術式『ほのぼのにゃんにゃん』で呪術の世界を生き残る 作:藍沢カナリヤ
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少年院にて産まれた特級呪霊『虫』(仮称)。
原作では『宿儺』との格の違いが描かれていたが、腐っても特級だ。私がこいつを倒せるなんて思っていない。私も自身の実力は正しく認識できている。だから、私の狙いは、この『虫』を祓うことではない。こいつから逃げおおせることだ。
「『ほのぼのにゃんにゃん』っ」
『にゃ~』
『にゃんっ』
目的遂行のため、2匹の『猫』を呼び出し、私自身は呪力を抑えた。同時に物陰へ。『猫』は呪霊にも有効なのは実証済だ。特級呪霊相手にもその効果は、
『??』
「よしっ」
よかった、効いている。『虫』は自身の周囲を回る『猫』のことを追いかけ始めた。奴の意識が『猫』に向いているうちに、逃げる……のは難しいだろうな。そもそもの呪力量が違うから、脚に呪力を纏わせてこの場を離れたとしても、追い付かれるのが関の山だ。だから、私は呪力をゆっくりと溜めていく。ありがたいことに壁や死角は多く、姿を隠しながら奴に届きうる量の呪力を拳に込めることができる。
「すぅぅ……はぁぁ……」
一撃でいい。私の全呪力を込めた拳を『虫』の両足に叩き込み潰すんだ。幸い奴はまだ産まれたばかり。自らの呪力を使って、肉体を再生するのは可能だろうが、『宿儺』のそれを見ていない今なら、再生のコツを掴むまでに逃げるくらいの時間は稼げるだろうという算段だった。
ーーグシャッーー
「!?」
不快な音とともに、私の呪力がガッツリ削られたような感覚が走る。見つからないように物陰から覗くと、『猫』が1匹潰されたのが確認できた。
伏黒くんの式神と違って、私の『猫』は私の呪力が尽きない限りは再生することができる。ただし、『猫』の発現には呪力を食うため、『虫』の脚を破壊するような威力の一撃を出すには、再び『猫』を出すわけにはいかない。残り1匹が逃げ切ってくれたらいいけど……。
ーーグシャッーー
『ニィィィィィ』
残念、2匹目の『猫』もたった今潰されてしまった。『虫』は追いかけっこが楽しかったのか、口を歪めて笑っている。気味が悪いが、やるなら今!
ーーダッーー
姿勢を限界まで低くして駆けた私に『虫』の反応は遅れた。この時点で溜めた呪力は奴も認識しており、迎撃体勢を取るが、遅い! 私は最短距離で『虫』の右足へ一撃を放った。
「はぁぁっ!!」
ーーブンッーー
『!?』
ーーバキッーー
捉えた。手応えあり。続けてもう一撃を左足へ。けど、恐らく浅い。左足の方は折れるほどの威力は出せてない。
「っ、『ほのぼのにゃんにゃん』っ」
『にゃぁ……』
思ったほど時間を稼げない。そう判断した私は、残りの呪力を振り絞り、『猫』を呼び出す。残念ながら今の呪力じゃ1匹しか出ない。でもいい。少しだけ時間を稼いでくれれば、この場所から離れられる!
『ニィィィィィ』
ーーゾワッーー
「っ」
強烈な悪寒。瞬間、
『バァァァァッ!!』
ーージジジジジジジッーー
全方位を襲う呪力のバリア。咄嗟に呪力で肉体強度を高める。それでも衝撃波は止められず、私は壁に叩きつけられてしまう。
これで逃げられると油断してた。くそっ、その攻撃は見たことがあったんだ。想定できたはずなのに……。
「か……っ」
息ができず、呪術が解けてしまう。視界はぼやけているけど、気配で『虫』が近づいてきているのが分かる。そして、右足に掴まれた感覚が……っ、まずい、まずいまずいまずい。次の瞬間、体が宙に浮いて、
ーードゴッーー
「が…………ッ」
叩きつけられる。
ーーゴンッーー ーーゴンッーー
ーーゴンッーー ーーゴンッーー
ーーゴンッーー ーーゴンッーー
ーーゴンッーー ーーゴンッーー
ーーゴンッーー ーーゴンッーー
ーーゴンッーー ーーゴンッーー
た、たたたき、つつ、けられれ、る。ややば、い。いたた、みもももう、ぅない。しぬ。
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冷たい。指や足先の感覚がない。
目を開いても何も見えない。真っ暗だ。
体も動かない。それどころか自分の体の境界すら分からない。
冷たくて、真っ暗……これが死? 私は死んだのか?
……………………。
違う。これは記憶だ。
しかも、それは『私』ではない記憶。私が入る前の『羽々場ねこ』の記憶だと、思う。もしかしたら、この記憶の直後ーー『羽々場ねこ』が死んだ後に『私』は転生したのか?
……たぶん、それも違う。
水だ。
ほとんど感覚はないけれど、直感的に理解する。この体は水に浸かっているんだと。さらに直感が告げている。ここは井戸だ。この記憶は『羽々場ねこ』が幼い頃に井戸に落ちた時の記憶。
……………………そうだ。
出会ったんだ。井戸の底で、あの『ねこ』に。
『ねこはいますよろしくおねがいします』
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「………………ねこ、はいま、す」
『ニィィ』
羽々場ねこがそう唱えたと同時に、彼女はその場に完全に倒れ込んだ。特級呪霊は彼女の命を遊び半分に終わらせようと近づいて、
『??』
止まる。すると、今度はキョロキョロと辺りを見回し始めた。先程まで彼女の脚を掴み、振り回して遊んでいた呪霊とは思えない挙動不審な様子である。次第に、呪霊はブンブンと空に向け、腕を振り回す。
まるでそこに『なにか』がいるかのように。
まるでその『なにか』を振り払うように。
『ゥウウ、アぁァ……』
やがて、呪霊はよろよろと覚束無い足取りで、倒れている羽々場ねこから離れていく。彼女が『それ』を呟いてから時間にして数十秒後。呪霊は動きを完全に止め、空を仰ぎ見る。そうして、呪霊は呟く。
『ねコハいいいマ、スますよろ、よよ、よろしクオネがいしマす』
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記録
2018年7月
西東京市 英集少年院 運動場上空
特級仮想怨霊(名称未定)
その呪胎を非術師数名の目視で確認。
緊急事態のため高専1年生4名が派遣され、内2名 死亡。
以下に死亡した2名の等級及び氏名を記載する。
1 4級呪術師 虎杖悠仁
2 2級呪術師 羽々場ねこ
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ねこはさびしがりやですねこはいますねこはそこにいますよろしくおねがいしますねこです