この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ 作:七福えると
その現実逃避とは空いた時間でMMDを触ることです。それでも30分程しか出来ませんが…
今は改造ありモデルを使って改造するのがメインとなってますが、ボーンの追加一つするだけでとんでもない重労働すぎて、ここまで作りやすくしていただいたモデル製作者様とツール制作者様には頭が上がりません…
何時間も掛けて作ったボーンが動いた時には絶叫してます。というか達成感ヤバいです。こんなに報われたと感じるのは初めてかも知れませんが、これを仕事でも感じていたいです
NIKKEの裁判所ネタで笑い死ぬかと思った。あの犯罪者を見るかのような目が懐かしすぎて…(伝われ)
「ただいまー」
電「ふぇ!?」
「お、電か。俺の部屋に何の用だ?」
電「えっ、し、司令官さんですか!?」
「…電、俺が分かるのか?」
電「え?はい。分かるのですが…何故声だけ聞こえるのですか?」
「色々あってな。とりあえず哨戒お疲れ」ナデナデ
電「とっ、当然の事なのですから…その、撫でるのはやめていただけると…」
「…すまん。一人だけでも俺だと分かる奴がいてくれて安心してな」
電「…やっぱり何かに巻き込まれたのですね」
「まぁな。電が俺だと分かってくれて助かったぞ」
電「…ところで司令官さん、さっきから手?に持ってる荷物は何なのですか?」
「あ、これ?ちょっとこの状況を協力してくれた奴等にお礼の品をな」
電「缶詰にお菓子に服に…これがホントにお礼の品なのですか?」
「そうだぞ。わざわざ要望を聞いてまで買って来たから間違いはないはずだ」
電「ちなみにどなたに助けて頂いたのです?電もその人達にお礼を言いに行かないといけないのです」
「深海棲艦達だよ。ほら、元師と物々交換してる」
電「あぁ。あの人達に…って、お知り合いなのです!?」
「ちょっとした事故で知ったんだ。中々気の良い奴等だったよ」
電「…もう色々ビックリなのです」
「でだ、電に頼みたいんだが、俺の代わりにこれを渡しに行ってはくれないか?」
電「へ?何かやる事でもあるのですか?」
「あぁ。ちょっと反省室ってのを覗きに行こうと思ってな」
電「…なるほど。確かに今の司令官さんは姿が見えませんし、丁度いいですね…」
「だろ?だから衣笠に渡しといてくれ」
電「衣笠さんにですか?それはまたどうして?」
「衣笠が過去にアイツ等に保護された艦娘らしくてな。衣笠に渡しとけば自然と深海棲艦達に手渡ると思って」
電「…司令官さん。それだけじゃ流石に不安なのです」
「衣笠の本心は違うってか」
電「なのです。司令官さんが色々おかしいだけで、普通は深海棲艦に出会えば即戦闘するのが普通なのです。例え衣笠さんが深海棲艦さん達に助けられたとしても、本心までは定かではないと思うのです」
「ふーむ、一理あるな…」
電「それに司令官さん。まだ何か隠してますよね?」
「…電が何故俺の部屋にいたのかっていう疑問はあるが」
電「あ、えっと、それはですね…」
「ま、今は関係ないからいいよ。俺に何か害をなそうとしたって訳でもないだろ?」
電「と、当然なのです!」
「それと同じだよ。衣笠の事はそれくらい信頼出来る相手ってことだ」
電「う…その誘導尋問はズルいのではないですか?」
「安心しろ。お前の事だから何か異常を感じて呼びに来たってとこだろ?電が変な事するわけないって信頼してるし、仮に変な事をしていても、すぐさま幻滅するほどお前の事は信頼してない訳じゃない」
電「え、あ、えっと…」
「…電?まさか本当に「こ、これを衣笠さんに届ければ良いのですね!行ってくるのです!」あ、ちょっ」
「…行ってしまった。まさか本当に何かしてたのか?」チラッ
クローゼット スキマァ~
「…中を確認するのはやめておこう。そうしよう」スタスタ
ドア ガチャ、バタン
夕立「…あ、危なかったっぽい」スンスン
島風「提督ぅ…寂しいよぉ…」スンスン
・・・青年散策中・・・
「川内、いるか?」コンコン
川内「はい。どなたですか?」ガチャ
「川内、姿が見えてないだろうから手短に話すが、反省室はどこだ?」
川内「…悪戯かぁ」バタン
「違うわ!開けてくれ!」ドンドン
川内「…」ガチャ
「お前の目の前にいるんだよ。頼むからドアを閉めないでくれ」
川内「…ホントに誰かいるの?」
「いるって。今お前の目の前で立ってるよ」
川内「…それで?幽霊が私に接触して来た目的は何?」
「反省室の場所を教えてほしいんだ。頼めるか?」
川内「…何しに行くつもり?」
「視察だ。姿が見えないから中の様子を見るには丁度いいだろ?」
川内「なんだか提督さんみたいに嘘くさい人だね…」
「提督だぞ。今は存在取られてるけど正真正銘の本物だぞ」
川内「…提督さんなら私達の仲間の事を知ってるよね?」
「夕立。改造済みで魚雷を蹴って後ろに流して回避するという技を得意としている。今はウチの夕立が使っているな」
川内「…はぁ、それを知ってるってことは本物だね。そうなると執務室にいるのは誰になるんだろう?」
「金剛な。矛盾点みたいなのが自分の中で出来たんじゃないのか?」
川内「…確かに。そういえば金剛さんの存在をすっかり忘れてた」
「あ、一応金剛の事はちゃんと金剛として接してやれよ?可哀想だしな」
川内「…そんな理由で金剛さんと関わりたくないんだけど」
「本人は金剛だと気づいてるんだが、周りからは提督として見られてるんだぞ?もし本人が今の状況に気付いたら何をすると思う?」
川内「…なりすまし?」
「正解。お前にはそれを起こさせないストッパーとして動いてもらうぞ」
川内「ちぇ、何で私だけそんな役割なの?」
「お前が望むなら夜戦前提の編成を組むが「やります!」…俺が言うのも何だが、お前は他人を疑うということをもう少しちゃんとした方が良いぞ」
川内が夜戦好きなのは根っからなのが助かったな。あまりにチョロすぎて色々不安にはなるが、これを利用して色々頼みこんでみるのもありか
川内「提督!ホントに夜戦させてくれるんだね!?」ブンブン
「お、おぅ。だから手を掴んで振り回すのやめてくれ。というかどうやって俺の位置を掴んだ」
川内「声の位置と空気の流れと視線から!」
