ウマ娘 -UMAMUSUME- 煌ノ夢追人 作:さぼてんmark.2
――数時間後。車で移動したのち、冴島家の所有するヘリに乗って移動していた俺たち。次第に、霧がかかった高い山が見えてきた――
「あの山が目的地にございます」
「凄いですね……まさか山まで所有していらっしゃるとは……」
「ふふ、ありがとうございます」
月並みな言葉をこぼす俺に、ゴンザさんが優しく返す。
次第にヘリは霧の中へと突入していき、その全容が明らかになる――
「揺れますよ、ご注意を!」
「うわっ、ぐっ!?何だコレ……!」
霧を抜けた直後。
窓から外を見ると、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
激しく打ち付ける雨に、鳴り響く雷鳴。吹き荒れる暴風が機体を揺らし、今にも墜落しかねないほどだ。
しばらくして頂上近い平地へと機が降ろされ、俺たちは外へ出る。
すると先ほどまでとは打って変わって空は明るくなり、陽が差し込んできた。
「どうなっているんだ……?」
「ここは一族が代々管理する不思議な土地でね。気候の変動が激しく、険しい道が続くこの山を――俺たちは『試練の地』と呼んでいる」
試練――確かに、そう呼ぶにふさわしいかもしれない。
しかし、何故トレーナー契約を結ぼうと挨拶に来た俺がここを訪れる必要があるのだろうか?
「トレーナーさん、こっち、こっちです……!」
俺が疑問に思っていると、ハガネが手招きしていた。見ると、雷牙さんとゴンザさんはさっさと歩きだしている。
俺は慌てて走り出し、その後を追う。
「ここは……?」
そうしてしばらくついてゆくと――開けた空間へ出た。
古代の遺跡のようなその地には、何となくだが――神秘的な雰囲気に溢れていた。
そしてその奥には、あるものが静かに佇んでいた。
「剣……?」
柄の中心に正三角形をあしらった、美しく輝く黒金の剣。
それは燭台に囲まれた台座へと突き刺さっており――ひときわ荘厳な雰囲気を醸し出している。
それを見た俺は、暫し心を奪われ――気づいた。
「これは……あの時の……」
あの日、ハガネの演武を見た時に感じた『光』――それとほとんど同じ輝きを、この剣は放っている。
「ト、トレーナー……さん?」
俺はいつしか、ふらふらと歩き出していた。
まるで引き寄せられるかのように――縋りつくかのように――その手を伸ばして。
「待った」
しかし、雷牙さんの一言で我に返った。
剣まであと一歩と言うところまで来て歩みを止めた俺は、慌てて距離を離す。
「す、すいません!」
すぐに頭を下げ、謝罪する。他人の所有物に惹かれ、手を伸ばすなど浅ましすぎる行いだ。
「随分と心奪われていたようだけど――そんなにこの剣に感じ入るものがあったのかい?」
その問いに、俺は静かに頷いた。
「俺が彼女の中に見た光。あれは、この剣の持つ輝きとよく似ていました。暖かく、そして激しい輝き。見ているだけで安心するような――そう、」
「『希望』を与えてくれるような――かい?」
俺に被せるようにして放たれた雷牙さんの言葉。
『希望』の二文字に、俺は激しく頷いた。
「それをハガネの中にも見たということは――君には、何かがあるのかもしれないな」
「……え?」
話の流れがつかめず、困惑する。
「『牙狼剣』。俺達一族は、この剣をそう呼んでいる」
『牙狼』――聞いたことのない単語に首を傾げる俺に、雷牙さんは続けた。
「いつからかはわからないが……一族の間に伝えられてきた――『希望』という意の言葉だ」
「そして冴島の家に生まれたウマ娘は皆、この剣を引き抜き、名を受け継ぐ習わしがある」
俺と雷牙さんはハガネの方へと振り返り、その名を口にする――
「『ゴウテン』の名を」