この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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物語の裏話その4

イジメ(感情が波打つ日)

 

 

ビスマルク「……はぁ」

 

 

私の目の前にはお盆に乗ったご飯と焼き鮭。卵焼きが二つに青野菜が箸で一度摘まんだら無くなる量がある

 

チラリと横目で他の人のお盆の上を見る。そこにはホンの僅かではあるが、自分よりやや量が多く盛り付けられた食事があった

 

…なんというか、地味ね

 

これが噂の可愛がりだとは思うんだけど…なんというか、その、本当に地味ね

 

 

暁「ねぇ、ビスマルク」

 

ビスマルク「あら、暁。どうしたの?」

 

暁「これ食べてくれない?ビスマルクは戦艦だから食べられるでしょ?」っピーマン

 

ビスマルク「…えぇ。いただくわ」

 

 

ここ数日はこんな感じ。なんというか、思わず笑っちゃいそうになるくらいに可愛らしい。それでも普通に接してくれる子もいるし、日常にはなんら支障が無い

 

無い。その筈なんだけど…

 

 

提督「で、どう?」

 

ビスマルク「地味に心にくる物があるわ…」

 

提督「なるほどなぁ。とするとちょっとしんどくなってくる頃だな」

 

ビスマルク「どういうこと?」

 

提督「防御力がどれだけあってもダメージは必ず食らってHPは減るという事だ。単純に言えば今のお前はそういう状況になってる」

 

提督「今のお前見てると昔を思い出して懐かしい気分になるよ。あの頃はホントダメガキだったなぁ」今もだけど

 

ビスマルク「…提督の過去話か。少し聞いてみたい気もするわね」

 

提督「つまらんぞ。小学校の頃に1年から卒業までずっとイジメモドキ受けてたり、中学入ってしばらくしたら親離婚して不登校なって、高校からはまともに過ごし始めて今ここって感じだ」

 

ビスマルク「短くまとまってるけどやけに苦労してない?」

 

提督「この程度で苦労とは言わん。自分がじゃなくて周りがそうなって自分が影響受けただけだ。俺自身は何の苦労もしていない」

 

ビスマルク「提督として答えないで。俺って言う時は何時も提督としての仮面被ってるでしょ」

 

提督「残念なことに期待してる答えじゃないと思うが、僕個人としての意見だ」

 

ビスマルク「…そう」

 

提督「まぁ俺のことはどうでもいい。これからに不安か?」

 

ビスマルク「じゃなきゃこうして会いに来ないわ」

 

提督「ふぅ…しょうがないな。風呂…だったら面倒なことになるか。今ここで話せ。どうしたいのか聞いてやる」

 

ビスマルク「解決してくれないの?」

 

提督「経験則だけどね、他人に解決してもらうのは無理。別の誰かの場合知っていて無視する。関わらない様にしてくる。家族に解決してもらおうとした場合、あるのは逃げしかない」

 

ビスマルク「逃げ?」

 

提督「僕が小学校の頃、イジメられてたクラスメイトが引っ越しってたよ。何処に引っ越したとかも軽く聞いてた程度で、すぐに何処に引っ越したか忘れたけど」

 

ビスマルク「うわっ…」

 

提督「しかもソイツと久々に会った時、顔と声が変わりすぎて名前聞いても分からなくてな。誰ですかって言ってしまって、その時の申し訳ない気持ちが今も思い出せば込み上げてくる」まぁ名前を間違えて記憶してたってのもあるが

 

ビスマルク「カスね」

 

提督「分かってるよ。んなこと。正直な所、そんな事すらあった事も忘れてほしかったよ。それだったらどれだけ楽だったか」

 

ビスマルク「…で、結局私はどうすれば?」

 

提督「言ったろ。話せって。他にあれば聞け」

 

ビスマルク「会話する気あるの?」

 

提督「僕から解決策を出せってか?仮にもだぞ。約6年間もイジメモドキ受けてた人間が解決に至る答えがあると思うか?」

 

ビスマルク「……それもそうね」

 

提督「…一つ、確実にイジメを軽くする方法ならある」

 

ビスマルク「…軽く?解決じゃなくて?」

 

提督「あぁ。だが死ぬほど難しい」

 

ビスマルク「…やるわ。やらないと、提督みたいになっちゃうんでしょ?」

 

提督「分かってきたな。そうやって引き続き俺を踏み台にしていけ」

 

提督「で、軽くする方法だがな、自分の力を見せろ」

 

ビスマルク「自分の力を?」

 

提督「あぁ。イジメってのは基本的に能力が強い者が弱い者を使って遊ぶ、一種の遊びみたいなもんだ」

 

ビスマルク「遊び…」

 

提督「まぁ遊びだけじゃなく、嫉妬や恨みと言った理由でもやられることがある。そういう時はイジメの方向性が相手に精神的ストレスを与えて本来の力を出せなくさせる事が多い」

 

ビスマルク「今も少しとはいえ私も受けているのだけど?」

 

提督「お前のは比較的軽いもんだ。本気でストレスを与える場合、もっと陰湿に、それでいて追撃も来る程に容赦が無くなる。例えば頼れる誰かがイジメられるソイツにいた場合、相談させないよう脅しをかけてくる。とかな」

 

ビスマルク「……」

 

提督「だがお前がここに来れたって事はそういう事が無かったって事だ。だからイジメのレベルが低い。それでも難しい問題ってのは変わらんけどな」

 

