この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ 作:七福えると
話は変わるのですが、未だに2-4を突破出来ないです。司令官レベルを上げると敵が強くなるというのを知らず、初めてボスマスに到着した時はエリートル級三人だったのに対し、現在はフラグシップル級三人という鬼構成で挑まなければなってしまいました。誰か助けてください
電「…司令官の言っていた日まであと三日。本日は晴天ナリなのです」今日は四日目なのです
電「最近は雷ちゃんが特に頑張っているのです。練度は以前とと比べると見違えるように上がってますし、それに負けじと天龍さんと龍田さんが一生懸命に演習の相手を買って出てくれてるのです。他の皆も影響されて全体的に練度が高くなってきているのです」
電「ただそれよりも凄いのが時雨ちゃんと愛宕さんなのです。私と時雨ちゃんと愛宕さんで出撃してた時なのですが、深海棲艦に向かって思いっきり殴っていたのです。時雨ちゃんがイ級を宙に打ち上げ、愛宕さんが放った突きでイ級が吹っ飛んで敵を巻き込んで吹っ飛ばしていたのです。流石にあれを見た時は夢でも見てるのかと錯覚したのです。そうとう鬱憤が溜まっていたようなので早く何とかしてあげてほしいのです」
電「良い事ばかりではなく問題も起きたのです。鳳翔さんが失踪しました。失踪したと発覚したのは先日の午前中、鳳翔さんの姿が見えないので榛名さんが鳳翔さんの部屋に行った時に書き置きがありました。中はお世話になりましたと書かれた一文のみ。鳳翔さんがいなくなってしばらく現場は騒然としましたが、女提督さんはこれを予知していたのかすぐさま場を収めた後、今まで鳳翔さんが運営していた食堂での食事を当番制にしたのです。これに比叡さんが名乗りを上げ、ほとんどの日を比叡さんが担当する事になりました。料理も凄く美味しくて皆ビックリしてたのです。見た目とカレーを除いて」
電「そして鳳翔さんが失踪した同日に反省室行きとなった皆さんが出てきたのです。司令官さんはまだ姿が見えていないので反省室に一人籠っているそうですが、おそらくメモに書かれてある一週間後まで全く動かないつもりだと思われます。本当に…本当に何を考えているのか分からない人なのです」
電「ただ、反省室から出てきた艦娘達の話によるとここには来て良いそうなのです。それを聞いた島風ちゃんや夕立ちゃんを筆頭に司令官さんに会いたい人達がこぞって反省室に押し寄せました。今まで振り回されてた分、悪戯をしようと計画した上で」
電「…結果、司令官さんの姿が見えないのを良い事に何を言っていようと無視を決め込み、その場にいない司令官さんの反応を楽しむかのようにひそひそ話を皆で喋っていたのです。内容は様々でしたが、司令官さんの顔が様々な色に変わるかのような内容でした」
電「流石の皆も我慢の限界が来ていたのです。司令官さんには良い薬だという事で皆楽しんでいたのですが、しばらくしても司令官さんの反応が一切無いのを疑問に思い、倉庫内を捜索。司令官さんの発見には数分とかからなかったのですが、顔と思わしき場所に手を近づけても呼吸を薄っすらとしているだけ。声を掛けても反応が無かったので大急ぎで医療室に運び込むことになりました。そして今に至るのです」
電「報告は以上になるのです。何か不明点はありますか?」
「やー、ごめん。まさか睡眠時間があそこまで増えるとは思ってなかったんだ。仕事も一日分溜まってるしさっさと終わらせないとな」モグモグ
電「全く…どこの世界に自分から危ない事に首を突っ込んで、準備不足でぶっ倒れる司令官がいるんですか?少しは反省してください」
「あぁ、悪かった。それよりアイツ等は?」
電「今は食堂でご飯を食べてるのです。比叡さん特製の見た目が素晴らしい料理でも食べているのではないでしょうか?」
「…もうちょっと言い方とかなかったの?」
電「…インパクトが強すぎてとてもじゃないですけど言葉では言い表せられないのです」
「ふっ、それには同感だな」
電「司令官さんからご飯も貰ったと言っていましたし、目立った体調不良もなし。体が料理を受け付けないという事態も見られなかったのです」
電「で、さっきの話を踏まえた上で質問なんですけど、司令官さんが持ち運んだ食べ物は何日分ほど用意していたのです?」
「一人なら一週間、二人なら五日間、三人で四日、四人で二日分だな」
電「ちなみに切り詰めたらどうなりますか?」
「さっきの倍は持つな」
電「…最後にお食事をしたのは?」
「昨日皆を見送る前だな。美味い水だったよ」
電「…司令官さん」
「水は食料に入らないか?」
電「お人好しにも程があるのです…」ハァ…
「アイツ等には言ってないだろうな?こっちは誤魔化すの大変だったんだぞ?」
電「言ってる訳ないのです。司令官さんのお気持ちを無下には出来ませんので」
「そりゃよかった。俺も体を張ったかいがあったよ」
電「…それで、どこまで想定通りなのです?」
「ん~、正直自分が倒れる事を予想に入れてなかったんだよな。三日目くらいにあそこにいる全員を解放させるのは決めてたけど、それ以降は一人で切り詰めればきっちり一週間目には間に合う計算だったからな」
電「ちなみにどうやって皆を解放させたのです?」
