アリス・イン・オサレワールド   作:甲乙兵長

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近頃ブリーチ熱が再燃してきてるのでリハビリ
好きな作品×好きなキャラ=モチベ



プロローグ

 

 

「陛下」

「戻ったか、ハッシュヴァルト」

「は。御命令通り、我ら見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)に弓引く反抗勢力を、残らず誅伐いたしました」

「哀しいな、争いは。数少ない生き残りですら手にかけねばならんとは」

「御心痛、お察しします」

「平和に至る、必要な犠牲だ。我々の掲げる大義を知らしめるための。葬られた多くの命に感謝しよう。そして必ず報いよう。ゆえに決して立ち止まりはせん。決してな」

「はっ……して、陛下にご報告すべき事項が」

「なんだ」

「レジスタンスを率いていた首魁、ペーター・エーテルラントの地下研究施設に、とあるモノが安置されておりました。こちらが、関連する研究資料の一部でこざいます。大半はすでに『滅却の火』にて破棄されており、復元はほぼ不可能となっておりますが……」

「…………、…………、なるほど。あやつめ、今際の際に成し遂げたということか」

「ご存知なのですか?」

「あぁ。ヤツはこのために私から離れたといっても過言ではない。私の与える力ならば容易に叶うはずのものを、ついには己の力だけでやってのけたか。用心深い……。

 この被験体は?」

「柩でしたら、すでに城内へ」

「ならば解凍し、目覚めさせよ」

「よろしいので?」

「私を仇と思うならば、その恨み諸とも手中とするまで。二心ある者など、騎士団では今更珍しくもない。そうでなかったとて同じことだ」

「承知致しました」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

【状態の変化を感知】

【機能解凍の信号を受信……休眠状態を解除します】

【――おはようございます(グーテンターク)わたし(アリス)

 

 穏やかな目覚めだった。

 ゆっくりと意識が静けさから浮き上がり、目蓋の向こうから現実の光が差し込んでくる。

 

「目覚めたようだな」

 

 どこかの一室……。

 立ち並ぶ白服たちの一団。その中のいかにも身分の違いそうな金髪長髪のイケメンがひとり、こちらに話しかけてくる。

 誰?

 

【簡易霊子観測開始】

【霊圧パターンを分析……魂魄反応:(ブラウ)。対象人物を滅却師(クインシー)と判定】

【基幹及び代脳データベース照合……ヒット】

【対象は、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)所属、星十字騎士団(シュテルンリッター)最高位(グランドマスター)、ならびに、皇帝補佐。

 個体名:ユーグラム・ハッシュヴァルトであると結論します】

 

 は? ポテト?

 寝覚めの微睡みが一気に吹き飛ぶ。目を見張り、改めてじろじろと顔面偏差値の高い容姿を確認した。そのクールな顔立ちと女と見まがうばかりの長いブロンドは、まさしく記憶にある『彼』と似たもの。

 だがポテト……ハッシュヴァルトは、とある少年誌の象徴的漫画のひとつ……『BLEACH』における創作上のキャラクターのはず。よくできたコスプレ? いや、目の前にいる相手からは、演技だとかサプライズだとかのおふざけ要素らしい雰囲気はゼロ。後ろの白ずくめたちからも、厳格な凄みと緊張感がある。

 

「混乱しているようだな。随分と人間味のある……いや、失言だった」

 

 代表して発言する彼は一旦目を伏せ、居ずまいを正した。

 

「まずは名乗ろう。

 私は見えざる帝国皇帝補佐、ユーグラム・ハッシュヴァルトという。

 自分のことは認識できているか、AL-1S(アー・エル・アインス)

「あー、える……?」

 

 なんだソレ。俺は………―――

 ……わからない。俺は、()()

 

【個体表記:AL-1S(アーエルアインス)

 人工強化聖兵創造プランの第一成功例であり、最後の検体。

 創造者は、アリス、と呼称していました】

 

 アリス? なんか聞いたことあるぞ。ありふれた西洋っぽい名前としてじゃなく、AL-1Sという表記自体を、何かで知っているような……。

 待て。

 さも当たり前の様子で違和感を持たなかったがそもそも、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

【これはナビゲーションです。あなたの基幹頭脳の一部と、並列する十機三柱の多目的演算用代替頭脳ネットワークを使い意志疎通を図れるだけの独立知性を獲得しています】

 

 なるほどわからん。

 

【あなたの目的遂行をスムーズとする補助AIと考えてください。

 現在本機に行動目的、規定事項等の戒律は設定されておりません。創造者死亡のため本機の原動理念は全てあなた自身が定める必要があります。速やかな目標の設定を推奨します】

 