ビスマルク「わざと泳がせてるって事は?」

 

提督「それはない。というかそれは基本的に悪手でしか無い。もし頼れる相手がいなかったり、そもそも周りから信頼性が無い人間とかだったら、本人の勝手な虚言って事に出来るからそれを狙っての事かも知れん」

 

ビスマルク「…なるほどね」

 

提督「さて、能力を見せる事が軽くする事になる理由だが…」

 

ビスマルク「大体分かったわ。能力の優劣による事が原因だから、相手より自分の方が凄いって思わせたらいいのね」

 

提督「そういう事だ」

 

ビスマルク「じゃあ、早速演習を組んでくれない?あ、出撃でも良いわよ?」

 

提督「…で、心良くお前と組んでくれる奴はいるのか?」

 

ビスマルク「う…」

 

提督「原因嫉妬だしなぁ…組んでも下手したらちょろっと陣形から離そうとしてくるんじゃないか?」

 

ビスマルク「そういえば提督はどうやって原因が嫉妬って突き止めたの?」

 

提督「あぁ。一緒に風呂入ってしっかり聞いたんだ。じっくりと話を聞いたから間違いないぞ」

 

ビスマルク「…変態」

 

提督「体に聞いたわけじゃねぇよ!?」

 

ビスマルク「何も言ってないわよ」

 

提督「……と、兎に角だ。お前、余所で建造されたろ。そん時あっちの提督からなんか言われたりした?」

 

ビスマルク「んー。特に何も。本当に建造されてからすぐ異動してねって言われちゃったの。だから本当に何も知らない状態でここに来たのよ」

 

提督「…特にあいつらが懸念してる事は無さそうだな。まぁ当然だが」

 

ビスマルク「何?スパイかもって疑われてるって事?」

 

提督「まぁな。それをあいつらに伝えても心ン中ではそんな事ないって言い訳してお前のイジメは止まないだろうけどな」

 

ビスマルク「はぁ、めんどくさいわね。ま、私凄いし?嫉妬の対象になるのもしょうがないわよね」

 

提督「…お前の前向きさには感心するよ」

 

ビスマルク「まぁでも分かったわ。なら方法は一つしかないわね」

 

提督「へ?何するの?」

 

ビスマルク「何ってそりゃあ、決まってるでしょ?」

 

 

 

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ビスマルク『あー、あー、マイクテストマイクテスト』

 

電「ん?ビスマルクさんの放送?」

 

暁「……一体何なのかしら」

 

大淀「暁さん。今は勉強中ですよ」

 

暁「でも、放送なんだし聞いておかないと」

 

ビスマルク『突然なんだけどね、これから私。提督とゆっくりお話をするの。とーっても大切なお話だから、提督の自室に入らないでね?以上よ』ブツッ

 

電「は?」バキィッ

 

大淀「……」ベキッ

 

暁(シャーペンが折れた!?)

 

電「あの○○○○○○○(規制)…」

 

大淀「少し背が高くて胸がデカい戦艦に抜け駆けさせるわけには行きません。電ちゃん」

 

電「はい。ちょっとお話してくるのです」

 

暁(……思えば私、嫉妬なんてことしてたのね。二人見て頭の中がスッキリしたわ)

 

夕立『提督さんが食べられる(意味深)っぽい!』

 

島風『夕立ちゃん!待って!』

 

曙『二人とも待ちなさい!』

 

暁「……なんか、馬鹿みたい」ボソッ

 

 

 

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ビスマルク「良し。これでオーケーね」

 

提督「何してんの!?」 縛り

 

ビスマルク「何って、挑発だけど。妖精さんも手伝ってくれてありがとうね」

 

妖精 サムズアップ

 

提督「えぇー…何でお前らそんなにやる気なの?」

 

妖精 ハァ?

 

提督「いや、そんなち〇かわのウ〇ギみたいな声出されても…」

 

ビスマルク「……私も妖精さんとお話したいわね」

 

妖精『これならどうですか?』カンペ

 

ビスマルク「ふふっ。貴方達は優しいのね」

 

妖精『……』

 

提督「……いや、無言も書かなくて良いだろ」

 

妖精『ビスマルクさんに言っておきます。これはただの嫉妬だと思わないほうが良いです』

 

ビスマルク「へ?」

 

妖精『ウチの提督は無能です。アホだし馬鹿だし何にも考えてない馬鹿丸出しの人です』

 

提督「おおい!馬鹿二回言ったぞ!」

 

妖精『でもそれ以上に提督はここに必要とされてるんです。それはただ司令官としてだけではなく、個人として、人として提督は必要とされているんです。それは提督やビスマルクさんが思うよりも、彼女達にとっては必要な人だとされているんです』

 

ビスマルク「……」

 

提督「正直俺からしたら頭ひねるばかりだけどな。寧ろ怖いわ。目的が読めねぇもん」

 

妖精『でも提督、それを分かった上で皆さんから離れませんよね?』

 

提督「そりゃ離れられんしな。お前ら置いてどっかに行けないし、そもそもここ以外に居場所無いし」

 

ビスマルク「…でも言ってる事分かるわ。私もここに来たばかりだけど、何でか提督のことを放っておけないのよ」

 

提督「…俺さ、そんなに頼りない?」

 

妖精『少なくともぐるぐる巻きに巻かれてる今の状況を見ると、頼りないというより情けないですね』

 

提督「やったのお前らだけどな?」

 

壁『グワーッ!!』0/1 破壊

 

電「見つけたぁ…!」

 

提督「ギャーッ!?」シャ〇ニング!?

