この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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第二部に当たるストーリーが終わったので色々複線回収です

やはり適度に仕事してないと他の事に対するやる気や気力も無くなるみたいで、死にかけないと小説を書く気力も無くなるみたいです。これからも適度に死にかけながら頑張っていきたいと思います


物語の裏話その2

悪夢(#23)

 

 

何処か意識がぼやけている。あまりはっきりとしない意識だが、海の上に立っている事は分かった

 

近くには榛名姉様と比叡姉様、そして金剛姉様がいたが、榛名姉様だけが大破。反対に私達はほぼ無傷だった

 

何故こうなっているのか脳内に状況が鮮明に思い浮かんでゆく。理由としては榛名姉様が自分から敵から狙われるデコイとなって、その隙に私達が深海棲艦を各個撃破していくというものだった

 

これは過去の出来事だ。そしてこの状況を私は覚えている。忘れるはずもない、鎮守府が変わっていくきっかけとなった事件だったのだから

 

 

金剛「もう無理デス!早く撤退の指示を!」

 

女提督『…いえ。進撃よ』

 

金剛「どうしてデスカッ!?」

 

 

怒号が金剛お姉様の口から飛び出す。その状況をただ眺める事しか出来ず、言葉を出そうとしても声が出ない

 

 

比叡「て、提督!このままだと榛名は沈んでしまいます!ここで撤退しないと鎮守府の最高戦力である榛名を失う事になってしまうんですよ!?」

 

榛名「…お姉様」

 

金剛「榛名!もう限界なんですから喋らないでください!」

 

榛名「榛名は…大丈夫ですから…」

 

 

どう考えても嘘だとしか思えない重傷を負っている榛名の声。精一杯の虚勢を張って皆を心配させまいとする優しいお姉様の悪い癖だった

 

この後の事を考えるならここで無理矢理にでも撤退するべきだった。私がたった一言でも発する事が出来ればこの後の決定も変わったかも知れないのに

 

 

霧島「……」

 

 

だが出なかった。当時の私は入ったばかりで提督の指示を簡単に反対出来る程の力が無かったから

 

それでも言うべきだった。もう限界だと。これ以上は危険だと進言すべきだった

 

 

女提督『…これは決定よ』

 

 

震える声でそう話す提督だが、何処か冷静さを失っているかのような焦りにも感じた

 

恐らく提督も理解していた。このまま進めば更に酷い結果になるだろうと分かっていた筈なのに、進撃しろとしか彼女の声は聞こえない

 

 

榛名「っ…。分かりました。進軍します」

 

金剛「榛名!?」

 

榛名「これは…旗艦としての決定です。何か異議でもあるんですか?」

 

金剛「異議アリデース!そこまでボロボロになってるのにどうして進撃だなんて言えるのですか!?」

 

榛名「それが提督の決めた事だからです」

 

 

私達以上の提督に対する信頼を言葉の節々から感じる声でハッキリと断言し、それを聞いた無線の向こう側にいる提督も少し優しい声になっていったのを感じていた

 

しかし不安を隠しきれている声ではなく、榛名に頼る事でその不安を隠している様にも感じる声だった

 

 

榛名「それに提督の判断は正しいです。戦艦一隻大破、他はほぼ無傷という状態。敵のボスがいると思われる場所までは後少しです」

 

榛名「本当にここで逃げ帰っても良いんですか?ようやく海域を一つ解放できるというのにここで諦めるんですか?」

 

 

そういって無理を通そうとする榛名。それを何か言いたげな様子でジッと金剛お姉様が見つめるが、何も話そうとしない。反論さえ思いつかない様子であった

 

それは違う。確かにこのまま進めば海域は奪取出来るかも知れないけど、そこに榛名がいなかったら意味が無い

 

それに諦めた訳でもない。ここまで私達が無傷で来れたのは榛名お姉様が一人で敵の攻撃を引き受けたからであって、ここにいる艦隊全員の力で来れた訳では無い

 

この言葉を何故言えないのか。どうして声を出そうとしても出す事さえ出来ないのか。そして何故私はその意見に肯定するかの様に首を縦に振ってしまったのか

 

 

霧島「は、榛名お姉様は後ろに下がって後方から援護に回ってください。私達三人が前に出て敵の攻撃を引き付けます」

 

金剛「霧島!何を言ってるの!?」

 

霧島「き、旗艦である榛名お姉様が決めた事です。ならばそれに従い、如何に榛名お姉様を轟沈させないようにする策を立てる方がよっぽど良いと思います」

 

