この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ 作:七福えると
陸奥さんに組み付かれているが、それでも尚暴れ続ける長門さん。その周りを囲む様に私達が立ち、その後ろには先程まで長門さんと暴走していた人達が愛宕さんと球磨さんの監視のもとに鎖で拘束されていた
長門「どけっ!どけえぇぇぇ!!!」
陸奥「長門!いい加減にしなさい!」
電「もう貴方以外に人は拘束済みです!いい加減に落ち着いてください!」
長門「五月蠅い!早くアイツに鉄槌を下さないと!下さないと駄目なんだ!!」
川内「うわぁ…まだ怒ってるよ」
長門「っ!川内ぃ!」
川内「はいはい。川内ですよ」
長門「陸奥!早く私の拘束を解け!アイツは提督と一緒に私達を暴行するつもりだ!」
川内「…被害妄想も甚だしいよね。誰から聞いたのさ」
長門「あの提督に協力していた!それだけでお前が十分危険な奴だと言う事は分かっている!」
無茶苦茶だ。その理論でいけば私達はどうなるのか。それを声に出すと更に怒りの暴走が起こってしまいそうで決して声には出さないが、それでも聞いているだけでこちらもイライラする
次第に長門さんの暴れる力が強くなっていっているのか、陸奥さんが少し辛そうな顔をしている。それに手伝おうとした瞬間、長門さんが自身の後頭部を陸奥さんの顔に思いっきりぶつけた
痛みで陸奥さんが手を放してしまい、その瞬間を逃すまいと脱兎の如く拘束から抜け出し、その勢いのまま川内さんに向かって走り出す
咄嗟に川内さんが身構え、長門さんを迎え撃つ準備をしていると、潮ちゃんが走っている長門さんの足を引っかけて転ばした
その瞬間を見逃さず、私はすぐさま長門さんに賭け寄って頭を掴んで地面に叩きつける。一度では気絶しないと思ったので二度、三度と何度も頭を地面に叩きつけ、そのまま左右に顔を地面ですりおろした所で抵抗が無くなったのを確認して手を放した
……結構スッキリした
潮「…電ちゃんって結構容赦ないね」
電「こうしなければ危ないので…」
話しながら川内さんが持っていた手錠で腕を拘束し、球磨さんが持っている鎖で厳重に気絶した長門さんを縛る。ジャラジャラという音と共に次第に拘束が強くなっていくが、相手は戦艦なので例え拘束していても警戒は緩めないようにした
陸奥「皆お疲れ。こんなことに巻き込んじゃってごめんなさいね」
川内「全くだよ。もう二時近いのに」
陸奥「…私がもっと長門をコントロール出来てたら良かったんだけどね」
愛宕「…私達が五月雨ちゃんに連れられて閉じ込められようとした時、貴方不穏な事言ってたわよね?私達の提督がどうって」
陸奥「しょうがなかったのよ。長門が結構鬱憤溜まってたみたいで少しでも発散させておこうと貴方の提督をダシに使わせてもらっただけ。ホントに長門の味方をしようって言うなら庇おうとすらしなかったわ」
愛宕「…確かにね」
川内「私としてはその話もうちょっと詳しく聞いておきたいね~」
陸奥「…ただ、ちょっと今回は初めてね」
潮「初めて?」
球磨「長門の暴走だけじゃない。春雨に飛龍、そして長門に感化される様に一緒に暴走をする艦娘達。こんな短期間でここまでの人数が暴走したのは初めてだクマ」
球磨「以前はこんなに速いペースで暴走なんか起きなかったクマ。だから今回の事件をレアケースとして見たら良いのか疑問だクマ」
愛宕「…そうなると今回の暴走するトリガーになってしまった原因って」
球磨「間違いなくアンタらクマね。まぁここの事を知らないんだから正直仕方の無い事だとは思うけど」
電「球磨さん、以前貴方に聞いたここが何の為に作られたかって話ですが、もう一度話してくれませんか?」
球磨「そうするクマ。こうなったら当事者として動いてもらった方が良いと思うし」
軽く息を吸い、何かを決めた様な目で皆の方へと向き直る。少しの期待が混じった目をしているが、目元は少し細めて真剣さを物語り、吐いた呼吸からは少しの緊張が感じ取れた
球磨「理由は様々だけどここには色んな奴が集まってる。良くも悪くも色んな理由で集まった艦娘が」
球磨「例えば長門、独断で作戦を立てる事が多く、その度に実行しては失敗し前鎮守府に所在する提督を悩ませていた。それが理由でここに送られてきた艦隊全てを巻き込む可能性のある危険な奴」