「霧島にちょっとな。起こした対価としてお願いさせてもらっただけだよ」
電「あぁ。だからちょっと霧島さん達が揉めてたわけですね」
「ま、霧島なら上手い言い訳くらいしてくれるだろ。金剛も自分の姉妹には甘いみたいだし」
電「…それじゃあ、鳳翔さんに関しては?」
「……」
電「…知ってたのですね」
「…あぁ」
電「それで、どうなさるおつもりなのです?」
「色々パターンは考えているんだが、今はここの問題児を利用しようと考えてる。鳳翔さんにはちょっと悪い気するけどね」
電「なるほど…」
「…ごめんな。嫌な思いばかりさせて」
電「…急にどうしたのです?」
「初めて出会った頃みたいに表情が出なくなってる。なんというか、表情に出すのが疲れてる気がしてな」
電「…確かに。色々大変ですがそういうのは電の自己管理が悪いせいなのです。司令官さんが気にすることじゃありません」
「…ごめんな」
電「…でしたら、何故鳳翔さんがあんなことをしたのか。知っていることを話してください」
「…言わなきゃ駄目?」
電「駄目なのです」
「…これは他言無用だ。絶対に誰にも喋らない事。例え聞かれても知らない様に振舞って、普段通りに過ごすんだ」
電「…分かったのです」
真剣な目でこちらを見る電と、カーテンの隙間から覗いている者が複数人いる。しかし彼女達も同時に真剣な目でこちらを向いている。盗み聞きしている者に聞かせる内容ではないが、彼女達も真剣だというのが伝わるので聞き逃しが無いようにハッキリと、一度しか言わないという気持ちを声に乗せて話せるように深く深呼吸をした
「……鳳翔は深海棲艦に会いに行った。いや、正確には会いに来たと言った方が正しいんだろうか」
「鳳翔の目的だが、おそらく戦闘でもしたかったんじゃないか?と推測している」
電「鳳翔さんが戦闘中毒って事ですか?それが理由で裏切ったと?」
「あぁ。というのも少し鳳翔の練度に違和感を感じないか?」
電「…金剛さんより高い。という点ですか?」
「そうだ。練度ってのは本来、演習か戦闘をすることでしか高める事が出来ないんだ」
「鳳翔がここに来た時から今日までの記録を漁ってみたんだがな、演習に関する記録は出撃と比べて半分以下しかなかったんだ」
「演習での記録は勝利の記録が多少多いものの、それでも負けが無いわけじゃない。とてもじゃないが演習だけであそこまでの練度に辿り着いたと考えるのは不可能だ」
「しかし出撃では一騎当千の活躍。それも着任してから間もない頃からだ。味方にMVPを渡す事もなく、しかもほとんど被害を受けずに済むことが殆どだった。時には一人で出撃していた事もあったらしい」
電「…戦場で常に戦い、命を顧みる事さえせず、そして勝ってきたからあそこまでの練度を?」
「そう考えるのが自然だろう。楽しんで戦闘してる訳だから練度が高いのにも納得はいく」
電「楽しむ…」
「提督はおそらく鳳翔の本性に気づいたんだろう。ここにいれば艦隊をかき乱し、いずれ味方をも巻き込んで戦闘を行い、将来的には敵味方関係なく襲い始める。ならば早々に処分をした方が困らないってな」
電「鳳翔さんはそれに気づいていた。だから処分される前に深海棲艦へ裏切ったと?」
「裏切れば向こうから敵がやってくるわけだし、深海棲艦は個々の能力が艦娘と比べて高いからな。暴れる理由も付くし、楽しむ相手が困らん点にしては丁度良いんだろ」
電「……」
「決して後を追おうと考えるな。絶対にだ。もし後を追うなんてことになってしまったら、俺達はソイツと戦わなければならなくなってしまうからな」
電「鳳翔さんはそれを…」
「理解していた。その上で行ったんだ」
電「…そう、なんですね」
「一つ聞くぞ。お前等は鳳翔を撃つ事が出来るか?」
電「……出来ないと思うのです」
「…敵を轟沈させるのは酷い事なのか?」
電「っ!それは!意味を分かってのお言葉なのですか!?」
「あぁ。分かってる」
電「…!そう、ですか…」
電の声が暗くなる。それはこれから起こる事を察し、避けようの無い事だと理解してしまったのか。それともそれを引き起こした自分に怒っているのか。その答えを知ろうと電の顔を覗いたが、少し涙目になっている所を観察するに半分半分といったところだろう
「鳳翔は確実にここに来る。おそらく仲間も引き連れてここへやってくるだろう」
「今回の件で金剛を見定める事にする。だがその時に取った行動によっては容赦は出来ない」
電「…司令官さんは、どっちの味方をするのですか?」
「どっちでもない。俺はチャンスを提供しただけだ。それに対する責任は取るつもりではあるが、そこから先は敵も味方も関係ない。あくまでそれを利用した奴の問題だ。その結果によってはどちらかの敵になるかも知れないし、両者とも敵になるかも知れない」
電「…味方とは言わないのですね」
「味方にはならないと思っている。ま、今のところはだけど」
電「さっきまで真剣な事を言ってた人とは思えない程にお気楽なのです…」
「肩肘張ってちゃキツイだけだ。ある程度は気を抜いとかないとな」
電「司令官さんのお気楽な一言で全てが決まるのはお分かりなのですか?」
「俺も考えなしに言ってる訳じゃない。あくまで敵としてではなく、味方として再度受け入れるやり方もあるからこうやって言えるんだ」