金剛「……」

 

 

その言葉に下唇を噛み締めているが、何処か自分の中でも納得出来る部分があるようで暫く下を向いて考え込んでいる

 

何故私はこの時にこんな事を言ってしまったのか。何故姉である人達には意見を出すことが出来るのに提督の意見には反対出来ないのか

 

 

金剛「…分かりました。進撃しましょう」

 

比叡「お、お姉様!?」

 

榛名「…ありがとうございます。霧島」

 

霧島「……」

 

 

しかしその感謝の言葉には返す事が出来ないでいた。いや、返したくないと思っていた

 

何故なら背後で守るとはいえ戦場でイレギュラーは付き物だ。もし守り切る事が出来ずに榛名お姉様に被弾したらという可能性が少しでもあるのだから、こんな事は言うべきではないと分かっていた筈なのに言ってしまった

 

 

榛名「大丈夫です!榛名は沈みません!勝手に皆を置いていくような事はしませんから!」

 

霧島「あっ…」

 

 

砲撃のポーズをとるが、艤装を展開している腕は震えて照準が定まっているように見えず、腰を落としてはいるが普段の様に安定したポーズではない。明らかに虚勢であった。それに気づいていた筈なのに、絶対に間違っていると分かっていたハズなのに…

 

……そして、その予想は現実の物となってしまった

 

 

榛名「霧島!!」

 

霧島「えっ」

 

 

右舷からやってきていた魚雷。それに気づかず砲撃を行っていた私を庇う様にして目の前に立ち、爆発と爆音が目の前で派手に起こった

 

 

霧島「い、嫌アァァァ!?」

 

金剛「榛名!!」

 

榛名「…良かったぁ」

 

比叡「駄目!止まって!!」

 

 

そういって笑顔のまま水面に沈んでいく榛名お姉様を必死に腕を伸ばして掴もうとするが全く手が届かない。腕がちぎれそうになる程に伸ばしても全く届かなかった

 

そうやって見えなくなるまで榛名お姉様を涙溢れる目でずっと見つめ、大きな後悔と絶叫に包まれながら再び視界が真っ暗になる

 

やがて視界に光が戻ってきたのを理解すると、そこは初め見た景色と全く同じ光景だった

 

あぁ…また始まるのか…

 

 

 

_____________

 

 

 

幽霊騒動(#28~#29)

 

 

時刻は深夜の1時。きっかけは一つの悲鳴から始まった

 

 

???「ヒエェェェ!!!??」

 

金剛「なっ、何事デスカ!?」

 

夕立「敵襲!?」

 

女提督『総員、警戒態勢!』

 

 

あまりに巨大な悲鳴に自室で休んでいた提督も跳ね起きて急遽放送のスイッチを入れた。やがて全艦娘が音の発信源へと向かうと真っ青な顔をしてガクガクと震えている比叡の姿がそこにあった

 

 

金剛「比叡!?何があったの!?」

 

比叡「そっ、そそっ、そこっ…!そこっ…!」ブルブル

 

 

震える比叡の指さす先は鏡。何の変哲もない丸鏡がそこにあり、それを恐ろし気な目でずっと見つめている比叡と、そんな比叡を疑惑や怒りの目で見ている艦娘達がそこにいた

 

 

比叡「ひ、人が…!人がぁ…!?」

 

龍田「…まず何で比叡さんがここにいるの?」

 

比叡「と、トイレに行きたくなって部屋を出たんです!そしたら視界の端に鏡があったのでそこに目をやると見知らぬ男が映ってて…!」

 

女提督「…皆、撤収するわよ」

 

 

その声と共に周りにいた人々は自分の部屋へと帰っていく。呆れた様子の金剛と数名の艦娘と提督をそこに残して

 

 

女提督「大方自分の顔を見て驚いたって事でしょ。せっかくの睡眠だったのに起こしてくれちゃって…」

 

比叡「ち、違うんですよ!ホントに男の人がいて!!」

 

金剛「…比叡、きっと疲れてるんですよ。そもそもここに男性がいる訳ないでしょう?」

 

比叡「そっ、れは…」

 

龍田「…はぁ。心配して損したわぁ」スタスタ

 

 

呆れ顔でそう語りつつ、自室へと足を向けて歩き出す龍田だが、数歩ほど歩いた所で突然倒れた

 

 

比叡「ひっ、ヒェェェェ!?」

 

