マジンカイザーSKLの地獄公務員と由木中尉が仲良くお仕事をしている話
本編見たのが最近のため違和感アリの可能性。ヴァーサス読破済、OVA準拠

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魔性

山岳地帯に存在する武器製造プラントを停止させろ、という命令が下った。破壊ではなく停止命令であるのは、WSOもまたその設備をどうにかして利用したいという思惑もあるのだろう。

季節は真冬。普段は武装組織が屯するこのプラントも、雪が吹き荒ぶこの時期は命惜しさに誰も近づかない。悪天候の冬山と、武装犯との戦闘を天秤にかけられた結果、由木は防寒具に身を包み、切り立った崖の上に立つこととなったのである。

 

 

山の天候の影響を受けない為か、大きく切り立った崖をくり抜くようにそのプラントは存在していた。高さは二十数メートルに及び、中腹地点にはヘリコプターの発着地点があるが、猛吹雪である今の天候では簡単に吹き飛ばされて終わるだろう。飛べる機体といえば、カイザーのスカルパイルダーと、ウイングルのレディファルコンくらいのものだ。

プラント内部に存在していた防衛設備は、先行したカイザーが殲滅している。彼らにしてみれば手応えのない、極めて退屈な戦いだったのだろう。愚痴と文句の入り混じった抗議が、たびたび由木の耳にも入っていた。

 

「機材の積み込み、終了しました」

「レディファルコン準備できています」

「了解」

「由木中尉、本当に作戦を遂行するのですか?」

 

由木に報告を行った先遣隊の女は、静かに、問い詰めるように顔を近づけて囁く。

 

「何か、問題がありましたか?」

「いえ……なにも」

「状況が変わったら報告をしてください。作戦の変更を検討しますので」

 

不満げな女に由木はそう返すと、自らも目視でパイルダーの状態を確認したあと、ハンドモバイルを操作するが、うんともすんとも言わない。軍用の機材ではあるが、もしかしてバッテリーが落ちたのかと首を傾げながら、交換のために一度カーゴへと向かう。カーゴ前で着々と仕事をしていた同僚の男が由木を振り向く。

 

「どうかされましたか」

「ハンドモバイルが動かなくて、予備機に、っ!」

 

瞬間、背中から走った衝撃に由木は息を詰まらせた。次いで、後頭部に強い衝撃が走る。真っ白な雪の上に落ちた血液が湯気を立て、吹雪であっという間に覆い隠された。

由木は着ている衣服を掴まれ、そのまま男にずるずると引き摺られる。背中にナイフを突き立てられ、そのまま後頭部を強打されたらしい。由木は引きずられながら、自らの体越しに己にナイフを突き立てた下手人を見た。

先ほど会話した、同じ防寒具に身を包んだ女だ。同じ技術士官だが、専門が違うため普段の交流は少ない。精々顔と名前が一致して、時折同じ仕事をするくらいのもので──だからこそ、害される理由に心当たりはなかった。

男は由木を軽々と引きずり、崖端に辿り着くと、そのまま由木の身体を崖下へと放り投げた。ふわりと体が宙に浮いたかと思えば、そのまま重力に沿って落下する。吹雪対策のために付けられたゴーグルとフェイスマスクの為に、表情までは伺えなかったが、素性は間違いなく今回の任務のために招集された正規隊員だった。

 

「いっ、だ……」

 

二十数メートルの落下の末、強かに身体を打ちつけながら由木の体は雪の上に着地した。新雪がクッションになったのか、即死は免れたものの、全身を強打した衝撃で動けない。

加えて、出血と雪が急激に体温を奪っていく。由木を即死から救った雪が、今は由木の命を吸い取っていく。意識が消えるのに、そう時間はかからなかった。

 

 

 

瞼が異様に重たい。

由木が意地と気力でどうにか視界を開くと、そこはどこかの建物の中だった。部屋とするにはかなり小さい。埃を被ったデスクとチェアがあるため、元は守衛室のような場所だったのだろう。暖房設備が生きていたのか、部屋全体の温度はは夏と勘違いするほど高い。朧げな視界でぼんやり天井を見上げて思考を整理している由木の横から、いっそ場違いなほど明るい声が降ってくる。

