術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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虎杖悠仁の打撃は、確かに『宿儺』の内に眠る伏黒恵に届いた。しかし、原作より『浴』を深く行ったことで、伏黒恵の魂は未だに眠ったまま。
釘崎野薔薇の『共鳴り』。
虎杖悠仁の『魂に干渉する打撃』。
それでも彼の魂を解き放つには至らない。
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『その打撃……不愉快だな』
ーースッーー
「!?」
『『捌』』
「虎杖ッ!!」
釘崎の叫びも虚しく、斬り裂かれる虎杖。耐久力は高いといえど、触れた状態で放たれた『捌』は確実に虎杖の肉体を斬り刻んだ。
「……っ、悪い……失敗した」
東堂の位置替えによって、後方へ退いた虎杖はすぐに『反転術式』で自己治療を開始する。そんな彼に釘崎も駆け寄る。
「っ、アンタ、身体……っ」
「大丈夫。『反転術式』廻してーー」
『『解』』
ーーザンッーー
「「!?」」
『反転術式』を身につけた虎杖ならば、確かに肉体を回復させることができる。だが、『宿儺』がそんな暇を与える訳がない。『解』による斬撃が再び2人を襲う。
ーーギィィィィンーー
放たれた『解』は2人には届かない。飛んできた斬撃を弾いたのは、
「日下部せんせー!」
「ッ、なんつー斬撃だよ……っ」
禪院真希を憂憂の元に運び、舞い戻った日下部篤也であった。『簡易領域』を展開したことで『解』を自動的に迎撃していた。
「おい、虎杖。伏黒は?」
次に来る攻撃に備え、前方に『簡易領域』を張りながら、日下部は虎杖に訊ねる。虎杖が首を横に振ったのを見て、大きなため息を吐く日下部。
「でも、あと何度か打ち込めば!」
「その何度かが来ればいいがな」
日車・乙骨・真希・七海が戦闘不能。憂憂・綺羅は後方支援。東堂も『宿儺』の『領域』がいつ回復するか分からない以上、前線では使えない。つまり、『宿儺』と斬り結べるのは、日下部・虎杖・釘崎だけ。東堂による位置替えで不意を突けたとしても、せいぜい1、2度。それで伏黒を起こせるかと言われると……。
悪い方に向く日下部の思考は、
「それでもやるよ」
虎杖の一言で止まる。その声には静かだが、確かに覚悟がこもっていて。
「………………まぁ、それしかねぇか」
どうせ相手はあの『宿儺』なのだ。ダメで元々。ならば、より可能性の高い賭けに出るべきだろう。
「おい、虎杖、釘崎。俺がどうにか隙を作る」
「「!」」
「どう頑張っても1回きりだ。その隙を見逃すな」
「うす!」
「ええ!」
学生が、同志が、命をかけてここまで繋いだのだ。自分もここで命をかけなければ。
覚悟を決めた日下部が先手を打つ。
「『簡易領域』居合『夕月』」
『?』
斬撃を飛ばせる『宿儺』を相手に居合。一見相性は悪いように見えるが、日下部の『簡易領域』は他の術師のそれとは錬度が違う。彼は『簡易領域』の範囲を変更し、居合で『宿儺』に斬りかかる。
ーーザッザッザッザッザンッーー
『クハッ、術式を付与しない弱者の領域をこう使うとは……中々面白い』
「チッ」
『だが、少々火力が足りん。それでは……』
斬撃を浴びながらも、そんなことを言う余裕のある『宿儺』に舌打ちを返す日下部。そして、『宿儺』の言う通り、
ーーギンッーー
日下部の刀が折れる。
「っ」
ーーバサッーー
『!』
刀が折れたのを見て、日下部は瞬時に切り替える。コートで『宿儺』の視界を遮り、肉弾戦へとシフトした。『宿儺』と殴り合う日下部。普段の彼らしくもないその必死さ。それは彼らにも伝わっていた。
「…………」
「…………」
虎杖と釘崎の集中力が上がっていく。
一瞬の隙、『宿儺』の心臓を狙い、日下部が呪力の刀身・『朧月』を突き立てたその瞬間に、2人は動く。
「ッ」
『またお前か、小僧』
日下部の一突きを止め、既に撃破した『宿儺』が再び虎杖と向き合う。
ーーパァァァァンーー
『!』
手を叩く音が聞こえた次の瞬間に、背後から気配。それを釘崎だと判断した『宿儺』の対応はコンマ数秒遅れる。
「フンッ!!」
ーーバギィッーー
『入れ替えの男……ッ!』
