この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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遂に社会人になってしまった…とはいえ更新頻度は落としません(元々遅いとか言うのは禁句)

以前比叡で作ったちょいネタバレ用のMMD作ってるんですが、正直間に合わなさそう…(pixivに投稿予定)

24/04/08 ルビ変換出来てなかったので訂正


少女と男の共通点

「長門、大丈夫か?」

 

長門「…あぁ」

 

 

目の前に私がいるのに気にも留めていないかのようなやりとりに再びイラつきが増した。第一コイツは何でここに…ってそうか、流石に艦載機が飛んでる音や攻撃音も聞こえれば当然やってくるよね

 

でも、今は周りの事なんて考えなくても良いよね?

 

 

飛龍「そこをどいてよ」

 

「断る」

 

飛龍「……」

 

 

当然の事だ。この子は提督。艦娘を指揮する提督の彼は長門の様な艦は見捨てておけないのだろう。何より仲間同士のイザコザを起こす訳にはいかないからだ。全く、何処かの提督も見習ってほしいものだ

 

 

飛龍「ね、長門だけじゃなくてさ、私も助けてよ」

 

「良いぞ。何を手伝えばいい?」

 

飛龍「長門の轟沈」

 

「断る」

 

 

間を置かずに即答された。これには流石に傷つく。やっぱり私よりも長門の方が大事だから?それとも面倒を増やしたくないから?なんにせよ、これ以上断るのならこちらも実力行使に出なければならない

 

 

飛龍「もう一度聞くよ?そこをどくか、それとも死ぬか。どっちがいい?」

 

 

遂に隠す事もしなくなった。寧ろはっきりと言葉に出して言えたからか清々しさも感じる。だけど、それでも目の前の人物から突き付けられる目は色変わりする事は無かった

 

 

「どっちも嫌だね。やるんだったらさっさとやれよ」

 

飛龍「…生意気な」

 

「今だ!取り押さえろ!」

 

 

その言葉に反応し、すぐさま後ろを振り向くと妖精さんがフワフワと浮かんでいただけだった。手には紙らしき物が握られており、そこには『嘘だよ』と書かれていた

 

騙されたと分かった瞬間、手首を掴まれたと思えばそのまま後ろに回され、流れる様に素早い動きで手錠を両手にはめられてしまった

 

 

飛龍「なっ!?」

 

「はい。おしまい」ポチッ

 

 

ボタンらしき物を押されると手首の手錠から電流が流れ出す。一瞬で全身を電流が駆け巡り、そのまま地面へと倒れ伏してしまう

 

全身から少し焦げ付いた匂いが鼻を刺激し、次の瞬間には何も匂わなくなってしまい、辛うじて開く目で子供提督の方を眺めると、にやける様な笑みで笑っていた

 

 

「ふぅ~。緊張したぁ」

 

長門「……」

 

「…おい、大丈夫か?」

 

長門「…あぁ」

 

 

何処かボーっとした様子を見せる長門。しかし直感的に怒っているというのを感覚的に理解出来た

 

命を狙われたのだから怒るのは当然だ。そのことに対して少し心配はしたが、それよりも見る物があった

 

視線を移した先には白く肌が変化している飛龍の姿があった。それだけならまだしも、まるで痣の様な紫色の痕が体に浮かんでいる

 

 

「…提督、貴方は「管理が甘かったか…」」

 

大将「コイツは暴走しやすい奴だとは分かっていた。だがここまでの暴挙に出るとは、もっと管理を厳格にせねばな」

 

 

…どうやら知っていたらしい。管理という時点でコイツの艦娘に対する評価を改めて理解する事になったが、正直相容れないと思う

 

だが問題はそれだけではない。長門の周囲に対する無知さも考える必要がありそうだ

 

 

大将「おい、そこの転がってる奴を入渠施設へと連れて行け。長門も今回特別に入渠を許可してやる」

 

長門「……」

 

大将「おい!返事はどうした!?」

 

長門「…はい、分かりました」

 

「飛龍は俺と妖精さんが運ぼう。先に入渠施設まで行っててくれ」

 

大将「おい」

 

「…何でしょうか?」

 

