この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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ゲゲゲの鬼太郎の映画があまりにも良すぎて小説が三作品出来てしまったので投稿します(pixiv掲載当時)

アニメや漫画の両方を殆ど知らない自分ですがそれでも十分楽しめる作品でしたし、夜遅くに映画館に出向いたのも功を奏したと思います。まだ見てない人は夜の時間帯でやってるのを観に行くのがお勧めです!


次の仕事場へ

「さて、そろそろ次の鎮守府に行くか」

 

女提督「あぁ。確か元師に頼まれた鎮守府の見回りってやつね」

 

「はい。本来私がすべき仕事はそちらになりますから」

 

女提督「にしてもその姿でねぇ…本気なの?」

 

「それが私の仕事です」

 

大淀「…提督、せめて元の姿に戻ってからでも良いのでは?そのお姿になってそこまで日が立ってませんし、それにまだ熱も引いてないでしょう」

 

「駄目だ。流石に仕事を先延ばしにし過ぎているし、そろそろ元師から怒られそうなんでな」熱に関しては俺の自己管理不足だ

 

女提督「まぁ…ね。貴方も多少は業務も早くなってきたみたいだし、その点に関しては及第点をあげるわ」あ、といっても大淀の助けを考えてよ?

 

「提督、私の鎮守府の哨戒に関してですが…」

 

女提督「あ、それに関しては安心して。私達の方でやっておくから」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

「大淀、現在俺達の鎮守府を哨戒している者達を除き、全員鎮守府にいるか?」

 

大淀「はい。現在は皆休んでいると思われます」

 

「分かった。すまないが放送のスイッチを入れてくれないか?」

 

 

その声に快く了承をし、カチッと音を立てて放送を知らせる音が鳴る。マイクの近くに変声期を持っていき、召集を掛ける声が鎮守府に鳴り響いた

 

 

放送『現在鎮守府にいる私の艦娘達に告げる。今から五分後に作戦室に集まる様に。今後についての話をする』

 

 

大淀に振り向いて頷くと、放送のスイッチを切って終了を知らせる音をが鳴った。それが鳴りやむと同時に鎮守府では艦娘達の話し声が聞こえてきた

 

 

女提督「…部屋を貸すのは良いんだけど、どうやっていくの?」

 

「…あ」

 

大淀「私が運びますから…」

 

「すまないねぇ…」

 

 

 

電「全艦娘、召集完了致しました」

 

「あー、良く来てくれた。次に向かう鎮守府なんだが、少し前任との繋がりがあると思われる者の鎮守府へ向かう」

 

艦娘達 ザワッ

 

「言いたい事はあるだろうが、これは良い機会だと思え。お前等を地獄に落とした奴に辿り着く一歩なんだと考えれば、少しはやる気が出るだろ?」

 

龍田「…提督、一つ良いかしら?」

 

「ん?」

 

龍田「…私ね、もうあんな奴の事を忘れた方が良いかな~って思うの」

 

天龍「はぁ!?」

 

龍田「だって、ね…こうして過ごして分かった事があるんだけど、たまに今のこの瞬間が幸せだ~って感じる事があるの」

 

龍田「だから…その…」

 

 

少し申し訳なさそうな顔をしながら龍田は言いどもる。龍田はおそらく自分の中で一線を引くことが出来たのだろう。彼女は過去と対峙するのではなく、回避する方法を取ったのだ

 

恐らく彼女はここに留まっても今まで通り深海棲艦と戦闘をし、仲間達と共に海を取り返そうとするはずだ

 

だがそれでも何処か様子がおかしい様子は見れた。嘘は言っていないが、本当の事も言っていない。その様な印象を受けた

 

 

「いや、言わんとしている事は分かった。そういうことならお前はここに置くのを考えよう」

 

天龍「い、良いのかよ!?」

 

龍田「…ありがとう。提督」

 

「お前等も龍田の様に残りたかったら言ってくれ。そうなるとお前等でウチの鎮守府を哨戒することになると思うが、それ以外は今までここでやってきた事とそう変わらない筈だ」

 

大淀「…提督、もしそれで私がここに残りたいと言ったならどうするおつもりですか?」

 

「別に、置いていくよ。これが最後のチャンスかも知れないんだからな」

 

島風「さ、最後?」

 

 

島風が自分の言った言葉に疑問を訪ねた。この言葉の意味を理解しているのはこの中でも極少数であろうが、それを理解している人物は皆の目前に立っている

 

 

