術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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死刑回避から約2週間。戦闘時に攻撃を受け続けたことで入院が長引き、私はやっとのことで呪術高専の授業に合流できた。というわけで、伏黒くんとふたりきりの教室から一転して。
「伏黒ー! この娘が例の羽々場って子?」
「あぁ、釘崎は初対面だったな」
こちらを指差す紅一点・釘崎野薔薇。『呪術廻戦』のヒロイン兼アニキ枠の娘である。にしても、ほうほう、実際に見ると……。
「かわいい」
おっと、口を突いてそんな言葉が漏れてしまった。その言動や精神性からファンの間では、釘崎ニキとか野薔薇ニキとか称され、頼れる兄貴分みたいに比喩されることも多い彼女ではあるが、こうして目の前にいられると、まごうことなく美少女である。若さにかまけて、自らのケアをしない昔の私とは違う。その姿から、呪術師なんて生傷が絶えない生き方であっても、可愛くあろうとする努力を感じてしまう。同性だからこそ分かる、その意識の高さを前にしたことで、思わず「かわいい」と声に出てしまっていた。すると、
「……ふぅん。そこの男子2人とは違って、中々分かってるじゃない」
「!」
私の言葉を受けて満更でもない表情の彼女。どうやら第一印象は上々。彼女の頬が緩む。
「特別に名前で呼ぶのを許してあげるわ!」
「! あ、ありがとう。野薔薇さん!」
「……ちゃんでいいって、ねー! ねこ!」
「うん、野薔薇ちゃん!」
こちらとしても同年代、しかも、同性の友達ができるのは嬉しいことだ。それに野薔薇ちゃんは伏黒くんとフラグは一切立たない娘だし、恋敵になることもない。安心して友達になれるってものだ。
っと、そうだ。東京校にはもう1人、同級生がいるはずで。
「羽々場、それからこっちは……」
「虎杖悠仁! よろしく!」
「うっす」
虎杖悠仁くん。『両面宿儺の器』にして、『呪術廻戦』の主人公。
仙台で一度会ってはいるが、あの時は戦闘中、しかも一瞬だったから、改めて挨拶を交わす。原作を読んでいたから分かってはいたけど、急に呪術師って世界に飛び込んだというのに、明るい少年だ。うんうん、好感がもてるね。さらに、
「この間、仙台で会ったよな。あの時『指』投げてくれたから、伏黒のこと、助けられたわ!」
「うっ」
そんなことを言う虎杖くん。まぁ、正直、あれは不本意な結果ではあったが、背に腹はかえられない状況だったからね。しかし、この少年、本当にすごい。見方を変えれば、私が呪物を渡したせいでこんなことになったというのに……いや、そうか。今の彼はこの後来る『地獄』を知らないんだった。
「ありがとな!」
「………………う、うん」
私は『地獄』を知っているから、私の手を握り、ブンブンと握手をする彼を真っ直ぐ見ることができなくて。
「じゃ! これからあたしたちは親睦を深めるため、女子会をするから! あ、邪魔したらぶっ飛ばすからそのつもりで!」
「おい、釘崎。これから次の任務のーー」
「行くわよ、ねこ!」
「お、おー!」
だから、野薔薇ちゃんが強引に引っ張ってくれたことに、心の中で感謝するのだった。
ーーーー野薔薇の部屋ーーーー
「ようこそ! あたしの部屋へ!」
そう言って、野薔薇ちゃんは私を部屋に招き入れた。
「とは言っても、まだこっち来たばっかりだから、可愛い家具も揃えられてないんだけどね~」
渋谷とか原宿とか行かなきゃよねぇ、そんなことを言う野薔薇ちゃんは可愛い。ほら、座って座ってと言い、野薔薇ちゃんは私にクッションを渡してきた。お言葉に甘え、それに座った。
それから私も部屋から持参したお菓子を広げ、野薔薇ちゃんも冷蔵庫に冷やしてあった飲み物を出してくる。つつがなく女子会は始まり、話は弾む。
最近のコンビニスイーツ。服の趣味。東京で行きたいところやインフルエンサーの話。色んな話をして、そして、
「ねこは好きな男はいる?」
「!」
やはり来た。女子高生が2人以上集まれば、必ずと言っていいほどこの話題ーー恋バナになる! 私も前世では通ってきた道だ。とはいえ、前世では大体アニメキャラに恋していたので、話しても多少引かれるかオタ友とデュフフと盛り上がるくらいだったが、しかし!!