大将「変に騒ぐだけ無駄だ。ここの奴等はこういうのを見るのは一度や二度じゃない。それを覚えておけよ」

 

「…なるほど。分かりました。失礼します」

 

 

踵を返して飛龍を妖精さんと共に運ぶ。長門が前で待っていたのだが、その顔は先程感じた怒りではなく憎しみを感じさせる雰囲気に変わっていた

 

 

_____________

 

 

入渠施設

 

 

蒼龍「飛龍!大丈夫なの!?」

 

飛龍「大丈夫だって…」 0:01:03

 

長門「……」 4:17:58

 

飛龍「…次は沈めるから」

 

 

そう問いかけた人物の顔は変わらずボーっとしている。何も考えていない様な表情でずっと上を向いて入渠をしていて、それが無視された様で腹が立った

 

 

「おーい。大丈夫か~?」

 

 

そう声が聞こえると、ガラガラと音を立てて入渠内に入ってくる人物がいた。その人物は小柄で、服が濡れない様に腕と足を捲った状態で、そこから見える肌は遠目から見ても綺麗で幼かった

 

 

蒼龍「ちょっ、何入ってきてるの!?」

 

「いや、お前は驚く必要なくないか?服着てるんだし」

 

蒼龍「急に男の人がお風呂に入ってきたら驚くよ!」

 

「まぁいい「良くない!」飛龍、気分はどうだ?」

 

飛龍「……」

 

「だんまりか…」

 

飛龍「…あのさ」

 

「何だ?」

 

飛龍「…私、臭くない?」プシュー

 

 

白い肌がまるで茹でだこの様に顔が赤くなっており、頭からは大きな湯気が立ち上っている。それは隣にいた長門も同様で、二人してゆっくりと湯船の中に沈んでいった

 

 

蒼龍「あぁっ!二人共しっかりして!」ザバッ

 

「お前等予想外の展開に弱すぎるだろ!しっかりしろ!」

 

 

結局二人を助ける為に湯船に腕を入れた提督さんの服は濡れてしまった。元はと言えばこの提督の自業自得なのだが、いくら提督でも同じ風呂に異性がいるという状況に耐えられなかった二人は想像出来なかったようだ

 

二人を浴槽から引きずり出した後は、入渠時間がまだ残っている長門の腕にタオルを巻き付け、支えとなるパイプにもタオルを繋げる事で身体が再び沈まない様にした。飛龍は丁度入渠が終わったので私が支えながら服を着替えさせた

 

 

「あー、とりあえずこれ飲ませておいてくれ」

 

 

そういわれて差し出されたのは水の入ったペットボトルだった。それを飛龍が受け取り、パキッという音を立てて蓋が開かれてそのまま中の水を飲みほした

 

 

飛龍「…何のつもり?」

 

「お前の姿がおかしかったから見に来た」

 

飛龍「…ここの艦娘達なら何人かなれるよ」

 

「は?マジで?」

 

 

思わず素に戻っている提督だったが、ハッとした表情をしてすぐさまキリッとした顔に戻る。正直ちょっと可愛かった

 

 

「んっん、なら大体何人位いるんだ?」

 

飛龍「…教えたくない」

 

「えー…なら蒼龍」

 

蒼龍「確か…異動した人を含めたら40人くらいかな。この鎮守府に今いる人達では…私の知る限りではもう全員異動しちゃったからいないかも?」

 

「…鎮守府にいる人数以上じゃないか」

 

蒼龍「でも私は最古参って訳じゃないですから、ホントはもっと多いかも知れません」

 

「最古参と言える奴は誰がいる?」

 

飛龍「提督に聞けばいいじゃないですか」

 

「分かってて言ってるだろそれ…」

 

 

少し嫌そうな顔をしてそう答える提督だが、正直私もおんなじ顔をすると思う。この人の場合は提督と対立している訳だし、相手の懐に飛び込むような事をすれば危ない目に合うのは目に見えている訳だしね

 

 

「ていうかちょっと待ってくれ。そうなると飛龍も異動してしまうんじゃないか?」

 

蒼龍「大丈夫です。私達は一応ここの主力なので異動は考えられません」

 

「なるほどな…」

 