「…俺、お前の事過小評価してたわ。やっぱすごいなお前」
川内「夜戦をするうえで敵の位置を掴むのは大事だからね!これくらいなら朝飯…いや、夜戦前だよ!」
「お前は一体何を言っているんだ」真顔
「ま、いいや。それで反省室は何処にあるんだ?」
川内「えっとねー、港に倉庫があるでしょ?あそこを少しだけ改造して反省室にしてるんだよ」
「これまた随分と近場な場所にいるねぇ…そんなとこに捕まってんなら救助も簡単だろ?」
川内「そうしなかったと思う?他の艦娘達も何度か救助に向かおうとしたんだけどね、何処からともなく金剛達がやってきて助けに行った人達が皆罰を受けちゃうんだよ。そういう訳だから知ってても近づけなかったってわけ」
「…それ、前回皆が集まった時にでも言えば良かったんじゃ?」
川内「…こういう場所があるって事だけ注意しようと思ってて、肝心の詳細を話すの忘れてたの」
「…俺も良くやるから強く言えんな。ま、次は忘れなかったらそれでいい」
川内「はーい。それで、案内だけで良いの?」
「あぁ。と言っても場所を教えてくれるだけで良いぞ。どうやって発見されてるか分からない以上、俺だけの方がまだいいからな」
川内「了解。それじゃ今から道を教えるからちゃんと覚えてね?」
「おう。頼む」
川内「えっとね、港に出て地下道を通るんだけどそこの道順が複雑だから忘れないで。左右に分かれる道があるからそこを右に曲がったらしばらく直線の道なんだけど途中でドアがあっても絶対に開けちゃ駄目。突き当りまで歩くと13枚の並んだドアがあるから左から7番目を通って、そこを通ると秘宝を守るボスが現れるからそのボスを2分4.11秒以内に倒さないと秘宝が入手出来ないの。だから倒すコツとしては「待て待て待て待て」」
「ホントに?ホントにそんな道通らなきゃ駄目?もっと簡単に行ける道はないの?」
川内「えー。じゃあ港に出てすぐ左の倉庫に入ってよ。そこが反省室だから」
「さっきまでの無駄に長い道のりは何なの!?」
川内「何かと間違えたみたい♪」
「何と間違えたんだよ…まぁいい。とりあえず行ってくるから金剛の事を頼んだぞ」
川内「気が進まないけど仕方ないかぁ。ちゃんと夜戦に連れてってね!約束だよ!」
「あいあい。一応他の奴等にも金剛の事を伝えといてくれよな」
川内「了解。気を付けてね、提督」
「ん」スタスタ
川内「…全く。肝心な事は話してくれないんだから困っちゃうよねぇ。電も大変だよ」
「倉庫に向かう前にちょっと寄り道っと。RPGでは寄り道は大事だからね」ガチャ
霧島「う…ぁ…」
寄り道した理由としては当然霧島だ。霧島に使用したあの銃は時間経過では一か月経たないと起きられないという欠点を保有しており、これの餌食となってしまった人物は特定の言語で呼びかけないと起きないという特性を持つ。ただしこれは自分の寝言でも反応してしまうので、霧島がこのキーワードを話すのかはいささか賭けではあったが流石に無理だったようだ。まぁ当然と言えば当然なんだけど
「勇敢なる者よ。現へと帰るがいい」ボソッ
そう霧島の耳元で囁くように話すと一瞬霧島の体が震えたと思えば少し間を空けて目をゆっくりと見開いた。しかしその目は既に涙が浮かんでおり、まるで全てを諦めたかのような顔をして起き上がる。どれだけ時間が経ってもボーっとしたままなので軽く背中を叩くとビクッと反応したかと思えばゆっくりとこちらに顔を向けてきた
霧島「あぇ…?」
「おはよ。目覚めた気持ちはどう?」
霧島「…はっ?え?」
「まだ寝ぼけてんの?俺が分かるか?」
霧島「…!お、お前!良くものうのうと私の前に顔を出せたわね!」
「…ふむ、なるほど。俺が認識出来るのか。とすると寝起きの者は判別出来るのか?それとも装置の指定を変更する前から意識を失ってた者は影響を受けないのか?」ブツブツ
霧島「な、何を訳の分からない事をブツブツと…!」
「おっと、コイツが目に入らないのか?」チャッ
霧島「ぐっ…」
「お前がおかしな動きをすればすぐさま夢の世界に逆戻りしてもらうぞ?撃たれたくなければ大人しくしておくんだな」
霧島「…目的は何?」
「目的?」
霧島「アンタみたいに卑怯な手を使う奴が私を何も考えずに起こすわけないでしょ。何が目的なの?」
「んー、そうだな。強いて言うなら金剛の初めてを奪ったお詫び?」
霧島「…は?」
「うん。理由としてはこれが一番いいか。金剛に対する詫びの意味を込めてお前を起こした。それだけだよ」
霧島「ち、ちょっと待って!金剛お姉さまの初めてを奪ったって何!?詳しく説明しなさい!」
「えー?ここまで言って分からないの?」ニヤニヤ
霧島「…ひぐっ」
「!?」
霧島「こ、金剛お姉さまの初めて…こんな奴に奪われちゃったの?初めてを奪うのは私のハズなのにぃ…」
…金剛姉妹、風紀乱れてんな。いや、意外と艦娘達全員こんな感じなのかも知れん。自身の醜さを仲間たちと分かち合う為に百合カップルがいる…ありえそうだ。それなら青葉にでも百合ってる奴らをシャッターにでも撮ってもらいたい所だがここにはいないからなぁ…個人的には駆逐艦や潜水艦等の幼い子達が【自主規制】
「じょっ、冗談だ。だから泣くのを止めてくれ」
霧島「…本当?」グスッ
「ホントだっての。確かにお前の姉はスタイル良いしルックスも良いが、性格があれだからそんな気にならん」
霧島「…そういえば、貴方って変人でしたね」
「うるせ」
霧島「それで、本当に何で目を覚まさせたんですか?」
「簡単な話、俺達がここを離れるかもしれんからな。俺以外に起こす方法は知らないから忘れる前に起こしただけだ。あと一個頼みたい事がある」
霧島「…何でですか?」
「ん?」
霧島「貴方は、何でここを離れるんですか?」
「…俺はここのやり方がブラック鎮守府となっているから来たに過ぎない。ブラック鎮守府となってしまった原因である女提督の性格を改善してここを通常の鎮守府にするのが俺の目的だ。その目的が達成されそうだからお別れするってだけだよ」
「女提督の性格があのままならまだ滞在もしてただろうが、アイツもちゃんと提督としての威厳を取り戻しつつあるからな。あれなら多少の難はあっても大丈夫だろう。艦娘との信頼関係の回復は時間が掛かりそうだが」
霧島「…あの人に、そんなことが出来るとお思いで?」