電「懐が深いというか、いい加減と言いますか…」
「ごちそうさま。飯ありがとうな」パンッ
電「…お粗末様なのです」
「それじゃ俺はそろそろ仕事するよ。早いとこ仕事を仕上げないとな」
電「残ってる書類はどうしたら良いのです?」
「俺の部屋に運んどいてくれ。こうなった以上金剛に押し付ける訳にはいかないからな」
電「自覚はあったのですね」
「重要度は低いものばかりだよ。ホントに大切なものはこっちに回してきてくれただろ?」
電「当然なのです」
「電がいてくれて助かってるよ。ホントにいつもありがとうな。感謝してる」ナデナデ
電「…司令官さん」
「ん?」
電「あのメモに関してですが、その、あれを書いていただいたのは…」
メモ『信頼している』
「…お前だけだよ」パッ
電「そっ、そうなのですね…!」
「安心しろ。俺に何かあったとしてもお前を一番に信頼している。何かあればお前に頼りたくなるくらいにはな」
電「…なんだか、ようやく司令官さんのお話をちゃんと聞けた気がするのです」
「前からちゃんと話してたよ。ただ口下手なだけだ」スタッ
電「…ふふっ、ありがとうなのです。司令官さん」
「おう。それじゃそろそろ仕事してくる。書類はさっき言った通りに頼んだ」ガチャ
電「はい。お仕事頑張ってくださいなのです」バタン
電「…えへへ」
如月「二人共、やっぱりそういう関係なの?」
電「はにゃあーっ?!」
如月「あら?私の事忘れちゃった?」
電「い、いつからそこに…?」
如月「昨日辺りからずっといたわよ?カーテンのせいで中が見えないから気づかなかった?」
電「あ、あの、その…」
如月「別に言いふらす気は無いから安心して♪こういうのは知ってて笑うのが楽しいんだから」
電「きっ、如月さん!」
如月「ふふっ。そういうわけだから皆も言っちゃ駄目よ?」
電「…ふぇ?」
皐月「もー。何でばらしちゃうのかなぁ?」バサッ
文月「ねー?」バサッ
電「どこから出てきているのですか!?」
如月「さっきまで三人で一緒に寝てたからね~」
文月「危うくベットから落ちかけたけどね…」
皐月「それにしても司令官の声真似凄いね!ホントに司令官がいるかと思ってたよ!」
如月「今度かくし芸のお披露目会の時にやってほしいわ。普段の司令官からじゃ聞けない言葉…とかね♪」
電「え、えっと…電に頼むんでは無くて司令官さんに頼んでみたらいいのでは?」
文月「で、出来ないよ!そんなに恥ずかしい事頼めないし!」
如月「それに、今の司令官は何だか近寄りがたいのよ。本能的に恐れてしまうっていうか…」
電「…なるほど」
皐月「ねぇねぇ!二人はどこまで進んでるの!?もうチューぐらいはした!?」
如月「…皐月ちゃん、せめて空気は読んでくれない?」
電「やっていないのです!というか司令官さんとはそういった関係ではないのです!」
文月「ほんと~?」
電「どうして疑ってるのです!?」
如月「…あのね、司令官は男性でしょ?そして私達を見ても気持ち悪がったりもしないわよね?」
電「え?そ、そうですね?」
如月「だからかなり貴重なの。私達艦娘は外に出る事もほとんどないから娯楽もほとんどない。そんな中で娯楽になりそうな事と言えば演習や他人の恋バナとかしかないのよ」
皐月「だから皆司令官さんには興味深々。司令官に深く関わってる人達もね」
電「…ということはもしかして」
文月「特に電ちゃんは皆から注目の的って事だね~」
電「…全く気付かなかったのです」
文月「電ちゃんって戦闘とかになれば凄いのに、日常では結構抜けてる事多いよね」
皐月「うんうん。この前なんか食堂でソースと醤油を間違えてた事あったよね」
文月「そうそう!それで何でか響ちゃんと目玉焼きにかけるのはソースか醤油かを決める勝負が始まって、結果的に演習で決める事になったんだよね」
如月「ここで見てたけど凄かったわね。電ちゃんが跳躍して空を飛んだと思ったら、魚雷を響ちゃんに向かって投げたりしてて…」
電「どこまで見られているのですか!?」
如月「ここにいるのは退屈なんだもの。窓から眺める演習の様子を見るのが楽しみくらいしかなくてね」
皐月「天龍さんがあの後同じ事をやろうとしてたみたいだけど、見事に失敗してて体から海に落ちていったのには笑っちゃったなぁ」
如月「えー!そんなの見てないわよ!?」
文月「私達も人伝に聞いたくらいだもん。龍田さんが食堂で笑いながら話してたらしいし」
電「どおりであの時天龍さんがびしょ濡れだったんですね…」
文月「ねぇねぇ、司令官さんとしばらく一緒に同棲してたって聞いたけどホント?」
電「どこまで知られてるのですか!?」
文月「…え?ホントに同棲してたの?」
電「…へ?」
如月「電ちゃんは司令官さんからかなりの信頼を寄せられているのは誰から見ても明らかだったもの。もしかしたら同棲しているんじゃないかって噂はあったけど、ホントに同棲してたのね?」
皐月「ねぇねぇ!司令官さんと同棲してる時はどんなことして過ごしてた!?もしかして一緒に寝たりお風呂に入ったりした!?」
電「い、一緒に寝るなんてっ、そんなこと出来ないのです!」
如月「…お風呂は一緒に入ったみたいね」
電「あっ…!」
皐月「おぉ~!電ちゃんも可愛い顔してやることやってるんだねぇ!」
