アリス・イン・オサレワールド   作:甲乙兵長

5 / 6

映画見て遅れました
面白かった種自由

今話の内容には全然関係ないけど感想があとがき↓に



聖文字

 

 

 

「――私だ。……把握している。問題はない。陛下直々に取り成されている案件に関わる事象だ。諸々こちらで対処する。

 所定の各員にも異常なしと速やかに伝達し、平時通り務めるようにと念を押すように」

 

 全てを洗い去る光の洪水。

 それがもたらす震撼は一区画内に収まらず、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の王城たる銀架城(ジルバーン)全体に異常な地震と霊圧のさざ波となって広く波及していた。

 各所で混乱に陥っているであろう部下へ通信を繋ぎ手早く指示を伝え終えたハッシュヴァルトは、崩壊で変わり果てた訓練所を見下ろす。

 正確には、その被害模様を眺めているユーハバッハを。

 

――先の衝撃、“影”の外にまで伝わってなければ良いが……。

 

 見えざる帝国を擁する異相空間、『影の領域(シャッテンベライヒ)』は文字通り尸魂界(ソウルソサエティ)に存在する死神たちの住処――瀞霊廷の影に存在している。

 千年前に勃発した初代護廷十三隊と滅却師の全面戦争による敗北以来、長年死神たちに気取られることなく隠れ潜んでいる空間だが、基本的に片側の領域での事象がもう一方に影響することはない。

 しかし、あくまで基本的にだ。これまでがそうだったからと言って懸念に挙げないというのは愚かだろう。万が一、護廷十三隊ないしは技術開発局に明確な異変として察知された場合、そこから見えざる帝国を発見される可能性もある。

 雌伏の夜明けは近い。が、戦の備えが整う前に知れることは避けなければ。

 影響の調査と隠蔽工作が急務と考えるハッシュヴァルトだが、進言すべき王はいまだ観覧の姿勢を崩さなかった。

 やがて、土煙が晴れていく。

 ガラガラと崩壊の音色が立ち込める訓練所に立っていたのは――アリスであった。

 全身が痛々しく血と埃にまみれ、愛らしい容姿も煤けて台無しだが、みずからの状態にこれといって頓着なく、携えた巨大な重火器……おそらくは“レールガン”とおぼしき神聖弓の構えを解いた。

 そしていかにも重厚なレールガンを片手で抱えつつ別の手で身体に刺さった残りの触手を痛みなどないかのように無造作に引き抜いていき、地面に転がる残骸……BG9に接近する。

 

aa……ァァ、ィ……ギg……

 

 頭と一部上半身のみとなった壊れかけの機体。装甲は軒並み溶解し、溶けた飴のように骨格にわずかばかりへばりついている程度。表現として正しいかはわからないがまぎれもない“瀕死”である。

 すでに言語野もイカれたのか、明滅するモノアイが訴えるようにアリスに向けられるばかり。それが怨嗟なのか、称賛なのか、命乞いなのか。知る術も機会も、もはやなかった。

 なぜならアリスが末期の意思表示を気に止めず、無情に頭部を踏み潰したからだ。

 機能が停止し、霊圧反応が完全に消失するのを確認して、彼女は同胞だった残骸からそのまま紅く染まった瞳を頭上の二人へ―――否。

 

「っ! 陛下!!」

 

 突如隕石のごとく飛来した物体が強化ガラスを粉砕する。

 即座にユーハバッハを守る形で吹きつける破片を剣で薙ぎ払ったハッシュヴァルトの足元に、潰れひしゃげたBG9の頭部が転がってきた。飛んできた物の正体はコレだったようだ。

 と、にわかに増大する霊圧を察知。顔を上げた正面に、霊子を足場にして宙に立つアリスの姿が。

 

「危険 き、ケン 脅威 存在 に、にン識

 最ゆう、先 ハイジョ ハイジョ 排除―――」

 

 壊れかけの機械じみた口調のアリスの頭上に光輪が出現する。途端に空気中の霊子のみならず、周囲の構造物すら光の粒子に還元され凄まじい勢いでアリスの元へと集まり始めた。

 

「これは、『聖隷(スクラヴェライ)』」

「ほう……」

 