蒼龍「さて、話を戻しますけど、私の記憶が正しければ陸奥さんがこの鎮守府で最古参だと思います」

 

「長門じゃないのか?」

 

飛龍「…長門は異動してきたんだよ」

 

「あ~…あー?ちょ、ちょっと待ってくれ」

 

「長門の練度って確か一番ここで高いだろ?しかも50越えだし、アイツ一体何処からやってきたんだ?」

 

飛龍「私が知るわけないでしょ」

 

蒼龍「うーん…長門さんは数カ月程前に来たんです。その時には既に練度は50近くあったと聞きます」

 

 

自分の知りえる知識を全て話した瞬間、目の前の提督が頭をグワングワンと動かしながら考え事を始めた。その動きはだんだんと早くなり、これ以上早く回したら目を回すだけでは済まないのではないかと不安になるが、途端にピタッと動きが止まり、深いため息をついた

 

 

「わっかんねぇ…」

 

蒼龍「だ、大丈夫?」

 

「まぁいいや。とりあえず陸奥に会って来る」

 

飛龍「…このまま私を見逃して良いの?また長門を沈めようとするかも知れないよ?」

 

「別に良いよ」

 

蒼龍「えっ」

 

「もうアイツはどうでもよくなった。だから好きにしな」

 

飛龍「……」

 

蒼龍「ちょっ、それが提督の言う言葉ですか!?」

 

「知るか!こっちはもう頭一杯いっぱいなんだよ!」

 

蒼龍「え、えぇ…」

 

 

無茶苦茶だ…そう絶句していた所を横から笑い声が漏れ出す様に聞こえてくる。その方向を見ると飛龍が面白おかしそうに笑っていた

 

 

飛龍「あっ、あっははははは!ば、馬鹿なの!?馬鹿じゃないの!?」

 

蒼龍「ひ、飛龍!」

 

飛龍「はー、はー…」ヒィヒィ

 

飛龍「はぁ~。もう、馬鹿らしくなっちゃったよ」

 

「そいつは良かったな」

 

飛龍「いや、良くはないけどね。ただもうどうでもよくなったってだけだよ」

 

「それならそれで良い。長門も挽回のチャンスが与えられたって事だからな」

 

飛龍「…でも、赤城先輩に関してはまだ許してないからね」

 

「演習に参加してもいないお前が許す許さないを決める権利があると思うか?お前は外野からヤジを飛ばす程度しか許されてないんだよ」

 

飛龍「う…」

 

「良いか?俺達が勝ったのはあくまで偶然で、慢心によって生まれた奇跡の様な偶然だ。それをしっかりと赤城に教えてやれ」

 

飛龍「ヤジを飛ばせって?」

 

「思いっきり投げつけてやれ。ただし越えちゃ駄目なラインは守れよ?」

 

飛龍「…はぁ。了解」

 

「蒼龍、お前は飛龍と共に赤城に出会え。万が一飛龍が暴走した時用のストッパーと、何故あの演習で負けたのかを今一度赤城と徹底的に分析しろ」

 

蒼龍「り、了解!」

 

「だが、それでなお赤城では役不足だと思うのなら自分を更に高めろ。赤城に代わって前に立ち、お前が自分達と同じ感情を持たせない位に活躍をしてみせるんだ」

 

「そして理解しろ。お前等の理想とする赤城が背負っているプレッシャ―を、その期待を。前に立つという事は後ろにいる者達を率いているからのだと。それを赤城は一番良く分かっている筈だ」

 

「だから…次は俺達に目にものを見せてくれよ?」

 

蒼龍「…言われなくても」

 

 

次は慢心するなと釘を刺される。でも、確かにその通りだ。次はチャンスさえない。あの時に失ってしまったチャンスは二度と戻らないのだから

 

 

夕立「ふぅ~…出撃疲れたぁ~」ガラガラ

 

島風「私達の鎮守府大分綺麗になってたよね~」

 

響「それでも修繕が出来ていない所もあったよ。まだ完全復活とは言えないけど、今から鎮守府に戻っても活動は出来るんじゃないかな?」

 

天龍「俺達がどこで活動するかは提督に任せるしかねえけどな。とにかくさっさと入渠すましてまた出撃すんぞ。早いとこ正面海域から先に進まねぇとな」

 