「龍田、お前がここに残りたいと言ったのもそういう事だろう。このまま俺に付いてくれば一線を越えると分かっての事だな?」

 

龍田「…はい」

 

夕立「ど、どういうこと?もっと分かる様に説明して欲しいっぽい!」

 

「良いか?俺等の仕事は鎮守府の見回りだ。当然場所によってはお前等がいた鎮守府と同レベルの鎮守府に行くことがあるかも知れない。そしたら当然ヤバい提督を相手にするだろう」

 

「そうなったら最悪そいつを殺すところまで行くかも知れん。お前等は前任に対しては殺意があるから大丈夫だと思うが、それ以外の人間を殺す事になった場合はお前等に出来るのか?」

 

天龍「そんなの決まってんだろ!ソイツが艦娘にやったように、ソイツの顔を原型が無くなるくらいにぶっ壊してやるんだよ!」

 

時雨「男としての機能を無くすのも良いかもね。あれのせいでトラウマになった人だって何人もいたんだ」女の場合も同様で良いかもね

 

「まぁそういうと思ったよ。俺もそのつもりで提督をやってるようなもんだからな」

 

「だが…本当にその一線を越える事がお前等に出来るのか?」

 

天龍「そんなの…!」

 

時雨「出来るに決まってるさ。その為に僕はこんな姿になってまで生きているんだからね。勿論、愛宕も」

 

 

そう言いながら髪を白く染めていく時雨。髪と肌が白く染まり、時雨の面影はあれど、人型の深海棲艦を連想させる姿となっていた

 

その姿に皆が驚き、再び過去の出来事に怒りを抱き始めていた

 

 

「それを踏まえて言わせてもらう。お前等じゃその一線を越える事は出来ん」

 

時雨「な、なんで…!」

 

 

時雨が言い終わる前に、服の袖の中が見える形で手を時雨に向け、先端に吸盤の付いたおもちゃの弾を時雨の額目掛けて当てた

 

 

時雨「うわっ!?」

 

「ほら、まだまだいくぞ」

 

 

すぐさま自身の両手で巨大とも言える拳銃を持ち、時雨に向けて発砲する。それに驚いた時雨は突然の出来事に体を動かす事が出来ず、発射される弾丸に何発も命中した

 

発射した弾丸はBB弾ではあったが、人に当たると何も対策していない人間に痣を作る事が出来る威力ではある。艦娘とはいえ、時雨の体にぶつかった場所からは少しだけ蚊に刺された様に赤くなっていた

 

 

時雨「な、何するんだい!?」

 

「…時雨。それがお前じゃ一線を越える事が出来ない理由だよ」

 

時雨「はぁ…!?」

 

「お前は人を簡単に傷つける事が出来ない。所謂半端者なんだ」

 

時雨「は、半端って…!そんな事は「無いと言えるのか?」…っ!」

 

「お前は優しすぎる。少し優しくされた人間に反撃さえ出来ない様なら前任に復讐なんてのはやめておけ。龍田みたいに一線を引くのも手だぞ」

 

愛宕「…なら、提督を傷つける事が出来たら良いんですね?」

 

「あぁ。それが出来るならお前のやる事は最後まで止めはしない。最悪殺してくれても構わんからドンと来い」

 

電「司令官さん、流石にそれは『バンッ』」

 

 

天井に向けて銃弾を放つ。それに周りはビックリしつつも、ゆっくりとコチラに振り返った

 

 

電「…本気、なのですね」

 

「電、邪魔はするなよ」スクッ

 

愛宕「…では、覚悟してくださいね」ガシャン

 

 

愛宕が主砲の砲身をコチラに向け、対してこちらは愛宕の目に照準を合わせた。互いに仕掛けるなら後数瞬…というところで

 

 

天井 ポタポタ

 

「…ん?」クイッ

 

愛宕「…雨漏り?」

 

「…っ」キュッ

 

龍田「うわっ、この匂いって…」

 

「…天龍」チラッ

 

天龍「いやだよ!どうせ刀で天井を突き刺せとか言うんだろ!?」ブンブン

 

「じゃあ…」チラッ

 

龍田「わ、私も嫌です!」ブンブン

 

「…おい。天井にいる奴。オイル漏らしてないで出てこい」

 

天井 ガタガタッ

 

「…ケツに弾でも喰らうか?」

 

天井「で、出ます!出ますからちょっと待って!」

 

 

川内「…酷いよ。せめて着替えさせてくれない?」

 

「…大淀。機密漏洩ってどれくらい罪重いんだっけ」

 