…霧島の言葉の節々に重みと信頼と不安が幾層にも重なったように声として感じる。だがそれを聞けるのは女提督であって俺じゃない。本当に向き合っておく相手は別にいる事をコイツにはここで理解してもらわないとな
「出来る出来ないじゃない。やるんだ。それが仕事をするって事だし、あの提督はそれを分かっているはずだ。でなければ俺達がここに来るまでにアイツは引き籠るか逃げてるよ」
霧島「それは…分かってはいますけど…」
「それにな、外部の人間に弱音を言うな。今後もお前らを率いていく奴がここにはいるだろ?俺はあくまでお客様だぜ?」
霧島「…」
「お前がホントに恐れてるのは金剛だろ?お前が俺達にここを離れてほしくない理由としては恐怖の避雷針ってとこか」
霧島「…はい」
「お前の姉が何であそこまでねじ曲がってるのかは知らん。過去に何があろうとアイツがやった事の尻拭いはここの提督が行うべき事だし、少なくとも姉の片棒を持った時点でお前も罰を受けるべきなんだ」
「お前は身の安全ばかり考えて周りを気にしなかった。悪夢はそれに対する罰、今後の事に関しては償いだと思ってやっていけ」
霧島「…気づいてたんですか」
「攻撃的な人間は対となる思いを持ってるってのは経験済みだからな」
霧島「…命さえ奪おうとした私を許して頂けるとは思っていません。ですが、どうか謝罪だけはさせてください。本当に申し訳ございませんでした」
「…言っておくが、謝罪をしたからといってここには留まらんぞ」
霧島「はい、分かっています。ですからこれは今後の償いを行う為の前置きのようなものです。今ここで謝罪をしなければ、私は今後訪れる責任の重さに耐えられないと思うので」
「…お前はまだまともで良かったよ」
「それが分かってるなら話は早い。お前が今まで虐げてきた奴等にも同じ事をしてこい。それの結果を見てお前が本当に反省の意志があるのかを見てやるよ」
霧島「…はい、分かりました」
声は気丈に振舞っているつもりなのだろうが、明らかに霧島の顔が暗くなって目に恐怖が浮ぶ。今までやってきたことの謝罪をするという行為がどれだけ霧島の中で重い事なのか、過去を振り返ると何をされてもおかしくない事をしてきたと察するのには容易だったが、それを助けようとは微塵も思わない。ここで助けては彼女のためにならないのは目に見えている
「さっさと金剛の所に行って安心させてやれ。俺はやることがあるから邪魔すんなよ」
霧島「…ありがとうございました」
「おう」ガチャ
ドア『お帰りなのです』バタン
霧島「…もっと、早く来てほしかったです。そしたら金剛お姉さまも…榛名も…」
「あ、頼み事言うの忘れてた」ガチャ
霧島「…しまらない人ですね」ハァ…
・・・提督移動中・・・
波の音が聞こえ、晴れた空がカンカンと強い日差しを照らす。今の状態で倒れたりでもしたら自分を見つけられずにそのまま死亡。なんて笑えない状況になるので自販機で水を何本か購入する。全て百円なので買いやすいのだが、小銭が欲しい時には使えないのでそれならせめて平均的で良いと心の中で贅沢を良いながらペットボトルを指で器用に挟んで何本も持つ
500mlペットボトルが右手に三本、左手に二本とかなりの重さを手に感じながら目的地に向かう。途中で何度か手の力が抜けそうになるが精神力で持つ。ここぞの踏ん張りはいつでも精神力が物を言うと思うが、艦娘達の食いしばりも似たようなものなのかもしれない
「…鍵掛かってんな」ガシャガシャ
???「…誰?」
「お、中に誰かいるのか?良かったら開けてくれ」
???「…貴方、艦娘じゃないわね?誰なの?」
「提督だ。見習いのな」
???「…あぁ。朝潮達が言ってた変人の」
「変人言うな。お前等に差し入れを持って来たんだが、ここを開けてくれ」
???「…ここに小さめの窓があるでしょ?そこに置いてくれないかしら?」カチャ
そう声が扉越しに聞こえたかと思えば、丁度ペットボトルが三本程通りそうな小窓が開いた。小窓はガラスではなく、錆が目立つ鉄の取っ手が付いた窓であり、そこから物を入れろという事なのだろう
だが手を伸ばして差し入れを入れるということは出来なかった。何故なら開かれた窓からはこちらの様子を窺うように双眸が血走っており、とても正気とは思えない。まず間違いなくそこに差し入れを渡そうものならその手を掴んで中に引きずり込まれる。そう確信できる程の目力であり、ドア越しとは思えないほどのオーラを感じた
「…とりあえずその目をやめろ。怖くて渡せないだろ?」
???「良いから渡しなさいよ。何も悪い事はしないわ」
「じゃあそのまま開けてろ。投げ入れるから」
???「それで落としたらどうするつもりよ。せっかくの差し入れが台無しになっちゃうじゃない」
確かにその通りだがお断りする。声は興奮を抑えているようだが言葉の一つ一つに迫力を感じる。せっかく廻ったチャンスを手放しはしまいという執念と、解放という名の成功を手に入れようとする声に、言いようの無い恐怖を抱きそうになってしまう
「…一言言っておく。俺は本当に差し入れに来ただけだ。鍵も無ければ、脱出に使えるアイテムを持って来たわけでもない。分かったら大人しくしろ」
???「嘘をつくなっ!!ここから出れる何かを貴方は持ってるんでしょ!?さっきから金属と火薬の匂いが僅かながらにするのよ!」
「それは多分工廠に行った時に染みついた匂いだ。本当にそこから出すアイテムなんて持ってない。お前がそれ以上疑うようならこの差し入れも地面に飲ますが?」
???「なっ、ぐっ…!」
「こんなあっつい日だもんなぁ…その中はさぞかしお熱いだろうねぇ」
「そこで、自販機で買ったキンキンに冷えたペットボトルに入った水の差し入れだ。飲むと今までの熱さを忘れる程のひんやりとした冷た~い水をゴキュゴキュと飲めるんだぞ?少しは落ち着いてどっちを選んだら良いか考えてみたらどうだ?」
???「…」ゴクッ
「ほら。欲しいでしょ?分かったら大人しく待て。分かったな?」
???「…分かったわ」
「良い子だ。人数分あるから中にいる三人にも渡しておいてやれ」ギィッ
???「…っ!冷たっ!」
「日光に照らすと水滴がペットボトルについてるのが分かる程にキンキンだろ?間違ってもお前だけ飲むんじゃないぞ?」コトッ