女提督「…龍田もふざけないの。そうやって気絶した振りしても駄目なんだから」ガシッ

 

 

そういって龍田の肩を掴む女提督だったが、どうにも龍田の体を重く感じた

 

ワザととは思えぬ重量感を手に感じ、異常事態だと察したのかすかさず龍田の顔を見る様に抱き上げる

 

 

女提督「ちょっ、龍田!?大丈夫なの!?」

 

金剛「…比叡、本当に男の人を見たんですか?」

 

比叡「ほ、本当なんです!暗かったけど何故か光るように鏡があって、そこに男の人が映ってたんです!」

 

金剛「…嘘はついていないようですね」

 

 

状況を理解しようとする金剛と女提督だったが、突如廊下の電気が消えた

 

それに比叡は驚きの声を上げ、金剛は少し冷静を搔き乱したがすぐさま首を振って正気に戻ろうとする。女提督は龍田を庇う様に抱きしめたままその場を動くことは無かった

 

 

女提督「二人共!そこにいる!?」

 

金剛「こちらは大丈夫デース。比叡も傍にいますよ」

 

比叡「お、お姉さま…そこにいるんですよね…?」

 

 

不安な声を上げながら温かい手をしっかりと握る比叡と、そんな比叡を不安にさせまいとギュっと握り返す金剛だった

 

しかし一向に電気が付かず、今の状況を打開すべく女提督が立ち上がって電気のスイッチがある場所へと壁に手を付けながら歩き出す

 

 

女提督「二人共そこにいてね。今から電気を付けるから」

 

 

そう言って進みだし、やがてスイッチらしきものが手に当たり、カチッと音を立てて電気が点いた

 

 

女提督「ホラ、もう大丈夫よ」

 

金剛「…」ガクガク

 

比叡「…」ガクガク

 

女提督「…どうしたの?」

 

 

冷汗が止まらない二人を疑問に思いつつ、返答を待つが互いに顔を見合わせてフルフルと震えるばかりで全く要領を得られないでいた

 

 

金剛「ひ、比叡?さっき手を握ったのって比叡ですか?」

 

比叡 フルフル

 

女提督「…二人共別々の手を握ってたって言うの?」

 

 

そう尋ねると二人示し合わせる様にコクコクと頷き、それが自身の恐怖と二人の恐怖を増進させた

 

 

龍田「う、うぅん…」

 

女提督「たっ、龍田!?大丈夫なの!?」

 

龍田「…」ポーッ

 

 

目を覚ました龍田だが目の焦点が合っておらず、何故か頬が赤く染まる龍田の様子に不審に思っていると、突如龍田の細い腕が自分の首を回す様に抱き着いてきてそのまま離れようとしない

 

 

女提督「ちょっ、た、龍田!?」

 

龍田「綺麗な長い髪…羨ましいわぁ~」サラッ

 

女提督「ひゃっ!?」

 

 

自身のうなじを優しく撫でられ、思わず声が口から出てしまった。そのまま自慢である長い髪を梳く様に細い指が髪を掻き分けていき、次第に龍田の顔が近づいてきた

 

 

女提督「ま、待って!あ、あの!まだ心の準備ってモノが!」

 

龍田「…ふふっ。可愛いわぁ~」

 

比叡 ヒエー

 

金剛 ドキドキ

 

 

ピンクのパステルカラーで塗られた龍田の唇が近づき、次の出来事が簡単に予測出来てしまい思わず目を瞑る

 

それを見るギャラリー(金剛・比叡)は今にも破裂しそうな程の心臓の高鳴りを感じ、その瞬間を見逃すまいと瞬きせずにじっと眺めていた

 

互いの唇が触れ合うまであと数センチという所で龍田が力なく女提督へと寄り掛かった

 

 

女提督「あっ…」

 

 

しかし感じるであろう感触ではなく、龍田がその身を自身に寄り掛かったのを感じたので思わずパッと目を開けた

 

スヤスヤと寝息を立てている龍田をジッと見つめ、少し惜しむような顔をしてゆっくりと龍田をお姫様抱っこして彼女の部屋へと運ぶ事にした

 

その様子を見ていた二人も少しがっかりした様子を隠しきることが出来ず、しばらくして女提督の背中を追うように自分達も自身の部屋へと帰っていくのだった

 

 

提督(犯人)「…写真でも撮るんだったなぁ」※認識されなくなる装置で周りから姿が見えない状態(物理的に消えてないので鏡にはちゃんと映る)

 

 

 