 

「お。起きたか」

「海動中尉……?」

「オメーもしぶといよなあ」

 

海動はケラケラと軽快に笑い、由木の身体をゆっくりと起こして壁にもたれかかるのを手伝った。自分にかけられているのが真上の白いコートと海動のマントであることを察し混乱する由木に保温ボトルを押し付ける。

 

「低体温症」

「……あ、そっか」

「知識はあるみてーだな。つーわけで飲め。話はその後だ」

 

低体温症の対処法としては、とにかく身体を温めるしかない。言われた通り保温ボトルの中身を飲む由木を確認して、海動はハンドモバイルを操作した。すぐに一つしかない扉が開き、真上が部屋の中に入ってくる。部屋が暖かいを通り越して暑く感じられるためか、真上の顔が一瞬顰められる。

 

「じゃ、説明は任せたぜ真上チャン」

「遠くに行くなよ」

「へーへー。ったく、あっちいな」

 

入れ替わるようにして海動が出て行き、由木の隣に真上が腰を下ろす。由木が事態を把握できずに混乱していると、真上がいつもの真顔のまま口を開いた。

 

「『由木中尉の消息が知れない。ハンドモバイルによる位置情報を鑑みるに、クレバスに落下した可能性が高い』」

「……え?」

「俺たちに入った通信だ。もっともお前は地面で凍死しかけていたがな。一体、どんな恨みを買った?」

「知りませんよ……。それより、任務は」

「終了した、と報告を受けている。事実、一度撤収した後だ」

「では二人は何故ここに?カイザーも共に撤収したんじゃ」

「SKL-RRで来た」

「はあ……は!?」

 

つまりは無断出撃である。その言葉の意味を理解して、由木は飛び跳ねるように身体を真上へと向けたが、瞬間、頭と腹の二箇所に激痛が走り、思わず患部を抑えて悶絶する。馬鹿なのか、と言わんばかりの真上の寄越す冷めた目線を受けながらも、由木は思った。こちらの台詞だ、と。

 

「司令部の許可は?」

「取ってると思うか」

「馬鹿ですか?助かったのは事実ですが……」

 

だが、由木一人の人命救助のためだけに戻ってくるとは少々考えにくい。それに、吹雪いていたとはいえ当時あれだけの人員がいて、一連の所業を見逃すということがあるのだろうか。

額に手を当てて考え込む。それを見た真上が自分のハンドモバイルを脱いで投げ渡してきた。確認すると、器用に通信機能が切られている。位置情報などで捜索されることを忌避してのことだろう。

 

「撤収までのデータが入ってる」

「ありがとうございます」

 

身につけると、己のものよりやや大きい。それを起動して、通信機能を復活させないように気をつけつつ武器製造プラントの状況や一連の報告を確認していく。

全てを確認して、由木は思わず眉を顰めた。

 

「……これで終わりですか?」

「ああ」

 

通信越しに確認できる限りでは、つつがなく任務は終了している。技術に精通していない司令部では任務完了として認識していてもおかしくはない。

しかし、技官としての由木の直感が警鐘を鳴らしていた。その警鐘の正体を探るため、思考を巡らせる。

今回の任務は武器製造プラントの掌握と、今後WSOの職員がプラントを管理下に置くまで第三者に利用されないためのプロテクト構築。既にプラントの防衛機能は全てカイザーが破壊した後であるし、プロテクトの構築も終了していた。

 

(……防衛設備をカイザーが破壊済み?)

 

ふと、思考が引っかかる。しかしその答えを得るにはこの情報量では足りない。真上にハンドモバイルを手渡しで返却して、由木は悲鳴を上げる身体を無視して立ち上がった。

 

「何処に行くつもりだ」

「プラントの内部へ」

 

その言葉を待っていたと言わんばかりに、真上の口の両端が吊り上がった。

 

 

 

由木を背負った海動と真上が連れ立って金属製の通路を歩く。冷えた空気の中、由木は周囲を見渡した。あちらこちらにカイザーが暴れ回った跡が残されている。一応建物自体とあらかじめ言われていた製造レーンは健在であり、二人が一応真面目に任務に取り組んだ形跡が伺えた。