 

大淀「ビスマルクさん。お話があります」

 

ビスマルク『フッ。面白いじゃない。話があるのはコッチよ』ボキッパキッ

 

大淀『…やる気、ですか』チャッ

 

提督『え、何?何で大淀眼鏡外してんの?ていうか眼鏡外して見えるの?』

 

大淀『艦娘の視力は裸眼で五キロ先まで見えるんです。知らなかったですか?』

 

提督『お前らの視力は水平線の距離かよ!?』※水平線が見える距離は大体5キロとされる

 

電「電は司令官さんを避難させておくのです」ガシッ

 

妖精『あ、それじゃあ私はそろそろ準備してきますね~』

 

提督『準備!?準備って何!?』

 

妖精『何って、決まってるじゃないですか』ポチッ

 

 

部屋 グラグラ

 

 

提督『へ!?何!?なに!?!?』

 

BGM『キ〇肉〇ン Go Fight!』

 

リング ゴゴゴゴッ

 

提督『う、ウワーッ!?床からリングが!?ていうか壁も広がってる!?』

 

妖精『ルールは単純!ノックアウトのみ!どちらか倒れるまで叩き合え!!』カンカンカン!

 

夕立『あ、始まったっぽい!』

 

島風『頑張れ!二人とも!!』

 

曙「何やってるのよ二人とも!?ていうか電はクソ提督を離しなさい!アンタも何で好き勝手にされてるのよ!?」

 

ビスマルク・大淀『いざ、勝負!!』バシィッ!

 

 

 

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「…はっ!?」ガバッ

 

「……ここ、自分の部屋、だよな…?」キョロキョロ

 

悪夢銃 ゴトッ

 

「…あ。確か今日眠れなくて、それでこれ使って寝たんだっけ」

 

「はぁ…体に変な汗かいてるし、しかも体全体が痛い…つーかダルい…」イツツ…

 

「…まだ、深夜の1時だし。二度寝するか」バサッ

 

(…アレ。そういえば何で俺起きたんだっけ)

 

(……まぁ、良いか)

 

 

翌朝、ビスマルクに0400の時間に起こされた僕は、ビスマルクとマ◯パ8しながら過ごす事になった。その途中で電も合流してしばしゲームを楽しんだ後、朝の仕事をすることになった

 

余談だが、朝食中の電とビスマルクの仲がやけによさげだった。対して妖精さんはそんな二人を少し複雑そうな顔で見ていたが、最後にこちらを見て溜息一つをついた後、頭を振って朝食に夢中になっているのを見て、自分は頭を傾げることしか出来なかった

 

 

 

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殺意の比べアイ(今日も1日これ一本)

 

 

銃弾が3発入った拳銃を左手に。もう片手にはナイフが一つ握られている

 

目前にいる相手も同じ条件だ。片手に拳銃。片手にはナイフ。違う点があるとするのなら

 

アッチは誰かを傷つける事に慣れている(いない)

 

だけど、直感的に一つだけ。確信を持っている

 

アイツは今、この状況を心から楽しんでいる。という事だ

 

 

「準備は良いか?」

 

自分「何時でも」

 

「良し。じゃあ死ね」

 

 

指を銃のトリガーに置き、頭を狙ってトリガーを引く。やや狙いは頭を掠める位置に飛んだが、アイツはそれをしゃがんで躱した

 

体が沈みきった瞬間、爆発したかのような加速でコチラに走ってくる。とてもじゃないが、相手は本当に自分なのか疑わしい

 

ナイフは銀色に輝き、銃は黒く鈍い色を出している

 

一発撃った拳銃からは硝煙の臭いが立ち昇り、その臭いでナイフを握る手に力が入る

 

今日は邪魔する奴がいない。いても決して入れない

 

この瞬間だけは、誰にも渡さない

 

ナイフが風を切って目の位置に飛んでくる。迫ってくるナイフの軌道に自分もナイフを置いて自滅による反撃を狙う

 

それを見てすぐさま腕の角度を変化し、横なぎから顎から脳天への突き刺しに変わる。すぐさま頭を後ろに倒して避けたが、上に突き上げたナイフを反対の手で押さえ、今後は体の中央に向かってナイフが飛んでくる

 

目がナイフを捉えるのが間に合うよりも早く、手に持っていたナイフでガードする。金属が擦れる音が鳴り、そのまま払うように切ると後ろに飛んでようやく距離が開いた

 

手が震えている。アレを防がなければ死んでいた(殺していた)

 

その事実に足が震えている。膝が今にも崩れそうだし、防いだ手が先ほどまで自分の命を守っていた。それを意識すると、今度は手が震えてきた

 

凄い。やばい。怖い。楽しい。楽しい。。楽しい。。。

 

笑顔になろうと顔を笑わせる。歯を限界まで見せ、その顔を相手に見せる

 

相手も笑っていた。その顔は狂気的で、同時に僅かな恐怖と、そして安堵を覚えた

 

コイツもそっち側なんだ。それを理解した瞬間、体の震え全てが一気に止まった

 

体の熱が燃え上がる。全身の筋肉がまるで最適化でもされるかのようにスッキリとした気分になっていく

 

