この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ 作:七福えると
レ級「親方!今日モオ願イシマース!」
親方と呼ばれた若い人「おう!レ級ちゃんか!今日もまた頼むぜ!」
レ級「任セロー!ソレト、今日ハ友達モ連レテ来タンダ!社会勉強ッテ事デ一緒ニ仕事サセラレナイカ?」
親方「ん?あぁ。確か艦娘って呼ばれてる子達連れて来たのか。良いぜ良いぜ。レ級ちゃんの紹介なら信用できるしな」
レ級「ホントカ!?助カルゼ!親方!」
夕立「……レ級ちゃん、陽キャっていうか、コミュ力高いよね」
島風「うん…正直、凄いよね」
親方「おし!んじゃあ今日は資材運びだ!何でも海の上に建てられた施設があるらしくてな。そこに建築の依頼が来てるんだが、資材がすぐに届けられねぇんだよ」
親方「現場には数人いるし、少しでも建てるのを早めたいんでな。悪いが、ひとっ走り行ってくれねぇか?」
レ級「オウ!了解ダ!」
親方「助かるぜ!俺も行きたい所なんだが、これから悪徳建設会社を潰しに行かなきゃならなくてな。すまねぇが頼んだぜ」
親方「ッテ言ウ訳ダ。二人共、装備ノ準備ハ良イカ?」
夕立「あぁ。まぁ、装備から問題はないけど」
島風「レ級ちゃんって、何時もこんなことしてるの……?」
レ級「ン?今回ミタイノハ初メテダナ。何時モハ建設仕事ダ。後トラック運転シテ資材運ビダナ」っ大型免許
島風「うわ…これ本物だ…」
夕立「深海棲艦が免許取得出来る教習所って何?」
レ級「後ハ漁船操縦ト気象予報士ノ資格持ッテルゾ。漁場ノオッチャン達ニレ級チャンハ天気予報士ヨリ正確ダカラ助カルッテ言ワレル程ダ」フフン
夕立「一体レ級ちゃんは何を目指してるの…」
レ級「サテ、オ喋リハコノ位ニシテ、ソロソロ行クゾ。運ブ時ハ私ノ指示ニ従ッテクレ。チョット危ナイカラナ」
島風「…装備の有無聞かれた時点で分かってたけど、やっぱり?」
レ級「海ノ上ニ建テラレテルッテ言ッタダロ?アソコデ以前建築シタンダガ、道中デ敵対シテイル深海棲艦ガイルンダ。ソイツ等ニ襲ワレタリスルカラ、流石ニ装備ガ無イト危ナクテナ」
夕立「…まぁ、うん。海の上って聞いてたから薄々察してたけど、中々だよね」
島風「ていうか敵対しているんだよね?しかも同じレ級に対して。私達が運ぶ場所って一体どこにあるの?」
レ級「エーット、大体カリブ海沖辺リダ」
夕立「……カリブ海?」
島風「…海域で言うと、西方海域より更に先?」
夕立「……」ダラダラ
レ級「サァ、行クゾー!」
夕立・島風「「ちょっと待って!?」」
大淀「提督、夕立ちゃんと島風ちゃん達から連絡が来てます」
提督「お。なんて来た?」
大淀「えっと…死ぬ気で頑張ってきます。とのことです」
提督「ははは。まぁ、アイツ等にとっては初めての事でもしてるんだろうな。緊張しまくってるみたいだ」クスクス
大淀「ですね。心なしか声も大分疲れ切ってるというより、焦ってるようでしたから。かなりしごかれてるんでしょう」
提督「帰ってくるときは一皮むけてるといいな。今から楽しみだ」
レ級「ホラ、夕立!ボヤボヤシテルト攻撃食ラッチマウゾ!」ドガン
夕立「分かってるよ!」ドンッ
島風「くっ…!資材が、重い…!体が引っ張られる…!」
レ級「腰ヲ落トセ!上半身ト下半身ニ隙間ヲ作ルナ!体全体ノ密度ヲ上ゲレバ振リ回サレヅラクナル!」
夕立「ねぇレ級!貴女いっつもこんな奴等相手にしてるの!?」
レ級「マァナ!」
軽巡ヘ級(flagship)「…裏切者ガ」
雷巡チ級(elite)「仲間ヲ呼ベ。アソコニ行カレルト手ガ出セナクナル」
戦艦ル級(flagship)「油断スルナ。相手ハアノレ級ダ」
レ級「良ク分カッテルジャナイカ。行クゾ!」
直後、レ級の背後から航空機が散開しながら出現し、すぐさま敵の頭上を覆いつくす
爆雷が投下され、すぐさま敵のいた地点は爆発に包まれてしまう。その爆風をレ級本人は涼しい風でも浴びるかのように澄んだ顔をしているが、私達にとっては熱い熱気が一気に浴びる事になった
爆風が晴れた後、そこに立っていたのは半壊した相手。だが全員中破止まりであり、戦闘の続行は可能なように見えるが…
