ウマ娘 -UMAMUSUME- 煌ノ夢追人 作:さぼてんmark.2
街から離れた森の中に佇む、巨大な洋館――その名も《雷瞑館》。
ハガネに案内され、俺はこの地を訪れていた。
冴島家――確か、冴島コンツェルンとして博物館など様々な事業を行っているとは聞いたことがある。
彼女がそんな大企業のお嬢様だとは――さすがトレセン学園、凄まじい。
俺はゴクリと唾を飲み、歩みを進める。
しばらくすると門の先には扉が見え、そこには執事服を纏う一人の老紳士が立っていた。
「ハガネお嬢様、お帰りなさいませ」
「ゴンザさん、ただいま」
ゴンザ――そう呼ばれた優し気な雰囲気の彼は俺のほうを向き、言う。
「申し遅れました、私はこの家で執事を務めさせていただいております、倉橋ゴンザと申します。貴方様が件の?」
「はい。よろしくお願いいたします」
深々と頭を下げ、挨拶を返す。
そうした後、ゴンザさんがドアを開いてくれた。
しばらく廊下を歩き、広間へと到着する俺たち。そこに待っていたのは――
EPISODE02
称号/決意
「今日はありがとう」
優し気な雰囲気で俺へと笑いかける若い男性と、
「……」
ジッと俺を見つめている、近寄りがたい雰囲気を醸し出す茶髪の男性と、
「ご足労感謝する」
一際強い威厳を醸し出す、3人の中では一番年配であろう男性であった。
「失礼します!私、トレセン学園でトレーナーをさせていただいております御影ユウトと申します!皆様方!本日はどうかよろしくお願いいたします!」
極度の緊張からか、ついつい早口になってしまった。
しまった――そう思っている俺を見て、中心にいる優し気な雰囲気の彼が口を開いた。
「あはは、そんなに緊張しないで?俺は冴島雷牙。冴島古代博物館の館長で、その子の――ハガネの父親だ。よろしくね」
次に、右側に座る茶髪の男性が口を開く。
「……冴島鋼牙だ」
「俺の父さんで、冴島流剣術道場師範代。元々口数が少ない人だから、あんまり気にしないで?」
そうして次に、左側の男性。
「冴島大河だ。一応、冴島コンツェルンの会長をやらせてもらっている。よろしく頼む」
曽祖父、祖父、父親――それぞれが挨拶を済ませた後、全員が席に着く。
俺の全身からは汗が吹き出し、握った掌なんかはもう湿り切っている。
暫し緊張に包まれた雰囲気が流れた後――雷牙さんが切り出した。
「単刀直入に聞くね。何故娘を――ハガネをスカウトしようと思ったの?」
――突き付けられた問い。
正直なところ、確固たる理由などなかったというのが本音だ。
俺にとっては、あの時彼女に語ったことが全て……彼女の姿に心奪われ、その中に『光』を見た。
しかし、それは理由と言ってもよいものか――?
「どうしたんだ?ずいぶんと考え込んでいるみたいだけど」
そんな迷いを見透かしたように、雷牙さんが尋ねる。
俺はこれ以上黙っているわけにもいかず――口を開いた。
「すいません!」
頭を下げて繰り出された俺の第一声に、怪訝な表情を浮かべる一同。もちろん――ハガネも同様だ。
「ト……トレーナーさん?どうしたんですか?」
「このようなことを言うのは失礼だとは心得ておりますが――貴女方の大事なご子息を――ハガネさんをスカウトした明確な理由は……正直なところ、私にもわからないのです」
俺は深々と頭を下げたまま、思いのたけを述べる。
「……話にならんな」
しばし沈黙した後、鋼牙さんがバッサリと言い捨てた。
至極当然の話だ。このような男に、大事な孫娘を預ける気にはならないだろう。
俺はこの時、既に心の中で諦めかけていた。
しかし――
「直感……という訳だね。でも、何か感じ入るものがあったんじゃないのか?そうでなければ、声をかけたりはしないはずだ。違うかい?」
雷牙さんはまだ、話を続けてくれるつもりでいた。予想外の言葉に顔を上げ、目を見開く。そして同時に――決心がついた。
「私は……たまたま彼女の自主トレの場に居合わせたんです。その時――何と言いますか、『光』が見えたんです」
「光?」
「はい。私は彼女の中に、確かにそれを見ました。だから思わず、声をかけたんです。……すいません。こんなの、理由にはなりませんね」
「……そっか」
自嘲気味に吐き捨てられた俺の言葉を聞き、雷牙さんが返す。
そして彼はゆっくりと立ち上がると、俺の側まで歩み寄り――
「その言葉、信じていいんだな?」
なんと俺の肩に優しく手を置いて、そう告げたのだ。
「え……?」
事態が呑み込めず、固まる俺。雷牙さんは続ける。
「もしそれが本当なのなら――話したいことがある。着いて来て。……ゴンザ」
「承知いたしました」
そう言って、雷牙さんは俺の横を通り過ぎ、ゴンザさんを伴って歩き出す。
「トレーナーさん?あの……聞こえてました?」
あっけにとられて動けなくなっていた俺に、ハガネが言った。
「え、あ……うん。着いていけば……いいんだよね」
慌てて二人の後を追う俺とハガネ。
果たして、何が待ち受けているというのだろうか――?