大淀「解体ですね」

 

「良し」ガチャン

 

川内「わぁ~!待って!謝る!謝るからぁ!」E.手錠

 

「…で、何で聞いてた」

 

川内「そ、その前に着替えさせてくれると…『バンッ』ひぃっ!」

 

「早くしろ。次は当てるぞ」

 

川内「し、心配だったから見に来たの!悪い!?」

 

「…はぁ?」

 

 

あまりに突拍子も無い事を話し出す川内、ふざけているのかと少し眉間にしわが寄り始めた所で、背後から誰かに顔を触られた

 

 

潮「提督、赤ちゃんがしちゃいけない顔してますよ」ムニムニ

 

「お、おぅ。分かったからムニムニするのやめてくれ」

 

山風「…良いなぁ」ボソッ

 

「…んで?ホントはどうしてなんだ?」

 

川内「は、話を聞いてくれるの?」

 

「しょうも無い事だったら電撃をくらわす」

 

川内「て、提督からの指示だよ!何かと問題しか起こさない奴だから助けてやれって!」

 

「…大淀は聞いてるか?」

 

大淀「一応聞いてはいました。ですが志願者でなければ同行させるのは難しいと言っていましたし、そうなった場合は異動してもらうと…」

 

「…聞いたか。異動だってよ」

 

川内「い、異動で良いよ!そのことも知らずに提案した訳じゃないんだから!」

 

「……」

 

龍田「…川内、提督がやろうとしてることは地獄に向かって歩くようなものよ?私達艦娘は提督についていかなければ生きていくの何て不可能に近いわ。それでも貴方は提督について行くつもりなの?」

 

川内「…うん。意志は変わらないよ。こんなに不安にさせる人がいたら私も仕事が手に付かないって」

 

龍田「…ふふっ。確かにそうね」クスクス

 

「…はぁ。分かったよ」

 

川内「え、いいの!?」

 

「去る者は追いかけまわし来る者は拒まずが俺のやり方だからな。龍田の様に抜けたければそれでも構わんが…まぁ、逃げられるとは思うなよ」

 

龍田「…えっ?」

 

「本音も話そうとせん奴が逃げれると思うな?俺は何かを隠されるとそれが気になって仕方がない人間なんでな」

 

天龍「いや、お前…さっきは龍田を置いていくって…」

 

「スクロールバー戻して良く見ろ。考えるって言ってるだろ?」

 

天龍「あっ!?」

 

龍田「…逃がしてくれないんですね」

 

「当たり前だ。お前が傍にいないと寂しいんでな」

 

龍田「えっ?」

 

艦娘達「はっ?」

 

「ん?どうした?」

 

龍田「いや…あの…//」

 

電「…愛人でも作るのです?」

 

「はぁ…?ただ龍田がいなきゃ寂しいと思っただけだが…」

 

天龍「…そのまんまかよ!ややこしい事言ってんじゃねぇ!」

 

龍田 プルプル

 

暁「…せめてもうちょっとレディの扱いを覚えてほしいわね」ナデナデ

 

「えぇ…」

 

龍田「…もうっ」

 

「ま、川内はここの奴等とお別れを済ませておけよ。二度と帰れないかも知れないんだからな」

 

川内「あ。ならさ、曙も連れて行っていい?」

 

「本人が行きたいって言うならな」

 

川内「だってさ。曙」

 

ドア「分かったわ」

 

 

川内が呟く様にこの場にいない曙に向かって声を出すと、ドアの向こう側で曙の声が聞こえた。ノックされたドアが開くと曙が立っており、その隣に女提督も敬礼の形で直立していた

 

 

「…お早い準備の事で」

 

曙「何よ。悪い?」

 

女提督「曙から頼まれてたのよ。貴方が言い出す機会を待ってたのよね」

 

「それをさせる理由は?」

 

女提督「赤ん坊の心配をしちゃいけないわけ?」

 

「…分かったよ」

 

川内「…やけに曙には素直だね」

 

「どうせ監視目的で曙を寄こしたつもりだろ。俺が何か怪しい動きをしたらすぐさま報告出来るようにな」

 

女提督「…その通りだけど、貴方の心配しているのも事実よ。曙以外の皆もそう思っているわ」

 

「お世辞は良い。それより今後の話だ」

 

「今から数日後にそこへ向かう。全員荷物をまとめてここを出れる準備をしておくんだ。別れもちゃんと澄ませておけよ」

 

艦娘達「はっ!」

 