レ級「フッ。仲間ヘノ連絡ハ無理ミタイダナ」
軽巡ヘ級(flagship)「チッ…!調子ニ乗ルナ!」 22/57 中破
夕立「こっちを忘れて貰っちゃ困るっぽい!」シュッ
雷巡チ級(elite)「シマッ…!」
夕立の放つ魚雷がへ級とチ級へ水の軌跡を飛んでいく。近距離から放たれる魚雷を回避する術はなく、再び爆音が鳴り響く
沈んでいく二隻の深海棲艦。しかしその爆風の中からル級が爆風を切り裂いて突っ込んで来た
夕立の顔に焦りが浮かぶ。だがその目は決して閉じずに開いている。そして一瞬だけだが、僅かに頬が上がった気がする
ル級が盾のような砲身を構え、数メートルの距離しかない夕立に向かって砲撃を行う。確実に回避は不可能であると確信をしていた
だが聞こえて来たのは爆発音ではなく、ただ弾が飛んでいく音だけ。一秒にすら満たない時間だが、確かに爆発した音が聞こえなかった
回避された。ならばどこにいるのか、盾を開いて確認しようとした瞬間、理解した
自身の艤装により見えない死角が足元にあった。盾から開いた瞬間にそこにいた夕立の笑みが一瞬で思考を防御へと転じさせたが、それよりも早く顔に夕立の手に装備した艤装から砲撃が放たれる
視界がオレンジに染まり、再び海の上の景色を見ることはなく、ただ視界と意識が暗闇の深海へと落ちていった
夕立「あっぶなかったぁ…」
島風「いや、なに今の!?完全に当たったと思ったけど!?」
レ級「体ヲ海面ギリギリマデ下ゲタンダ。サナガラ地面ヲ這ッテ歩クヤモリノヨウニ。足ダケ艤装ヲ残シテナ」
夕立「背中の艤装も仕舞ったから、何とか回避出来たけどね…それより、資材は無事?」
島風「あ、うん。なんとかね」
レ級「良シ。ジャア他ノ奴等が来ナイ内ニサッサト行クゾ」
夕立・島風「「了解」」
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二人から連絡を受けて数時間。何でもかなり遠くに行くらしく、提督がどこかそわそわした様子を見せながら二人の帰投を待っていた
提督「うー…一体どこまで行ったんだ?流石に遅すぎるぞ…」
大淀「ご報告しましたが、お二人はカリブ海沖に向かったとのことです。距離は
提督「…長くね?」
大淀「長いです。それも猛烈に」
提督「っていうかカリブ海って何処にあんの?」
大淀「このクソ馬鹿提督は…『酷くない?』事実です」
やれやれと悪態をつきながら地図を持ってきて提督に見せる。指先で丸を描き、カリブ海の場所を知らせる。その時の顔は真剣そのものなのだが、せめて海軍にいるのだから地理位は理解していてほしい
大淀「ジャマイカやキューバ。コスタリカにパナマといった国があるところです。海外艦で言うと、Fletcher (フレッチャー)やJohnston (ジョンストン)さんがその近くで生まれてます」
提督「へー。って、そうか。あそこの基地に行ってんのか」
大淀「何か知っているんですか?」
提督「あぁ。ちょっと球技大会があるときにそこにいた人と話したことがあってな。何なら帰ってくる時にCQCに磨きをかけて帰ってくるんじゃないか」
大淀(CQC…)
提督「しかし、下手したら20日以上か…まぁ、それでも回る様にはなってるし大丈夫か」
大淀「公開祭開始の一週間前には帰ってきますから、公開祭を楽しむ分には全然間に合います」
提督「うっし。ならいい。レ級もいるから道中は大丈夫だろう」
大淀「…随分信頼されてるんですね。レ級さんの事」
提督「だってお前…砲撃・雷撃・航空・対潜。全部出来る奴を信頼出来んでどうする。俺はレ級が敵として来たら泣く」
大淀「それは…まぁ、はい」
提督「俺の心配としては、寧ろ二人がレ級についていけるかだな。レ級は考えなしって訳じゃないが、結構強引な所あるしなぁ…」シミジミ
大淀「行ってしまった二人の事を考えても仕方ありません。とりあえず書類、終わらせますよ」
提督「…ふぁ〜い」
しばらくの間、ペンを走る音が二人の間で鳴っている。提督の方で時折ペンが止まる音がしたが、私の方ではそんな事は起きない。何故なら止めた分だけ今日の仕事が遅れるから
私のペンは資材の消費量や遠征での取得量を計算する簿記や、戦果の確認を行なっている。後は提督の方でハンコ一つ押すだけで済むように