龍田「…ねぇ皆。あそこに立ってる人達って何してたんだと思う?」

 

天龍「へ?」

 

 

提督:少し濡れた髪と濡れた服

蒼龍:上に同じ

飛龍:顔が赤い”バスタオル一枚”の艦娘

 

 

天龍「……のぼせた飛龍を「司令官」」

 

響「まさか、私達というものがありながらここの艦娘に手を出したのかい?」

 

夕立「ふ、不純っぽい!」

 

島風「…」ウルウル

 

天龍「え、いや、でもあれって「ね~皆、私達をないがしろにするこの人はどうしたら良いと思う?」」

 

夕立「捕まえて」

 

響「剥いで」

 

島風「一緒に入渠!」

 

「……」

 

龍田「弁明はある?」

 

「…ちょっとだけ、下心はあった」

 

天龍「よし確保!」

 

駆逐艦達「オー!!!」

 

 

まるで風でも吹いたかのように提督の体がその場から消えた。提督の服だけがその場に残り、ガラガラという音が後ろで鳴ったのでそちらを振り返ると服を剥かれて裸になっている提督の姿がそこにあり、逃げない様に駆逐艦達が提督をしっかりと捕まえている

 

飛龍も私も完全にビックリして固まっていた。その横に至極当然の様に服を脱ぎだす軽巡洋艦の二人にも驚いたが、おそらくこれがこの人達の日常なのだろう。そう考えないと頭が追いつかなかった

 

やがて二人が入渠しにいき、入れ替わりで服を着替えにやってきた駆逐艦達がやってきて、十秒と経たずに服を全て脱ぎ捨てて入渠へと向かう。その様子は和気あいあいという様子で、ちょっと心がモヤッとした

 

 

蒼龍「……」ポカーン

 

飛龍「…楽しそうで良いなぁ」

 

蒼龍「えぇ…」

 

 

_____________

 

 

「すまんな。急に呼び出して」ホカホカ

 

陸奥「それは構わないんだけど…ちゃんと髪乾かしたら?」

 

「しばらくしたら乾くからほっといてくれ。風呂入ったら濡れるんだから仕方ないだろ」

 

陸奥「…濡れ髪の男性も結構良いわね」ボソッ

 

「なんか言ったか?」

 

陸奥「何も?」

 

「そうか。実は呼んだのは聞きたい事があってな」

 

陸奥「スリーサイズ?」

 

「逆セクハラで訴えるぞ」

 

陸奥「冗談よ。冗談♪」

 

 

軽く咳ばらいをして調子を整える。どうにも陸奥にはペースを乱されるが、大破してるんだし色々見えてるせいもあるだろうと思っておきたい

 

 

「…話を戻すが長門についてだ」

 

陸奥「あぁ。長門がどうかした?」

 

「長門はここに異動で来たと聞いた。何処から来たか知らないか?」

 

陸奥「長門に聞けば良いんじゃないの?」

 

「もう聞いた。そしたら陸奥に聞けと」

 

陸奥「じゃあ教えない」

 

「どうして?」

 

陸奥「長門に聞いて断られたんでしょ?誰々に聞けってのは遠回しに聞くなって言われてるのよ」

 

「それは分かってるけどさぁ…」

 

陸奥「それに私も詳しく知らないのよ。長門から聞いた事無かったからね」

 

「む…」

 

 

それを聞いて少し疑問符が浮かんだ。陸奥が長門と姉妹艦だからそういった情報も教えあっているものだと考えていたが、どうも雰囲気を見るに見切りをつけたかの様な言い回しを感じる。まるで何かを諦めた様な感じだった

 

 

「…じゃあ次。提督に関してだ」

 

陸奥「…どうして提督に関して聞きたいの?」

 

「嫌悪感が無い」

 

陸奥「…何の事?」

 

「何言ってるの?って聞かない辺り、思い当たる節があるって事だろ」

 

陸奥「…」

 

 

少し睨まれつつ、口は少し安堵を覚えたかのような形にゆっくりと変わっていく。そのまま息を軽く吸い、ふぅと一呼吸置いて口を開き始めた

 

 