窓越しにペットボトルを一本置くと、向かい側で持たれていた手に力が入ったのかペットボトルがつぶれる音がする。完全に手を放すと凄まじい勢いでペットボトルが手から引っこ抜かれ、ゴキュゴキュと扉越しでも分かるほどの音を立てて、同時にペットボトルがつぶれる音もする。十秒ほど音が鳴ったかと思えば、はぁ~という声が聞こえ、すぐさま深呼吸をする声が聞こえてきた
???「…生き返ったわ」
「それは良かったな」
???「…名乗りが遅れたわね。私は陽炎型のネームシップの陽炎よ」
「おう。今だけの関係になるかも知れんがよろしくな。とりあえず中にいる奴等にこれを渡してやってくれ。決してお前が飲むんじゃないぞ」コトッ
陽炎「わ、分かってるわよ。ありがとうね」
小窓に突っ込んだ手からペットボトルの感覚が無くなると、カツカツという音が少し遠くなっていく。かなりの熱さでダウンしていたはずなのに、すぐさま動けるのは流石の精神力だと称賛せざるを得ない。耳を澄ますとペットボトルのつぶれる音と争う声が聞こえ、はぁ~という声が複数聞こえてくると、またカツカツという足音が聞こえてきた
「なあ、一つ聞きたいんだけど中にいるのって朝潮、満潮、荒潮の三人だよな?」
陽炎「え、えぇ。そうだけど」
「ここ以外で反省室ってあるか?」
陽炎「いえ、ここだけよ。それがどうかした?」
「もしお前等以外にもいるんだったら差し入れに行こうと思ってな。ここだけなら安心したよ」
陽炎「…やっぱり貴方って変わってるわね」
「罪を犯した人間でも面会は出来るだろ?あれとおんなじだよ」
陽炎「そういう意味じゃないわ。命知らずって事よ」
「命知らず?」
陽炎「…貴方、ホントに差し入れに来ただけなのね。ここの事は何も聞かなかったの?」
「ここに来てる艦娘達が金剛達から罰を受けるってのは聞いた。だが俺なら問題ないから来ただけだ」
陽炎「その根拠は?」
「そこの小窓から外を覗いてみろ。俺の姿が見えるか?」
陽炎「いや、見えるに決まってるでしょ。何言ってるの?」
「…お前は見えるのか。あの装置って割とガバガバなんだな」
陽炎「何の話?」
「こっちの話だ。気にすんな」
陽炎「そっ。あ、ちょっと皆が呼んでるから失礼するわね」
「あいあい。俺もちょっとここの鍵を探してくるから待ってろよ」スタスタ
陽炎「え?ちょ、ちょっと待って!?何て言ったの!?」
あの装置は俺の姿が見えない認識阻害装置として働いていたはず。なのに陽炎が俺の姿を見れるってことは”俺の存在を完全に知らない者”と、霧島のように”装置が切り替わった瞬間に意識が無い者”は装置の影響を受けていないって事か?そして影響が軽いと見られる電達に関しては、全体から個人に装置が変更された瞬間は鎮守府にいなかったから…?そう考えれば今までの事に対して納得いくんだがせめて全員に対して同じ状態にしとけよ。考える事が増えてめんどくさいだろうが
鈴谷「…はぁ」
「もしもし?誰かいませんか?」コンコン
鈴谷「…誰?」
「もしもし?誰かいませんか?」コンコン
鈴谷「だから誰って聞いてるの?誰なの?」
「もしもし?誰かいませんか?」コンコン
鈴谷「だからぁ!誰って聞いてんだけど!?」
「…」
鈴谷「…何なの?悪戯?」
ドア ドンッ
鈴谷「!?」
ドア『こ、壊れるっ!壊れちまうっ!!』ドンドン!!
鈴谷「なっ、何々!?何なの!?」
ドア ガチャガチャガチャガチャ
鈴谷「ひっ…!」
ドア バンッバンッ
鈴谷「あっ、開いてる!開いてるから!早く入ってきて!!」
ドア シーン…
鈴谷「…?」
ドア『乱暴すぎるぞオイ!』バンッ
鈴谷「きゃぁ!?」バッ
「…」
鈴谷「…あ、あれ?誰もいない?」
ペットボトル『封印が解かれるっ!』パキッ
鈴谷「…何?この音?」
「…発射」
そういうとペットボトルの口を鈴谷に向けて中身を噴射する。ペットボトルから飛ぶ水は鈴谷の体を濡らし、ピチャピチャと服から水滴が落ちていく。状況を理解出来ないかのような顔をしばらくしたかと思えば、ハッとした表情をしてフルフルと震えだした
鈴谷「なっ、何!?一体何が起こったの!?」
「鈴谷ぁ…鍵を寄越せぇ…」ペチャ
鈴谷「ひぃ!?」
驚いている鈴谷を無視し、大きな足音を立てながら窓に向かって走りだしカーテンを勢いよく閉める。素早くドアまで移動し、大きな音が出るように勢いよく閉じて部屋の電気を落とす。ここまでするとカーテン越しから漏れる光が部屋を照らすのみとなり、濡れた鈴谷の体をペタペタと素早く触ると、少しずつ鈴谷の顔が恐怖に染まっていくのが分かる
「ねぇねぇ…反省室の鍵はどこぉ…?教えちゃおうヨッ。ネ?」
鈴谷「そっ、そこの引き出し!上から二段目にあります!!」ユビサシ
「そうか」スンッ
鈴谷「っ…!アナタは何なの!?何でこんな事するの!?」
「探し物を取りに来ただけだ。運よくここで見つかったんで俺はサッサと帰らせてもらう」
鈴谷「にっ、逃がすと思う!?アナタみたいな怪しい人を!」ダッ
「…いつから俺がドアからでしか帰れないと思ってたんだ?」ガチャ
鈴谷「ま、窓が勝手に!?」
「ほいじゃあね~」
鈴谷「…声が聞こえなくなった」
ま、ホントは部屋内にいるんですけどね。流石に水で床が濡れてるから下手に動くことが出来ないけど、ドアが開いたタイミングで逃げたら良いだろ。そこそこ騒いだはずだし、人もそろそろやってくるはずだ
鈴谷「一体何なの…?あの機械をいじってから変な事ばっかり…」
鈴谷「…でも、提督がいじめられないようになるには必要な事だったはず。鈴谷は間違えてなんかないよね…?」
鈴谷「提督からありがとうって言われなくても良い。提督がまた前みたいに元気になってくれるなら、鈴谷は…」
ドア コンコン
???「ごめんなさい。何か凄い音がしたから来てみたんだけど…大丈夫?」
鈴谷「えっ、あ。大丈夫だよ。ごめんね、心配かけちゃって」
???「…あの、良かったら部屋にお邪魔していい?何かあったんでしょ?」
鈴谷「あ、えぇっと…じゃあ、ちょっと部屋が濡れてるから少し手伝ってもらって良い?」
???「…!分かったわ!失礼するわね!」ガチャ
鈴谷「えぇっと…雷、だよね」
雷「えぇ。結構大きな音が鳴ってたから心配してたんだけど…何があったの?」タオル借りるわね