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因果応報(#34)

 

 

金剛「…さて、説明してもらいましょうか」

 

「ウィッス」

 

 

金剛の自室にて、今自分は正面に腕組みした金剛に見下ろされる形で正座している。何故こうなっているかと言うと、姿が元に戻ったあの後、金剛が現れて攫うかのように捕まったかと思えば金剛の自室に引きずり込まれ、そのまま部屋に放り込まれたというわけだ

 

まぁそんな過程があって、正直これからされることにビクビクしているのだが…

 

 

金剛「良くもまぁウチの霧島を好き勝手してくれましたね?話は霧島から聞きましたヨ?」

 

「アレは霧島の自業自得だ。仮にお前が同じことをしようものならお前も同じ目にあわせていた」

 

金剛「へぇ〜?」

 

「どれだけ圧をかけようと無駄だ。殺る以上は殺られる覚悟を持て。その結果死なずに生きてるんだから良いだろう?」

 

金剛「…艦娘相手にそんなことするって、恐れ知らずって言うか、無知って言うか…」

 

「お前も似たような事して何言ってる。あやうく榛名や夕立達を殺しかけたくせしてよ」

 

金剛「う…あ、アレはデスネー…」

 

「…ま、お前みたいに生まれて数年も経ってない奴からしたら仕方の無い事か」

 

金剛「ちょっと~?私を赤ん坊みたいに言うのは辞めて欲しいですネー」

 

「人間換算したらお前はまだ生まれたてレベルだろ」

 

金剛「だからって私は赤ん坊みたいに馬鹿じゃないデース」

 

「あのな…赤ん坊は無知なだけで馬鹿って訳じゃないぞ。お前みたいに周りから無視されただけでどう対処したら良いか知らないから泣いて発散するって行為をしてるだけだ」物事を取捨選択出来てる時点で十分賢いしな

 

金剛「…あの暴走が無知から来る行動だと?」

 

「あぁ」

 

金剛「…何も知らないくせに、勝手な事を言わないで貰えますか?」

 

「たかが無視されただけだろ?自分が一人ボッチだと思って寂しさから行動しただけじゃないか」

 

「それに俺よりかはマシだろ。お前はまだ自分が提督だと思われてただけじゃねぇか。こちとら姿さえ認識されなかったんだぞ」

 

金剛「…貴方と一緒にしないでください。貴方に私の気持ちが分かりますか?仕事を馬鹿みたいに押し付けられて、当てつけでもされるかの様に提督からはグチグチ文句を言われるし…」

 

金剛「極めつけはあのメガネ(大淀)です。アイツ何なんですか?私がどれだけ仕事を頑張ってもマウントとってきますし、挙句の果てには私を脅してくるんですよ?」

 

「あぁ。そりゃ俺がそうしろって大淀に指示してるし」

 

金剛「…貴方、マゾですか?」

 

「ちげぇよ。単純に本人のストレス発散だ」

 

金剛「…だからって自分の上官を好き勝手言えって指示する貴方もそうですが、それに素直に従う大淀も大淀ですね」

 

「…さて、そろそろ次のお客様だ」

 

金剛「…それってどういう『バァン!』ハウァッ!?」ビクッ

 

曙「クソ提督…覚悟は良いかしら…?」ピクピク

 

 

顔は般若。背後には鬼面を被った巨大な曙がビジョンとして浮かんでいる。この怒り方はアニメキャラがブチギレてる時に良く使われている表現だが、実際こうなる事をしているので仕方がない

 

 

「ホラ来た」

 

金剛「曙、乱暴にドアを開けないで下さい。壊れたらどうするんですか?」

 

曙「そうなったら直してやるわ。今私はコイツに用があるの」ギロッ

 

金剛「…何やったんですか?」

 

「見えないのを良い事に、曙の楽しみに取っておいた期間限定プリンアラモード(2480円)を食べた」

 

金剛「うわぁ…」

 

曙「アレはね、潮と一緒に食べようって決めておいた大切なプリンだったのよ…?」バキボキ

 

曙「この代償…どう払ってもらおうかしら?」ゴキゴキ

 

「だから代わりにプリンアラモード調べて作ってやっただろ。それで許してくれよ」

 

曙「代わりを用意したからと言って許されると思うなぁ!!」ブォン

 

 

曙の必殺右ストレートが真っ直ぐ顔へと飛び、喰らった瞬間に思わず目を一瞬瞑ってしまう。次に目を開いた瞬間には後方にあった筈の壁が目の前にあり、その壁にめり込む形で嵌ってしまった