陸奥「私達の容姿を醜いって言わない事ね。それと過剰な叱り(ハラスメント)を受けないわ」

 

「そうだ。完全に道具として見ているからと言われてしまえばそれまでだが、それだと妖精さんが一人も欠けることなく、あの提督に付いて回る理由にどうにも納得出来ない」

 

陸奥「その前に聞かせて。妖精さんの事をどこまで知ってるの?」

 

「1.艦娘が度を越えて酷な扱いを受けている鎮守府に妖精さんは来ない。2.妖精が提督を見限った場合によりその妖精は姿を消す。2に関しては正確に言うなら鎮守府に姿を隠して活動を行わない(ボイコット)ってのが正解だけどな。とりあえずこの二点だけ」

 

 

書類仕事をしている時に少し気になる報告書類があった。それが妖精さんの出現に関しての情報だ

 

妖精さんは鎮守府によっては数が多かったり少なかったりするらしい。そんな場所に限って艦娘が不遇な扱いを受けているらしいが、それでも完全にいなくなるという訳ではない

 

だがその報告書には妖精さんの姿が完全にいなくなってしまったとあった。これによって震えた提督は沢山いるだろう

 

今までは鎮守府から妖精さんがいなくなる時はそこに提督が存在しなくなった時だと言われていた。これはウチの前提督がいなくなった事から知り得た情報だ。それとは別で新たに情報として入ってきたのが、提督として見られなくなったのではないか?ということだ

 

ウチの前任は提督として存在しなくなったので妖精さんはいなくなった。だが艦娘がまだいたので妖精さんは完全に見切りをつけることが出来なかったのではないか?という説が今まで上がっていた為に悪質な提督がいた

 

そんな提督がいる中で完全に無能と呼べる提督が一人おり、ソイツは艦娘の数だけを無駄に減らして最終的には妖精の怒りを買ったのだろう。ついには艦娘が全員いなくなって鎮守府として機能しなくなり、妖精も完全に消えてしまったようだ

 

しかしここはそんなことは無い。妖精の数は艦娘と同じ位いるし、何より生気を宿してはいない奴が殆どであったが、それでもここから減ったというのは妖精さん達から聞いたことが無い

 

 

陸奥「…私達の扱いが雑では無いって事よ。ただ運用方法が他と違うだけ。見る人にとっては悪だろうけど、私達からしたら一度とはいえ死を回避出来るチャンスを貰ってるんだし、それ以上の事をされないしね」

 

「…え?」

 

陸奥「え?何かおかしかった?」

 

 

それ以上と聞いて思いつくのは前任がかつてやっていた艦娘に対する性行為。これだとは思うんだが、これがされないというのはどういう事だろう?愛宕の話では摩耶の姉妹艦である高雄が受けていると聞いていたんだが…

 

 

「……はぁ」

 

陸奥「…急にため息吐いて、今度はどうしたの?」

 

「めんどくせぇ…」ダラァ~

 

陸奥「忙しい人ね」

 

「もう脳内滅茶苦茶なんだよ。あまりに中途半端な情報ばっかで組み立てようにも何処かで穴が出来てるしさぁ…もう疲れたよ。というか考えるのめんどくさくなってきた」

 

陸奥「そんなに投げやりな人は嫌われるわよ?」

 

「え~…」

 

 

どれだけ考えても集めた情報と自分の知る知識との照らし合わせが何処かズレていた。このズレの原因は大将を視野に入れて考えるとどうもズレる。原因はコイツであるのは確実だろう

 

妖精が見捨てていない。元師から教えられた情報、今まで見てきた態度、艦娘達の情報を集めると見捨てられててもおかしくないのだが、それなのに見捨てられていない。まずはこれが一つ目のズレ

 

二つ目は先程陸奥の発言にあったそれ以上何もされないという点。単純に艦娘が道具だから傷つける事はしたくない。道具ならば出来るだけ綺麗に取り扱っておきたいという心でいるのなら納得は出来るが、それだと一度沈んで応急で復活して以降はほぼ放置と同じ事をする理由が分からない

 

三つ目、元師の推薦でここに進められた。これが一番心に引っかかっている

 

今まで訪れた鎮守府では正直ブラックと呼べるのか分からない場所ばかりだった。もしそれがここでも言えるのならば、何故ここに呼んだのだろう?何故あの大将は受け入れたのだろう?