鈴谷「いや、その…幽霊?が出ちゃってね。ちょっとその時に色々あって…」
雷「ゆっ、幽霊!?」ブルブル
鈴谷「あ、幽霊はもういなくなったから大丈夫だよ。不安にさせちゃってごめんね」ナデナデ
雷「そっ、そうなの?」
鈴谷「うん。それより足元大丈夫?床濡れちゃってるから靴下とか濡れちゃってない?」
雷「別に平気よ!また新しいのを履き直せば良いんだから!」フキフキ
鈴谷「でも、そんなに可愛い靴下を濡らしちゃって…お気に入りだったりしない?」
雷「あっ、これは以前外にお出かけしに行った時に初めて買った靴下なの」E.ピンクの靴下
鈴谷「外って、鎮守府の外の事?」
雷「えぇ。以前皆と外に遊びに行けるチャンスがあったの。その時に見つけたお店で買ったのよ」
鈴谷「…いいなぁ。鈴谷は外になんか一度も出かけたこと無いよ」
雷「え?何でお外に出られないの?」
鈴谷「だって…金剛達が許可してくれないんだもん。私達はここで生活するのが一番とか言ってさ」
雷「な、なにそれ?」
鈴谷「それに、外に出たら鈴谷たちの事を化け物を見る目で色んな人が見てくるんだよ?そういうのって嫌じゃない?」
雷「んー、確かに嫌だとは思ったけど…勿体ないじゃない?」
鈴谷「勿体ない?」
雷「だって、外には楽しい事がいーっぱいあるのよ?ただ怖いだけでチャレンジしないのは勿体ないわ」
雷「それにおかしいわ。何で司令官じゃなくて同じ艦娘である金剛さんの言うことを聞いてそれに従ってるの?普通はそういうのって司令官が許可を出したりするものじゃないのかしら?」
鈴谷「だ、だって、提督はそういうの決められないでしょ?」
雷「え、えぇ…?」
鈴谷「提督は艦隊の編成を決めたり大本営と連絡とか書類仕事をするだけで、そういうのは全部艦娘に任せるんじゃないの?」
雷「あのね…仮にそれが正しいなら鈴谷さんだけでも外出って出来るでしょ?それに書類仕事には外出に関する事も含まれてる筈はずだわ」
鈴谷「そ、それはあくまで書類上の話であって、実際は駄目なんだよ?知らないの?」
雷「???そんなおかしな話は聞いたことも無いわ?」
鈴谷「えっ、えぇ!?」
雷「鈴谷さんが何を言ってるのかは良く分からないけど、鎮守府に関することは全部司令官が決めるのが普通よ?私達の外出だって、それを決めるのは全部司令官さんの仕事だわ」
鈴谷「そっ、そうなの!?」
雷「そうなのって…普通はそうよ?司令官が鎮守府で一番偉いんだから当然じゃない」
鈴谷「じ、じゃあ、鈴谷が欲しい服とかも買って良いの?」
雷「艦娘はお給料が出るはずだから、そういうのは自由にしていいはずよ?」
鈴谷「じ、じゃあじゃあ!鈴谷特性のカレーとかも作って皆に振舞っても良いわけ!?」
雷「…食堂の使用許可を貰ったら良いんじゃないかしら?ちゃんと実行出来るならだけど」
鈴谷「…は、はは。や、やって良いんだ。そういうことって…」
雷「流石に限度はあると思うけど…やってこなかったの?」
鈴谷「だって…提督に話そうとすると金剛さん達に話を通さなきゃいけないし、最終的には金剛さん達の許可がいるんだもん…金剛さん達の許可なしにやろうとすれば提督さんが酷い目にあっちゃうし…」
雷「?何でそこで司令官が出てくるの?」
鈴谷「しっ、司令官は艦娘の許可無く何かを決めたら艦娘達…主に金剛達から罰を受けるんだよ。流石に提督が可哀想って思って誰かが助けに行ったりもしたんだけど、そうしたらその子も同じような目にあうから…」
雷「…私達の所と真逆ね」
鈴谷「…?どういうこと?」
雷「…でもそうね。私達がここに来て運が良かったんじゃない?」
鈴谷「…そんなわけないじゃん。大体、何で貴方達が来て運が良いって言えるの?」
雷「司令官が一緒に来てくれたんだもの。司令官が一緒じゃなかったら運が無かったと思うけどね」
鈴谷「あんな奴がね…とてもそうとは思えないけど?」
雷「…まぁ気持ちは分かるわ」
鈴谷「でしょ?だから「でもね」」
雷「あの人は私達の事を助けてくれたの。貴方達の司令官が金剛さんから罰を受けてたように、私達も前の提督から必要以上の罰を受けて自由なんてなかった。そんな時にあの人が来たものだから皆疑って徹底的に抗戦してたのよ?そんな私達を助けてくれたあの人に任せておけば大丈夫だと思わない?」
鈴谷「…到底信じられないけど?」
雷「あの人がやる事には必ず意味があったわ。貴方達の司令官がやられた事も実際は何か裏があったんじゃないの?」
鈴谷「……」
・・・・・・
鈴谷『あの提督…ホントに大丈夫なの?あんなの飲んで体壊さないのかな?』
鈴谷『でも、まずは先に深海棲艦の事を考えないと!提督さんならもう解決手段を思いついてるはずだもんね!』
放送『す、すいません!先程の放送ですが、深海棲艦と思われたものは漂流物でした!各自、警戒態勢を解いてください!』
鈴谷『え!そうなの!?焦って損したなぁ…』
鈴谷『もしかして提督疲れちゃったのかな?いつもなら敵が分かってるみたいに動くのに…』
加賀『…』ピタッ
鈴谷『…加賀さん?ここで何してるの?』
加賀『…鈴谷、丁度いいわ。貴方も聞いてみなさい』スッ
鈴谷『う、うん?』ピタッ
提督『…ねぇ、女提督さん。少し聞きたいんだけど』
女提督『な、なんでしょう?』
提督『貴方はこの鎮守府の現状を理解しておられますか?』
女提督『…はい。理解しています』
提督『では何故何も変えようとしないのですか?貴方は提督であり、この鎮守府の最高権力者でしょう?』
女提督『だ、だって…私が彼女達に指示するよりも、彼女達が率先して動いた方が良い結果になるのは目に見えてるし…』
提督『…ん?俺の耳がおかしかったのかな?彼女達が率先して動いた方が良い結果になるって?』
提督『お前さぁ…頭腐ってんの?』
女提督『く、腐ってなんか…「じゃあさっきの発言は何なんだよ」』
提督『ねぇねぇ、頭イかれちゃってるの?何処をどう見たら良い結果になってるの?新米の僕には何処がどう良くなってるのかわっかんないからさぁ、良ければそこんトコロ教えてほしいなー?』
鈴谷『なっ…!コイツ…!』ガッ
加賀『…』コンコン
加賀『航空母艦、加賀です。提督に少しお話があるのですが』
鈴谷(加賀さん、私の代わりにあの提督を絞める気だ!確かにその方があの提督にとっても良い薬になるかも…!)