女提督「じゃあやる事もやったみたいだし、私はこれで」

 

「あ、提督」

 

女提督「何?」

 

「今までありがとう。お世話になりました」ペコッ

 

艦娘達「お世話になりました!」ビシッ

 

 

その場にいる皆が彼女に対して敬礼をし、感謝の意を伝えた。ある者は涙ぐみ、ある者はニッコリとした笑顔で答え、心から感じている感謝を女提督に伝えた

 

 

女提督「…ふふっ。気を付けてね」

 

「はい!いってきます!」

 

 

 

荒潮「それで、出発する事になったの?」

 

曙「えぇ。手伝わせてごめんね」

 

荒潮「良いのよ。これくらい手伝わせて」

 

霞「全く…どういう風の吹き回しなの?」

 

満潮「…意外ね。アンタならてっきり私達の提督と一緒にいるかと思ったわ」

 

曙「…そのつもりだったんだけどね、どうしてもアイツが心配なのよ」

 

朝潮「そうなんですか?かなり嫌っていたように見えたので…」

 

曙「…だってアイツ、死にたがりじゃない」

 

満潮「…そうね」

 

曙「アイツさ、ここに来てから何回死にそうな目に合ってるんでしょうね」

 

霞「…そのうちの一回は私よ。しかもそれを許されたわ」

 

朝潮「…自殺願望でもあるのでしょうか?」

 

曙「…無いとは言い切れないわね」

 

荒潮「考えても仕方ないわ。あの人の考える事なんか誰だって分からないわよ」

 

荒潮「一つだけ言えるとしたら、あの人が提督って事だけよ。私達の事を考えてて、必要とあるなら部下と引き換えに勝利を引き込もうとし、そこに自分も入ってるって感じね」

 

曙「…」

 

荒潮「悪いように考えるなら、自分も含めてゲームの駒の様にしか思っていない人かも知れない。どうせ何とかなるって考えてる楽観主義者なのかもしれないわ」

 

荒潮「でもね、彼の優しさだけは本物だと思うわよ?他がどれだけ酷く見えてても、あの人の優しさだけは変わらないはずだわ」

 

満潮「まぁ…ね…」

 

霞「…ふんっ」

 

朝潮「ふふっ♪」クスッ

 

曙「…ま、その本人はその優しさのせいで赤ん坊になっちゃってるみたいだけどね」

 

朝潮「そういえば、次に向かう鎮守府の詳細は聞いていないのですか?」

 

曙「…もしかしたらあっちの前任と繋がっているかもしれない人物の鎮守府に行くだけよ」

 

朝潮「…その人の話聞きました。何でもかなりの人間だったと」

 

満潮「悪い意味でだけどね。結構酷い目にあったって聞くし、大丈夫なのかしら?」

 

霞「ま、アイツ等なら心配ないんじゃない?何かあってもあのクズが身を張って守るでしょ」

 

曙「私の立場から言わせてもらうと、そんなことはさせないわよ。絶対にね」

 

満潮「…でも気を付けた方が良いわ。アイツ、赤ん坊のハズなのに頭まで退化してないから提督としての意地を張って何かしかねないわよ」

 

曙「…分かってるわよ」

 

ドア『失礼します。駆逐艦曙はいますか?』

 

曙「いるわよ。入って」

 

不知火「失礼します」ガチャ

 

陽炎「やっほー」

 

曙「陽炎まで…一体何の用?」

 

不知火「あの…これを司令官に渡してくれませんか?」ガサッ

 

曙「なにこれ?」

 

陽炎「あの提督が喜ぶかと思ってね。行った先でも私達の事を忘れないようにって思いを込めたプレゼントよ」

 

不知火「か、陽炎…ホントにあれで良かったんでしょうか?」

 

陽炎「大丈夫だって!ちゃんと提督さんは喜んでくれるわよ!」

 

曙「…」ゴソゴソ

 

???『夜戦装備一式』

 

朝潮「…これは//」

 

荒潮「…//」

 

満潮「ス、スケスケ…//」

 

霞「アンタらねぇ…!」

 

曙「…霞、待ちなさい」

 

霞「えっ?」

 

曙「不知火、貴女に一つ聞きたい事があるの」ニッコリ

 

不知火「なっ、なんでしょうか?」ブルブル

 

 

怖い。自分の中に芽生えた確信を持っているこの感情。それの原因となった人物は目の前で般若の様な顔をしながら、私達(ほぼ陽炎)が考えたプレゼントの中身を手に持っている

 

例えるならばこれからお説教をされる子供と親。子供は当然私達二人で、親は目の前の人物を表す言葉とするには丁度良いだろう

 

 

曙「これを渡そうと決めたのって…誰か教えてくれる?」

 

不知火「陽炎です!陽炎がこれさえ送ればいずれ使う機会が遠からずあるはずだと!その時に当然私達に感謝するはずだからと、陽炎の”独断”で用意したプレゼントです!」

 

陽炎「え、ちょっと」

 

曙「そうなのね。私はてっきり、貴女もその気で送ったんじゃないかと思っちゃって…」疑ってごめんね?