吐く息が温かい。舌に感じる唾液は少し甘くてスッと飲み込める。目に映る景色が若干スローになっているように感じていった

 

地面を同時に蹴り、同時にナイフを振ってぶつかり合う。金属の甲高い音、そして顔に相手の息が直に掛かる程の距離感。まるで抱きしめあう恋人のように、互いの熱が相手に伝わる程に強くなっていく

 

 

自分「なぁ、このままナイフと銃をぶっ放すだけの喧嘩もつまらんからさ、話でもしながらやらないか?」チャッ

 

「良いけど、何を話すんだよ」チャッ

 

 

互いに拳銃を相手に向け、同時にトリガーを引いた

 

弾が発射される瞬間、互いに顔をそれぞれ逆の方向に向けて躱した。躱した弾丸は後ろで何かを壊すような音が鳴った後、軽い金属が転がるような音が響いた

 

 

自分「球技大会の事、覚えてるか?あの時俺は港湾水鬼と北方棲姫の二人で観戦に行ってたんだ」

 

自分「港湾水鬼はほっぽのお世話係なんだ。鬼が姫の世話をしている。これが何を意味するか分かるか?」

 

自分「学習しようとしているんだ。深海棲艦達は。それが良いことなのか悪いことなのか。それを決めるのは第三者だろうが、少なくとも本人にとっては嬉しい事だろう」

 

自分「だがそれを良く思わない人間がいる。いや、いたんだ」

 

「球技大会の最中に爆弾しかけた奴等の事か?アレなら…『パンッ』」

 

 

言い終わる前に弾丸が足をめがけて飛んできた。その弾は膝を掠めて後ろの壁に着弾した

 

擦れた場所が熱を持っている。火傷に近い痛みと、撃たれたという恐怖で再び体が硬直しそうになったが、それを相手が許してくれるわけも無かった

 

跳躍して頭上からナイフが降ってくる。それを見てナイフを突き出しながら、狙いは相手の振り下ろす腕から外側を狙っている

 

ナイフの軌道は腕同士が擦れあう事で直撃ルートを避けた。しかし互いの後ろにナイフがある状況。好機と言わざるを得なかった

 

ナイフを手の中で返し、逆手持ちにしながら相手の背中へと向けて突き立てようとする。しかし相手も自分の背中を狙っているのは分かっている

 

だからより素早くナイフを振り下ろそうとした。だが僅かに早かったのは相手だった

 

ナイフが互いの背中を突き立てる。背中の左肩甲骨辺りに鋭い痛みが走り、目に涙を浮かべる間もなく、銃が地面に落ちた。しかし音は二つ分だ

 

相手も銃を落としている。拾わせまいと銃を蹴ったが、相手は体制が下を向いていることもあって拾うのが速かった

 

銃口がこちらを向いている。体制を変えるのは間に合わない。例え避けようとしても致命傷は確実

 

だが、銃のトリガーが引かれる事は無かった。何故ならそこに妖精が立っていたからだ

 

 

妖精「やめてください!一体何をして『ゴンッ』」

 

 

ナイフを持った手で妖精を殴った。鈍い音が妖精の頭から鳴り、意味も分からないと言ったような顔をしたまま妖精は地面へと落ちた

 

 

「おい。一発撃て。好きな所撃たせてやる」

 

自分「運がよかったんだろ。壁際にでも運んどけ」

 

「チッ……邪魔しやがって」

 

 

壁に叩きつける様に…ではなく、そっと置いた。本音を言うなら壁に叩きつけてそこを足で踏みつぶしたい程だったが、我慢した

 

 

自分「せっかくだし話の続きでもするか」ブンッ

 

「そうしてくれ。熱が冷めた」パシッ 4/6

 

自分「あの時、お前が爆弾解除に走ってたのは南方棲鬼から聞いた」ガチャッ

 

自分「だがな、アレは人間の仕業でもあったが、深海棲艦側の仕業だったんだ。正確には仕業になるところだった。ってのが正確な所だが」

 

「何?」グッ、パッ

 

自分「深海棲艦も一枚岩じゃないってことだ。そして人間に近い個体もチラホラいる。それは決して欲が深い…いや、ある意味ではそうかも知れないけどな。兎に角あいつ等は色々いるんだ」

 

自分「そしてそれと噛み合う様に、試合の観戦中、二人の艦娘が俺を訪ねてきた。感情のない人間を見たのは初めてだった」

 

自分「俺も知ってる艦娘。時雨と夕立だ。その二人が無表情で、まるでそこにいる虫でも見るかのように、ただジッとこっちを見つめてきた」

 

自分「流石にヤバいと思ってな。咄嗟にどうしたのか返事したが、頭の中はほっぽをどうするかでいっぱいだった」

 

「…その理由は」

 

自分「もう察しが付いてるんじゃないか?同じ俺だろ?」

 

「……」

 

自分「……まぁいい。理由は簡単だ。ほっぽの教育係という名目で港湾水鬼が付いている。ということは、ほっぽの見聞きしたものが人類の全て。そう取られてもおかしくない状況だった」

 

自分「港湾水鬼とほっぽの関係性を知った時、俺と港湾水鬼は既に友人以上とも言える関係性だった。もし万が一ほっぽが人間の悪意に触れた時、まだ幼いあの娘には酷だと思った。だから妖精さんに頼んで、麻酔薬を染み込ませたハンカチを常に持っておく事にした。それが功を奏した」