女提督『ど、どうぞ』
加賀『失礼します』ガチャ
女提督『ど、どうしたの?話って』
加賀『確か哨戒任務を行っているのは不知火でしたよね?何故彼女がミスしたのか、提督はお分かりですよね?』
鈴谷(え!?不知火が報告ミスしたの!?てっきり提督が直視したのかと思ってたのに…)
女提督『……』
加賀『答えてください。提督』
女提督『…疲労が目に見えている状態で任務に向かわせました』
加賀『そうでしょうね。私も彼女を見たので分かります。問題は何故彼女を任務に向かわせたのかです。彼女以外にも疲労が取れていない艦娘にもこうやって何度か任務に向かわせていましたよね?』
加賀『なぜ未だにこんなことをしているのですか?そんな彼女達の最後がどうなったか貴方はお判りでしょう?』
鈴谷『…え?』
女提督『…』
加賀『…もういいです。彼女が帰ってきたらちゃんと休ませてください。失礼します』バタン
鈴谷『か、加賀さん?』
加賀『何かしら?』
鈴谷『…ううん、やっぱりなんでもない』
加賀『…貴方はここに来たばかりだから知らないでしょうけど、あの人は何でも出来るって訳じゃないの。ただ失敗した。そこから立ち上がれない人間よ』
鈴谷『それってどういう…』
加賀『それじゃあね。いつまでもそこにいちゃ不味いわよ』
鈴谷『…』
・・・・・・
雷「…ここの司令官も、貴方も、私達がいなきゃずっと前のままだったんじゃないかしら?」
鈴谷「…例え前のままでも、司令官が傷つかなかったらそれでいいよ。それ以上を望む必要なんてあるの?」
雷「…貴方、何で艦娘をやってるのよ。何で私達が艦娘としてここにいると思うの?」
鈴谷「そんなの深海棲艦と戦う為でしょ?それ以外に私達が生まれた理由があると思うの?」
雷「そうね。でも今の貴方は深海棲艦と戦うんじゃなくて、提督を守るって事になってるじゃない」
鈴谷「それは…提督がいないと平和な海が取り戻せないからでしょ?提督を守るの何て当たり前の事じゃん」
雷「それは目的が逆転してるわ。あくまで私達は深海棲艦を倒して平和な海を取り戻し、司令官は私達を指揮して勝利を掴み取る。要は艦娘と司令官は相互関係に当たるから司令官を守らなくちゃいけないの。司令官がいなくちゃ私達は活躍出来ないからね」
雷「最悪、私達だけでも深海棲艦に太刀打ち出来れば良いのよ。司令官が絶対に必要って訳じゃないわ」
鈴谷「っ…!じゃあ何!?私達の司令官を見捨てろって言うの!?」
雷「話が飛躍しすぎ。あくまで私達だけで動けばいいって言うのは最悪の場合よ」
雷「貴方も薄々気づいてるんでしょ?貴方の守らなくちゃって思いは敵からじゃなくて、味方から守らなきゃいけないって事に」
鈴谷「…」
雷「…そんなに信頼出来ない?自分達の提督の事」
鈴谷「なっ、なんで!?なんでそんな話になるの!?」
雷「提督を守らなきゃいけないって思ってるのは、艦娘達と私の提督から酷い事をされるから守らなくちゃいけない。そうよね?」
鈴谷「そ、そうだよ!提督は私が守らないと酷い目に…!」
雷「それ、今の提督を見ても同じことが言えるの?」
鈴谷「どっ、どういうこと?」
雷「以前はかなり臆病で私達でさえ拒絶してたみたいだけど、今ではちゃんと面と向き合ってお話してくれるわ。加賀さんや榛名さん達みたいな強い人を前にしても怯えずに話すようになったりしたし、食堂で鳳翔さんに料理の御礼を言ったりしてたのよ?」
鈴谷「あ…」
雷「その時に提督は怯えてた?貴方に助けを求めたりしてた?そもそも怯えてた時も貴方に助けを求めたりしてた?」
雷「貴方は提督を守るって思いが先行して肝心の本人を見てないじゃない。守るべき人をみずして守るだなんて良く言えたわね?」
鈴谷「…っ!」ガシッ
雷「…貴方は結局何がしたいのよ。自分の思い通りにいかないから私に暴力でも振るうつもり?」
雷「自分の都合の良い事ばかり見ようとしてんじゃないわよ!いい加減に目を背ける事をやめなさい!」
鈴谷「っ、五月蠅い五月蠅い!貴方に分かってたまるか!どうしようが私の勝手じゃん!」ググッ
雷「ぐっ…!いい加減にしなさい!」バシッ
鈴谷「ッ!?」パッ
雷「貴方が本当にしたいことを見失ってどうするの!たかが思い通りにいかないだけで癇癪を起す程度の事なの!?貴方がしたいのはその程度の事なの!?」
鈴谷「うっ…」
雷「…ちゃんと提督の事を見てあげなさい。貴方が本当に提督を守りたいのか、それとも自分の思い通りにしたいのかは分からないけど、ちゃんと見るべきものを見なければ思い通りになるはずないのよ」
雷「見て、考えて、調べなさい。相手を観察して本当に求めているのかを考えて、どうすれば良いか分からなかったら徹底的に調べて思考の不備を失くしなさい。相手を想うのなら徹底的にね」
鈴谷「そんなの…出来る訳ないじゃん…」
雷「…その程度の物って事ね。貴方の提督に対する想いってのは」
鈴谷「っ!違う!そんなことな「違わないわよ」」
雷「ただやるべき事の考え方を提示されただけで無理だなんて決めてる時点で貴方には無理よ。自分で考える事を放置してる時点でね」
鈴谷「それは…!アナタが無理な事を言うからでしょ!?」
雷「それはそうよ。あそこまで出来たらホントに凄いわ」
鈴谷「…はぁ?」
雷「さっき言ったのは私達の提督が教えてくれた事よ。本人でも完璧にするのは難しいって言ってたわ」
雷「大切なのは提示された内容から如何に自分が出来る事を探して考える事だって言ってたわ。それを貴方はただ提示された内容を無理って言葉一つでやろうともしなかったじゃない。やりもしないで考える事を放棄する時点で、貴方のやりたいことはその程度だってのが良く分かるわ」