 

何かを求められているのは確実だ。だがこれまでの艦娘達を見て考えるに、ここにいる艦娘の救済でないのは確実。ならば一体何を持ってブラック鎮守府とここを呼び、何故ブラック鎮守府に自分を移動させるのか?その真意が全く持って掴めないのだ

 

 

「…答えが無いから自分で考えろって事ならまだ良いんだが、明確な正解があってこんな事してるなら何のためにこんなことをさせてるんだ?いや、そもそも目的がそっちではなく自分の成長の為だとしたら…?」

 

陸奥「んー…何を悩んでるのか分からないけど、時間が解決してくれるんじゃない?」

 

「時間がぁ?」

 

陸奥「さっきからずっと焦ってるみたいに感じるのよ。時間に追われてるとも言わんばかりに今すぐ解決しようと色々考えてるみたいだけど、実際に考えて何も分からないのなら、今はその時じゃないって事じゃないの?」

 

「…気楽だなぁ」

 

陸奥「提督としては先を見通す力は必要だとは思うわよ?それでも全部を予想する必要は無いし、自分の考えもつかない所は誰かに頼ってみたら良いんじゃない?」

 

「……」

 

陸奥「…そんなに悩む事なの?」

 

「……まぁな」

 

陸奥「色々知ってなきゃ安心出来ないだなんて、意外と怖がりなのね?」

 

 

心を見透かすかのように掛けられる言葉。その言葉に確信を持って言葉として吐き出したのかは分からないが、一瞬だけその言葉に動揺してしまう

 

 

「怖がりなのは良い事だろ?石橋を叩いて渡ってるようなものなんだから」

 

陸奥「そうね。だけど怖がり過ぎて先に進めないのは駄目だと思うわよ?」

 

「やれないと思う?」

 

陸奥「分かりやすい位に反応するんだもの。そう見えちゃった時点で結果は分かるじゃない?」

 

 

図星だ。そう理解すると心の奥から羞恥や怒りに似た感情が湧いてくる。思わず頭を埋めてしまいたくなる程の、そんな強い感情が心を揺らした

 

まるでリレーで走るバトン廻しの様だ。電から始まって、陸奥からも言われてしまった。こんなにも周りから人との信頼を突っ込まれるのは正直ストレスでしか無いのだが、それを飲み込む勇気を持って走りだせという天啓なのかもしれない

 

 

「…とりあえず吐くか」

 

陸奥「なんで!?」

 

「いや、吐いて気持ちを切り替えようかと」

 

陸奥「酔っ払いが吐いてスッキリしようとするみたいなこと言わないで!」

 

「まぁそれは後でするとして。色々ありがとな」

 

陸奥「…私としてはこのまま貴方と色々話しておきたいんだけどね」色々不安だし

 

「これでも結構仕事が残ってるんだ。早いとこ執務に戻らないと」

 

陸奥「…ね、提督さん」

 

「なんだ?」

 

陸奥「皆の事、お願いね?」

 

「…やれるだけの事はやるよ」

 

陸奥「ふふっ。ありがとう」

 

 

_____________

 

 

卯月「…むふっ」

 

睦月「卯月ちゃん…ホントにやるの?」

 

卯月「当然っぴょん!せっかく男がいるんだからやらなきゃ損だし~!」

 

睦月「私達の提督がいるじゃん…」

 

卯月「ケッ。四十どころか五十を越えた野郎は覗く気しないって」

 

睦月「…提督、ここにはいないけど謝っておきます。ごめんなさい…」

 

卯月「それに今回は協力者がいるっ!ならば今回の悪戯である、”子供司令官入浴シーン盗撮悪戯”は完璧に遂行されるはずっぴょん!」

 

睦月「ちなみに協力者って?」

 

卯月「軽空母の千歳さんと千代田さんっぴょん!この話を持ち掛けたら快くOKしてくれた!」

 

睦月「絶対提督さんに怒られるって…というかどうしてそのお二人は許諾しちゃったんですか…?」

 

卯月「難しい海域の出撃でMVP取ったご褒美にお酒を貰ったって言ってたからそのタイミングで提案したぴょん」

 