 ……とりあえず解説サポートしてくれる脳内フレンズがいるものと解釈しよう。うん。疑問をある程度省略してかなきゃ何も見えてこない。

 思考放棄気味に機械の警告文みたいな内容から意識を逸らしつつ、口を開いた。

 

「アリス」

「……何?」

「あーえるなんとかじゃない。アリス。そう、呼ばれていた……らしい」

 

 自分のことなのに自覚が欠片もないため、無愛想な調子でボソボソ返した。その態度が気に障ったのか、後ろに控えた白づくめのひとりが「貴様! ハッシュヴァルト様に無礼な……!」と怒りに身を乗り出すが、当人が「止せ」と遮った。

 無数の怪しげな集団に囲まれた状況……不利に違いないが、へりくだるべきだろうか。けどすまん。俺は今さっき気付いたばかりの新たな真相に突き当たっていて心に余裕がない。

 やたら前髪が邪魔だとは思っていた。視界にカーテンをかけるほどで、腰かけるメタリックな感触のリクライニングチェアの足元まで垂れ下がっている。その繁殖具合たるや、まるで全身が髪に巻かれているような錯覚さえするほど。くしゅくしゅとなめらかな髪質がくすぐったい。地下空間の冷たい外気で皮膚がとても”スースー”していた。

 すなわち、現状俺は全裸であった。ガッツリ自分の身体を見下ろす勇気はないけどな。ほぼ確信持って分かる。

 さらに、口から紡がれた音色は平坦ながらもころころと可愛らしく、明らかな少女のそれ。

 俺……女の子になっとらんか?

 

【はい。アリスは女性型です。そして、いまのあなたは裸んぼです】

 

 脳内フレンズがすかさず追い討ちをかけてくる。

 続けて、何もないはずの空中に半透明なイメージ映像が現れる。ハッシュヴァルトたちはなんら無反応なので、それは俺にしか見えていないのだと悟った。

 目の動きに合わせて移動する、網膜に直接刷り込まれた女の子の全身立体映像。

 立ち姿でも床につきそうな長さのボリューミーな髪。あどけない人形のような白い肌と整った容姿。透明感のある碧い瞳。まだまだ未成熟で起伏のほぼ皆無なスタイル。

 ってか、アリスじゃん。外見が丸っきりソシャゲ――ブルアカ(ブルーアカイブ)キャラの『天童(てんどう)アリス』じゃん。思い出した。個体表記とかもゲームそのまんまだ。なして?

 精神的には男のつもりなのに、実際身体は少女に性転換したどころか別作品のキャラで、これまた世界観の繋がりが一切ない漫画の作中キャラとご対面中。

 考えるに、これは創作界隈で流行りの転生した現象ではなかろうか。でもブリーチにアリスみたいなキャラがいるはずが……マジでどうなってる?

 

【詳細不明。あなたの基幹頭脳にインプリンティングとは異なる由来不明の記憶と知識ファイルを検知。解析………………警告禁則事項に抵触します繰り返します禁則事項に

 ERROR(エラー)

 ERROR(エラー)

 ERROR(エラー)……情報を取得できません】

 

 あーマジっぽいヤツだこれ。あと機械的なガイダンスを聞いてたら自分がパソコンになったような気分になるからやめれ。

 脳内会話でぼーっとする俺に、ハッシュヴァルトは改めて言葉を伝える。

 

「わかった。訂正しよう、アリス。

 自分が何者かは認識できているものと解釈する。

 此処は見えざる帝国の地下。お前はとある場所から運び出され、ある方の命によりスリープ状態から解き放たれた―――」

 

 ハッシュヴァルトは、都度質問を繰り返しては矢継ぎ早に状況を補足する。その中で(ホロウ)のこと、死神や滅却師、尸魂界(ソウルソサエティ)と見えざる帝国の関係性など、世界観に関わる必要最低限の知識を詰め込むように与えられた。本当に触りも触り。ヤバい怪物の討伐方法のスタンスの違いから二つの勢力が対立していたという朧気なニュアンスがわかった程度だ。

 正直、原作知識がなければ半分も把握できなかったかもしれない。

 それにしても、皇帝補佐直々のお出迎え……かなり厄介ネタ臭が漂う。

 そして、ひとしきりの説明責任を果たしたハッシュヴァルトは最後に聞き捨てならないセリフを放った。

 

「ではアリス。ある程度事態を呑み込んでもらって早々済まないが、我々についてきてもらおう。拒否権はない。これは王命である。

 陛下――見えざる帝国皇帝にして、我らが滅却師の父たる御方であらせられる、ユーハバッハ陛下が、君をお待ちだ」

 

 

 

 …………ゑ?

 

 

 





最初だからゆったりと
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