 

不知火「は、はは…別に気にしてませんから…」

 

曙「…それじゃあ、見逃してほしかったら陽炎を捕まえてくれる?」

 

 

その言葉に反応し、いち早く行動したのは陽炎だった

 

それは本能とでも呼ぶべきレベルで危機を察知し怯えて逃げ出す鼠の様な早さだったが、それに反応した狩人がいた。曙である

 

彼女はすぐさまドアの前に立ち、陽炎の退路を塞いだ。脱出路である出口を完全にふさがれてしまい、体の動きが一瞬硬直したのを私は見逃さず、背中から抑え込みの形で陽炎を取り押さえた

 

 

曙「良くやったわ。ホントに貴方が選んだ訳じゃないみたいね」

 

陽炎「あ、曙?その…ちょっと目が怖いって言うか…」アハハ…

 

曙「大丈夫よ。痛くしないから♪」

 

陽炎「や、あ、ま、待って!服を脱がさないで!」

 

朝潮 ゴクリ

 

霞「うわぁ…」

 

満潮「…まるでアニメみたいにスポスポ脱がされていくわね」

 

荒潮「えっ、あっ…?」プスプス

 

「不味いな。荒潮が事態の展開に追いついてない」カシャ

 

霞「荒潮、大丈夫?」

 

荒潮「え、えぇ…大丈夫よ」

 

山風「ほら、これ使って」スッ

 

朝潮「しかし、陽炎たちはあんなものを一体どこから…?」

 

満潮「以前愛宕さん達と出かけてたのを見たわよ。多分その時に見つけたんじゃないかしら?」

 

朝潮「だからといって…あ、あんな…//」

 

霞「…ん?」チラッ

 

山風「提督はああいうのが好きなの?」

 

「良く分かんないんだよな。全く興味がないって訳じゃないけど」カシャカシャ

 

曙「不知火。陽炎の足をこちらに向けてくれる?」

 

陽炎「あ、やぁっ…」

 

 

そう言われて私は陽炎の太ももから腕を回し、股を開かせる形で曙に向けた。その時の陽炎の顔は羞恥で一杯という顔をしており、ドキドキと鼓動が強く脈打った様に感じた

 

 

曙「ふふっ。良い子ね」

 

陽炎「も、もういいでしょ…?こんな下着だって履いたんだから…」プルプル

 

曙「最後に一枚写真を撮ってあげるわ。それならアイツだって忘れる事ないでしょ」

 

「あ、じゃあそれ撮ってやるから、曙もせっかくだし加わって」

 

曙「えー、私も?」

 

「ほら、不知火も陽炎に寄ってくれ」

 

不知火「あ、は、はい…」

 

「はい、チーズ」カシャッ

 

曙「どう?綺麗に撮れた?」

 

「んー…なんか物足りないなぁ…」

 

陽炎「こ、ここまでやったのに!?」

 

「あ、陽炎がニッコリ笑顔か変顔でダブルピースしてくれたら「司令官さん?」ひえっ」

 

電「ちょっとお話なのです」ニッコリ

 

「はいぃぃ…」ガクガク

 

山風「あ、お、お邪魔しました…」ガチャ

 

陽炎「た、助かったぁ…」

 

霞「…あんた達、気づいてないの?」

 

曙「えっ?」

 

不知火「…あっ」ボッ

 

荒潮「サラッと提督がやってきてたわねぇ」

 

曙「…嘘」

 

満潮「…いつからいたか分かる?」

 

朝潮「陽炎さんが逃げ出そうとした後位に来てました」

 

曙「…じゃあ、私が脱がしてたのも?」

 

朝潮「見られてました。何でしたらカメラで撮られてましたよ」

 

曙「…ちょっと用事思い出したから行ってくるわね」ヒクヒク

 

荒潮「いってらっしゃ~い」ヒラヒラ

 

陽炎「…私、もしかして撮られ損?」シクシク

 

