術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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「君、死刑ね」
「はい?」
例の部屋で手足を縛られ、監禁されていた私に五条悟はそう言い放った。死刑、ねぇ。
「身に覚えがないんですけど?」
「『両面宿儺』が受肉した。君が虎杖悠仁くんに喰わせた『指』のせいで。それで呪術総監部は大変なお怒りだ、特級呪物を受肉させるなど呪術テロだー、ってね」
「ヘー、ソレハタイヘンダァ」
「……フフッ、確信犯だろう?」
「ノーコメント」
五条の質問をのらりくらりと躱し、私は考えを巡らせる。私の思惑とは裏腹に、『両面宿儺』は虎杖悠仁の肉体を使って受肉した。原作通りの流れになってしまっているのが実に腹立たしい。受肉させてしまったのが、私自身なのが余計にその苛立ちを加速させる。『宿儺』がいなければ、将来伏黒くんが肉体を奪われることもなかったろうに……。
いや、ここで諦めるのはまだ早い。それを阻止するタイミングは残されている。だから、まずはこの局面を切り抜けなくては。
「はい! 五条先生!」
「なんだい?」
「死にたくないです! 私にはやらなきゃいけないことが山ほど残ってます!」
「ハハッ、いいね。彼らとはまた違う反応だ」
「どうにかしてください!」
少々喰い気味に私は訴えた。すると、彼は吹き出すのを堪えるような含み笑いをした後に言う。
「ま、大丈夫。安心していいよ、君の死刑は僕がうやむやにしといたから!」
「!」
ビックリする、フリを返す。まぁ、そうだと思ったよ。この五条悟という男は、総監部の方針よりも若者の未来を重視する傾向にある。勿論、その若者には私も含まれている。そんな人間をむざむざ死なすようなことはしないと、信用していた。計画通りと心の中でほくそ笑む私に、彼はさらに言葉を続ける。
「ただし、条件付きだ」
「条件?」
「あぁ、残念ながら老人共にはプライドやら面子があるからね。いやぁ、下らないことこの上ないけど。落とし所としてはいいところでしょ」
そう言うと、五条悟は懐から『指』を取り出した。
「……『指』ですか?」
「あぁ。『指』のうちの1本の所在地が分かったんだ。その回収が条件さ」
いやいやいやいや、それ死刑と変わらないでしょ。実際、死にかけた。『両面宿儺の指』に寄ってくる数々の呪霊を1人で祓うのが、無理だってのは実証済みだし。そんな私の心中を察したようで、五条悟は言葉を続ける。
「大丈夫。秘密裏に冥さんが君についていくことになったから」
「冥さんって…………それ、かなり吹っ掛けられません?」
「ん、そっちの方は、君の任務2回分の報酬をそのまま冥さんの口座に振り込むことで話はついてるよ」
「2回分って……」
任務1回分はタダ働き扱いじゃんとか、私の同意はなしなんかいとか、まぁ、色々とツッコミたいが、命には代えられない。ここはその言葉を飲み込もう。
「分かりました。それで『指』の場所は?」
「えぇとねぇ……」
ーーーー■■県■■市(旧■■村)ーーーー
早速私と冥さんは『両面宿儺の指』が隠されているという■■県■■市に来ていた。呪術回的には旧■■村の方が馴染みがあるか。ともかくそこでの任務に就くために現地集合した……のだが。
「なんでキミがいるのかなぁ、
「姉様がいるところには僕がいるに決まってるじゃないですか、ねこさぁぁん?」
冥さんの弟・憂憂がなぜか同行していた。
この少年、私が冥さんに弟子入りしてから悉く突っかかってくる。作中の彼の言動を見るに、冥さんに心酔しているから、私という存在が邪魔なのだというのはまぁ、一応理解できる。だから、私は最初の数ヶ月は彼を立ててあげていたのだ。だというのに、クソ生意気に私にガンを飛ばし、中指を立て続けてきやがったため、私はこの少年を敬うのを止めた。おかげで、現在互いに中指を立て合う犬猿の仲というわけだ。
「姉様、今からでも遅くありません! こいつはこの近くの山中に放置して、ふたりっきりで任務にあたりましょう!」
「はぁぁぁ!? お子様よりも、私の方が冥さんの役に立てますがぁぁぁ!? 『簡易領域』しか使えないアッシーくんよりもねぇぇぇ!」
「は? 戦えない役立たずの式神遣いより姉様の役に立てますが? それにもし『領域』を使う呪霊でもいたら、貴女の『簡易領域』では一瞬で剥がされて、姉様を危険な目に合わせるでしょう? そんな人が僕よりも役立つなんて……笑ってしまいますね」
「……まぁまぁ、ふたりとも」
「冥さん!」
「姉様!」