球磨「以前食堂で艤装を出現させた春雨、アイツは衝動的な行動で突拍子も無い事を起こしてくる問題児」
球磨「飛龍は異常な正義感。自分がどうなろうと考えず、邪魔する人なら例え誰であろうと許さないエゴイスト」
球磨「そうしてそれに巻き込まれ、まるで自分の意志かの様に他と同調してしまう自分をしっかりと持つ事が出来ていない意志の弱い艦娘…こんな奴等が集まってる」
球磨「初めは球磨達もアンタ達が問題児じゃないかって思いながら見届けてたけど…ま、問題ありだったのは提督の方だったクマね」
愛宕「うーん…否定出来ないわね」
球磨「足りないのは提督としての能力と知能。それ以外に関しては…幼さを感じる点があるがまぁ及第点。だからここら辺は私達の提督から直々に鍛え直してもらうクマ」
愛宕「…随分信頼してるのね」
球磨「まぁ私達はここで産まれたからな。他の奴等みたいに提督について何ら知らんって訳じゃないクマ」
陸奥「…提督から口止めはされちゃってるけど、悪い人ではないのよ。そこだけは誤解しないであげてね」
電「…だったらせめて部屋位は変えてほしかったのです」
球磨「そこは諦めてほしいクマ。一応ああしておかないと他の艦娘達との軋轢だって生まれる可能性だってあったんだから」
…確かに言われてみればそうだ。ここに来てから
そう聞けば納得は出来るが理解はしづらい。そう思わせるような事を言ってきたのは完全に元師のせいなのだが、せめてちゃんと本当の事を言ってほしかった
陸奥「そういえば肝心の提督は?」
川内「提督なら曙と天龍と高雄の三人と一緒の部屋にいると思うよ」
陸奥「…本人ってここの詳しい事知ってるの?」
電「そういえば…どうなんでしょう?詳しい事は高雄さんから色々聞いてるかも知れませんが、それ以前に私達もここの事をまだ報告さえしていなかったので…」
球磨「まぁ高雄がいるなら安心クマ。球磨達もさっさと後始末して今日は寝よう」
潮「ふっ、ふぁ…そうですね…」
潮ちゃんがあくびをして眠そうに目を擦る。正直私もそろそろ眠くなってきて、ちょっとだけ目がウトウトとしそうになる
陸奥「ここで縛ってる人達は私に任せて。皆は先に帰ってて良いわよ」
球磨「流石に陸奥だけじゃ厳しいだろうし私も手伝うクマ」
電「あ、なら電も…」
球磨「眠そうな目をしてる奴がいても邪魔なだけクマ。お子様はさっさとおねんねしとくクマ」
電「…分かりました。お言葉に甘えて電達はお先に失礼しますね」
球磨「おう。今日は助かったクマ」
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ドア ガチャ
「お、お帰り」
無事に出迎えてくれる人がいた。そう分かると少し心がスッと落ち着いた
部屋では提督が手帳を見ながらベットで寝ている曙ちゃんを見ていた。落ち着いた様な雰囲気でスヤスヤと眠っており、ちょっと可愛かった
潮「ただいまです」
「遅くまでお疲れ。潮も早く寝な」
潮「あ、でしたら一つお願いがあるんですけど」
「お願い?」
潮「その、寝るまで…いえ、その、少しの間だけ手を握っててくれませんか?」
「…あぁ。良いぞ」
その言葉を聞いてやっと安心感が湧いて来た。先程まで争っていたとは思えない程の安心が心を覆いかぶさって、足に力が入らなくなってしまう
「うおっと」ガシッ
倒れそうになった所を提督に抱きかかえられる。今まで小さすぎて守らなければと決意していた頃の体ではなく、少しずつ成長していく途中の子供の体になったのだと、はっきりと感じ取れる体になっていた
それでも、まだ自分よりかは少し小さいけど
「…よく頑張ったな」
潮「…ありがとうございます」
そのまま提督に寄りかかりながらベットへと案内され、先程私が言いかけていた寝るまでの間ずっと手を握ってくれていた。その手はとても暖かくて、安心出来るものだった
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「おやすみ」
潮が寝たのを確認し、そう言って部屋を出る。出来るだけドアの音を鳴らさない様にそっと締め、自分も再び自室へと向かう