所々瓦礫で塞がれた道を軽々と突破して、目的地であるプラントのコントロールルームの入り口へ辿り着く。本来ならばパイルダーで瓦礫を突破したであろう道を難なく踏破した二人の身体能力に素直に感心しつつ、由木は入り口のロックを解除した。海動と真上が扉を潜る。

 

「ウゲ、」

「なんだこれは」

 

二人が思わず声を漏らすのも無理はない、と由木は思った。由木自身、驚きで声も出なかったのだから。

コントロールルームは中央に大きなスクリーンが一つあり、それを覆うように小さな液晶画面が幾つも並んでいる。その多くは接続先の監視カメラが破壊されたのか真っ暗なままで、ごく一部だけが通常通りに映像を映し出している。周囲に配置されたコンピュータは起動状態であり、真ん中の大きなスクリーンには意図的に布がかけられ画面が見られないようになっていた。

そして、その中央にあったのは、この空間には似つかわしくない祭壇だ。一体何を捧げていたのか、赤黒く変色した液体がべっとりと染み付いている。

 

「報告にはありませんでしたよね」

「おいおい、きな臭くなってきやがったぜ」

「となると、あのスクリーンの向こうが怪しいか」

「確認します」

 

由木が、メインコンピュータのコンソール画面を起動して手を滑らせる。WSOがかけたプロテクトだ、由木に突破できないはずが無い。

しばらく操作に集中していたが、やがて由木の手が止まった。

 

「何があった」

「このプラントの防衛設備は全て破壊済み、ですよね?」

「ああ?そうだっつってんだろ」

「残っています」

「何だと?」

 

戦場におけるミスの指摘に、二人が態度を変えて身を乗り出した。由木は分かりやすいようにスクリーンを表示する。

そこに立っていたのは、一機のロボットだった。これまで出会ってきた全てのロボットの中でもっとも近い機体を挙げるなら、他でも無いカイザーだろうか。一本の剣を地面に突き立て、まるで何かを守る騎士であるかのように。背後には岩が山と積まれていて、何を守っているかまでは不明だ。

 

「オイオイ、俺たちこれ見たぜ?」

「技官の報告では、これは既に抜け殻であり、エネルギーが切れている為に人が乗りこもうが起動することはない、とのことだが」

「いいえ。寧ろこの機体こそが防衛機能の要です。製造プラントを動かそうものなら、この機体が呼応します。内部に人間が居ようものなら、間違いなく全滅するでしょう。最悪、麓にあるWSOの支部にも被害が及びます」

「……雪崩か」

 

外は雪が降りしきっている。新雪が分厚く積み重なった今、何かのきっかけで雪崩を起こすことは容易いだろう。無論その対策はしているが、人型ロボットの手が加われば被害が拡大するのは想像に容易い。

 

「カイザーは」

「外だ」

「出撃準備を。こちらからスカルパイルダーに通信を繋げます!」

「了解した。行くぞ!」

「おうよ!」

 

海動と真上が由木を残し、来た道を駆けて戻っていく。由木はスカルパイルダーに通信を繋げながら、生き残った監視カメラの全てを確認する。そして、コントロールルームの中央に位置する巨大なスクリーンの覆いの操作モニターを呼び出した。

 

「この先に、何があるっていうの……?」

 

祭壇は、スクリーンに向かって作られているようにも見えた。神体はスクリーンの映し出す向こう側の空間にある。

しかし、優先すべきは何故か残された一機のロボットだ。残された情報を順次確認していくと、何度か起動した痕跡が残されている。あの岩の向こうに何かがあるのは間違いないだろう。

 

『由木中尉!こちらルシファー4、アモン6と共に出撃する!』

『っしゃ、行くぜ!』

「了解!」

 

由木がそう答えた瞬間、呼応するかのように灰色の機体の目が光る。剣を携えて、一方をじっと、何かを見据えるように定めて動かない。

───数秒後。

壁を砕くようにして、カイザーが殴り込んでくる。この瞬間、ロボット同士の戦闘が切って落とされた。

 

 

 