 眼前で銀河が渦巻くような美しくも破滅的な光景に、王と側近は驚きと興味の響きを漏らす。

 滅却師の基本能力である「霊子の収束」。『聖隷』はその力を極めた極限であり、空気中を滞留する霊子のみならずすでに固定化された既存物質の霊子結合すらも分断して強制的に霊子をみずからのものとして徴収できる、収束の域を逸脱した完全な隷属であり支配。

 観覧席を構成する椅子もテーブルも床も壁も、霊子で形作られる全てがアリスにかしずき分解され引きはがされる。

 その影響は本来なら人の肉体にまで及ぶ次元なのだが、よくも悪くもこの場に集う人間は二人とも尋常な存在ではない。同じ滅却師にして種族の始祖たるユーハバッハと、その影であり半身を司るハッシュヴァルト。二人の超越者は強力な聖隷の影響下でも平然と己の霊子を保っている。

 とはいえ聖隷自体はそこまで驚嘆すべき能力ではない。聖章騎士に列せられる者なら大なり小なり会得している技術である。しかし逆に言えば、()()()()()()()()()使()()()()()()()()()

 皇帝らの関心を買ったのはその点だ。アリスが血杯の儀……聖文字(シュリフト)を授けるためユーハバッハの血を呑む『聖餐』を受けていないにも関わらず聖隷を行使できた事実。それは独自に滅却師の究極闘法である『完聖体(フォルシュテンディッヒ)』の領域に踏み込んでいるということを意味する。そんな真似はかつて遺失した完聖体の原型『滅却師(クインシー)最終形態(レツトシュティール)』ぐらいしかありえないが、目の前の洗練された圧倒的霊子の収束力はとても霊力を失う恐れのある欠陥品の技とは思えなかった。

 

「決戦、機能 を 解放 しマス

 『銀鍵』発動、申請 ―――承認

 王女 ハ 目覚め 鍵を 手、に入レる

 経路(パス) ヲ 開、ほう 位階 流出

 プロト、こる ■■■■■■■■■ 起動

 戴冠の とき 来タれリ

 ココに 新タナ、聖域(サンクトゥム)ヲ ―――――」

 

 不気味に響く無機質な声。しかしそれはどこかバグとノイズを含んだ危うさがあった。崩壊寸前で無理矢理稼働させている状態に近しい。

 

「――――ERROR(エラー)

 ERROR(エラー)

 ERROR(エラー)

 出力 急速低下 プろトコル 発動に、オオきナ支障

 原因検索…………演算処理能力 リソース確保 躯体損壊 ……要素多数

 プロトコル中、断 現行能力 にて 活動、続行」

 

 何やら油断ならない力が展開されようとしたがしかし、思わぬトラブルが発生したらしくアリスから超然とした雰囲気が消失する。

 それでも聖隷で取り込んだ大量の霊力リソースは活用できるのか、レールガンのバレルが展開され、にわかに凝縮された霊子が砲身へ臨界態勢で溜められていく。愚直なまでの任務遂行への執念。

 

……ユー……ハ、バッ……ハ

 

 ノイズ混じりの赤紫の虹彩が皇帝を睨み付けている。手前のハッシュヴァルトは眼中にないらしい。

 暴走した今のアリスがターゲットとするのは己が背に庇う王だ。

 

「なるほどな。非常時の防衛機構といったところか。過保護なことだ。まるで生存本能に駆られた手負いの獣ではないか。

 自己の存続に邪魔となる対象を優先して排除する機能が暴走しているのだろう。ゆえにこそ、私を狙うは道理か。

 それにしても、先ほどのチカラ………」

「お下がりください。直ちに制圧致します」

「構わぬ」

 

 勇み立つ側近を制し、ユーハバッハはマントをなびかせみずから赴く。

 

「どれほどのものか、直に確かめたくなった」

 

 青白い霊圧の光を両手に蓄え、一歩一歩、男は近づく。まるで撃ってみろと挑発せんばかりの大胆な侵攻。

 

「―――来るがいい」

「………っ!!」

 

 無防備な滅却師の祖に、アリスは挑みかかっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 …………。

 ………………―――?

 瞼を開くと映りこむ。白い天井。白いカーテン。さらにはそこに横たわっている自分。

 なんだ? 何があった?