睦月「それ絶対酔ってたよね!?あの二人って前いた鎮守府でお酒飲みすぎて酔っ払った時に鎮守府壊したから異動してきてるんだよ!?」

 

卯月「でもでも~?こうして話を止めない辺り少しは楽しみなんじゃないの?子供司令官の入浴写真」

 

睦月「うっ…」

 

卯月「意外と睦月ちゃんってムッツリだよね」

 

睦月「だ、だって…男の人の、その、裸なんて見た事無いし…」

 

卯月「睦月ちゃんの本音見透かされたら色々喋っちゃう所は嫌いじゃないぴょん」

 

睦月「も、もう!それより見るの!?見ないの!?」

 

卯月「お、おう。分かったから食いつくのやめるっぴょん…」カチカチ

 

 

画面 LIVE中

 

 

卯月「…アレ?」

 

睦月「うわぁ…ここが提督のお風呂なんだ…」

 

卯月(あれぇ…?確か話ではこの時間帯に写真が送られて来るハズなのに、どうしてLIVE中継になってるの?)

 

睦月「あ、誰か見えたよ!」

 

卯月「…まぁいっか。うーちゃんにも見っせて~♪」

 

 

画面『…狭くないか?』

 

画面『大丈夫っぽい』

 

 

睦月・卯月「「えっ…!?」」

 

 

画面『提督さん。あの艦載機は入れて良かったの?』

 

画面『妖精さんだろ。お風呂に入りに来たんじゃないか?』

 

画面『…でもその割には妖精さん降りてこないけど』

 

画面『どうせ降りた後なんだろ。別に気にする必要無いって』

 

画面『それでいいの…?』

 

 

睦月「どっ、どどっ、どうして夕立ちゃんが司令官と一緒にお風呂に入ってるの!?」ブシュッ

 

卯月「二人の体に巻かれたバスタオルが濡れて体にピッタリと張り付いてるのにとてつもないエロスを感じる…!」あっ、鼻血が

 

 

画面『ねぇ、提督さん』

 

画面『どうした?』

 

画面『……改めて聞きたいんだけど、提督さんの事を信じて良いの?』

 

画面『…それを決めるのは俺じゃない。お前だ』

 

画面『それは分かってるっぽい。でも…分かんなくなって、決められなくって…』

 

画面『だったらもっと悩め。吐く程に悩め。だが悩みすぎて時間を無駄にする位ならさっさと答えを出す事だ』

 

画面『…答えを出すのに自信ないっぽい』

 

画面『なら答えのラインを決めるんだ』

 

画面『答えの…ライン?』

 

画面『例えばだ。夕立はケーキを食べようとする。その時にケーキを先に食べるか、それとも上に乗ったイチゴを先に食べるか悩んでるとしよう』

 

画面『そしたら悩むだろ?だけど悩むってのは時間が掛かる行為だ。ケーキは生物だから時間が経てば経つほど不味くなる。だから早く決断をしなくちゃならない』

 

画面『この例えで言うとラインは時間だな。この時間以内にこうしようって決める時間がないといつまでも悩んじゃうだろ?それを越える前に決めるって感じだ』

 

画面『つまり…自分でこれくらい悩めたら良いって決めるラインを作れって事?』

 

画面『そういう事だな』

 

画面『…分かった。頑張ってみる』

 

画面『あ、一応言っとくが悩みの答えを人に委ねるなよ。その悩みを持っているのは他人じゃなくてお前が持ってる物だ。最終的にどうしたいかってのは自分で決めるんだぞ』

 

画面『分かったっぽい』

 

画面『…ただそうだな。その悩みに俺が絡んでるから一つアドバイスしてやるよ』

 

画面『何?』

 

画面『お前の信頼する提督はどうしようもないダメ人間だ。その事を念頭に置け』

 

画面『…そんな人が優しくしてくる理由が分からないっぽい』

 

画面『ただの依存だ。誰かに優しくして、その人からも優しくされたい。褒められたい。そう考えてる俺の依存だ』

 

画面『だから俺の事は徹底的に嫌悪しろ。他人を引きずり落さなきゃ自分が安心出来ないクソ野郎だと思ってその悩みに答えを出せばいい』

 