鈴谷「…じゃあ、どうすればいいの?どうしたら良かったの?」
雷「そうやって他人に考える事を任せてる時点で無理よ。さっきも言ったでしょ?大事なのは考える事だって」
雷「貴方の考えた答えに口出しする気は無いわ。貴方自身が考え出した事だもの。でもね、他人に与えられた選択肢をやるのだけはやめなさい。そこに貴方の考えが含まれてるとは限らないんだから」
鈴谷「…」
雷「…さて、お話はこれくらいにしてその服を脱がないとね。替えの服はあるかしら?」
鈴谷「…そこのタンス」
雷「これね」ガチャ
タンス『グチャァ…』
雷「…鈴谷さん」
鈴谷「な、何?」バッ
雷「お掃除、しましょうか」ニコッ
鈴谷「…はい」
「…雷と鈴谷の部屋って意外と近かったのな。なんかあったら駆け込ませてもらおうか」
「しかしマジで単純な鍵だな。こんな鍵ならピッキングでもすりゃ簡単に開きそうだ。やったこと無いからゲーム知識でしかないけど」
「さて…ノックしてもしも~し」ゴンゴン
陽炎「…何?」
「鍵取って来た。とりあえず中に入るぞ」ガチャガチャ
陽炎「…言っておくけど、ここから出るつもりは無いわよ。出たらどうなるか位は目に見えてるからね」
「まともに思考が出来る位には回復したみたいだな」ガラッ
中は学校の体育館をイメージ出来るほどの広さをしており、所々に荷物によって出来た壁が置かれている為に全てを見渡すことは出来ないが、天井まで届く程ではないようだ。しかしこの荷物がもし倒れてきたらと想像すると恐怖が襲ってきそうなので会話に集中して考えない様にした
陽炎「…悪かったわよ」
「それでいい。俺もそんなつもりで入る訳じゃない」
陽炎「はぁ?じゃあ何しに来たのよ?」
「お届け物だ。ちょっと待ってな」ゴソゴソ
陽炎「…?袖の下に何かあるの?」
「あれ?おかしいな…ちょっと待ってな」ブンブン
陽炎「…」
「…あっ、胸ポケットの方だった」ゴソゴソ
陽炎「何がしたいのよアンタは…」
「よいしょっ」ズルッ
陽炎「!?」
枕『テッテレレー↑レー↓レー↑』
陽炎「ど、どっから出したのよ。その枕」
「四次元胸ポケットから」
陽炎「…私がここにいる間に外では技術革新でも起こったの?」
「お前等の分もあるぞ。籾殻入りや藁とかあるから好きなの選んでくれ」ドサドサッ
陽炎「…籾殻を頂戴」思考停止
「あいよ。他の奴等にも届けてやるからここで待っててな」
陽炎「…貴方は見ない方が良いかも」
「その魅惑的な太ももみたいな事されてんのか?」
そう指摘した太ももには円状に血の跡がついており、かなりの出血があったのだろう。赤黒く染まった血の跡が足先までに伸びている程に色濃く張り付いている。かなり以前に出血は止まっているのだろうが、見た目の色からして吐き気を誘っている
陽炎「…気づいてたの?」
「お前の立ち方がおかしいからな。若干だが膝関節が曲がっている事からしっかりと力が入っていない様に見受けた」
陽炎「…私達は艦娘だから、これくらいしないと罰にならないんですって」
「…はぁ。お前等って凄すぎて逆に不便な時もあるよな」
陽炎「艦娘だからよ。これくらい当然だわ」
「阿保。んなわけあるか」
「例えお前らが艦娘だろうと罰なら掃除とかの雑務をやらせるわ。こんな意味の無い事させて何になるってんだよ」
陽炎「…意味ならあるわ。少なくとも金剛さんにとってわね」
「どうせ自分に逆らったらこうなるっていう恐怖心を植え付けるってとこだろ?そんなの分かってるって」
陽炎「……」ポカン
「どうした?」
陽炎「…馬鹿じゃなかったのね。ただ変人なだけか」
「酷くない?」
陽炎「いきなりやってきて差し入れしたかと思えば、鍵を取ってきてここに入ってくる奴を変人と言わずしてどうするの。挙句の果てに枕まで持ってきて…ここに泊まるつもり?」
「そうだけど?」
陽炎「…は?」
「しばらくの間お世話になります。先輩」
陽炎「…頭痛い」
「とりあえず奥の皆にも渡してくるわ。使えるかは知らないけど」
陽炎「…私もついていくわ。貴方一人じゃ何しでかすか分からないもの」
「そいつは心強いな。じゃあ頼むわ」
陽炎「…一応言っておくけど、気を付けてね」
「…そんなヤバいの?」
陽炎「あの三人は自分の意志で入ったようなものだからね。ここに貴方もいるって知ったらどんな反応を起こすと思う?」
「いや、それ以前に俺がここに何しに来たか分からないんじゃないのか?」
陽炎「それは知らないと思うわ。でもあの子たちからしたら貴方は救世主みたいな人なのよ?貴方の事はあの子達から聞いてるし、そんな人がここに閉じ込められてるって知ったらどんな反応起こすかは想像出来るでしょ?」
「…ちょっと面白そうだな」
陽炎「…勝手にして」
「そうさせてもらおう」スタスタ
陽炎「はぁ…期待した私がバカみたいじゃない」スタスタ
朝潮「あっ、陽炎さん。誰かと話していたんですか?」
満潮「…その浮いてる枕は何?」
陽炎「へ?」
「お、見えてないのか」ポイッ
陽炎「…何言ってんの?」
朝潮「陽炎さん、いったい誰とお話しているんですか?」
陽炎「…二人共、隣にいる人が見えない?この男の人が」
朝潮「はいっ!見えません!」
満潮「…陽炎、貴方大丈夫?」
「…鎖が壁から足に向かって着けられてんのか。これじゃあほとんど移動出来ないじゃないか」ジャラ
朝潮「?満潮、何か言いましたか?」
満潮「な、何も言ってないわよ!第一あんな声出せないわ!」
陽炎「嘘でしょ…?ホントに見えてないわけ?」
「慣れろ。それしか言えん」
陽炎「外で一体何があったのよ…?いじめでも受けてるの?」