 

 

金剛「…オゥ」

 

曙「これに懲りたら二度と勝手な事しない事ね!」ズンズン

 

金剛「…引っこ抜くのは手伝ってあげますよ」

 

「いてぇ…」ググッ

 

金剛「当たり前デース…と、ちょっと失礼」ギュッ

 

「ぬおっ!?」

 

金剛「ふむ…結構柔らかいですね。引き締まって無いのが丁度良い揉み応えです」

 

「尻を揉むな!」

 

金剛「ハイハイ。スイマセンっと」スポッ

 

「…勘弁してくれ」

 

金剛「私のも触ります?」

 

「またの機会に取っておく」

 

金剛「ヒヒッ。結構初心デスネ~?」

 

「…欲求不満ならせめて姉妹に向けてくれ」

 

金剛「良いじゃないデスカ♪減るものじゃないんですし〜」

 

「今度やったらお前の乳をもぎ取るまで触ってやるからな」

 

金剛「…それも中々」フム…

 

「おい」

 

 

 

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彼女の選択(#38~#39)

 

 

金剛「クッ…!」大破

 

加賀「金剛っ!」大破

 

空母棲姫「…」小破

 

川内「たった一人にここまでやられるなんてね…」大破

 

愛宕「撤退は…無理よね」中破

 

霧島「それが出来る相手でもなさそうですし…こちらは機動力で劣りますからね」大破

 

比叡「クソッ…」中破

 

 

全員がたった一騎の深海棲艦に圧倒され、もはや何故そこに立っているのか分からなくなる程に粉々に打ち砕かれた圧倒的な差に、皆膝をつく寸前だった

 

全員の目には撤退の二文字が浮かび、しかしそれを許されないという現実が目前に映っている。否定したいけど否定出来ない現実が目の前にあった

 

互いに動きが止まり、相手から繰り出される次の一手を皆が警戒していると、やがて口に動きの前兆が見えた瞬間に皆が身構える

 

 

空母棲姫「…取引、シナイ?」

 

加賀「…はっ?」

 

 

あまりに突拍子もなく突き付けられた言葉。完全に意識の外に置いていた取引という言葉に思わず言葉を失ってしまう

 

 

金剛「…条件は?」

 

比叡「お姉様っ!?」

 

金剛「Shit。黙っててください」

 

空母棲姫「…貴方、此方ニ来ナイ?対価トシテ貴方達ハ帰スシ、今鎮守府ニ攻メ込ンデル仲間モ撤退サセルワ」

 

 

そういって指を指す先は金剛に向いており、それを見た二人が金剛の前に庇い立つ

 

 

比叡「行かせません」

 

霧島「…駄目です。この人は渡せません」

 

空母棲姫「……」

 

 

その様子を何をするわけでもなく、ただジッと見つめる空母棲姫に皆が警戒している最中、金剛が動き出す

 

 

金剛「オーケー。そちらに行きます」

 

比叡「駄目ですっ!」

 

金剛「…比叡」

 

霧島「そっちに行くのなら私が代わりになる。だからお姉様は見逃して欲しいの」

 

空母棲姫「断ル。用ガアルノハソコノ戦艦ダケダ」

 

川内「…どうして金剛なの?」

 

空母棲姫「答エル義理ハ無い」

 

加賀「……」

 

愛宕「…金剛、貴女こうなることが分かってたわね?」

 

金剛「何の事やら」

 

 

愛宕の問いにもふわりと躱し、まるで本心を悟られない様にゆっくりと金剛の顔が無に近い表情へとなっていく

 

声は抑揚が無くなり、目線はただ真っ直ぐに此方を向いており、呼吸や心音までもが普通であるかの様に感じる。例えるなら正に機械であり、心という物を無くしてしまったかのような人形であった

 

 

比叡「絶対にダメです!行かせません!」

 

霧島「お願いですから…行かないでください…」

 

 

激昂してまで止める比叡と懇願してくる霧島だが、二人に対しても決して先程の雰囲気を崩さない

 

 

金剛「…比叡、霧島。ありがとう」

 

比叡「…!分かって『ゴスッ』あっ…?」

 

霧島「ひえ「ごめんね」ぐっ…!?」

 

 

比叡と霧島の意識を一瞬で奪い去る程に強い腹殴り。二人が海水に付かない様に倒れこむ寸前で金剛が支える。やがてこちらに振り向いたと思えば二人を連れて渡してきた

 