提督も初めと比べて大分出来るようにはなったが、まだまだ遅い。私と比べるのはアレだが、それでも遅い方だと言うのは見て分かる
しかも時折、急に電池が切れたように目を閉じて数秒から数分程眠ってしまったり、目が覚める時には体をビクリと動かすため、何度も書類が床へと落ちてしまう
提督が無理をしているというのは経験上から推測は出来る。だがその無理が他の人間にとっては普通のことである為、私は特に声をかけない。声をかけても提督は良い気分をしない。自分がどういう人間かを分かってる人に、そんな言葉はただの事実を突きつけてるだけに過ぎない。そんなものは余計な無駄を増やすだけのことだ
大淀「提督。この書類間違えてます。これは補給経路の情報連携書類であって、出撃経路を示す物ではありません」
提督「…あっ」
大淀「経路だけの文面見て判断しましたね。もう慣れましたが、提督は見た物をちゃんと認識する力をつけてください。
提督「…ゲームで鍛えろって、お前ホント俺に似て来たな」
大淀「あら。じゃあ私もここで仕事している間だけでも俺って言った方が良いですか?」クスクス
提督「…そこまで似せなくていいから」
大淀「ふふっ。あ、これも間違えてますよ。提督」
提督「…今日は嫌な日だな」
響「…で、どうしたの?二人とも」
天龍「いやな、ちょっと聞きたいことがあってさ」
龍田「提督の事なんだけど、響ちゃんは良く提督に絡みに行ってるでしょ?だから提督の色んな事を知ってるかもと思ってね」
響「はぁ…?」
時雨「あっ。二人ともずるいよ。響を頼るのは」
愛宕「ちょっと。それじゃあ二人が勝っちゃうじゃない」
天龍「へへん。早い者勝ちだ」
響「時雨、それに愛宕も?」
ル級「ンー!響取られちゃいました!」
ヲ級「あら、残念ですね」
響「えっ、えっ。何、何の用なの?」
天龍「いやな。今ちょっと賭けをしててよ。さっき龍田も言ってたが、提督の秘密を一番握ってるのは誰かっていうのでな。お前が詳しそうなんで聞きに来た」
響「…いや。それなら電に聞きに行きなよ」というか何その勝負…
天龍「もう行ったよ。そしたらアイツさ…」
電『司令官さんの秘密?なら電を倒せたら一つ教えてあげるのです』LV53
天龍「…鎮守府トップの練度に勝つのは無理だった。殆ど差は無い筈なのに……」LV47
龍田「二人掛かりだったんだけどねぇ…」LV49
響「あー、うん。電は練度以外でも勝ってる部分が沢山あるしね」経験、知識、メンタルなんかで
響「ていうか聞くのは良いけど、そもそも何でそれをしようって事になったんだい?内容によっては手伝わないよ」
時雨「お酒の勢い」ここにいる全員明日は出撃ないし
響「…把握したよ」というか酒の勢いで良く電に挑んだね
響「で、何が知りたいの?一つに付き間宮券一枚ね」
ル級「エーッ!対価ですか!?」
響「もちろん、ただじゃないよ。でも貰った分のお返しはするよ」
ヲ級「じゃあ私から一枚。内容は…そうですね。提督の弱みとか知りません?」ピラッ
響「司令官の弱みか…最近だと目が悪いことだね」
ヲ級「それ、ただのゲームしすぎじゃないんですか?」
響「さぁね。でも目が悪いってのは視覚的な意味もあるけど、理解が出来ない事が多いみたいだよ。例をあげるなら、目の前にボールが飛んできたとしても正確な位置が掴めないみたいだね」
ヲ級「…なるほど」
ル級「それ、何処情報なんですか?」
響「妖精さんだよ」
龍田「…意外とハッキリとした弱点ね」
天龍「っていうか妖精さんかよ。だったら俺も…」
響「やめた方が良いよ。私も司令官の話を聞けるまでに大分時間使ったし。今から行っても追い返されるだけだよ」
天龍「んだよ。ならしょうがねぇか…」
響(…でも、妖精さん達のお願いとかはすんなり聞いてくれる事も多いけど、司令官に関する事でかなり踏み込んだ事聞こうと思えば絶対に答えてくれないんだよね。そこらへんは自分達でやれって事なんだろう)
愛宕「じゃあ私も一枚。提督って胸が大きい人が好きだけど、昔みたいに触らなくなったのはどうしてか知ってる?」
響「…えー。それ聞くの?」
愛宕「あら、答えづらいの?」