満潮「まぁ…涙拭きなさい」ヨシヨシ

 

 

 

11:50

 

 

体温計『ピピピピッ』39.4℃

 

「…寝るか」

 

ドア ガチャ

 

「…誰だ?」

 

山風「えっ…」ビクッ

 

「…なんだ、山風か。どうした?」

 

山風「あ、えっと…」オドオド

 

「また夜の散歩か?流石に今は勘弁してほしいんだが」コホッ

 

山風「…」シュン

 

「…これから行く鎮守府はお前が連れて行こうとしている鎮守府だ。だから連れて行こうと思うな」

 

山風「えっ…」

 

「お前の事は妖精さんから聞いたよ。俺の姿を元に戻す為にそこの鎮守府へ連れて行ってくれようとしたんだよな?」

 

山風「…」コク

 

「んで、内緒で連れて行った理由は、誰かに話したら俺を元に戻せないかも知れない。そう言われたんだな?」

 

山風「…!」コク

 

 

核心に触れた。そう確信出来る程に山風は動揺しており、その目線はあちこちに飛んでおり、その顔からは怒られるのを恐怖する子供の様な。そんな印象を受けた

 

 

「安心してくれ。別に怒る訳じゃないから」コホッ

 

山風「…でも」

 

「良いか?今回あそこに行くことになったのはたまたまだ。別にお前のせいで行くわけじゃない。それだけはハッキリと言っておく」

 

山風「…うん」

 

「…早く部屋に帰りな。夕立が心配するぞ」

 

山風「あ、うん…ありがと。提督」ガチャ

 

「おやすみ」ヒラヒラ

 

山風「お、おやすみ」ヒラヒラ

 

ドア バタン

 

「…ゴホッ」フラッ

 

 

部屋から山風を見送り、ドアが閉まってから数秒経って体が平衡感覚を失ってベビーベットの上に倒れる。目を開いて天井を見ようとしても、揺れ動くように電球が見えて完全に不味い状況だというのが分かった

 

 

「…流石に無理しすぎたなぁ」

 

 

怪我したての捻挫。体の奥から熱を発する自分の体。今までと違う体の感覚。そして提督という肩書とその責任の重さ。ありとあらゆる要因が自分をここまで弱らせ、こうなるまで隠す事しか出来なくなってしまった原因だろう

 

全ては己の弱さのせいだというのは分かっていた。人に頼る事だって出来たのにそれをせず、あたかも自分で何でも出来る様に振舞い、彼女達を情と言うなの鎖で支配しようとしていた自分にある

 

所詮は自分が気分良くいたいだけ。だからこそ今の曖昧な距離感に安心を覚え、彼女達に何の遠慮も無く敵意を向ける事が出来た。口ではいくら彼女達の事を思っているように話しても、結局は自分が試したい事を彼女達を利用して試しているだけ。さながら玩具で遊ぶ子供の様に…壊れるまで遊ぼうとしているだけだ

 

この考えに正解など無いのだろう。あるとすれば、それは自分で決めた道こそが彼女達にとっての正解となり、私の失敗が彼女達の失敗となる。その失敗で彼女達は傷ついて死んでいく。死ななかったら回復してもう一度。全く、まるでゲームの駒だ

 

 

「彼女達は駒では無い。人。人だ。人なんだ」

 

 

誰にもいない虚空に向かって言葉を話す。変声期を持って喋っていないので赤ん坊の言葉となってしまうが、そんな事は重要ではない。ただ言葉にしてスッキリしたかっただけだ

 

そう。結局は自分の為。どれもこれもが自分だ

 

自分勝手な正解とは言えそうにもない道を徹底的に歩み、彼女達はそれに後を付いて回る勇者の仲間の様な存在。幸せなエンディングとはかけ離れたゴールを目指して歩いているであろう勇者私の仲間艦娘達。可哀想な事だ

 

だがそれでも自分はまだ彼女達を手放したくはない。彼女達が必要だから。私にとって、彼女達は生きる為の道具であり、彼女達を失くしてしまえば私は生きられない

 

…そう考えると私は死にたくないだけなのか?ただ生きる為だけに彼女達を気ままに振り回し、消耗させ、その度に治して、なおして、直す。自分が提督という立場にいる為の道具として、彼女達を…

 

 

「…クソが」

 

 

その言葉を出した直後、私の体力が限界に迫ったのか、意識を手放す様に眠りに落ちていった

 

願わくば、次に目が覚めた時にはこの考えを忘れている様にと思いながら…




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