体が『宿儺』の手に完全に堕ちたことを意味する。『彼女』にとって、決して許すことのできない出来事ではあるが、『羂索』に敗北し取り込まれた『彼女』は動くことなどできない。『彼女』の意志を継ぎ、伏黒恵の弔いに打って出たのはーー
ーーーー来栖華視点ーーーー
氷使いの女を足止めするため、秤金次が展開した『領域』が瓦解した後、私達は打って出た。開幕、私の『邪去侮の梯子』を『堕天』ーー『両面宿儺』に喰らわせる!
「虎杖! 日車!」
「おう!」
「分かった」
ーースッーー
「っ」
一瞬の葛藤。『宿儺』の肉体は恵のものだという事実。けれど、既にそれは乗り越えた。恵の肉体でこれ以上、人は殺させない!
「出力最大! 『邪去侮の梯子』ッ!!」
ここまで溜めていた呪力を解放する。降り注ぐ光の柱と無数の天使。柱は確かに『宿儺』を捉えた。だが、
『"龍鱗" "反発" "番いの流星"』
「っ!?」
『『解』』
ーーーーーーーーザンッーーーーーーーー
五条悟の命を刈り取った『世界を断つ斬撃』は、私の出力最大の『邪去侮の梯子』すらも斬った。
『目障りだな』
ーースッーー
「くっ」
『華!』
奴の視線がこちらへ向く、と同時に地上に降り立った彼らが動く。
「ふんっ!」
ーードゴッーー
日車の巨大ガベルによる打撃。避けられはしたが、奴の体勢が崩れた。そこへ虎杖が瓦礫を目眩ましに使って接近。そして、日車が奴の腕を一瞬拘束したことで、虎杖の一撃が『宿儺』に入った。
『いや、防がれている』
「大丈夫。あれは囮だから」
「虎杖、やり直しだーーーー領域展開『誅伏賜死』」
日車の言葉とともに、虎杖と『堕天』が日車の『領域』に包まれた。
「よし、まずは成功」
こちらの狙いは虎杖と『宿儺』を巻き込んだ『誅伏賜死』だ。
曰く死滅回游にて、虎杖は日車の式神『ジャッジマン』によって、『死刑』を下されていた。それを虎杖は再審を経て生き残った。そして、今、3審が開かれる。罪状は同じまま、虎杖に下された判決を『宿儺』の罪として立証するという。それが出来るかは日車の弁護士としての腕にかかっているが……。
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『羽々場ねこ』というイレギュラーによって、人外魔境新宿決戦は正史とは違う展開を迎えている。
伏黒津美紀の生存。それに対応するため、『宿儺』は原作よりも『浴』を濃くすることで、伏黒恵の肉体と精神を支配下に置いていた。したがって肉体の練度には問題はない。しかし、本来『宿儺』の手にある『万』の絶命と引き換えに造られた『神武解』がない。
つまり、式神『ジャッジマン』が没収する対象は、『宿儺』自身の術式のみ。
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ーーピシッーー
「!」
ーーバリィィンッーー
日車の『領域』が崩壊する。同時に、彼の手には『処刑人の剣』が現れていた。成功だ。これで『宿儺』の術式を没収できた。それを見て、呪術高専側の呪術師が戦線へ。
日下部の『簡易領域』をメインに、冥冥や猪野、『脹相』の攻撃で中距離から攻撃を仕掛け、『宿儺』に『反転術式』で回復する隙を与えない。大丈夫。こちらの思惑通りに事が進んでる。
「『天使』!」
『あぁ、呪力を溜める。華は『堕天』から目を離すな』
「分かった!」
『天使』の言葉に頷き、私は高度を上げた。両の手で円をつくり、集中する。事前の説明によれば、今の『宿儺』は日車の術式によって、斬撃を使えないはずだ。その状態ならば、出力を最大にした『邪去侮』で祓える。『天使』が呪力を溜めきるまでの約30秒間、奴を視界の中央に捉え続けろ!