 

自分「不安だったんだろうな。その二人を見て。震えて、俺の服の袖を握ってたよ。だからハンカチを渡して落ち着かせるのも簡単だった」

 

自分「ハンカチを匂う様に言ったら素直に聞いてくれてな。寝た顔は本当に可愛かったんだ」

 

「……惚気とも取れること言うのやめてくれる?」割とマジで興が冷める

 

自分「スマンスマン。じゃあやる気が出る事話してやるよ」

 

自分「俺な、ほっぽを抱えて逃げたんだ。全力で」

 

「……マジ?」

 

自分「大マジ。というか多分だけど、あそこでもし逃げる選択をしなかったら、今頃ほっぽはあの艦娘に連れられて、今頃深海棲艦による陸の大捜査が始まっていただろうよ」

 

「……」

 

自分「さぁ、火は着いたか?続き、やるぞ」

 

「……あぁ」

 

 

ナイフと銃を構えなおし、再び相手を見る。だがその顔は先ほどまで感じていた狂気的な笑みは消えており、どこか安らかで、そして怒って(悲しんで)いた

 

ナイフを腰で構え、そのまま突き刺すのを狙ったポーズをとって、まっすぐに突っ込んでくる。それを見て自分は銃を構えた

 

だがそうしてようやく気付いた。相手が持っているであろう銃が左手に握られていない

 

よく見ると腰ベルトの隙場に銃が差し込んである。そうすると必然的に左手は空いている

 

左手が伸ばされ、視界を覆うように手が目の前で広げられた。所謂ブラインドと呼ばれる技だ

 

手で視界が覆われる事によってナイフを握った手を一瞬見失う。だがそれよりも早くこちらがトリガーを引くのが速い

 

だが撃つことはしなかった。何故なら構えた銃口からは既に横にそれており、銃を握った手は既に相手の体の奥へと行ってしまっている

 

完全に後手に回った。不味いと思うよりも先に、ナイフを握っていた数本の指先に痛みが走った

 

指先からの感覚。正確には第一関節から先の感覚が消えた。それと同時に指先から血が噴き出し、目の前の相手の服を赤く血で一気に濡らしていった

 

痛みに顔が強く歪んだ。何とか残っていた親指と人差し指でナイフを握りなおすが、曖昧に切られた指と完全に残っている指とのバランスが取れず、ナイフを何とか握れているという状態だ

 

だが切られたという事実がより重く、痛みで目がチカチカし、都合よくアドレナリンで痛みが緩和されるということもない。剥き出しの骨に感じる部屋を通る風一つに激痛を堪える事しか出来なかった

 

 

自分「話の続きだがな、俺は何とかほっぽを連れてその場を離れようとした。飲み物でも持ってきてくれって言ったらあっさりと離れてくれてな。その隙にほっぽを連れて逃げ出した」

 

自分「俺は人に今の状況をみられるのは不味いと思った。あんな場所で深海棲艦が艦娘に襲われている。そんな状況を周りに見られて大騒ぎにもなれば、当然今後がエライことになる。それは俺でも分かった。何よりほっぽを守りたかったしな」

 

自分「だからすぐさまドーム内を走ったよ。人はきっちり調整されていたからか知らないが、中はほとんど人がいなかった」

 

自分「だが舐めてた。艦娘という存在を。あの氷のように冷たい感情の一切を投げ捨てたアイツ等を」

 

自分「アイツ等、俺がその場を離れようと分かるや否や、すぐさま踵を返して追ってきた。陸じゃなかったら速攻で捕まってたな。ありゃ」

 

自分「無表情で息切れ一つ見せることなく黙々と追ってきた。足音が無かったら本当は俺一人なんじゃないかと思うくらい、周りを気にする事もなく全力で走った。幸い足の方は俺が速かった。子供一人抱えてて言うのもなんだけどさ」

 

自分「走って、走って、走って…俺は奇跡的に人の影を見た。咄嗟に逃がしてはダメだと思ってその後を急いで追ったよ。そして角を曲がった瞬間、ほんの一回瞬きをしただけで何処かの部屋に放り込まれてた。ほっぽ抱えたままで」

 

自分「扉を背にして座ってた俺は、背中越しに外で人が話す声が聞こえてよ。ほっぽは何処だ。あの人間は何処に行ったか知らないか。そんなことを扉の前にいるであろう人と話してたよ」

 

自分「初めの数回はその人も受け答えをしていた。だが艦娘の二人の声がやがて脅しへと変わっていくと、すぐさま二人の声が消えた」

 

自分「数秒して背中の扉が開いた。そこを見るとさっきまで追いかけて来た二人がスヤスヤと壁を背にして座って寝てたよ。この人がやったんだって、その時ようやく理解した」

 

自分「……俺さ、今まで一人で何でもやってきたんだ。なんだって一人でやれてた。だから逃げてる最中も何とかなるって思ってたんだが、現実はどうだ。人がいたら逃げ込んで、そして助けられて、今ここにいる」

 

自分「悔しかったよ。生まれて初めて、俺は誰かに助けられた。それが死ぬ程腹立たしかった」

 

自分「ホント、俺達は同じ人間だってのに、お前とは大きく違うよな」

 

「……回復待っててくれてサンキュー。おかげでやっと落ち着いた」 2/7

 

