「魔法少女の輝きが怪物の強化を加速させるという事実はすでに科学的に証明されている。分かれ『時里』。これは一般常識であり議論の余地が無い厳然たる事実なんだよ」
とある学校のとある教室にて。黒板の前に立った教師は1人の生徒の『間違い』を訂正していた。
「お前が魔法少女に対してどんな幻想を持っているか知らないが、・・・・あれはパチンコみたいなものだ。どれだけ光輝いていてもどれだけ中盤が良くても結果的には負けている。そういう存在なんだ。いい加減聞き分けろ」
ソレは『そうらしい』という根拠の無い又聞き情報だったが、教師は確信をもって生徒に説いていた。
すると。
「そうだぞ時里。魔法少女の妄想とかキモすぎなんだよ」
「魔法少女に憧れるとかガキかよ・・・・」
教師があまりにも自信あり気に話すため生徒の多くが意見も持たずに教師に乗っかり、場の全てが『時里快人』の敵となった。
「その科学的ってのが意味不明なんだよ。誰も魔法少女と怪物の相関関係を知らないし理解しようともしない。なのに『そうらしい』という情報だけで先生もお前らも訳知り顔で話す。明らかに異常だろ」
席から立ち上がった『時里快人』は心を込めて言葉にした。その目には輝きが籠もっていたが、別にイケメンでも美少女でもないフツメンの瞳が輝いていようが気にする人は1人もいなかった。
「もっと自分の言葉で話せよ。みっともないぞ」
快人の言葉を鼻で笑った教師は物分かりの悪いガキを諭すように語った。
「世の中ってのはお前が思うよりも複雑なんだよ。ガキは知らないことが一杯で大変だな(笑)」
教師の言葉に連動し、クラスに笑いが沸き起こった。
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「それはまた・・・・大変だったね(笑)」
幼馴染であり許嫁。男の妄想のような関係にある女友達『菊月 瀬名』と一緒に帰りながら、快人は今日のことを話していた。
「いやだってさ、『魔法少女の出現と怪物の発生の相関関係』を誰も証明していないし、調べたら本気で誰も裏ドリをしていないしできていないのに、さも当前のように話すんだぞ?明らかに異常だろ」
ーーーーーーーそう。
この世界では『魔法少女が光り輝くほど怪物の発生件数が増えるため魔法少女の存在そのものが害悪』とされるが、誰もその2つの理由を知らないのである。
これに対して瀬名はアハハハと苦笑いをしながらも、快人の目を見ながら言った。
「それで快人はどうしたいの?皆を啓蒙したいの?」
「うっ・・・・」
瀬名の言ったことは、つまり理解しようとしない人間に何を期待しているのか、ということである。
「いや、まぁ、そうなんだけどさ・・・・」
「快人は純粋に魔法少女が好きなんでしょ?じゃあそれで良いじゃん」
ニコニコと微笑む瀬名は完全にオカンの目をしていた。
「うん・・・・まぁ、そうだな」
「そうそう。快人は魔法少女のことばかり語ってアホ面で楽しそうにしてるのが一番だよ」
「おい」
「昨日なんて酷かったよね。私に魔法少女のエロ本を見つけられて泣きそうになりながら忘れてーってさ」
「忘 れ ろ」
「ふふっ。もうセリフまで覚えちゃった後だよ?」
「わーすーれーろー」
顔を赤くしてソッポを向く快人を、快人よりも背が低い瀬名がからかう。端から見れば爆発案件のリア充そのものだったが、しかし。
ーーーーー2人の地獄はすぐ傍までやって来ていた。
「ねぇ。ちょっと良いかな?」
話し込んでいた2人の背後10m先にソイツはいた。
「ごめんね、急に話しかけて。学校で魔法少女の話をしてるのを聞いてさ、気になっちゃって」
ソイツは魔法少女の格好をしていた。
ソイツの髪はピンク色だった。
ソイツは神々しいくらいに存在が光り輝いていた。
「どうして魔法少女が悪じゃないと思ったの?」
ソイツがゆったりとステップを踏むように2人に近づくと、それよりも先に瀬名が快人と魔法少女の格好をした不審者の間に割って入った。
「どちら様ですか?」
瀬名の目は完全に敵対モードだった。
恐らく快人が魔法少女モドキにクラッときてしまうかもしれないと察したのだろうが、話しかけた存在にとっては良い迷惑だった。
「瀬名ちゃんはちょっと引っ込んでてくれるかな?私は快人君と話したいんだけど」
「あれ?私達って初対面ですよね?どうして私達の名前を知っているんですか?見たところ学生ってワケでもないですよね?」
「・・・・どいてくれないかな?」
「嫌です」
女子2人の間で火花が散った。
「束縛系は嫌われるよ?」
「束縛じゃないですよ。ただ気持ち悪い不審者から友達を守っているだけです」
「それは束縛じゃないのかな?」
一瞬の内に幾万ものメンチの張り合いがお互いの視線の中で行われ、どちらも退かなかったため喧々囂々の罵り合い(泥仕合)が始まった・・・・かに思えたが。
女子2人の事情など一切分からない鈍感男は何も考えず瀬名の背後から顔を出した。
「えっと、・・・・俺に何か用ですか?」
「ちょっ、快人!」
「別に話を聞くぐらい良くない?」
「良くない!!」
エロ本だろうがコスプレだろうがソレが魔法少女ならめっぽう弱いのが快人という男である。魔法少女の格好に即オチした快人はデレデレと鼻を伸ばしながら尋ねた。
これに気を良くした少女は慈愛の女神のような微笑みを快人に向けた。
「はじめまして、時里快人君。私のことは気軽に『ピンクちゃん』って呼んでね」
所作はお淑やかなソレ。名乗る姿は気品に満ちており、同性の瀬名ですらビックリするレベルで完成した美少女がそこにいた。
「あ、はい。それで、何か用ですか?」
快人が話の催促をすると、ピンクちゃんは微笑みながらスッと胸に手を当てた。
ーーーーーそして。
「快人君。ちょっと魔法少女に成ってくれないかな?」
「は?」
「え?」
You魔法少女に成っちゃいなよーは女児アニメによくある展開だが、それはアニメや空想の話。他人を魔法少女にする人間なんて実際には存在しないハズなのだが。
ピンクちゃんと名乗った少女はさも当たり前のように語り始めた。
「『陸魔』ってのは知ってるかな?
大地の精霊で魔法少女100人がかかって倒せるか倒せないか怪しいレベルのバケモノなんだけど、ソイツがそろそろ復活するんだよね」
「???」
「???」
口をωにした2人が茫然とする中、ピンクちゃんは更に言葉を重ねた。
「ソイツは本当に本当にヤバいから私も準備したいんだけど、だーれも魔法少女の種を発芽させないんだよね。だから私が自分で勧誘に来たってワケなんだけど、・・・・・・どうかな?魔法少女に成ってくれないかな?」
コレが盛大なドッキリなら2人もある程度察することができた。しかしピンクちゃんの言葉には若年層ではなかなか出せない厚みがあり、コレが嘘ではないと思えるような説得力があった。
会話をフられた快人は
「あ、えっと、はい」
としどろもどろに成りながら返事をして、そして一瞬で全てを覚悟してピンクちゃんに聞いた。
「俺『が』魔法少女ですか?隣の瀬名じゃなく?」
「うん。快人君が魔法少女に成ってほしいかな」
「どうしてですか?」
「・・・・・・・・・・・・魔法少女は、どれだけ苦しくても泣きたくても辛くても輝かないといけないからだよ」