文月「電ちゃん良いなぁ。文月も一度で良いから司令官さんに甘えてみたい~!」
如月「…もしかしたら、出来るかも知れないわよ?」
文月「へ?」
如月「昨日ここに響ちゃんがお見舞いに来てくれたんだけど、その時に司令官さんの事を教えてくれたのよ」
如月「頭を撫でてくれたり抱き着いても怒らなかったらしいわよ?抱き着いた時は不意を突いたみたいにしたらしいんだけど、全然怒られなかったんですって」
皐月「…どうしよう。ちょっとドキドキしてきたよ」
文月「わ、私も…」
電「…司令官さんは私達には甘い人なのです。お願いだって聞いてくれるし、話をしたいと思えばしっかりと聞いてくれるお人なのです」
電「だけどとっても酷い人なのです。私達には大事な事を話してくれないですし、いつだって突然の行動をして私達はいつも手を焼いているのです。さっきの事だって「しっ」」
如月「それは言わないお約束。でしょ?」
電「…なのです」
皐月「ねぇねぇ、もっと司令官の事を教えてよ!」
電「う、うーん…電がそう簡単に司令官さんの事を教えても良いものか…」
皐月「良いって!司令官さんは滅多な事じゃ怒らないんでしょ?だったら大丈夫だって!」
電「…はぁ、分かったのです。ただし電から聞いた事は内緒にしてくださいね?」
文月「こ、これで私達にもチャンスが…」
電「あ、司令官さんは嫌な事は嫌だとハッキリ言う人なので、あまりにしつこかったら嫌われると思うのです」
文月「…ふにゅう」
ドア コンコン
霧島「どなたでしょうか?」
時雨「時雨です。金剛さんの様子を見に来ました」
霧島「…ごめんなさい。金剛お姉さまは体調が悪いので部屋で休んでいるんです。すみませんが今日はお引き取り願いないでしょうか?」
愛宕「…金剛さんの髪が少し白くなったりしていませんか?」
霧島「な、何で貴方達がそれを!?」ガチャ
愛宕「…やっぱりね」
金剛「五月蠅いネー。一体何の騒ぎなのですか?」
霧島「お、お姉さま?もう寝てなくて大丈夫なのですか?」
金剛「ハイ、霧島には迷惑をかけてしまいましたね。もう大丈夫デース」
愛宕「金剛さん、少しお話したいのだけど構わないかしら?」
金剛「良いですよ。どんな御用でしょうか?」
愛宕「知りたくありませんか?どうして自分の髪が少しずつ白くなっていくのか…」
金剛「…何か知っているんですか?」
愛宕「えぇ。どうでしょう?少しお話しませんか?」
金剛「…どうぞ、あがってください」
愛宕「失礼します」
時雨「失礼するよ」
金剛「霧島、誰もこの部屋に入れないでください。私は彼女達とSecretなお話をしなくてはなりませんカラ」
霧島「…分かりました。失礼します」バタン
愛宕「さて、何から話そうかしら…」
金剛「その前に質問があります。どうして貴方達はこの症状について詳しいのデスカ?」
時雨「簡単な話、僕らも同じだからね」
金剛「…why?」
愛宕「今はお互いに元の髪色に染めてるけど、私達は金剛さん以上に髪が白くなってるの。今は染めてるから見せる事は出来ないけどね」
金剛「…じゃあ貴方達は、この気持ちも制御しているのですか?」
時雨「制御…というよりかは抑圧に近いかな。愛宕は無理矢理抑え込んでいるみたいだけど、昔は発散させて何とか抑圧出来るレベルにまで発散してたよ。僕の場合はこの気持ちの矛先を別に向けているだけ…その矛先に今はソイツがいないけどこの気持ちが無くなった訳じゃない。向ける矛先があるから今は普通に振舞えてるってだけだよ」
愛宕「提督がいるから落ちつけているってのもあると思うわ。あの人の傍にいると何だか落ち着くんだもの」
金剛「…愛宕さんは深海棲艦で発散してたのと今の提督だったとして、時雨は矛先にいないと言いましたが、以前はいたのですか?」
時雨「いたよ。じゃなきゃ僕はこうなってないからね」
金剛「当時の時雨はどうやって抑えてたんですか?」
時雨「…何で知りたいんだい?ただ我慢しなかったら良いだけの話じゃないか。君は今までそうやってきただろう?」
愛宕「時雨、流石にそれは…」
時雨「僕達はあの提督が来てから安定してきたんだ。愛宕、君は前任の時からその姿だっただろう?その時の辛さを君は忘れたわけじゃないよね?」
時雨「どういう理屈かは分からないけど、あの提督の傍にいればあの衝動がほとんど起こらなくなる。だけどもし彼が離れてしまったら。なんてことを考えなかったのかい?」
愛宕「……」
金剛「…そんなに、辛いのですカ?」
時雨「んーん、全然辛くないよ?」
金剛「…へ?」
時雨「ただ気持ちに抑えが効かなるだけ。といっても相手を好きになる気持ちが止められないとかそういうんじゃなくて、自分の中にある様々な感情が全て恨みに変わる。それに飲み込まれちゃうんだ」
時雨「まるで癇癪を起した赤ん坊のように暴れて、例え体が疲れていたとしても暴れたい衝動が抑えきれずにひたすら目の前の物を叩いて、壊して、殺すんだ」
時雨「どう?聞くだけでも楽しいと思わないかい?」
金剛「…一つ、聞いても良いですカ?」
時雨「なんだい?」
金剛「そ、その…こうなってしまったら、もう元には戻れないのでしょうカ?」
時雨「知らないね」
金剛「…ハ、ハハッ。そう、なんですネ…」
時雨「…何をさっきからそんなに恐れてるんだい?」
