おれのターン!
原作キャラを召喚!
バトル!
「残留した断片的な記録によれば、『聖芒計画』には二つの製造ラインが存在した。
『Aロット』と『Bロット』。エーテルラントにとっての本命――言わずもがな君――と、我々の関心を買うためのデコイでありデモンストレーション。だが、エーテルラントほどの男が手掛けたものがサブプランとはいえ張りぼての粗悪品であるはずがない。
事実、レジスタンス掃討に出撃した星十字騎士団と相対したのは、反乱滅却師に加えBロットで製造された機械人形の兵隊たちだった。加え、水増し部隊に思われた奴らは、決して侮れる力量ではなく、なおかつ機械らしく命令に忠実で、生身の兵士のように傷付く恐怖も痛みも感じない。殺戮マシンが雪崩のように襲ってくるさまは聖兵に少なくない被害をもたらした。
Bロット・General級、
「―――
ハッシュヴァルトの語りに繋いで、思わず俺の口からこぼれた名前。
ああよく知っている。頑丈な拘束台にギチギチで固定された大柄細身の人型シルエット。冷たい色合いの鎧兜と装甲。スリット状の兜の隙間から意思の光は見受けられない。今のところは……。
“滅却師は弓を遣う”という固定観念を最初に破壊したのは別の奴だったが、それを新たにガトリングやミサイルといったガチ近代兵器で踏み越えてきた『K』の
護廷最速を称する隠密機動の長にして二番隊隊長・
「アレと、戦う?」
「そうだ。命令系統を見えざる帝国所属に書き換えてあるため、今は我々の命に従うようになっている。
内蔵義魂の人格設定は白紙だ。アレもまた、エーテルラントの遺作には違いないだろうが、現状単なる機械仕掛けの兵器と変わらない。同族意識や憐れみ、無論容赦も不要だ」
いや身内感覚で戦意が鈍るとかいう話じゃなく。
俺の向ける何か言いたげなジト目をスルーして、ハッシュヴァルトは頭上を見上げた。視線の先を追えば、エ○゛ァ零号機起動実験場のような高く取っ掛かりのない壁面に一部ガラス張りの面がある。観覧席のようなそこから見下ろす形で、明かりに揺らめく黒いマント姿のシルエットが佇んでいた。
此度の主賓。ユーハバッハだ。
「エーテルラントの本懐であるはずのお前が、たかが量産品ごときに劣るようでは話にならないと陛下はお考えだ。認められたくば、まずは己が有用性を示せ。
陛下の御期待を裏切るな」
釘を差し、皇帝補佐は訓練所を後にする。
状況はさながら御前試合のおもむきといったところか。それとも耐久試験とか、地下闘技場とか……蟲毒とかかもしれんけど。
何はともあれ、やるしかないらしい。ここで役立つってことを証明できなければ最悪、死んでも構わないみたいな口振りであったし。
問題は………そもそもどうすりゃいいのかって話なんだけど。アリスの
ここは困ったときのフレンズ頼み。さっきは妙に静かだったが。
ヘイ
【私のユニット名はSiriではなくネットワーク総括担当にして
問いへの解答ですが、霊子礼装の展開を推奨。要請及び環境危険度上昇に伴い霊圧出力を平常値から戦術態勢に移行します……。
警告。正面から熱源。
はい?
はっと意識を戻し目を見張れば、あとほんの数メートルにまで迫った無数のミサイルが。
致命的に回避が間に合わない―――ッ!
脊髄反射的に腕で頭を庇うも、凄まじい衝撃と熱波、そして爆音が襲いかかる。こんな小さな小娘の身体なんて弾き飛ばすどころか跡形もなく肉片に変えるであろう過剰な火力制圧力。
だが……
「……全弾命中。目標――健在」
正面のヒトガタからそんな分析が聞こえてくる。拘束帯はいつの間にか地面に散らばり、展開した装甲からミサイルの射出口を晒しながら。
始めるなら始めるって宣言してくれませんかね……!