皆の面倒を見ていたのでかなり遅い時間にはなってしまったが、ホンの数時間だけの睡眠だけどこれから寝られると思うと少し嬉しい気持ちだった。寝ている時はようやく休んでいる実感があったからだ
邪魔な服を脱いでパンツとシャツのみになり、ベットに座ってアラームをセットして、携帯していた
これを使えばスッと眠れるし夢も見れる。正に良い事尽くめだが、使い心地が良すぎてこれ無しで眠れない日が来るかも知れないと考えると少し怖い気もする
使って五秒と経たずに強い睡魔が来て夢へと身を投じる。しばらく真っ黒な視界だったがやがて薄っすらと形を持ち始め、そこは見覚えのある場所へと形を変えていくのだった
雷「司令官、起きてる?」ガチャ
暁「もう寝てると思うけど…」
ドアからこっそりと顔を出して部屋の中の様子を見る。タンスや机の上にパソコンがあったり、シングルより少し大きめのベットがあるシンプルな部屋。私達の部屋よりちょっとだけ大きくて、少し羨ましく思えた
雷「そういって暁も来てるじゃない」
暁「…私だって人のぬくもりがほしいの」
雷「司令官の、でしょ?」
暁「…意地悪」
暁をからかいながら提督が眠るベットへと近づく。手には拳銃が握られており、万が一の護身用としてその手に握っていたのだろう。まぁ今まで起こってきた事を考えれば当然の警戒度なのかもしれない
雷「これはここに置いてっと」ゴトッ
暁「…失礼するわね」
そういって司令官のベットへ潜り込み、司令官を挟む形で二人して横になる。響は深夜の遠征だから明日の朝まで帰ってこないし、電も愛宕さんと同室である時雨がいない為に一緒に寝る事になった。おかげで部屋には私達しかいなかったが、司令官との仲を深める為には丁度良かった
しかし妙だ。服を触った感覚がほとんど無く、肌を常に触っている感じがする
布団をめくると下着だけだった。それに気づいて咄嗟に掛け布団を降ろして中を見ないようにする
暁「どうしたの?」
雷「…下着だけだった」
暁「えっ」
暁「…って、司令官だって人なんだから涼しい恰好くらいしたいのよ。下着くらいで一々ドキドキしない」
雷「で、でもっ!」
暁「あのねぇ…普段から司令官をひん剥いたり一緒にお風呂入ったりしてるのに今更そんなに恥ずかしがる事?」
雷「…それもそうね」
すぐさま平静を取り戻し(?)司令官の一緒のベットへと入り込む。暁はああ言ってたけど、やっぱり気にしない訳ではない
しばらく司令官の横で目を瞑っていると、怒りの形相をした長門さんに吹き飛ばされた時の事を思い出した。幸い膝を打っただけで済んだけど、それ以上に長門さんのあの迫力が怖かったのを覚えている。もしあんな迫力で責められでもしたら恐怖で泣き出してしまうかも知れなかった
そのことを暁に話すと司令官と一緒にいれば良いのではと言われた。だけどそうなると部屋には暁しかいなくなってしまうので、せっかくなのだから二人して一緒に司令官の所にお邪魔しようと言う事で話がついた
やはりこの人の隣にいると落ち着く。だけど何時もあった温かさが少しだけ冷たかった様な気がした
そのことに疑問を持って目を開く。暁も同じ事を感じていたようで、二人同時に目を覚ました
司令官の手を握ると、微かにだが震えていた。まるで何かに恐怖するかのように
雷「…ねぇ、暁」
暁「何?」
雷「やっぱり司令官も怖かったのかしら?」
暁「当たり前よ。だってあの時長門さんに狙われてたのは司令官なのよ?怖くないわけ無いと思うわ」
確かにその通りだ。長門さんに吹き飛ばされた時、あまりの表情に怖くて震えていたが、その時に「提督」という単語が小さい声であったがハッキリと耳に飛び込んで来た。それを聞いて直感的に私達の提督を指しているのは理解した
しかし私は止めるという選択肢が出来なかった。いや、正確に言うならしない方が良かったと言うべきか。もし止めれば確実に巻き込まれる。自分では絶対に無理だと分かる暴力的な覇気を纏っていた長門さんに為す術無しだと直感で分かっていた
幸い高雄さんが追ってくれていた様で任せる事が出来たが、頼る事しか出来ない自分の無力さが悔しかった
あの怖い表情をしていた長門さんの標的となっている司令官は更に恐ろしかっただろう。あの覇気に当てられれば容易に想像出来た
雷「…こういう時、どうすれば良いのかしら」