 俺は確か……目覚めたらブリーチの世界でアリスになっていて、その上見えざる帝国所属のアンドロイド的な存在で、ユーハバッハにテストとしてBG9と戦うよう言われて……。

 そうだ。俺は、アイツに刺されて。

 そこからの記憶がない。気が付いたらこの状況だ。

 

【こんにちは、アリス。約3347秒ぶりです。

 混乱しているようなので補足しますと、あなたはBG9との戦闘で致命傷を負い意識を失いました。

 そのままでは生命機能が停止する危険があったので、本機搭載の緊急時自己保護システム、通称『Keyモード』が発動しBG9を破壊。そののち排除優先目標が皇帝ユーハバッハへと変更され、戦闘に陥りましたがモードの維持限界がきたため敗北となりました】

 

 その後、治療を施され、医療施設のベッドで眠っていた、と訊ねずともアイシスが颯爽と説明してくれる。便利なモノだ。けど一言いい?

 ……なにしてはるん? お()ん。

 安静にしているはずが頭痛がしてきた。

 前半は良しとしよう。Keyというと原作のパヴァーヌでも出てきたアリスを戴冠の玉座に導く云々のアレ。つまり防衛プログラムのようなものが働いてAIが俺の知らないうちに戦ってくれた結果、BG9を打倒して事なきを得たと。

 が、さらっと出てきた後半部分が聞き流せないんだが。

 戦闘? ラスボスと? よく生きてるな俺。色んな意味で。

 現在の『目』が閉じたユーハバッハは弱体化しているとはいえ零番隊の和尚とやりあえる実力はあったろうに。そもそも、ハッシュヴァルトがそんな不敬を見逃すとも思えんが……。王様直々に力試しでもされたのかね。その末、使える判定をされたと見て良いだろう。でもなければ生かして治療する意味がない。

 

「目覚めたようだな」

 

 見張ってたのかと思うほど都合の良いタイミングで、カーテンの向こうから冷悧なイケメンが顔を出す。

 

「動けるか。覚醒次第謁見の間へ来るようにとのお達しだ」

 

 気遣わしげに聞こえるが、そばに車椅子を待機させている時点でどんな状態だろうと連れていく意志がうかがえる。使い走り(側近)は辛いな。

 仕方なく上体を起こそうとすると「ッ゛ッ゛??!!」という声にならない痛みが全身から響き渡る。一瞬また意識が旅立つところだった。

 困った……。痛すぎて身じろぎもしたくない。ジンジンと残響する激痛がいまもそこかしこから湧水のごとく染みだしてくるようだ。

 

【精神の耐用可能な閾値を突破。痛覚を一時遮断します】

 

 ……助かる。

 “ふっ”とつんざく激つよ電流が嘘みたいに消え、なんとかハッシュヴァルトの後へ続いた。

 

「――合格だ、アリス。我らが同胞よ。

 見えざる帝国はお前を歓迎しよう」

 

 玉座に腰かけるユーハバッハが祝福を告げた。ハッキリ言って、これからが本当の地獄に他ならないけど、ひとまずは山を越えた感じだった。暴走して襲いかかった件の不問も含めて。

 表面上はおくびにも出さず粛々と頭を垂れるばかりだが。

 

「忠誠を祝して、私からお前に贈るものが二つある」

 

 え、いらない。

 

「ひとつは名だ。お前はもはやかつての親を克服し、己の考えと意思を持っている。AL-1Sという型式ではなく、ひとつの魂、ひとりの人間として自由に生きるがいい。

 アリス――『アリステレス・エーテルラント』。これからはそう名乗るが良かろう」

 

 おや。

 絶対ろくなものじゃないと内心猛反対だったが意外とまともなプレゼントだった。

 エーテルラント……創造者であり、元のアリスの父親の姓。それを越えて継いでいけという意味か。

 

「そしてもうひとつは……“K”」

 

 おや。

 雲行きが……。

 

「お前の力を認め、我が最強の戦闘部隊である星十字騎士団、その空席であった座と共に、『K』の聖文字を授ける」

 

 ……………………。

 ああ。なるほど。

 原作キャラ(BG9)を倒したのだからお前が後釜に据えられるのだよ、と。

 

 

 

 

 俺の感心を返せこの野郎。 

 

 

 

 

 























序盤
「キラ……」

「シンww」

「アス……ラン? アスラン?」


終盤
「キラ……!」

「シン!!」

「アっ、アスランんんん!!??」

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