スキルクリスタルシステム   作:ぱすたご

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#2 目が覚めると元魔王の娘が婚姻を迫ってきました

 薄暗い部屋のカーテンの隙間からもれでた光に刺激され、茂夫は目覚めた。

 

「う、」

 

 まぶしいな、それに体が痛い。ん? 痛いってことは死んでないっ?! 

 

 慌てて目を見開き、痛みに耐えながら上体を起こす。なぜかはわからないが、身にまとっているものは下着と赤いバスローブのようなものだけだ。体の様子を確認してみる。所々、かすり傷がついているが、致命的な傷はどこにも見当たらない。足の指を布団の中でもぞもぞと動かすと両足に感覚を感じる。

 

 生きてる! それに切断された右足ももとに戻っているだとぉおおお。

 

 地獄のような状況から生還した喜びでベッドの外に飛び出るべく、拳を布団と共に突き上げハイジャンプを決める。

 

 やったぁああああああ、生きてるぅうううう。

 

 ベッドの外に着地を決めると同時に茂夫は布団をベッドから引っぺがしてしまった。

 

 おっと勢いあまって布団をはがしてしまった。もとに戻しておかないと。

 

 布団をかけなおすために茂夫は先ほどいたベッドの方を振り返る。

 

 え? 

 

 茂夫の思考は止まった。なぜなら、ベッドでは茂夫以外にもう一人寝ていたからだ。

 

 その人物は寝ぼけなまこで起き上がるとこちらの方をにらんできた。

 

「うるさいなぁ、こんなに寝起きの悪い朝は初めてだよ」

 

 はて、ベットにはもう一人いたらしい。しかも、この声どこかで聞き覚えが、

 

「どうして、何も言わずに黙っているんだよ。瀕死の君をわざわざ湖から連れて帰ってきたのに」

 あああああああ!! 湖で理不尽に殺そうとしてきたやつじゃないか。逃げるのに必死で気づかなかったけど、よく見るとものすごく美少女だ。

 

 茂夫の眼の前にいたのは、銀髪にルビー色の眼、耳はエルフを彷彿させる尖った耳、赤のネグリジェを身にまとった色白の美少女だった。日本には決して存在しない端正な顔立ちであった。

 

 おかしい、殺そうとしてきた相手がなぜ一緒にいる。

 

 警戒した茂夫は思わず部屋の壁際にあとずさり聞く。

 

「ちょっと待て、殺されるはずだった僕はなぜ生きている?」

 

「なぜだって? 僕は君のこと殺そうとしたけど、君に負けちゃったもん。それにその……他にも理由はあるんだけどさ」

 

 わけがわからない。なんで、僕がこの少女に勝ったことになっているのだろうか。

 不思議に思った茂夫は素直に疑問を口に出す。

 

「いったい僕はどうやって、君に勝ったんだ? あの時、どう考えても死んでいたはずなのに」

 

「やっぱり、覚えてないよね。じゃあ説明するよ。たしかにあの時、君は死んだと思ったさ。けど、次の瞬間、息を吹き返して、僕に襲い掛かってきたんだ。それはもう、びっくりしたよ。あの態勢から血の鎧と剣を瞬時に纏って、不意打ちしてきた時は死ぬかと思ったね……」

 

 目の前の美少女が興奮した様子で熱く戦闘のことを語るのを適当に聞き流しながら茂夫は考える。

 

 少女の耳の形とか、気づいたら教室から湖に落ちていたことを考えると、どうやらここは地球とはことなる別の世界のようだな。それに気絶する前に聞こえてきたオートパイロットという声が聞こえてきたことが勝手に自分の身体で戦闘していたことに関係するに違いない。だけど、目の前の少女に聞いていいものだろうか。倒したのは自分ではなく、オートパイロットのおかげで倒せましたとわかったら、再び牙をむいてくるのではないだろうか。どうしようか。うーん……

 

「なにか、考え事しているの? そんなに難しそうな顔をして」

 

「うわっ!」

 

 気が付くと、考え込み下を向きかけていた茂夫の視界には少女がいた。少女の双眼と自身の眼があう。じっと見つめられることに慣れていない茂夫は、照れと驚きのあまり尻もちをついてしまった。

 

「もしかして、僕、信用されていない?」

 

 しょんぼりとしながら、こちらに語り掛けてくる少女。

 だが、茂夫にとっては仕方のないことだ。いきなり脅され、理不尽な選択をせまられ、殺されそうになった記憶がある。茂夫は少し怒りながら少女に向かって話す。

 

「そりゃあそうだ。僕のこと、理不尽に殺そうとしてきた相手だぞ。信用しようにも無理がある」

 

「違う。理不尽に殺そうとしたわけじゃない。僕にだって、ちゃんと理由はある。だって、パパとママの形見の大切なシステムボードを君は取り込んだ!! あれがパパとママの生きた証だったのにそれを君は奪った。なんてことをしてくれたんだ。絶対に内臓を引きずり出してぐちゃぐちゃに切り裂いてやるって、その時は思ったんだ」

 

 確かにそれは怒る。偶然とはいえ、形見を己が体に取り込んでしまったことを悔いる。

 

「この通り、悪かった」

 

 茂夫は目の前の少女に深く頭を下げて、謝った。

 

「あー、いいよ。過去は過去、今は今。今は怒ってないんだから。むしろ、君に感謝しているくらいなんだ」

 

「え? 僕は君のパパとママの形見を奪ってしまったんだよ。それなのに感謝?」

 

「それが戦っているうちに気が変わったのさ。オート系のスキルを使用しているとはいえ、パパとママのシステムボードの力を十分に発揮して戦いを挑んでくる姿は僕の心に響いたよ。それにあんなことされたからにはね」

 

 オートパイロットのスキルのおかげで助かったみたいだ。それにしても、意識を手放している間、僕はいったい目の前の少女に何をしたんだ。

 

「あんなことって?」

 

 ドキドキしながら茂夫は聞く。

 

「馬乗り」

 

 真顔で答える少女。

 

「馬乗りしたのがなにか問題があるの?」

 

「あー君、転移者だからこの世界の文化とか詳しくないのか。魔族のメスは初めて馬乗りされたオスと婚姻を結ぶ定めなんだ。この元魔王の娘、アイゼス・クロツウェルに勝って馬乗りしたからには僕の伴侶になってもらう定めなのさ!」

 

 おいおい。 最強美少女と横幅しか伸びしろがない俺が婚姻だって?! 異世界に来てから一日目で結婚って、もうRTAだよ。もっとこう異世界って、冒険とか学園とかいったりして、キャッキャウフフな青春をしてから恋愛、結婚っていうステップじゃないの?! なんか、はしご外された気分……。とはいえ、こんな美少女と結婚できるなんて最高じゃん! 

 

「あ、まぁ、僕でいいならはい。よろしくお願いします。名前は本刃茂夫(ほんばしげお)です。」

 

照れ隠しをして、ついたどたどしい敬語になってしまった。

 

「じゃあ、これからよろしくね。茂夫」

 

 

 こうして、異世界転移してから20時間後。僕は元魔王の娘と事実上の婚姻を結んだ。

 

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