金剛「…怖ク、無いんですか?」
時雨「?何に?」
金剛「な、仲間を撃つかも知れないんデスヨ?大切な姉妹に向けて撃って、それが原因で轟沈させてしまったら…」
時雨「仲間はいずれ死ぬじゃないか。それが戦場だったら猶更早く死ぬ事になる。君がその手で仲間を撃ち殺そうが、敵が君の仲間を撃ち殺そうが何も変わらない。たったそれだけの違いなのに何をそんなに恐れてるんだい?全く理解出来な「時雨っ!」ん?どうしたんだい愛宕。君も何か言いたい事が」クルッ
愛宕「いい加減にしてっ!」ドッ
時雨「へぶっ!?」
…目の前の光景がとても信じられなかった。涙目で時雨を殴り飛ばす愛宕に、不意を突かれたせいでガードも出来ずに壁に吹っ飛んでいく時雨。凄まじい音がして壁に時雨が衝突するが、あまりに不意の出来事だった為に受け身を取れずにぶつかったようで、一秒にも満たないとは時間とはいえしばらく壁で動きが止まり、そのまま重力に流されるように地面に着地する。しばらく体がピクピクと動いていたが、やがて意識を取り戻したのか両手を地面に着き、腕を伸ばすと同時にスッと顔を上げる。その顔は不思議な何かを見るかのような表情で愛宕を見つめており、鼻から少し血が出ている。愛宕がそんな時雨を見つめる顔は失望、あるいは困惑にも近い顔をしていた
時雨「い、痛いなぁ…一体僕が何をしたって言うんだよ…」
愛宕「時雨、貴方さっき自分が何を言ったか分かってるの?」
時雨「へ?それはもちろ…」
問いかけられた質問に答えようとした時雨だったが、口を開いたまま固まってしまった。咄嗟に口を押え、体がフルフルと震えだした。それはまるで怯えているようであり、同時に何かを自覚したように顔が真っ青になっていった。少しずつ怯えが強くなっていったのが目で見て分かるほどに強くなり、時雨の呼吸は少しずつ早くなっていく。これを見た私は未来の自分がどうなってしまうのか。その恐怖心だけが心に残ってしまう結果になった
時雨「…違う。これは僕じゃない、僕じゃない、僕じゃないんだ…」ブルブル
愛宕「…時雨?」
時雨「て、提督は?提督はどこ?何処にいるの?ねぇ、提督は?」
愛宕「時雨、落ち着いて。落ち着いて深呼吸をするの」
そう愛宕が落ち着くように時雨に語り掛けるが全く収まる様子は無い。時雨のぐずり泣きにも近いような声が部屋を包み、次第にその髪が先端から少しずつ白く染まっていく。そんな時雨を優しく抱きしめながら落ち着かせようとする愛宕の姿は、何時の日か見た幼子をあやす人間の母親を連想させた
金剛「…私も、いずれああなるのですね」
愛宕「…えぇ」
金剛「…そうデスカ」
霧島「提督!こちらです!」
「時雨っ!無事か!?」
金剛「…男の声?」
時雨「ふっ、ふぅっ、すっ、ふずっ…」
「…これは酷いな」
愛宕「…申し訳ありません。提督」
「いや、良く呼んでくれた。後は任せろ」
不可解な声がしたと思えば目の前で突然時雨の体が宙に浮いた。その姿は抱かれている赤ん坊の様な姿で、背中を丸めながら口を手で押さえている時雨の姿がそこにあった
目の前で声がしたが誰かは分からない。いや、理解が出来ないといった方が正しいだろうか。明らかに男性の声。鎮守府では聞く事の出来ない男性の声だ。声は聞こえるのに姿が見えず、聞いた傍から頭で理解が出来なくなってしまう。まるで脳が詰まってしまったかのように理解する前に情報が頭の中で停滞してしまい、思い出せそうで思い出せない声として脳が受け入れる。理解出来そうで出来ない声の不気味な気持ち悪さが脳内を駆け巡り、思わず吐きそうになってしまう
霧島「こ、金剛お姉さま!大丈夫ですか!?」
榛名「霧島!一体何があったんですか!?」
霧島「説明は後!とにかく今は金剛お姉さまを医務室に!時雨ちゃんも一緒に連れてきて!」
榛名「へっ?こ、金剛お姉さまって一体どこに…」
霧島「ふざけてる場合!?私の肩で担いでるでしょ!早く逆側を持って!」
榛名「はっ、はい!」
「愛宕も付いて来てくれ。この部屋は妖精さんに任せるから気にしなくていい」
愛宕「分かったわ!」
そうして私は意識はありつつも気持ち悪さで動けないまま医務室に運ばれた。医務室のベッドで横になっても船酔いしたかの様な気持ち悪さは一向に取れず、とにかくこの気持ち悪さから逃げようと目を瞑り、暗闇に身を落とす事にした
「時雨、俺が分かるか?俺の声が聞こえるか?」
時雨「…提督かい?」
「大丈夫…って、聞ける雰囲気じゃないな」
時雨「…愛宕、あの時は止めてくれてありがとう。あと少しで…飲まれるところだったよ」
愛宕「私こそ感情的に殴っちゃってごめんなさい。その、大丈夫?」
時雨「少し骨が折れたかもね。さっきから殴られたところがピリピリするよ」
「…そんな軽口が叩けるなら大丈夫そうだな。急いで運んで損したぞ」
時雨「ふふっ、ごめんね。心配かけて」
「全くだ。俺は仕事に戻るが、お前は今日一日休んでろ。そんな状態で行っても周りの邪魔でしかないからな」
時雨「あ、待って」グイッ
「グェッ!?」
時雨「あ、ごめん」
愛宕「ふふっ、グエッって、蛙みたいにグエッって…」クスクス
「あぁもう、どうしたんだ。何か伝えたい事でもあるのか?」
時雨「そういうんじゃないんだ。その、手を握ってほしくって…」