 

金剛「二人をお願いシマース」

 

加賀「貴女…」

 

金剛「それじゃ、行きましょうか」

 

空母棲姫「…エェ」

 

川内「金剛ッ!!」

 

 

張り裂けそうな叫び声が海に響く。恨みに近い感情と怒りを乗せて叫ぶ声には涙が混じっていた

 

 

川内「お前が私達の姉妹を侮辱した事は一生忘れない!まだお前に二人を捨てた事の怒りを晴らしてもいない!だから死ぬな!生きてもう一度ここに帰ってこい!もし帰ってきたら私がお前を殺してやる!だから死ぬならその時に死ね!」

 

金剛「…フッ。それなら今ここで決着をつけても良いですよ?」

 

川内「…上等!今ここで殺してやるっ!」

 

 

金剛に向かって近づく川内。そこに技術なんてものはなく、ただ勢い任せに腕を曲げて殴りに向かっている。そしてそれを見つめながらゆっくりと川内を迎撃する構えを取る金剛の二人の姿があった

 

 

愛宕『…何を考えてるの?』

 

空母棲姫『どうせ最後だ。どさくさに紛れて逃げようにもお前等は大破だろ?眺める位の余裕はある』

 

愛宕「……」

 

川内「金剛ォォォッ!!」

 

金剛 ニヤッ

 

 

川内の拳を左手で受け止め、そのまま自分へと引っ張ってボディブローを川内の腹へと突き刺す

 

しかしそれを読んでいたのか、腹に左手を添える様にして受け止め、腕を軸にしてハイキックが金剛の頭にヒットする

 

まともにくらってしまった金剛の顔が少し歪んだが、すぐさま笑顔に戻って川内の膝を押しのけて距離を保つ

 

 

金剛「ふぅ~ん…中々良いキックですね」

 

川内「まだまだっ!」

 

 

再び距離を詰める川内だが、それに合わせる様に金剛が海面を蹴って海水を川内の目にぶつける。突然の出来事に反応出来ず、もろに目に海水が入った川内が痛そうにうめいていると、金剛の踵落としが川内の頭に狙いを定めていた

 

振り下ろされる足がまるでスローモーションの様に川内の頭にぶつかる瞬間、川内が振り下ろされる踵の方向に合わせて体を丸めて回転した。これによりまともに入ると思われた踵落としも躱され、驚きの表情を浮かべる

 

 

川内「っ…」

 

金剛「…嘘デショ」

 

川内「アンタが見くびった奴の力だ。まだまだこんなもんじゃないよ」

 

金剛「…なら貴女にも教えてあげますよ。戦艦の怖さってのをね」

 

川内「やってみろっ!」

 

 

川内の行動は止まらず、金剛に向かって跳躍し、そのまま空中からの落下によるキックで金剛の顔にヒットさせた

 

しかしたじろぐ様子もない金剛に川内が驚きの表情を浮かべていると、そのまま足を掴まれて海面へと叩きつけられた。その時に海面が勢いよく跳ね上がり、その海水で一瞬金剛の体を隠してしまう程だった

 

 

金剛「…勝負ありデース」

 

空母棲姫「…イヤ、マダダゾ」

 

金剛「ホワイ?」

 

 

その瞬間、金剛の顎に向かって川内の蹴りがヒットする。海面に手を置き、ほぼ逆さまになっている川内の顔にはしたり顔が浮かんでいた

 

そのまま空中に少し浮かび、少しずつ後退しながら再び海面へと着水する金剛。未だ倒れる様子を見せず、尚立って川内を見つめるが、その目には火が宿っている様に力強かった

 

 

金剛「…最後、手を抜きましたネ?」

 

川内「……」

 

金剛「…ハァ。勝負はお預けですね」

 

加賀「金剛…」

 

金剛「旗艦加賀、これをもって撤退しなさい。想定外の敵に遭遇し、金剛が貴方達を囮にしようとして逃げようとした所を深海棲艦に狙い撃ちにされて金剛は轟沈。助ける間も無く何とか命からがら逃げ去ったと報告を」

 

加賀「…分かったわ」

 

愛宕「ちょっ…ホントにそれで良いの!?」

 

金剛「敵前逃亡なんて本当は許される事じゃありませんヨ。だから貴方達に逃げ帰れる免罪符になれる様に多少の罪を被ろうとしてるだけデス」

 

金剛「それとも…もっと他の免罪符が欲しいのデスカ?例えば暴走した金剛にやられたと…」

 