灰色の機体が守っていた場所は外に近い場所であり、二機の戦闘はすぐに場所を外へと移した。大きさや武装、純粋な性能だけで言えばカイザーが上回る。

それでもなお、カイザーは攻めあぐねていた。

 

「チィっ、ちょこまかしやがって」

「変わるか?」

「あ、っとォ!?」

 

牙斬刀は何度も灰色の機体を捉えようとするのだが、機体としての小柄さを利用しその全てが受け流されるかかわされる。吹雪の中で視界は悪く、それもまた苦戦に拍車をかけていた。

ぶわりと雪が舞う。海動が直感に従ってレバーを押し込みカイザーの腕が分離したのと、カイザーの腕の関節部分に剣が振り下ろされたのは同時だった。

 

「っぶねえな!」

「海動、俺が出る!」

「おうよ!」

 

視界が効かない中で高機動の機体は分が悪いと踏み、海動と真上が入れ替わる。カイザーが飛ばした腕が再び接続され、胸部のブレストリガーを抜いた。

 

「さあ、どこを撃ち抜かれたい?」

 

真上が問いかけるも、当然反応はない。真上が狙いをつけたのと、灰色の機体がマシンガンを構えたのは同時だった。互いに弾丸が発射され、中央の位置でその全てが撃ち落とされ落下する。

 

「ウイングクロスしてくるべきだったか?」

「ウイングルのパイロットも居ないのにか?」

「俺らは兎も角、由木は呼び出せねえのか聞いてみっか。おい、由木!」

 

海動が通信越しに由木に呼びかける。プラントのコントロールルームに繋いだ回線は、しかし海動の呼びかけにも沈黙を保っている。

 

「おい、出ねえぞアイツ」

「何?」

「ったく、仕方ねえ、ハンドモバイルに」

「忘れたのか?あのハンドモバイルは今は機能していない!」

 

戦闘を続行しながら突っ込まれ、二人の間に沈黙が生まれた。相変わらず戦闘は続くが、お互いに決定打が生まれない為に、事実上のこう着状態が続く。

僅かな静まりの末、珍しく、二人の言葉が重なった。

 

「「あのバカ、どこ行った!」」

 

+++++

 

ブーツを鳴らし、由木は細い通路を駆けていた。スクリーンの映し出していた光景、あの灰色の機体が守っていた岩の向こう側へと走る。

ハンドモバイルが使えないために、直接頭に叩き込んだ見取り図と実際の通路を比較して、隠し通路を見つけ出す。

痛み止めを飲んだわけでもなく、傷口の痛みが取れたわけでも無い。それでも熱に浮かされたように、由木は身体を動かしていた。

 

(あの光景を、彼ら先遣隊が目撃していたのだとしたら───)

 

スクリーンの向こう側。覆いが取り払われた“それ”を見た瞬間、由木は脳に電撃が落ちたような衝撃に囚われた。思い返せば、由木が隊員に刺されたあの瞬間、周囲にいたのは全てが先遣隊のメンバーだ。そして、コントロールルームに残された祭壇と、WSOが『再利用可能』と判断するほどに手付かずだった武器製造プラント。

岩肌が剥き出しになった細い通路に手を着きながら進む。腹の傷口が開いたことにも気付かずに。そうして、ボロボロの鉄扉を開いた先に、“それ”はあった。

 

「…………」

 

そこに居たのは、一体の朽ちかけたロボットだった。機体としては、防衛機能としての戦闘能力を有していた、現在カイザーと交戦中のロボットと同一個体だろう。由木の脳裏に量産型の文字が頭に浮かぶ。

しかし、言いようのない何かが、あの機体とは違っていた。ロボットに少しでも携わる人間であるならば、間違いなく精神を侵されるような、そんな魅力がある。

しかし精神干渉を行うロボットという観点から見るならば、由木にはカイザーという覚えがあった。

 

(……魔性)

 

そう、としか言い表せない。恐らく雪が降らない期間このプラントを占拠している武装集団は、武器を手にする為ではなく、このロボットを信仰するために集まっていた。

否、もしかしたら、このロボットという“神体”を守るために武装を始めたのかもしれない。しかし、今はそんな成り立ちを思考している時間ではない。

ロボットを見上げる。普段なら絶対にやらない行為……無人のロボットと“対話”を行うために、由木は意を決して冷えた空気を吸い込んだ。

 