「簡単に言うと大多数の人間から俺が分からなくなったらしい。ペーパー〇リオで言うなら○○○○に存在取られた紫のマ〇オみたいな」
陽炎「…何言ってるかさっぱり分からないわよ」
朝潮「あっ、そういえば陽炎さん。お水の差し入れを持ってきた人はどこにいますか?荒潮がお礼を言いたいと言っていたのですが…」
陽炎「…その人なら隣にいるんだけど、貴方達には見えないのよね…?」
満潮「えぇ…?」
「いるぞ。今満潮の頭を触ろうと手を伸ばしてる」
満潮「なっ!?」ガチッ
陽炎「冗談はやめなさい」ペシッ
「いてっ。悪かったよ」
満潮「…どうやらホントに誰かいるみたいね」
朝潮「もしかしてここに来ていただいた提督でしょうか?」
「あぁ。トラック鎮守府にいる提督だ。よろしく頼む」
満潮「…満潮よ」
朝潮「お初にお目にかかります!朝潮です!」
満潮「ねぇ、一つ聞いていい?何で貴方はここに入ってるの?」
「ちょっと外でトラブルがあってな。それまで避難所としてここに来た」
満潮「…提督の仕事はどうするの?」
「書置きしてきた。ここに運んでもらうように書いてある。どう運んでくるのかもな」
満潮「…じゃあ本題よ。貴方は私達を助けてくれる?」
「助ける気はないぞ」
満潮「…っ、そう、なのね」
朝潮「ちょ、ちょっと待ってください!どうして助けてくれないんですか!?あんな目にもあったのに、どうして!?」
「はぁ?勝手にお前らがここに入っただけだろ?第一何で俺がお願いを聞かなきゃならないんだよ?」
朝潮「そ、そんなっ!!」
満潮「…だから私は反対だったのよ」
???『ガシャッ、ガシャッ』
荒潮達から少し奥の位置から鎖が暴れているかのような音が聞こえてくる。まるで鎖に繋がれた”誰か”が怒りの原因となる提督に向かってぶつけようとしてくるように
朝潮「あ、荒潮!そんなに暴れたら傷が!」
「満潮」
満潮「…何?」
「あれってどういう反応だと思う?」
満潮「さぁね。骨は拾ってあげるわ」
「やっぱそういう意味だよなぁ」
???『ガシャッ、ガギッ!』
「あ、壊れた」
荒潮「…ねぇ、さっきの助けないって話はホントなの?」
「あぁ」
荒潮「…そう」
呟きに近い声を荒潮が出すとこちらに向かって走り出してきた。自分と荒潮の距離は約7メートル程開いており、その間に朝潮と陽炎の二人が立っており、自分の背中には満潮が立っている
流石にまずいと思い回避の姿勢を取ろうと動くが、服の一部が掴まれている為に動けなかった。服を掴んでいるのは満潮であり、流石艦娘というべきか微塵も動ける気配がない。姿が見えていないので本人は掴んでいるのに気づいていない様子だった
思考している間にも荒潮は少しずつ近づいてくる。彼女の踏み出す一歩は常に血が流れているのにも関わらず、それを感じさせない気迫を感じさせながら彼女の射程圏内に入るまで後4歩という所まで近づいて来た
3歩、2歩、1歩と近づいてきており、彼女の振りかぶった腕が当てるタイミングを伺うように構えられているが、後少しで腕を伸ばせば届くという距離で彼女が躓いてしまった
そのタイミングで荒潮の拘束が解けたが、艦娘とはいえ避けてしまえばあの勢いのまま後方にある荷物の壁に突っ込んでしまう。そうなれば荷物の山は崩れて自分達は皆生き埋めになってしまうだろう。そうなってしまえば取る手段は一つしかなかったが、受け止める体制を作るには近すぎるので間に合わないのは明白だった
当然勢いはあるので、そのまま自分に向かってタックルのような形でぶつかってきた。あまりに咄嗟の出来事なので抱きしめるとはいかず、荒潮に半ば吹っ飛ばされるような形で後方に吹っ飛んだ。本人も含めて
幸いなのは彼女の移動距離が7メートル程しかなかった事。そして彼女が足を怪我をしていた事によって想定より後ろに飛ばなかった事だ。もし彼女の足が怪我していなければ、おそらく自分は後方にある荷物の場所まで吹っ飛ばされていただろう
衝撃に備えようと両手を広げようとしたが、今自分の胸の中には荒潮がいる。もし両手を広げてしまえば自分の胸の中から彼女が飛び出し、自分とはまた別の被害を受けてしまうだろう。流石に被害にあう人間を増やす必要もないので、彼女が下にならないように体を固定させて着地した後も動かないようにする
やがて背中から地面に着地し、骨が折れるとはいかずとも強い痛みが電気の様に背中を走った。その時の衝撃で自分の腕ごと胸の中にいた彼女が自分から離れそうになるが、一瞬だけ離れた腕を素早く使って荒潮を抱きよせて二次被害を出さない様に庇う
結果的にこれが功を奏して被害は自分だけに押しとどめる事が出来た。彼女に怪我が無いか軽く顔を上げて周りを見渡すと、すぐそばに先程地面に投げ捨てた枕があった。距離は丁度頭一つ分離れており、流石に飛んだ先に枕があったという都合良い展開ではなかったらしい
荒潮「…もう。これじゃ怒るに怒れないじゃない」
「取りあえずどいてくれ。頭にたんこぶが出来たみたいで倒れてると痛いんだ」
荒潮「あらあら、大変ね?」ニコッ
「その顔で言われてもね…」
陽炎「二人共!大丈夫!?」
朝潮「満潮!見てください!荒潮が浮いています!」
満潮「荒潮、怪我は無い?」
荒潮「えぇ。司令官さんもごめんなさいね」
「別に気にしてない」
朝潮「荒潮、司令官のお姿が見えるのですか?」
荒潮「えぇ。見えてるわよ。中々カッコいい顔してるわぁ~」
朝潮「そうなんですね!それはつまり、司令官は性格も良く顔も良いお人だということですね!」
陽炎「…貴方、何で泣いてるの?」
「聞くな…」シクシク
満潮「…変な奴ね」