暁「絶対に大丈夫だって安心を教えてあげれば良いと思うわ。怖がる必要なんか無いって慰めてあげるの」
雷「……」
そんなこと言われても思いつかない。だけど暁がどうしたら良いか教えてくれる時は既に私が知っている時だけだ
しばらく考えを巡らせ、自分の胸に司令官の顔を当ててそのまま抱きしめる。これならすぐそばに私がいるという事を分かってくれるハズだ
暁「…意外と積極的にいくのね」
雷「え?こうした方が良いんじゃないの?」
暁「いや…まぁ、そうなんだけど…」
ぶつぶつと言っている暁だが、何処か覚悟を決めたかのような顔をして司令官の方へと向き直り、私と同じく司令官を優しく抱擁した
司令官の体が私達より小さいからか、二人で司令官を抱きしめていると暁とも顔が近くなって少し顔が赤くなるのを感じる
やがて体がポカポカと温まっていき、次第に目がゆっくりと閉じていく。意識を闇に消す瞬間、司令官の安心した笑顔が瞼の裏に映っていた気がした
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翌朝、呪語の様に目を覚ます合言葉のアラームが鳴る音で目を覚ます。夢のクライマックスだったのにも関わらず、アラームに邪魔されてしまって消化不良だった
いつの間にか左右で寝ている二人を起こさない様にベットを出て軽く体を伸ばす。暁が寄りかかっていた肩が少し濡れていたのでハンカチで軽く拭き、着替えを終えて二人を起こしに行く
二人して少しだけ寝間着がはだけており、へそが少し見えていたり肩が完全に見えてしまっていたりと、ちょっとだけだらしない姿だった
「二人共、ちょっと早いが起きるか?」
雷「んー…あともうちょっと…」
暁「暑い…」
「あいよ」
暁にはお腹だけ布団を被せて時計を手に取る。アラームの鳴るハリを15分後に設定し、音量を最大にして起こすだけに留めておいた
執務室へ行くと大将が既に机に座って作業をしていた。そのまま挨拶を交わして自分も仕事へと取り組む
書類の山から幾つか分からない物があったので、大将に質問をしては簡単にメモをして書類の仕事へと取り組んでいく。教え方が非常に分かりやすく、何時もの様に理解が追いつかないままで書類仕事をするという事が無いのでストレスが非常に溜まりづらい。正直かなりありがたかった
始めてから十分ほど経った時、自分のお腹から音が鳴った。それを抑える様に手をお腹に当てて抑え込むと、何処からか自分とよく似ている音が聞こえてきた
だが振り向いてはいけない。そちらを振り向いてしまえば集中していないと怒られるのは目に見えているからだ
何とか意識を目先の事に向けようとしていると、隣でギッという椅子が動くような音と共に背伸びをしている人物が視界の端に映り込んだ
大将「おい」
「はい?」ビクッ
大将「何を怖がってるんだ…朝飯はどうした?」
「たっ、食べてません」
大将「何故だ?」
「朝飯食べると何時も腹を下すんです」
大将「ふむ…多分それはストレスからくるものだな。何時も腹を下す時は何処か憂鬱な気分で朝を迎えたんじゃないか?」
「え、えぇ。学校がめんどくさいとか辛いって考えてた時はそうだったと思います」
大将「ならば今はどうだ?そんなストレスは感じているか?」
「…いえ。今の所は」
大将「良し。なら一緒に食いに行くぞ」
「えっ」
大将「なんだ。嫌なのか?」
「い、いえ。喜んでご一緒させて頂きます」
大将「おう」
…妙に上機嫌だな。ちょっと何か裏があるんじゃないかと疑うぞ
大将が椅子から立ち上がり、それに続いて自分も椅子から立ち上がる。大将が先行する形で後を付いていき、食堂に辿り着くと既にそこにいた全員から厳しい目が大将に向かって降り注ぐ
しかしそれを気にもしないかのように歩み続け、カウンターでトレイの上に乗った食べ物をお盆の上に乗せ、その場で空いている席をキョロキョロと探す
自分もそれに合わせて席を探すと端の方で二人程座れそうな場所を見つけたので、今度は自分が大将を先導してその席に着く。その瞬間半径五メートル程周りからソロソロと艦娘達が離れていった
「それで、何の話でしょう?」
大将「ただ一緒に食事をしたいと思っただけだ」
「…はい?」