 

そういうと金剛の姿がみるみる深海棲艦に近い姿へとなっていく。髪は黒く染まっていき、肌も白くなっていく

 

一部の肌には装甲の様な痣のようなものまで浮かび、更に頭からは二本の黒い角が現れる。やがてそれは指程の長さになり、角が伸び切ると同時に目の色が赤色に変化した

 

まさに格が違う。敵対していた空母棲姫に近い力を感じ、あまりの迫力に思わず尻込みしてしまった

 

 

愛宕「なっ…!?」

 

金剛「さぁ…どうしますカ?」

 

加賀「…皆、撤退するわよ」

 

川内「…了解」

 

愛宕「金剛…」

 

金剛「…愛宕、時雨にもよろしくって伝えておいてください」

 

 

一瞬の間を置いて愛宕に問いかけられたと理解した。何故愛宕なのかという疑問がすぐさま浮かんだが、本人にも思う事があるだろうと言う事で納得した

 

 

愛宕「…わ、分かったわ」

 

川内「…金剛」

 

金剛「モウ、マダ何かあるのデスカ?」

 

川内「絶対…帰ってこい」

 

金剛「…私に勝てる力も無い奴ガ、デシャバル様になりましたね」

 

金剛「夢を見たいんだったらモット強くなりなサイ。私にも負けないくらいに強く…ネ」

 

川内「……」

 

加賀「…総員、これより撤退する。比叡と霧島の二名を落とさない様にね」

 

全員「了解」

 

 

 

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入れ替わった者の縁結び(#41)

 

 

港湾水鬼「ホッポ。約束ハ覚エテル?」

 

北方棲姫「迷惑二ナル事ヲシナイ!オ姉チャント離レナイ!」

 

港湾水鬼「ソウ。チャント覚エテルワネ」

 

北方棲姫「オ兄チャンモアリガトウ!ココヲ教エテクレテ!」

 

青年「気にしなさんな。お姉ちゃんと仲良くな」

 

港湾水鬼「アノ…ヤハリオ金マデ全テ出シテモラウ訳ニハ…」

 

青年「別に気にしないでください。寧ろ助けられたこちら側からお返し出来ない方が辛いですよ」

 

港湾水鬼「…初メテ出会ッタアノ時、ドウシテ海二?」

 

青年「父親に連れられて海釣りにね。その時に偶々深海棲艦に見つかって襲われてたってだけですよ」父親は無事でした

 

港湾水鬼「……」

 

青年「そんな時に現れたのが貴方達二人です。後少しで死ぬという所を貴方が庇ってくれて、この子が攻撃して深海棲艦を撃退してくれたおかげで無事に危機から脱せました。そんな恩人二人に何も出来ないというのは嫌なので」

 

北方棲姫「ホッポ、強カッタ?」

 

青年「あぁ。すっごく強かったよ」ナデナデ

 

北方棲姫「エヘヘ…//」

 

港湾水鬼「デ、デモ…」

 

青年「…例え貴女達が深海棲艦だったとしても助けられたのは事実です。寧ろ同族を攻撃した貴女達の方が辛いでしょう」

 

港湾水鬼「…分カッテタンデスネ」

 

青年「いや、まぁ…うん。何となく雰囲気が他の人とは違う感じがしたので」ジッ

 

北方棲姫「オ兄チャン、目ガイヤラシイ」

 

青年「すいませんでした」ドゲザッ

 

港湾水鬼「…フフッ」クスッ

 

北方棲姫「オ兄チャンモ一緒二遊バナイ?私達ハココノ事良ク知ラナイシ」

 

青年「分かりました。それでは精一杯エスコートさせていただきます」

 

北方棲姫「エ、エスコート…//」

 

港湾水鬼「イ、イインデスカ?」

 

青年「はい。自分にとっても役得ですので」

 

港湾水鬼「役得?」

 

青年「あ、こちらの話です」

 

北方棲姫「二人共!早ク早クー!」フリフリ

 

港湾水鬼「ア、ホッポ!一人デ行ッチャ駄目デショ!?」

 

青年「フッ、僕らも行きましょうか」

 

港湾水鬼「ハイ。今日ハオ願イシマス」

 

 

北方棲姫「ロデオ楽シカッタ!」

 

港湾水鬼「私ハモウ良イワ…」ゲッソリ

 

青年「楽しまれたようで何よりです」

 

北方棲姫「オ兄チャン、次ハアレ取ッテ!」ユビサシッ

 