「実は私……伏黒くんが好きなんだ」
今は胸を張って言える。相手は実在するクラスメートなのだ。そうそうこういう話をしてみたかったぜぇぇぇ。
「…………まじ?」
「まじまじ、大まじ」
「…………そ、そう」
そういえば、野薔薇ちゃんの伏黒くんへの第一印象はよくなかったっけ。重油まみれのカモメに火をつけそうとかいう独特の表現をしてた記憶があるわ。
「えー、ちなみに、どこが好きなのよ?」
「顔」
「お、おう。またストレートにきたわね」
「まぁ、それも好きなところの1つだけど」
彼の好きなところはそれだけじゃない。
声も手も。クールでいて熱いところも。それから友達想いなところ。家族を大切にしてるところ。なにより好きなのは、
「私の心の支えになってくれたところ。私が本当に辛いときに、彼は支えてくれたんだ」
「……あんた……」
後から聞いたことだけど、どうやら私が来る前に、私の過去……集落で親兄弟を皆殺しにされたことは聞いていたらしい。だから、きっと何か思うところがあったんだと思う。彼女はポンッと優しく私の肩を叩いて言った。
「絶対モノにしなさいよ、応援してるわ、ねこ」
「ありがとう、野薔薇ちゃん」
その後、私と野薔薇ちゃんは、具体的に伏黒くんをモノにする作戦を立てた。最終的には、伏黒くんはムッツリだから寝込みを襲ってしまえという話になり、翌日の深夜、私は伏黒くんの部屋に忍び込んだのだった。
……結局、耳元で囁いた瞬間に飛び起きた伏黒きゅんにしばかれ、作戦は失敗に終わったけれど、それでも野薔薇ちゃんとの友情は培われたので、ま、オッケーでしょ!
ーーーー呪術高専東京校・グラウンドーーーー
「……おい、羽々場」
「なぁに? 伏黒きゅん♡」
「深夜に! 人の部屋に! 勝手に! 入るな!!」
「フフフッ、照れちゃってェ」
いつものように頭を抱える伏黒くん。ため息を吐いてから、私に訊ねてくた。
「それで、なんのようだ?」
「えー、伏黒くんに会いたかったんだよぉ」
「そういうのいい。本題に入ってくれ」
「ちぇっ」
決して嘘ではないけど、まぁ、いっか。
「ねぇ、伏黒くん。1つ聞いていい?」
「……なんだよ」
「今日、五条先生は?」
「? 任務で数日外すらしい。それが何か関係あるのか?」
大有りだ。東京校の1年生が3人……いや、私を入れて4人か。とかく全員集合したタイミングで、五条悟が呪術高専にいない。そうなると、次に起こるイベントが見えてくる。それが非常に問題なのだ。
「うん。実はね……近い未来、私達は『特級呪霊』と戦うことになるんだ」
「!」
私の目的『伏黒くんをあらゆる災厄と絶望から守る』ためのターニングポイントの1つ。それがこれから起こるであろう『呪胎戴天』編だ。
1年生組が少年院へ赴き、そこで『特級呪霊』と邂逅、戦闘となり、虎杖くんが自死するエピソード。それをきっかけに、伏黒くんは『宿儺』に目をつけられて、最終的にはあの野郎に肉体を乗っ取られてしまうのだ。
ここで虎杖くんが死ななかったら? 伏黒くんが『宿儺』に目をつけられなかったら? 前世では決して覆らないIFの話だったけれど、今はそれができるのだ。なら、その可能性を掴みにいく努力は惜しまない。
「ま、信じてくれなくてもいいけどね」
「…………」
伏黒くんは少し考える。たぶんこれまでの私の言動から、今の発言の信憑性を図っているんだろう。やがて、彼は再び顔を上げて問うてくる。
「信じるかどうかはこの際、置いておく。それを言った上で、何の用だ?」
「用件はシンプルだよ。私と戦ってほしい、本気でね」
「は?」
何を言ってるんだという困惑が伝わってくる。ま、そういう反応にもなるよね。でもね、決して私がおかしくなった訳じゃない。『呪胎戴天』での悲劇を防ぐためにも、
「伏黒くんにはさ、私と戦って習得してもらいたいんだよね」
「習得……? 一体何を……?」
「決まってるでしょ」
「『領域』だよ」
「な!?」
有無を言わせず、私はすぐに『帳』をグラウンドに降ろす。
「『帳』!? 羽々場、お前本気かっ」
「本気も本気。大丈夫だよ、伊地知さんには許可とるようにお願いしてあるから」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
「…………ふぅ」
私の言うことに半信半疑なままだと、これ以上話しても分かってもらえるとは思ってない。だから、私は呪力を廻し始めた。そして、告げる。
「ねぇ、伏黒くん」
「死ぬ気でかかってきてよ、じゃないと死ぬよ♡」
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