大将「俺だってストレスは溜まる。人間だからな。そんな時に誰かと一緒に飯を食ってもらえるだけで俺はストレスの解消になる。だからお前と一緒に飯を食いたいと思っただけだ」いただきます
…普段見ている大将とはあまりに違う変わりように正直不気味でしかない、が、そういう事なら喜んで付き合おう。自分も誰かと食事をとる事は嫌いではない
「飯でも食いながら話せる話題でもあれば良かったんですけどね」いただきます
大将「俺達が話す内容は周りに聞かせられん事ばかりだからな」
「肩身が狭いんですね。提督って」
大将「提督とはそういうものだ。俺だって急な昇進が決まってここに立った様なものだからな」
「急だったんですか?」
大将「俺は妖精が見えた。丁度深海棲艦が侵攻してしばらくしてからだが、ある日突然な」
大将「そしたら前の元師に提督になれと言われてな。色々言いたい事はあったが、階級が上だった為に言い返す事も何も出来なかった」
大将「俺もお前みたいに変わり者だったら良かったが、生憎と俺は普通の感性だった。コイツ等に囲まれて数年経つといい加減慣れてくるものだが、肩を並べて酒を飲んだりしてくれる奴はそうはいない」
「変わり者だからこそ艦娘達を正面から見る事が出来たんです。戦術なんか知らないし、彼女達の容姿と人間性以外に殆ど興味はありませんけどね」
大将「…元師がお前を提督に任せたのはそういう所だろうな」
「どういう事です?」
大将「根っこがマシなだけの正真正銘バカでアホでどうしようもないクズって事だ」
「…いきなり酷い罵倒ですね」
大将「そんなクソ提督に任せられる程度に今は落ち着いている。どちらかと言えば内乱の方が多い位だ」
「そういえば大きな作戦なんかは聞きませんね」
大将「当分は無い。何年も戦争を続けてるから互いに良い落としどころが無いかを探り探りの状況だ」
「そんな状況が長く続いてるからか、深海棲艦が姿を隠して街に入り込んでるって噂もありますけどね」
大将「グレーだがな」
「…サラッとヤバい事言いますね」
大将「向こうも一枚岩で無いという事だ。こっちと同じ様に色んな派閥があり、多種多様な考えを持ってる奴だっている。知ってしまえばアイツ等は戦争の敵という点以外はほぼ普通の人間と同じだ」
「危険は無いんですか?」
大将「危険があったか?」
「すいません。ここに来てから新聞やテレビを見る機会が無くて…」
大将「新聞なら娯楽室に置いてあるからそれを読んでおけ。情報収集は何時の時代も鉄則だ」
大将「先に戻っておく。お前は今日一日執務だから缶詰になる覚悟をしておけよ」
「はい。分かりました」
ごちそうさまと言って席を立つ大将。それからしばらくしてこちらも食事を終え、ごちそうさまといって席を立つ。食器を直しに行く途中、周りからジロジロと見られたが大将と食事を共にするのがそんなに珍しい事なのだろうか?
???「すまない。少し良いか?」
「ん?」
若葉「初春型の三番艦、若葉だ。さっきの事に関して質問したい」
何処か厳しい目をして自分の体をジロジロと見ている若葉。そして周りからは息を呑む音が聞こえて妙な雰囲気になっている
「さっきのって…大将と飯を食ってただけだぞ?」
若葉「飯を食っていたのは分かる。だが一体何を話してたんだ?」
「…世間話だが」
ざわっと周りが騒ぐ。一体何なのだと周りを見渡すと、若葉が肩に手を置いて凄く焦りを感じさせる目を向けて来た
若葉「君はまだ若い。早まったことはやめるんだ」
「はい…?」
若葉「君なら他にも良い相手はいる。だが大将はやめておけ。性別だってそうだし年齢だってかなり離れてるんだぞ」
「ま、待て待て待て!一体何と勘違いしてるんだ!?」
若葉「君は大将と…その、恋仲で「違うわ気持ち悪い!!」」
最後まで言い切る前に話をぶった切って止める。というか色々と理解が追いつかん
「…一体何でそう思ったんだ?」
若葉「その、提督同士がプライベートで話すというのは…そういう事なのではないかと思って…」
「誰だ!そんなバカみたいな知恵入れこんだ奴!」
若葉「私の前の鎮守府ではそうだった」
「…たまに提督がやめたくなるよ」ハァー…
いったい若葉が前いた鎮守府とはどのような所だったのか。想像もしたくない気色悪い所なのだと勝手に心の奥底で決めておいた