今しかない。私の『邪去侮』か日車の『処刑人の剣』で『宿儺』に確実に止めを刺す……けれど。
「……くっ、隙がない」
術式を没収された状態でも『宿儺』は、フィジカルと膨大な呪力、その運用だけで高専戦力の攻撃を防ぎきっていた。術式の運用を諦めた分、呪力を肉体の硬度を上げることに専念した『宿儺』にダメージを通すのは、流石の一級術師でも難しいようで。
「っ」
『華、ここは……』
「分かってる!」
我慢の時。分かってる。けど、術式の没収にも、『処刑人の剣』にも制限時間がある。3審が終わった今、死刑に該当する罪状を再度引き当てる可能性は限りなく低いという。
ーーガクンッーー
「!」
一瞬、『宿儺』の動きが止まった。高専術師たちの連携の最中、虎杖の打撃が入った直後にだ。
『やはりそうか!』
「うん、虎杖の打撃は『宿儺』に効いてる」
『ああ、恐らくだが、彼の攻撃は『堕天』の中で未だに眠る伏黒恵の魂を呼び起こせる』
恵の精神は死んでない。魂を起こして、肉体の主導権さえ取り返せば……!
『次の彼の打撃が入ったタイミングで、『邪去侮の梯子』を撃て』
「…………うん」
今は地上で繰り広げられる攻防を見守ることしかできない。致命傷ではないものの、猪野は『宿儺』の攻撃を受け、一時撤退。残るは虎杖と日下部。そして、鍵である日車のみ。
「くそっ! 日車、時間はっ!?」
「…………っ」
「察したよっ、虎杖!!」
「押忍ッ」
日下部の言葉にすぐさま反応する虎杖。さらに速度を上げ、『宿儺』の左後方へ。これで右後ろにいる日下部と挟み撃ちの形だ。前には日車がおり、強引には突破できない。上に逃げてくれば、私の『邪去侮』に身を焼かれる。範囲攻撃のない今、奴はーー
『狙いはよい。だがーー』
ーーグンッーー
「「「!!!」」」
一瞬だった。こちらが包囲したことで僅かに生まれた心の隙を、ほんの一瞬の緩みを、奴は見逃さなかった。『宿儺』は既に虎杖の前に。
『小僧、お前だけが数段格が落ちる』
ーーバギィィッーー
「がッ!?」
「虎杖っ!!」
『宿儺』の拳が虎杖の顔面に入り、吹き飛ぶ。
ーーザンッーー
『こちらも『簡易領域』がなければどうということはない』
「くそっ!」
日下部の斬撃も見切られて、『簡易領域』内に入れることすら難しい。このままじゃーー
「退け!!」
「「!!」」
焦る私達の心を諫めるように響いたのは、日車の声だった。それに察し、退く。事前に彼は言っていた。長引くならば、彼が『宿儺』に突っ込むと。正直、捨て身ではある。けれど、決して無策ではない。
「フンッ!!」
ーーガァァァァンーー
『数人がかりでやっとだったのだ。それは愚策だろう』
日車の右手で振るったガベルは、勿論『宿儺』に軽く受け止められる。間髪開けず、左手で『処刑人の剣』を突き刺しにいく。だが、その攻撃は『宿儺』に完全に読まれていた。奴は、日車の左手を上腕2本で完全に止め、
ーードズッーー
「か、は…………ッ」
『宿儺』の下右腕が日車の左胸を貫いた。確認するまでもない。明らかに致命傷だ。
『…………終わりだな。さして面白くもない平凡な術師だった』
「……ッ、あぁ、俺は……それで、いい」
ーーパァァァァァンーー
『!!』
戦場に柏手が響く。その意味を『宿儺』は一瞬で理解した。そして勿論、日車と入れ替わった私自身も。
「恵を返してッ!!!」
渾身の想いを、『呪い』を込めて、私は『邪去侮の梯子』を放った。
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本作において、『宿儺』が渋谷で抜いた関係上、虎杖宿儺による大量虐殺は起こっておりません。しかし、死滅回游では、運悪く(今回においては運良く)『ジャッジマン』から『死刑』を受けております。
あ、近々描いていただいた新規イラストを投稿できるかと思います。