上段の蹴りで『宿儺』の側頭部を捉えたのは東堂葵。後方支援で危険なことはしてこないだろうという思い込みを突いた不意打ちである。さらに、響く柏手。
ーーパァァァァンーー
ーーパァァァァンーー
『宿儺』の目の前には虎杖悠仁の姿があった。
入れ替わったのは虎杖悠仁と東堂葵。東堂葵の攻撃は魂には届かない。よって、対応すべきは虎杖悠仁だ。
「だからよぉ、私を忘れんなよッ!!!」
『!』
ーーザクザクザクザクッーー
東堂は既に後方に戻っている。2度目の『不義遊戯』で釘崎は『宿儺』の背後に迫っていた。
「『簪』ッ!!!」
釘崎の攻撃で魂に干渉できるのは『共鳴り』のみ。だから、この『簪』は次に繋ぐための布石。背後からの4連『簪』で『宿儺』の重心が崩れる。
「………………スゥゥゥ」
日下部の戦いを受けて、虎杖悠仁のボルテージは上がり切っていた。研ぎ澄まされた意識は黒い火花を呼び寄せる。
「『黒閃』ッ!!」
ーーバヂバヂバヂバチッーー
『ーーーーッ』
『黒閃』の直撃を腹に受けた『宿儺』。その打撃のまずさは『宿儺』自身がよく分かっている。それのせいで深く沈めたはずの伏黒恵の魂が浮上し始めているのを感じ取っていた。あと5発も食らえば、確実に伏黒は起きる。
『宿儺』はすぐさま虎杖の腕を掴み、再び『捌』を発動しようとしてーー
ーーパァァァァンーー
『ッ』
不意打ちの入れ替えで虎杖の姿が視界から消える。常に選択肢にありつつも、『黒閃』を出した目の前の虎杖の圧を警戒したことで、対応が遅れた。その結果、食らってしまう。
「『黒閃』ッ!!」
ーーバヂバヂバヂバチッーー
2回の『黒閃』を短時間で受けたことで、『宿儺』の魂がまた揺れる。さらに逆の拳も『宿儺』を捉えた。
ーーバヂバヂバヂバチッーー
3回連続の黒い火花。食らう度に伏黒が起きる可能性が上がる。『黒閃』を狙って出せる術師はいない。だが、それでも『黒閃』を打つ虎杖悠仁。今の虎杖悠仁には狙って出していると思わせるほどの格がある。厄介だ、と『宿儺』は素直に感じていた。だから、
ーーガシッーー
「!?」
『たかが蝿。だが、そろそろ目障りだな』
「釘崎ッ!! 東堂、頼むっ!!」
『宿儺』はまず釘崎野薔薇を刻むことにした。腕を掴み、『捌』を発動させた。
ーーパァァァァンーー
ーーザンッーー
「ぐ……ッ」
釘崎を助けるために、『不義遊戯』にて自分と彼女の位置を入れ替えさせた虎杖。右腕が落ち、よろける。『赤血操術』による血液操作と特殊体質、『反転術式』があれば、虎杖の負傷は治せる。その上での機転だったのだが、『宿儺』はその判断すら読んでいる。
『いい加減、その入れ換えは厄介だな』
「……読まれたか」
「「東堂ッ!?」」
『宿儺』への不意打ち以降、再び姿を隠していた東堂だったが、『不義遊戯』の発動による呪力の起こりを『宿儺』に捉えられていた。
『"龍鱗" "反発" "番いの流星"』
至近距離。入れ替えも間に合わない。『世界を断つ斬撃』が東堂を襲う。
ーーグンッーー
それを助けたのは、
『…………知らん顔だな』
「俺を知らないとはモグリだネ。これだから島国の人間はアンテナが低くて困るヨ」
ミゲル・オドゥオールであった。
彼とその友人・ラルゥの参戦によって、風向きがさらに呪術師たちへと傾いていく。『脹相』と禪院真希の戦線復帰。そして、虎杖の回復。
勝てる。高専術師たちがそう確信した瞬間、
『『黒閃』』
ーーバヂバヂバヂバチッーー
呪いの王が黒い火花を呼び寄せた。それを食らい、ラルゥが戦闘不能に陥り、続けて回復したばかりの真希と『脹相』も『宿儺』の『黒閃』を食らってしまう。
先の戦いで、五条悟は2度の『黒閃』で自らの『反転術式』の出力を取り戻した。ならば、呪いの王『両面宿儺』はーー
ーーーー同時刻ーーーー
岩手・御所湖結界。
黒幕『羂索』が高羽史彦と呪い合い、乙骨憂太に絶命させられた結界に『ソレ』は未だ存在していた。『ソレ』を操れる術師は死に、本来ならば暴走または消滅するはず。
だが、『ソレ』は渦巻いている。それはまるで何かの誕生を待ち侘びているかのようであった。
ーーーーーーーーパキッーーーーーーーー
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産まれ落ちる。