「…はぁ。満足したら俺は行くからな」
愛宕「時雨だけズルいわ。私も提督の事を握らせてもらって良い?」
「その言い方だと別の意味に聞こえるからやめろ。手なら許してやるから」ギュッ
愛宕「…やっぱり、そこに提督がいるのね」
時雨「姿が見えないとこうも分からないものなんだね」
「いや、普通は分からんぞ。俺でも透明人間は見つけられんし」
時雨「誰だって無理だよ」フフッ
愛宕「…時雨、やっぱり落ち着く?」
時雨「…うん。落ち着く。安心出来ると言ってもいいくらいにはね」
愛宕「そう…」
「…おい、そろそろ行くから手を放せ」
時雨「え、ちょっと待っておくれよ」
愛宕「そうよ。もうちょっとだけ…」
「駄目だ。俺も仕事が溜まってるんだよ」
島風「提督~?電ちゃんに頼まれて書類を持って来たよ?」
「…電、アイツ超能力でも持ってんのか?」
島風「…時雨ちゃんに愛宕さん、提督はそこにいるの?」
愛宕「えぇ。島風ちゃんもどう?」
島風「…!うん!」トサッ
「…よし来い。ただし少し手伝えよ」
島風「二人共、絶対に提督を離さないでね」
「…ちょっと待て。まさか突っ込ん「ドーン!」オッ、ォォォ…」ポフッ
時雨「おっと危ない」グイッ
愛宕「やだ、提督ったら大胆ですね♪」
「う、嘘つけ…島風のやる事分かってて後ろに回り込んだろ…」
島風「ねぇ提督!」
「う…な、なんだ…?」
島風「…寂しかった」ギュッ
「…悪かったな」
島風「…提督、お仕事が終われば時間ある?」
「あぁ。あるぞ。なくても無理矢理作ってやる」
島風「じゃあさ、一緒にお昼寝しよ?ほんの少しで良いから」
「ふむ…三十分だけならいいぞ」
島風「絶対だよ!約束破らないでよね!」
愛宕「…島風ちゃんだけズルいわ」
「じゃあ一緒に寝るか?」
愛宕「…へ?」
「時雨はどうする?」
時雨「うーん、愛宕と一緒ならいいよ」
「だそうだ。島風はそれでいいか?」
島風「いいよ!二人共大事な仲間だもん!」
「島風はいい子だな」
愛宕「…三人相手にするだなんて、前提督もやらなかったですよ?」
「時雨、この脳内ピンクどうしたらいいと思う?」
時雨「前提督の名前を出してきて不愉快だし一人で出撃してもらうのはどうかな?」
「出撃はあれだが一人で何かさせるのはいい考えだな。煩悩も一緒に吐き出してくれると良いが」
愛宕「じょっ、冗談ですから~!」
榛名「…羨ましいです」
霧島「ああやってふざけあってるのが?」
榛名「それもあるんですけど、やっぱり提督からあそこまで触れ合ってくれるのが羨ましいと思います」
霧島「提督は一人しかいないのに対して私達は何十人といるのよ?一人ひとり相手にしようってのも大変なんだから仕方ない事だって割り切るしかないわ」
榛名「それでも羨ましいんです。頭では理解しているつもりですけど、気持ちはそうじゃありません」
霧島「結構グイグイ来るわね…一体誰に似ちゃったのかしら?」
榛名「…そういえば霧島、あの人…人?ってあの男の提督さんなんですよね?」
霧島「…?えぇ。そうよ」
榛名「…それじゃあ、ここで眠っている提督さんは金剛お姉さまなのですか?」
霧島「…どう見たって金剛お姉さまでしょ?何を言ってるのよ」
榛名「いえ、その…私にはどうしても提督さんにしか見えないんですけど…」
霧島「…何を言ってるの?どこをどう見たら金剛お姉さまじゃなくて提督に見えるわけ?」
榛名「えぇっと…確認したいんですけど金剛お姉さまってカチューシャを付けてますよね?今もちゃんとついてますか?」
霧島「えぇ。しっかりとあるわよ」
榛名「…すみません。少し失礼しますね」ナデナデ
榛名「…ホントにカチューシャがある。しかもこの形は金剛お姉さまの…」
霧島「えっと…榛名?貴方大丈夫?」
榛名「…私には金剛お姉さまが提督さんに見えるんです。霧島は違うのですか?」
霧島「はぁ?」
榛名「いえ、あの!本当なんです!本当にそう見えるんです!」
霧島「……」ジトー…
榛名「う、嘘じゃないです!ホントにホントなんです!」
霧島「…おかしなことを聞くようだけど、あそこで艦娘達と触れ合ってる提督は見える?」
榛名「…いえ、全く」
霧島「…そう」
榛名「…何かわかったのですか?」
霧島「私達の目がおかしくなったこと以外は全く分からないわよ。私はちゃんと金剛お姉さまや提督の姿が分かるのに、何で榛名が理解出来ないのか不思議でならないわ。艦隊の頭脳を持ってしても全くね…」
榛名「榛名以外に提督の事や金剛お姉さまが分からない人はいるのでしょうか?」
霧島「流石にいないんじゃないかしら?私達のどっちかがおかしくなったならまだ分かるけど、流石に艦隊全体なら騒ぎにならなきゃおかしいもの」
榛名「で、ですよね…」
霧島(これが起こってるのは私達だけ、なんてことはないと良いのだけれど…)
曙「ねぇ、あの噂聞いた?」
潮「提督が見えないって噂?」
曙「そう。しかも存在そのものが分からないらしいわ」
潮「へ、へぇ~…そんな噂があるんだ」
曙「…その反応を見るに知ってたの?」
潮「う、うん。少し前に電ちゃんからね」
曙「じゃあこれは知ってる?それを利用して色々と暗躍してるって噂は?」
潮「え、えぇ…流石にそれは嘘なんじゃないかなぁ?」