青年「アレは…アクセサリーのクレーンゲーム?」

 

北方棲姫「アノキラキラシタノ欲シイ!ダカラ取ッテ!」

 

青年「ふふっ。分かったよ」チャリーン¥

 

港湾水鬼「ホッポノ我儘ニ付キ合ワセテスイマセン…」

 

青年「いえいえ。それに僕、こういう小さいクレーンゲームなら得意なんですよ」ほら、取れた

 

北方棲姫「ワーイ!アリガトウ!オ兄チャン!」

 

青年「どういたしまして」

 

北方棲姫「…ファ」フラッ

 

青年「おっと」ガシッ

 

港湾水鬼「アラアラ、疲レチャッタノネ」

 

北方棲姫「ムゥ…」ムニャムニャ

 

青年「ほら、起きて」ナデナデ

 

北方棲姫「…オ兄チャン抱ッコ」

 

青年「えぇ…」チラッ

 

港湾水鬼「コラ。オ兄サンヲ困ラセタラ駄目デショ!」

 

北方棲姫「ムー…ヤダ」ギュッ

 

港湾水鬼「ホッポ!」

 

青年「まぁまぁ。僕が抱っこしても構いませんか?」

 

港湾水鬼「エ、エェ。ソレハ良インデスケド…ソノ、御迷惑ジャナイデショウカ?」

 

青年「この位大丈夫ですよ。寧ろこれくらいしか出来そうにないですし」グイッ

 

北方棲姫「…温カイ」

 

青年「ほっぽちゃんもお眠の様ですし、今日は家までお送りしますよ」

 

港湾水鬼「…スイマセン。デシタラ甘エサセテ頂キマス」

 

青年「お任せください」ザッザッ

 

 

北方棲姫 スヤスヤ

 

青年「……」スタスタ

 

港湾水鬼「……」ジッ

 

青年「…あの、私の顔に何か付いてますか?」

 

港湾水鬼「アッ、ゴメンナサイ。少シ…イエ、カナリ知人ニ似テタカラ…」

 

青年「まぁ世の中にはそっくりな顔の人間が世界に三人いるって言いますからね」

 

港湾水鬼「ウウン。顔ダケジャナクテ私達ニモ恐レズニ話シテクレル所トカ優シイ所モソックリナノ。マルデソノ人ト一緒ニイタミタイダッタワ」

 

青年「…そこまで来るとドッペルゲンガーやスワンプマンみたいですね」

 

港湾水鬼「フフッ。強チ間違イジャナイカモネ」

 

青年「…そうなるといずれ会えそうですね」

 

港湾水鬼「エッ?」

 

青年「長年の勘って奴です。きっと貴女が今話した事は何処かでその人と会えるきっかけの様な気がして」

 

港湾水鬼「…ホント、同ジ人ダト言ワレテモ信ジチャイソウネ」

 

青年「もしかしたらホントに同じ人だったりしてね」クスッ

 

港湾水鬼「アハハ。ソレハ愉快ネ」

 

青年「っと。そろそろ海が近いですがここら辺で良いですか?」

 

港湾水鬼「エェ。ココマデ送ッテクレテアリガトウ」

 

青年「ほっぽちゃん。着いたよ」ユサユサ

 

北方棲姫「ンー…」ファ~

 

港湾水鬼「ホラ。オ兄サントオ別レヨ」

 

北方棲姫「ンー…」ギュッ

 

港湾水鬼「ホッポ…」ハァ…

 

青年「ごめんね。流石に海には行けないよ」ナデナデ

 

北方棲姫「…マタ会エル?」

 

青年「うん。きっと会えるよ。約束する?」

 

北方棲姫「…ウン。約束スル」

 

青年「それじゃ指切りだ」スッ

 

北方棲姫「嘘ツイタラ深海ニ連レテク…」ユビキリ

 

青年「あぁ。その時は他の皆も紹介してくれよな」

 

北方棲姫「…ヤッパリオ前、変ナ奴」

 

港湾水鬼「コラッ。ソノ呼ビ方ハ駄目ダッテ前ニ言ッタデショ」

 

青年「いえいえ。それだけこの子が心を開いてくれたって事ですし、別に良いですよ」

 

北方棲姫「…ソレジャマタネ。オ兄チャン」

 

港湾水鬼「ソレデハ、マタ」

 

青年「えぇ。さようなら」フリフリ

 

青年「……良く似た人間、ねぇ」

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