響「いや…うん。まぁ私もこれを知ったのは妖精達と飲んでた時に偶然知っただけだし…」
愛宕・龍田「「…へぇ?」」ニコォッ
龍田さん、愛宕さんの顔が凄く良い顔になった。例えるなら最近出た
愛宕・龍田「「ねぇ、響ちゃん。その話、詳しく教えてくれる?」」
天龍「……響。知ってるなら吐いちまえ。じゃねえと後が怖いぞ」
響「……はぁ。簡単だよ。司令官も男ってこと」
愛宕「…えっ」
響「たまに提督が休みの日、外に出かけてるでしょ。その時にそういう事が出来る場所に行ってるんだって」
響(嘘は言っていない。店とは言ってないし、病院とも言ってないからね)
龍田「…それ、ホントにホント?」
響「うん。流石に嘘は言わないよ」
時雨「…そうか。提督、お気に入りはしてなかったけど、一件だけ履歴に男の人の画像があったのを見たよ。アレは見間違いじゃなかったんだね」
響「……ん?」
ル級「……提督。ホントに壊れちゃったんデスカ?」
ヲ級「……でも、提督がそうなるのもしょうが無いのかも知れません。思えば私達、最近は提督にあたりが強くなってましたから」
響「え、ちょっと皆。何かとんでもない勘違いを」
愛宕「……私の胸部、そんなに魅力なかったのかしら」
天龍「いや。それはないだろ。ただ…求めてる物が男だった。それだけの話だ」
龍田「…私、ちょっと提督と距離を置くことにするわ。少しだけ、整理する時間が欲しいもの」
響「え、えっと、皆。そうじゃなくてね?司令官は」
天龍「いや。皆まで言わなくていい。いくら提督が艦娘好きだったとしても、それとは別で好きなものがあった。それだけの話さ」
時雨「……僕、提督がそっちにいかないよう、何とか引き留めてみるよ。前は振られたけど、あの頃より少し成長したんだ。少しは誘惑出来るかも」
愛宕「私も行くわ。自慢の胸部装甲で何とか引き戻して見せる」
時雨「…うん。愛宕が来てくれるなら心強いよ」
龍田「…響ちゃん。言い辛い事だったでしょうに、無理に話させてしまってごめんなさいね」
響「え、いや。だからそうじゃなくって、司令官はただ…」
そこまで言って言葉が止まる。そして自分の言葉を振り返るために、頭を下に向けて腕を組みながら考える
司令官が性欲を持てあまさないように発散しだした。何て人前で話す勇気はない。というか話したくない。そんなことをすれば私が本物の変態扱いされる
だが司令官の評価は既に不味いことになっている。たった一つの履歴から男好きというとんでもない評価になってしまった人に、そのきっかけを与えてしまった自分は何かするべきじゃないのか
いや。だがそれで自分が困るか?…と思ったが、大分困る。というか下手したら司令官が距離を置いてくる。変な噂を流して司令官としての評価を落とすヤバい艦娘としてのレッテルを司令官から貼られてしまう
そうなれば私は……いや。考えるのはやめだ。今は一刻も早く誤解を解かなければ
響「ねぇ、皆」パッ
廊下 ヒュゥ~…
ガラーンとした誰もいない廊下。その突き当りを曲がるル級の足が一瞬だけ見え、そして見えなくなった
響「…あ。ダメな奴だこれ」
暁「ひーびーきー?」
響「あっ、暁!丁度良かった!皆を」
暁「そんな事より」
響「そんな事より!?」
暁「今から出撃でしょ。さっさと来なさい。曙達を待たせてるんだから」
響「そっち!?というか話を聞いてたんじゃないの!?それがお約束でしょ!?」
暁「何わけの分かんない事言ってんのよ。ホラ、さっさと行くわよ」ガシッ
響「待って!お願いだから今だけは待って!!後生だから!!!」ズルズル
暁「ふふっ。今日こそ深海棲艦の奴らにギャフンと言わせてやるわ。そうすれば司令官にも褒めてもらえるわよね」
……結局、私が司令官と会うことが出来たのはその日の夜。司令官から一緒に風呂に入らないかと呼ばれた時だった
今、私は服を脱いで裸になって風呂場の目の前に立っている。中からは提督の静かな息遣いだけが聞こえていた
意を決してドアを開ける。すると提督の顔は酷く疲れており、心なしか瘦せた様にも見えた
今から私はこの空間で幾ばくかの時間を過ごす。それがとても長く感じるだろうという事は、今の自分の心境で言うと嬉しさよりも恐怖が勝っていたのは言うまでもないだろう