曙「それがそうでもないらしいの。電が何故か書類を提督さんの部屋に持っていってるし、たまに提督さんの部屋から夜な夜な変な声がするって噂よ?」
潮「え…?それ、ホント?」
曙「ホントよ!私も聞いたんだから間違いないって!」
潮「…何でそんな時間に曙ちゃんは部屋から出てたの?」
曙「そんなの決まってるじゃない!クソ提督の弱みを握る為よ!」
潮「えっ!?」
曙「何よ。そんなに驚く事?」
潮「だ、だって、曙ちゃんはいつも提督の事をクソ提督って言ってたから、寧ろ関わろうとしないものばかりだと…」
曙「…確かにアイツはクソ提督よ。提督としての勉強を何も習ってない一般人だし、それ以前に常識が無い人間よ?仕事も夜遅くまでやらないと出来ないのに、それを手伝おうとしても自分一人でやろうとして…」
潮「…ふふっ」
曙「な、何よ?」
潮「曙ちゃんはやっぱり優しいなーって思ったの。やっぱり曙ちゃんは変わらないなぁって」
曙「なっ、何を聞いてそんな事思ったのよ!?」
潮「だって提督の心配してるでしょ?私も提督の艦娘だからある程度の事は知ってるつもりだけど、夜遅くまで仕事して自分で終わらすだなんて、ここに来るまでホントか疑わしかったもん」
曙「えっ?普通仕事ってそういうものでしょ?」
潮「?うん、そうみたいだね?」
曙「???」←女提督の仕事ぶりを見て育ってきた
潮「?」←前任が仕事を大淀に押し付けてるのしか知らない
曙「…潮、貴方はもう少し常識を学んだ方が良いわ」
潮「へ?」
不知火「潮さん、曙」
陽炎「やっほー。二人共」
潮「あ、不知火さんに陽炎さん」
陽炎「陽炎で良いって~。不知火の事もぬいぬいって呼んであげていいよ♪」
不知火「ぬいぬいじゃありません。不知火です」ブスッ
曙「二人共、今上がり?」
不知火「はい。一応一通りの捜索は着いたので帰投したんです」
潮「…それで、鳳翔さんは?」
陽炎「…何も見つからなかったわ。痕跡も、何も…」
曙「それじゃあ何?鳳翔さんは攫われたとばかり思ってたけど、本当に自分の意志出て行ったって事?」
陽炎「そうなるわね。あの手紙も嘘じゃないみたい」
不知火「…加賀さん達が言ってた事って、ホントだったのでしょうか?」
潮「加賀さん達?」
陽炎「…えっとね、私達もさっき立ち聞きしただけなんだけど…」ヒソヒソ
加賀『瑞鶴、本当なの?』
瑞鶴『…間違いないわ。妖精さん達が見たんだって』
加賀『それを証明出来る方法は?』
瑞鶴『…無い、わ』
加賀『……』
瑞鶴『でも妖精さんが嘘をつくとは思えない。それは私が一番良く分かってる』
加賀『…提督に報告するわよ』
瑞鶴『ほ、本気なの!?』
加賀『貴方の気持ちは分からない訳ではないわ。でもね、感情に流されて皆を危険に合うかも知れないのは頂けないわよ』
瑞鶴『…わ、分かったわ』
加賀『行きましょう。事態は一刻を争うわ』
陽炎「大体こんな会話だったわ」
潮「…話の内容と加賀さん達が鳳翔さんの捜索をしていたのを鑑みて、鳳翔さんに関する事だと考えて良いのかな」
曙「…でも、妖精さん達は何を見たのかしら?瑞鶴さん達が提督に報告する程の何かを見たって言うのは明らか何だけど…」
不知火「…聞いてみませんか?」
曙「聞くって…提督に?」
不知火「はい。流石に気になりますし、鳳翔さんが何故ここを出て行ったのか提督ならご存知かも知れません」
曙「…そういえば鳳翔さんが消えたのに取り乱した様子は無かったわね。今思えばあれは鳳翔さんが失踪するのを知ってたって事?」
陽炎「それなら何で提督はそれを未然に防ごうとしなかったのよ。それはそれでおかしな話だわ」
潮「とりあえず聞きに行ってみない?もしかしたら何か分かるかも知れないし」
曙「そうね、行ってみましょうか」
陽炎「…こんな人数で押しかけて大丈夫かな?」
不知火「陽炎、早く行きますよ」
陽炎「あー、はいはい」スタスタ
・・・少女移動中・・・
ドア コンコン
陽炎「駆逐艦陽炎です。提督はいらっしゃいますか?」
女提督「入って良いわよ」
陽炎「失礼します」ガチャ
女提督「…随分たくさん来たわね。何の用かしら?」
不知火「鳳翔さんに関する事で聞きに来ました。提督ならば何かご存知かと思ったので」
女提督「…残念だけど今は捜査中よ。詳しい理由は何も知らないわ」
陽炎「では加賀さんと瑞鶴さんはどちらでしょうか?確かあの二人は鳳翔さんの捜索に志願してましたよね?」
女提督「あの二人は休んでるわ。彼女達に聞いてどうするの?」
陽炎「鳳翔さんについて何か知った様子でしたので聞こうと思っただけです。何か問題でもありますか?」
女提督「…はぁ。明日になるなら皆知るし、遅いか早いかの問題か…」
女提督「良い?話しても良いけど絶対に他言はしない事。明日私の方から正式に発表する予定だけど、その時に混乱が起こるだろうから皆を落ち着かせる事に協力する事。代表として陽炎に聞くけど、この二つを守れる?」
陽炎「…はい。大丈夫です」
女提督「よろしい」
女提督「軽空母鳳翔は深海棲艦に寝返りました。深海棲艦に同行するように海を移動するのが瑞鶴の艦載機で確認。拘束や戦闘跡等も見られなかった事からまず断定して良いと思います」
曙「えぇっ!?」
潮「曙ちゃん、静かに」
不知火「…では、鳳翔さんと戦わなければならないのでしょうか?」