不親切な苛立ちが募る一方、あれだけの爆熱を直接浴びてほぼ無傷という己の奇怪さに首を傾げる。しかしそれも、腕に走る回路のような紋様を見て納得がいった。
【
『
脳内フレンズことアイシス――面倒だし
「当初の推定ダメージ量を大きく下回る。敵の防御性能評価を上方修正し、攻撃手段を再検討」
安っぽい安堵も束の間、実験方法を思案する科学者のような無機質さで、BG-9はどこからか新たに“ガシャリ”と剣呑な円筒状の物体を取り出し、こちらに向けた。作中でも披露した、見覚えのあるガトリング砲だ。
鈍色の銃身が回転を開始。やがて円に連なる銃口から大気を連打する鋭い銃声が轟いた。
「ッッ……ッ……!!」
鉛玉――この場合は霊子の弾丸か?――の雨がしたたかに打ち付ける。避ける選択肢など端からない。その場で身体を強張らせ耐えるのが精一杯の制圧射撃。
静血装の恩恵で皮膚を貫通こそしないものの、薄い鉄板ごしに何度もハンマーでけたたましく連打されてるような感覚が全身を襲う。普通に痛い。けど耐えられないほどじゃない。
しばらく耐え忍んで反撃の機をうかがうか? 弾も霊子なんだとしたら弾切れするかは貯蔵の霊力次第か? 少なくとも銃身過熱でイカれるってことはなさそうだが。どこまで物質世界の常識が適用されるんだ霊子兵装って。ってかまずこっちの攻撃手段を模索しないと。静血装を稼働してたら攻撃用の『
くそ、考えがまとまらん……! 悠長に構えてたらそのうちに―――
「効果有りと判断。相手の高密度装甲に対して貫通性能をさらに追及する」
工事現場の騒音並みに喧しい連射の中、“ヒュン”と異なる種類の風を切る音が聞こえた気がして。
【警告! 危険度高レベル攻撃。血装強度圧縮を―――】
「……っぁ……?」
腹が熱い。
見下ろすと、そこには機械の触手のようなモノが生えており、食い込んだ……貫かれた部位から滲み出す赤が、白いワンピースをジワジワ汚していく。
一瞬状況への理解が及ばず呆然と固まり、実際の傷を目にしたせいか焼けるような激痛が次第に思考を塗り潰し始める。
「敵の明確な負傷を確認。この手段を有効打と判断しさらなる追撃を敢行する」
“ドクン”、“ドクン”……鼓動の音が頭のすぐそばにあった。辺りが異様に静かだ。ケイが何か言っている。冷や汗が顎から伝い落ちた。鮮血が白を染めて。……痛い。いたいっ。イタいッ―――ッッ!!
身体に入り込んだ異物感と不快感をなんとかしたくて咄嗟に触手の槍を握るも、身じろぐだけで引き裂かれるような痛みがブリ返す。顔をしかめたまま打開策をようやく考え始めても、とうに遅い。
ハッとあれだけ五月蝿かった銃声がいつの間にか止んでいると気づいたときには、放たれた無数の触手が俺の胴体を刺し貫いていた。
そのショックでか、意識が、途切れ―――――――
「……ここまでか」
ハッシュヴァルトはその言葉を、落胆の嘆きと受け取った。
ガラス際に佇む王の眼差しの先には、幾条もの槍に似た触手に射貫かれた少女の姿。すでに気を失っているのか、四肢は脱力し宙に縫い留められている形であった。
いや……見た限り傷口は主要な臓器を漏れなく貫通しており、垂れ下がるアリスはとっくに骸と化していてもおかしくない。そうでなくとも槍が引き抜かれれば出血多量で間もなく絶命するだろう。彼女が『完全な機械』ではなく『完璧な人間』を模倣して造られているのは確かなのだから。
だが突如、ハッシュヴァルトの予想を否定するかのごとく、急激に眼下の霊圧が膨れ上がった。
発生源は―――アリス。
「冗長な前置きはここまでだ。
貴様の費やした命の真価を問うときだぞ、ペーターよ」
袂を別った反逆者であり、旧知の友である名を口ずさんだユーハバッハ。
無上の期待と微かな高揚を滲ませて。
王は酷薄に嗤っていた。
まるで遥か高みから人を試す神のように。
闇落ちや暴走は
古事記にもそう書いてある。