「あぁ。お前の言う事、良く分かる。俺はお前と違って、生まれて一度も自分で何かを出来なかった」

 

「小学生の頃、マラソン大会があってな、初めてやった頃は中間の成績だったんだが、それ以降はずっと最下位だった」

 

「何故なら、俺はその時に負け癖が付いてた。大会という勝負事で、ここで成績を残せなくても将来の自分には関係ないって、ガキながら馬鹿な高を括ってた」

 

「それが最悪だったよ。父親からは情けないといわれ、母親からは良くやった。最後まで走り切って偉いって誉められたよ」

 

「その時は母親を殺してやろうかと思った。顔を地面に擦りつけてやろうかと、ガキながら死ぬほど恨んだ」

 

「だけどそれが現実だった。結果という物から先があるとばかり考えて今を見ていなかった。目先のことをやらないと未来の結果なんか掴めないと分かったのは、つい最近の事だ」

 

「お前は逃げてる時、咄嗟に人を頼ったって言ったな。それは初めからどう解決するかを自分本位でしか考えてなかった。それゆえにこれから自分が起こす行動の現実を見るしか無かったんだ」

 

「それがお前の生き方だ。そして俺は今よりも先。目先の結果よりも将来的にどうなっていればいい。そう考える傾向が強い」

 

「俺は逆。今の現実がどうなろうと、最終的に俺の成したい事が出来ているのならそれでいい。それが俺の考えだ」

 

「なぁ。俺達さ、ナイフを仕舞って手を繋いで握手でもした方が良いのかな?俺達二人で協力すれば、少なくとも少しは良くなると思うんだ」スッ

 

 

ナイフを落とし、右手を前に差し出した。その手は握手を求めていた

 

 

自分「……あぁ。それはいいな」

 

「だろ?だからさ」

 

「「悪いんだけど、やっぱり死んでくれ」」

 

 

二人で同時に左手に握っていたトリガーを引いた。互いに撃った弾は心臓を掠め、そのまま外へと弾が押し出た

 

激痛。今までの比では無い痛みと明確な死がアリアリと目の前に浮かんできた

 

目の前が赤い。血が詰まりでもしたのだろうか?医学に詳しくないので分からない

 

だがハッキリとした。アイツはとんでもない自分嫌いだ。ただそうなったタイミングが、互いに遅いか早いか。その違いしかなかった

 

ホント、笑い話にもならないな。自分を殺せば少しは嫌いにはなれないかと思ったが、現実はそうじゃなかった

 

やっぱり僕(俺)は、自分が嫌いだ

 

出血が進むにつれ、瞼がやがて降りてくる。しかし相手はどうだ。まだ目が開いている。確かに心臓辺りを撃ったはずだから、致命傷は避けられなかったハズ…

 

 

自分「どうしてかって顔してるな…単純な話、経験の差だよ」

 

自分「何でも自分でやってきたって言っただろ?俺との類似点がどこまであるか知らないが、小学生の頃、入学してから6年ほどイジメにあってな。その時、俺に喧嘩売ってきた奴らを全員ぶちのめした。一人残らずな」

 

自分「そん時に痛みってのは死ぬほど経験してる。バット、鉄パイプ、エアガン、自転車。子供ってのはエグイよな。そのおかげで今何とか立ってるんだけど…ぶっちゃけ限界だわ」

 

自分「まぁ、そういうわけだ。この喧嘩、俺の勝ちだな」

 

「……」

 

 

視界がぼやける。声もどこか遠くに聞こえている。やがて生命を維持する気力が切れて来たのか、瞼が閉じるのに逆らえなくなっていった

 

 

自分「あ、そういえば王の事を話してなかったな…」

 

自分「ま、いいか。また今度って事で」

 

 

その独り言を最後に、自分の意識は暗転した

 

 

 

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深海棲艦とのやり取り(#???)

 

 

「改めて、本日はお会い頂きありがとうございます」ペコッ

 

南方棲鬼「まさかホントに来るとは…」

 

リ級(フラグシップ)「どうも…」

 

ヲ級(フラグシップ) ペコッ

 

ル級(フラグシップ)「ふん…」

 

カ級(フラグシップ)「……」

 

「…アレ。他の方は?具体的には鬼級以上の」

 

南方棲鬼「今回話したいのはそっちで言うと鎮守府海域だろう。こっちからすれば敵の本拠地だが、だからこそ相手を私だけに絞らせてもらった。理由は…まぁ、こっちも敵対の意思がないことを分かって貰うためだな」

 

「なるほど。分かりました。しかしそれだとそちらが圧倒的に不利では?」

 

南方棲鬼「……いや。それをお前が言うか?」

 

「え?」

 

南方棲鬼「一人でこっちが迎えに行かせた部下に連れられてこっちの本拠地に来るのはただの馬鹿だと思うぞ。こっちがもし悪意を持っていたらどうするつもりだったんだ」

 

「たとえ失敗してもこっちの命一つで済みます。そして今までと変わらなくなるだけです」

 

南方棲鬼「甘いぞ。殺さずに情報を得るための尋問術なら心得ている。今この場ですることも可能だ。その程度の事、我らがしないとでも?」

 

「その時は大丈夫です。自害の方法は準備してます」

 

南方棲鬼「……は?」

 

「舌を噛むとかだと対策されそうなんで、首輪をつけてきてるんです。これは僕の意思一つで動かす事が出来て、スイッチは奥歯に仕込んでます。押せば首と胴体がサヨナラです」グイッ