「……貴方の仲間のロボットが、カイザーと交戦しています。近く、カイザーが勝利するでしょう」

 

重力炉のメルトダウンからすら生還した海動と真上のことだ。あの二人がたった一機の機体に敗北する光景は思い浮かばない。

しばし、朽ちかけた機体はそのままだった。だが、由木が二度目の声をかけようと口を開いた瞬間、目に光が灯る。

そうして朽ちかけた機体は…………ゆっくりと、立ち上がった。

 

 

 

灰色の機体は、呆気ないほど簡単にくずおれた。

どれだけ頑丈に作られていようが、メンテナンスも補給も受けられなければ、機体はやがて朽ちていく。最低限の設備があるプラントで修復自体はしていたのだろうが、人の手による整備が行われなかった灰色の機体が、劣化するのも当然といえよう。

つまり───キレた海動が武器をかなぐり捨て捨て身の格闘戦に移行した瞬間に、勝負が付いたのだ。あれほどまで高速のヒット&アウェイを徹底した戦法、その真意に真上が嘆息した。

 

「そんだけボロい機体でよくやったが、残念だったな。俺たちが地獄だ」

 

カイザーが牙斬刀を振り上げる。灰色の機体の武装は全て外れて抵抗の手段は残されていない。そのまま即座に機体を切り倒そうとして───

 

手が、止まる。

新たに現れた一機のロボットが、二人の視界に映った。

海動も、真上も、そのロボットから目が離せなくなった。

ガラガラと石を押し除けるようにして、朽ちかけたロボットが立っていた。灰色の機体と同一の個体だ。

 

「なん、だ。ありゃ」

「わからん。しかし───」

 

朽ちかけたロボットがカイザーを、そのパイルダーに座る二人のパイロットを見ている。

指が動かない。視線が外せない。

しばしの見つめ合いの末、最初に動いたのは海動だった。通常では考えられないほど静かに機体を操作し、牙斬刀を背中に戻す。朽ちかけた機体はそれに静かに頭を下げたように見える動作を行い、カイザーに倒された灰色の機体を見る。

そうして、灰色の機体は立ち上がった。二体のロボットは肩を並べるようにして、朽ちかけた機体が座っていたあの空間へと消えていく。

 

「なんだったんだ、ありゃ……」

「海動」

 

呆然と後ろ姿を見送った海動の頭上から、真上が声をかける。どこか呆れた口調でパネルをトントンと叩いた。

スクリーンに、倒れ込む由木の映像が映っていた。

 

+++++

 

「近く、このプラントは崩壊します。あの二機には自爆装置が内蔵されていて、起爆はそう遠くない」

「雪崩は」

「この場所ならば、被害は出ないでしょうけど……二人は、カイザーで先に帰還して下さい」

「断る」

 

回収した由木から告げられた言葉を、真上は即座に切って捨てた。灰色の機体との戦闘は中々に楽しめたが、後始末を考えると面倒だからだ。

そもそも二人とも無断出撃の末にここに居るのだが、これだけの出来事があった以上、由木の証言は必要になる。無断出撃の件を有耶無耶にするためにも、先に帰る訳にはいかないのだ。

 

「つーわけで、自爆は俺らが帰ってからにしてくれ」

「明日の12:00に輸送機を要請してある。それが過ぎたら好きにして構わん」

 

二機のロボットにそう告げて、二人は元守衛室へと戻った。暖房がガンガンに焚かれた部屋は暑い。いつの間にか意識を失った由木を野営用の毛布の上に寝かせて、真上の白コートと海動のマントが掛けられる。

 

「うお、真上。冷たくねえけどあっちい」

「低体温の次は高熱か。忙しない奴だ」

 

WSOに帰れば、今回の件で様々な方面から詰められる事になるだろうが、二人にとっては極めて面倒だ。煩わしいあれやこれやの盾になってもらうべく、なるべく早く体調を回復してもらうために、二人は由木の看病を始めたのだった。


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