画面『だが忘れるな。そんなクズでもお前等の事を大切に思っているのは変わらん。お前等が傷つかずに成功出来る作戦を真剣に考えてる。何か困りごとがあれば正面から向き合って悩む事だってする。あくまで嫌悪するのは俺個人だけを嫌悪しておけ。作戦や他の奴を視野に入れて考える事はするな』

 

画面『……』

 

 

睦月「…普通のお悩み相談だったね」ティッシュIN

 

卯月「おかしいぴょん。てっきりもっとあ~ん♡みたいな事になるかと思ってたのに」ティッシュIN

 

睦月「…ただ、これがホントに悩み相談になってるのかなぁ?」

 

卯月「というと?」

 

睦月「何て言うんだろう。どことなく、自分は駄目だから助けてほしいってお願いしてるみたいな気がして…」

 

卯月「……それで間違ってないと思うぴょん。この人は司令官なのに自分に自信が無さすぎるしね」

 

睦月「だからこその嫌悪しろって事かぁ…」

 

睦月「……そんな気持ち、分かりたくないなぁ」

 

 

画面『コンコン』

 

 

卯月「あっ、多分千歳さんだぴょん」

 

 

画面『入浴中にごめんなさい、提督さん。ここに艦載機がありませんか?』

 

画面『あぁ。あるぞ』

 

画面『すいません。それ、私達が酔っ払って飛ばしてしまった艦載機なんです。良ければ取って頂けませんか?』

 

 

睦月「その言い訳は無理があるんじゃないの!?」

 

卯月「あの司令官さんは艦娘に甘いって噂だし大丈夫だって。その証拠に夕立ちゃんと一緒のお風呂入ってるんだから」

 

 

画面『…一つ、条件を飲んでくれるなら良いぞ』

 

画面『うっ…な、なんでしょうか?』

 

画面『君…艦載機を勝手に飛ばして私欲で動かしたよね?資材を勝手に消費したんじゃないかな?』

 

画面『ギクッ』

 

画面『そのことを大将に黙っていてあげよう。代わりに背中を洗ってくれないか?』

 

画面『…えっ?』

 

 

睦月「えっ、えっ!?い、良いなぁ!」

 

卯月「な、なんて役得…」

 

 

画面『…良いなぁ』

 

画面『ごめんな。また今度頼むわ』

 

画面『うん。分かった』

 

画面『で、どうする?やってくれるか?』

 

画面『え、あ、やります!失礼しますね!』

 

 

画面『ガラガラ』

 

 

卯月「くぅ~…こうなったらうーちゃん達も今から司令官のいるお風呂場へ飛び込んでご利益を…!」

 

睦月「だ、駄目だよ!それをしたら私達が共犯だってバレちゃう!」

 

卯月「くっ…!目の前に欲しい果実があるのに取れない動物の気分…!」

 

 

画面『夕立は先に上がっててくれ』

 

画面『分かったっぽい』ザパッ

 

画面『…提督さんに変な事しないでね?』

 

画面『こ、子供に変な事しないですよ!』

 

画面『ガラガラ』

 

画面『んじゃ頼んだ』

 

画面『は、はい!千歳にお任せください!』

 

 

卯月「…はぁ。とりあえず堪能したし、これ以上見るのはやめるっぴょん」

 

睦月「な、何で!?これから良い所なのに…!?」

 

卯月「さっき風呂を出る瞬間に夕立が凄い目でこっち見てたぴょん。多分アレは私達が見てるって事を感づいてる気がするぴょん」

 

睦月「うっ…」

 

卯月「さぁさ、ここら辺で戦略的撤退といこ『バァン!』

 

時雨「…楽しかったかい?」

 

睦月「あっ…」オソルオソル

 

卯月「…逃げ「残念♪」ぴっ!?」

 

川内「さ、お仕置きといこうか」パキッパキッ

 

卯月「…許してぴょん♡」

 

時雨「駄目だね」グシャッ

 

卯月「うーちゃんの悪戯七つ道具の一つがぁぁぁ!!」

 

 

その日の夜、一人の絶叫が鎮守府に響き渡ったそうな

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