 

「それと、この首輪の装着から1日を超える様であれば即座に首が飛びます。あ、無理やり取ろうとしても同様です」

 

南方棲鬼「……お前は自分を、いや。命を何だと思ってるんだ」

 

「命は大事ですよ。僕も死にたくない。でもこうでもしなければ、貴方達の信頼に答えられない。そう思ったからしました」

 

南方棲鬼「お前が死んだらどうするつもりだ。万が一お前が死んだ時、残された奴はどうしたらいいんだ。お前はそれを考えているんだろうな?」

 

「えぇ。存じております。私も、貴方達の言葉を届けなければなりません。そして部下もいます。ですから死ぬわけにはいかないんです」

 

「コレはあくまで今回の件が破談となった場合の物です。流石にそんな事にはならないと、コチラとしては考えておりますが、上はかなり慎重でして」

 

南方棲鬼「当たり前だ。寧ろお前が考えなしなんだ」

 

「うっ…痛いところを突きますね…」

 

南方棲鬼「まぁそちらの言い分としては理解してした。破談にならないというその自信について、早速聞かせてもらおう」

 

「幾つか理由はありますが、主に3つあります」

 

「1つ目、深海棲艦の自主性。コレは私達人類が深海棲艦と戦争を続けていくうち、命令だけを受けてただ人類を攻撃する事をしないというのが分かったからです」

 

「自主性の内容は様々ですが、戦争を続けたいと思う者。人類に歩み寄ろうとしている貴女方の存在。純粋に興味があるもの。僕が知っているのは主にこの3つです」

 

「2つ目、人類側の情勢。深海棲艦との長い戦争に対して、始まったその時から戦争を和解に持っていく。という話が過去にあったんです」

 

「勿論。始まってすぐの頃でしたから、即刻却下されました。しかし戦争は10数年続いています。そして元帥も代替わりしたため、より和解への道が人類側で行おうとしているんです」

 

「最後に3つ目、貴女方の人間性です」

 

南方棲鬼「私達の?」

 

「えぇ。僕は既に知っているので言ってしまいますが、貴女方は既に人類圏に足を踏み入れている。にも関わらず、攻撃は起こっていない。寧ろ、何も起こらなかった」

 

「コレはつまり、貴女達も今の状況に多少なりの安心感の様なものを覚えているのではないですか?でなければ陸に上がって人間の住む街を見たりしないでしょう」

 

南方棲鬼「……」

 

「勿論。理由としては弱いでしょう。何より貴女方に対してメリットらしいものは感じられないと思います」

 

ル級(フラグシップ)「それで、お前はどうすると言うんだ?まさかそっちの要求だけ飲んで和解の一歩を。なんて思ってるんじゃないだろうな?」

 

南方棲鬼「ル級」

 

ル級(フラグシップ)「失礼を承知で申し上げますが、私はこの人間が信用出来ません。私達に対する誠意は感じますが、それだけでは信頼するというのは不可能です。相応の代償…つまり、彼が私達に差し出せる何かを見せてもらわない限り、私はコイツの言う事は信用出来ません」

 

「ごもっともです。でしたらこういうのはどうでしょう?」スッ

 

 

右手の人差し指を全員が見える様に、前へと突き出す。その指にはめられている赤い指輪が周りの目を引いた

 

そしてポケットに入っていたスイッチをポケットの中で押す

 

その瞬間、一瞬だけ指輪が強く赤色に光り、小さな爆発が指先で起こった

 

 

「っ…!」 4/5 欠損

 

ル級(フラグシップ)「なっ…!?」

 

「……コレが、まず一つの誠意。その指を持っておけば、貴女達の行動にも面子が傷つくことは無いでしょう」ポタポタ

 

ヲ級(フラグシップ)「……コレ」っ包帯

 

「どうも、助かります」シュルシュル

 

南方棲鬼「……」

 

「コチラの誠意は伝わったと思います。今回の件、こちらとしてもこれ以上無いチャンスだと思っております」

 

「これ以上戦争を続けない為にも、どうか良いご返答を頂けるよう、精一杯努めさせて頂きます」

 

南方棲鬼「はぁ…分かったわかった」

 

 

その後の話は早かった

 

鎮守府正面海域で敵対をしない相手。攻撃を受けた際の対応。民間人への対応と海域開放と引き換えにこちらから差し出せる物の交渉。特にこの交渉が曲者だった

 

 

「それは不可能です。いえ、出来ません」

 

南方棲鬼「何故だ?ただ艦娘を差し出せと言っているだけだぞ」

 

「お断りします。理由をお聞きしても?」

 

南方棲鬼「私達も戦争で多くの同胞を失った。それを補充したい」

 

「だから艦娘をよこせと?」

 

南方棲鬼「あぁ。そうでないとフェアじゃない」

 

「それならそっちに沢山いるだろ。ウチの前任はカスで艦娘死なせまくってるし、他にもそういう人間がいる。そっちの被害は分からないが、同じようなものじゃないのか?」

 

南方棲鬼「残念だがそうでもない。こちらの方が被害が大きい。倒した敵の数だけこちらも戦力を増強出来るが、全てではない」

 

「ふむ…いや、それでもダメだ。一時的にそちらに派遣したとしても、戦いの戦力として艦娘を使うというのは正直難しい。アイツらは同族を撃つのに抵抗がある。まぁそれは俺の思い込みかも知れんが」