女提督「そうなるわね」
不知火「…了解しました」
女提督「では各自待機していなさい。貴方達はこの後の任務は特に無いから休んでていいわよ」
全員「はっ!」ビシッ
潮「…色々とありがとうございました」
女提督「…お別れは済ませておきなさい。今回の戦闘は勝利すら危ういわよ」
潮「一つ、お聞かせ願えませんか?」
女提督「何かしら?」
潮「私達はどこまで関わって良いのでしょうか?」
女提督「…それに関してなんだけど、肝心の提督が医務室で寝込んでるのよ」
潮「え!?」
女提督「だから正直私が判断していいものか悩んでるの。貴方達は今はここで活動しているとはいえ、元を辿ればあの提督の艦娘よ。だから全てを私が決める訳にいかないし、それをしちゃったら提督の勉強にならないもの」
潮「…勝利すら危ういと言いましたよね?そんなに危ない状況なのに、この期に及んで勉強と言えるのはどうしてですか?」
女提督「簡単な話、こんなのは提督として活動している以上いつかは出会う事態よ。相手が強い、物資が少ない、味方は既に負傷者ばかり…なんてのはね」
女提督「今回はそんないくつもある状況の一つでしかない訳。こんなのを何度も乗り越えないと提督として生きていくのは不可能よ。絶対ね」
潮「だから勉強だと?」
それを考えて怒りが湧いた。提督が勉強で艦娘を扱う時の答えなんか決まっている。それは相手の力量を計る事。それをいつも私は見送っていた。それの答えを既に知っていた。だから怒りが湧くのは当然の事だと言えるだろう
女提督「…その顔をやめなさい」
潮「私達は勉強道具だとでも言うのですか!?壊れたら捨てられるようなそんな存在なんですか!?」
曙「ち、ちょっと潮!落ち着きなさい!」
潮「落ち着ける訳ないよっ!」
そうだ。落ち着ける訳がない。勉強の答えとなっていった艦娘達の最後を私は良く知っている。だから落ち着ける訳がない。海の上で深海棲艦と戦った事もない奴にそんな事を理解出来る訳がないんだから
潮「当てずっぽうに艦隊を組まされて!私達じゃ到底出来ない海域に進められて!そうやって艦娘を捨てるのがそんなに好きなんですか!?もしくはそれが目的だとでもいうのですか!?」
潮「いや、きっとそう!そうやって私達を捨て艦にして敵の戦力をただ削らせるだけの道具みたいに使って沈んだらソイツが悪い。生きててもまた捨て艦として戦場に駆り出すの繰り返しで戦いが終わるまで続ける!貴方だって結局はあの提督とおな「落ち着け!」」
そこまで喋ると肩を強く掴まれた。目の前には怒りに満ちた目をしている曙がおり、その目を見て少しピクッと体が震えた。何故こんなに怒っているのかが分からないからだ。私はそんな身勝手な事をされる立場の者の気持ちを分かってもらいたかったのに、怒りをあらわにしている人物のせいで何か間違えたのかと怖くなってしまった
曙「私達の提督がそんなことするわけないでしょ!貴方の提督だってそんなことする人じゃないでしょ!?少しは落ち着いて考えなさい!貴方はもう前の提督の艦娘じゃないんだから!」
潮「…あっ」
…そうだ。もう前任はいない。ましてや彼がそんなことを考える人物だとは思えない。そう信じていた筈なのに自分の思い込みで酷い事を言ってしまったと気づくのに時間は掛からなかった
女提督「…ま、気持ちは分かるわ。実際提督である私達も状況によっては手探りになってしまうし、勉強道具だと思われるのもしょうがない事。だけど取り乱しそうな時程冷静でいなさい。常に冷静であれって言う訳じゃないけど、そうやって感情に流されるままだと思ってもない事を言ったり、嫌な扱いを受ける事だってあるのよ」
潮「…申し訳ありません」
女提督「別に気にしないで良いわよ。貴方達の境遇を考えたら仕方の無い事かも知れないけどね」
不知火「…ところで司令、何故あちらの司令が倒れたのか知らないのですか?」
女提督「急に倒れたって事を比叡から聞いただけで詳しい事は知らないけど、多分ご飯でも食べてなかったんでしょ。以前もそれで熱中症になってたみたいだし」
不知火「ならば食堂で食事でも貰って持っていきましょう。確か今日の当番は第六駆逐隊でしたよね?」
陽炎「今日は金曜日だからカレーの日よね?今から楽しみだわ~!」
曙「…比叡さんみたいにあんなカレーが出来たりしないかしら」
全員 ビクッ
曙「今でも忘れないわ。当番制に決まった初日の晩御飯…」
陽炎「…比叡さんって料理は出来るのにカレーだけは天災的な腕を発揮するわよね」
不知火「あれを一口食べた人達は、皆…」
女提督「資材の消費四桁、高速修復剤…うっ、頭が…」ズキッ
潮「だ、大丈夫です!電ちゃんがいますから!」
曙「電って料理出来るの?」
潮「うん!大本営で長い事過ごしていた時に学んでたらしくて凄く上手なの!提督がいない日は電ちゃんが作ってくれてたんだけどホントに美味しくって…!」
不知火「それは期待できそうですね」ゴクッ
陽炎「よーし!そうと決まれば早速行くわよ!目指すは食堂!全員ついて来てね!」ダッ
不知火「陽炎…さては一人でカレーを独り占めする気じゃ…!」
曙「なっ!そんな事させないわよ!潮、早く付いてきなさい!」ダッ
潮「み、皆!ちょっと待って~!」
女提督(…病人にカレーって大丈夫なのかしら?)