「「こいつ、いりませんよ!!」」
息ピッタリじゃないか。そう茶化す冥さん。
本当に止めてほしいけど、冥さんの纏う雰囲気が変わったことで、私も憂憂も意識を切り替える。
「少し警戒しようか」
「はい、冥さん」
「はい、姉様」
冥さんに倣い、呪力探知に意識を向ける。廃村となったこの集落には当然人影はなく、さらにはあの『指』と同じ呪力は感知できない。というより、
「他の呪力の残穢が濃すぎる。そこらじゅうに呪霊の残穢とそれから……血の匂いだ」
こびりついた血の匂い。ここは、
「
「あぁ」
冥さん曰く、この10年間、ここは呪術総監部によって立ち入り禁止にされていたらしい。呪詛師認定されたとはいえ、元呪術高専生が起こした呪術テロだ。不祥事の隠蔽ってやつだろうな。
「まさか……ここに『両面宿儺の指』が隠されていたとは」
呪術師ですら立入りを許されていなかった地。まぁ、ここに行かせた人間が行方不明になっても隠蔽できるだろうし、私を向かわせる先としては妥当ではあるか。万が一、『指』を回収できたら儲けもの程度に考えているんだろうな。
その証拠に、
「…………冥さん」
「あぁ、気をつけた方がいい。彼の放った呪霊に殺された村人の無念は10年という年月を経て、強く残っているようだ」
そこらじゅうから感じる呪霊の気配。冥さんが隣にいるから警戒して出てこないだけで、もし離れてしまえば、そいつらはすぐに私に襲いかかってくることは予想に難しくない。
「この村は広い、二手に分かれようか。一緒に行くのはーー」
「「はい!」」
「君たち2人でいいよね」
「「……………………はい」」
そうですよねぇ、実力的にはそれしかないのは分かってましたけど。憂憂も心情的にはともかく、その事実には納得しているようで、渋々頷いた。
「それじゃ。烏は1羽ずつ着けておくから、何かあったら……『命がけ』で頼むよ、憂憂」
「はい! お任せください、姉様!! 僕にしか、僕にしかできないことですから!」
ドヤ顔兼ニヤケ顔の憂憂と共に、私達は冥さんと逆回りに歩き出したのだった。
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「その顔止めてもらえますぅぅ?」
「生まれつきこう言う顔ですけどぉぉ」
ーーバシュンッーー
ーーバシュンッーー
ーーバシュンッーー
言い合いながら、祓いながら歩く。幸いなことに、こちら側には雑魚しかいないようだ。私レベルでも十分祓える呪霊しか出てこないな。というよりも、冥さんがより弱い方を選んでくれたのかもしれないな。
「……これなら『指』は冥さんの方にあるって考えるべきかな」
ポツリと呟いた私に、
「……ねこさん」
「分かってる」
憂憂が声をかけた。
あぁ、言われずとも分かってるし!
『あ、ジュジュツしだこロさナキャころさなキャ』
現れた呪霊。土色をした四足歩行の肉体。そして、その肉体の中央から生えた首と顔。顔の輪郭は人間のそれと変わらないが、普通の人と明らかに違うのは、顔のパーツがすべて眼球になっていることだ。目鼻口耳の代わりにある6個の目。それらは全てこちらを捉えていた。
『ジュじュつシがフタリ、弱いジュジュツシ』
「……憂憂、等級は?」
「呪力量からして、等級は少なく見積もって『準1級』。意味のある言葉を発していることからも術式はあるかと。十分、注意してください」
「おっけー」
言うと同時に呪力を廻す。両脚に込めた呪力を推進力にして、一気に距離を詰めた。狙うは呪霊の左耳にある目。インパクトの瞬間に、呪力を右脚へ。だが、
ーーブンッーー
「!」
避けた!? いや、というよりは右脚がずらされた感覚だ。警戒し、憂憂のところまで一気に引く。
「っ、今っ!?」
「ねこさんの右脚があの呪霊の頭を避けるように、下にずれてました。そんなつもりはーー」
「ーーない。そういう術式でしょ」
空間を曲げる系? 座標をずらす系?
なんとなく『死滅廻游』で受肉した烏鷺亨子の『空』を操る術式に近い気がする。術式を受けた脚に怪我がなかったことがその根拠だ。とすれば、
「行くよ、憂憂。『命がけ』でさ」
「それは姉様に言われたい言葉ですっ!! 貴女が『それ』を言うなァァァ!!」
ーーーー冥冥sideーーーー
「どうやら向こうも始まったようだね。すぐに行ってあげたいが……」
ーースチャッーー
『なぜこの村に来たのですか、呪術師』
「言葉をここまで流暢に話す呪霊とは……任務2回分では割に合わなかったかな」
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憂憂くん、キャラおかしくないですか!?