 

南方棲鬼「いや。流石にそこまではさせん。そっちの懸念の解決になるか分からないが、我等は海に住んでいるし、価値観が海の魚と同価値だから同族を撃つのにも躊躇いがないだけだ。勿論、そっちの倫理観も分っている」

 

南方棲鬼「主に後方を支援してもらいたい。まぁ内容が同族を仕留める手伝いと考えると、確実に参加した艦娘は病むだろうな」

 

「分かってんなら勘弁してください…」

 

南方棲鬼「だが便利な奴が艦娘にいるだろう。感情を削ぎ落とした兵器が」

 

「あぁ…」

 

南方棲鬼「そいつ等に戦闘を手伝わせても良いんだがな。それだと今後の和平に影響が出る。だから後方支援にする。というかせざるを得ない」

 

「……そいつらに限定するというのならコチラとしては問題はない。だがそうなってくると、下手したらそいつ等は暴れるぞ。御する事なんか出来ない。アイツらは主人の命令に従う従順な奴らだからな。最悪そっちの基地を突き止めて滅茶苦茶にしろ。なんて命令を出してくるかもしれんぞ」

 

南方棲鬼「それは楽しみだな。もしそうすればそちらとの約束も反故に出来る」

 

「あー。だからやらせたくないんだよぉ……」

 

南方棲鬼「寧ろ私にとってはそれが狙いだがな」

 

「はぁ…分かってるよ。クソォ。前任や周りがクソ野郎なばっかりに」

 

ヲ級(フラグシップ)「……貴方に言われたくない」

 

「う…」

 

ヲ級(フラグシップ)「あの指、脅しでしょ。言うことを聞かなければこっちのメンツはどうなるんだって圧をかけに来た」

 

ヲ級(フラグシップ)「それにその首輪もそう。それも今回の会合に誠意を見せてるように見せながら、その実態はただの脅し。自分に何かあれば他の人間がどう動くか知らないぞって脅してる」

 

「……察しが良いようで」

 

ヲ級(フラグシップ)「空母だから」フフン

 

(それ関係ある?)

 

リ級(フラグシップ)「……でも、それが普通だと思います。だから私達はそれを責めません。でも、それをしたということは、少なからず有利に話を進めようとした。それは事実です」

 

「……反論も出ないな」

 

リ級(フラグシップ)「ですから、それに対する誠意。貴方なりの誠意を見せてください。それによってはこちらも、また対応を考えます」

 

「……しょうがないな」ゴソゴソ

 

「ほいコレ。手土産」ドサッ

 

リ級(フラグシップ)「……?これは?」

 

「お菓子。鳳翔さんの作ったおやつ。間宮さん印の最中に伊良湖の特製アイス。その他有名企業のお菓子詰め合わせだ」

 

ル級(フラグシップ)「……お前、舐めてるのか?」

 

「舐めてない。ただの休憩だ。少し考えさせてくれ」

 

ル級(フラグシップ)「フン…こんな菓子が何だというんだ。それにもし毒でも入っていればどうする…」チラッ

 

リ級(フラグシップ)「わぁ…!美味しい…!」

 

ル級(フラグシップ)「リ級!?」

 

カ級(フラグシップ)「……美味」ムグムグ

 

ヲ級(フラグシップ)「……悔しい。これは作れない」モグモグ

 

カ級(フラグシップ)「カ級!それにヲ級まで!?」

 

南方棲鬼「まぁまぁ。くれるって言うんだからもらおうじゃないか」ヒョイパク

 

ル級(フラグシップ)「南方様まで…」

 

ル級(フラグシップ)「……本当に、毒は無いんだろうな」チラッ

 

「ない。飯に毒を入れる時はゴキブリ駆除の時とかくらいのもんだ」

 

ル級(フラグシップ)「貴様…!私をゴキブリとでも言いたいのか!?」

 

「えぇ…そんなん一言も言ってねぇよ」

 

ル級(フラグシップ)「……」パクッ

 

(意外と素直に食ったな…)

 

ル級(フラグシップ)「……!!!」キラキラ

 

 

……結論から言おう。完落ちしました

 

といっても不利な条件が全て消えたわけではない。後方支援の話は確かにあったが、裏切りはこちらが絶対にさせないという盟約を取り付け、万が一を考え彼方でも何かしらの対策を立てるとのことだ

 

その他は情報交換だ。資源の有無。漁業や海に点在する幾つかの島を開放。また、深海棲艦と直接やり取りをするために、連絡方法の取り決めも行った。深海なのに電波が辿り着くのか?そういう疑問はあったが、海中から島の陸地に向かって電気を通すことによって、その付近で通信が可能になっているらしい

 

ひとまずは話もまとまったということで一件落着だ。指については深海棲艦の方から高速修復材を持ってきて、指をわざわざ引っ付けてくれた。彼女達曰く、ヤクザではないのだから指はいらない。とのこと

 

深海棲艦達の知識の出どころが非常に気になるところだが、ひとまずはこれで良しとしよう。そもそもの話として、あちら側も和平を望んで交渉の場にいるのだから、この結果は寧ろ想像出来たかも知れない

 

これにて第一回、深海棲艦との和解交渉を終了する。今後、和解交渉は元師も交えて更なる交渉を開始する予定だ

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