この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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MMDが未だ完成していないので、このまま作成が長引くようであればいっそのこと次のMMD作品を作ろうかと考えています。マジで細かい動きがムズイんじゃ…


小さなズレは大きなズレより直し辛くて分かりづらい

「……」カリカリ

 

大将「……」カリカリ

 

 

ドア コンコン

 

 

大将「入れ」

 

???「失礼します」

 

 

ドアを開いて入ってきたのは摩耶。そしてその後ろには高雄と愛宕がいて珍しさを思わせる。三人姉妹同士で集う時は大抵何かを共有しあってそれをネタに楽しんでいる時だったと記憶しているが、どうにも今の三人からはそれを感じさせなかった

 

この三人が一緒の出撃や遠征を行ったという報告は聞いていない。仮に報告だとしても三人一緒である必要は無いと言うのは分かっている筈だ。と言う事は別の何かという事になるのだが、そうなると三人一緒にいなくては聞けない事だと考えると何だろうという結論に落ち着く

 

 

大将「なんだ?」

 

摩耶「て、提督の行っている事に関して苦言を言いに来ました」

 

 

その言葉に思わずビックリして書類を捌く手が止まる。勿論丁寧に話す摩耶にも驚いたのだが、大将にこのような事を言って尋ねるという行為自体に驚いた

 

すぐさま摩耶の方を向くと冷汗をかいてそうな顔をし、後ろにいる二人も何処か緊張した顔持ちだ。それに対して大将は平然とした顔をしており、いちいち反応してしまう自分が馬鹿みたいに思えてしまう。実際そうなんだろうけど

 

 

大将「……聞こう」

 

摩耶「その…私達は道具です。私達がどうこうされるのは理解出来ますが、それを同じ提督であることに強要するのは間違っていると思います」

 

 

その言葉を聞いてハテナを頭に浮かべた。それは大将も同じな様で、二人して頭にハテナを思い浮かべている。その時にこっちを向いてコイツは何を言っているんだと目で伝えてきたが、自分も何の事かさっぱりなので首を横に振るしかなかった

 

 

大将「一体お前は何を言っているんだ」

 

摩耶「えっ、あ、そ、それ、は…」

 

大将「…用が無いならさっさと退出しろ」

 

 

その言葉を聞いて狼狽える様に俯いて何かを思考している。それに対する答えが自分の中で決まったのか、キッとした目をして大将へと向き直った

 

 

摩耶「っ、そこの提督を手籠めにして高雄と同じ事をしようとしてるんじゃねえかっつってんだよ!このクソ提督!」

 

大将「……はぁっ!?」

 

 

昔のアニメみたいにポクポクと音が流れそうな間に一呼吸を置いて驚く大将。色々言いたい事はあるが、まずは一つ

 

こいつ等恋愛に飢えすぎじゃねぇ…?

 

 

摩耶「お前よ……まさか高雄だけじゃ飽き足らずそこの提督まで手を出そうってんなら容赦しねぇ。以前は高雄の気持ちも汲み取って抑えてたが、もう限界だ」

 

大将「ふざけたことを抜かすな!大体、俺は妻子持ちだ!」

 

摩耶「えっ」

 

「えっ」

 

高雄・愛宕「「えっ」」

 

大将以外「えぇぇぇぇ!?!?」

 

大将「貴様ら…」

 

 

色んな感情が煮詰まったかのような複雑な顔をする。それはまるで怒ってる様な、少し悲しそうな、それはそれは複雑な顔をしていた

 

 

大将「見ろ。これが証拠だ」

 

 

そういって差し出してきた一枚の写真。中にはとても綺麗な美人の女性と、大将と女性の間を挟んで小さな子供が立っていた。女性の薬指には指輪が嵌めてあり、大将も同じ指輪をしていた。二つの指輪は互いに調和している様に光輝き、まるで祝福を知らせている様に見えた

 

 

大将「これが写真に乗ってるのと同じ指輪だ」コトッ

 

 

そう言って大将が出したのはドラマや漫画等で見た事のある指輪ケースだった。中を開くと光るエンゲージリングが視界に入り、おそらくこの指輪の裏側には相手の名前が彫っているのだろう

 

 

大将「子供はそろそろ10歳になる。嫁も俺には勿体ない位の良い人間だ」

 

「…綺麗な人だ」

 

摩耶「……」

 

大将「納得したならさっさと自分の持ち場に戻れ。お前等はそろそろ演習だろうが」

 

高雄「し、失礼しました!」

 

 

慌てて退出する高雄に続いて愛宕と摩耶も部屋から出ていく。皆が出ていった扉が閉じられた時、扉の向こう側で涙が混じった鼻をすする音が聞こえてきた

 

 

大将「はぁ…仕事を続けるぞ」

 

「はい」

 

 

再び書類作業をする音が部屋に鳴るだけとなり、黙々と艦隊の報告が来るまで二人で作業をしていくのだったが、その間大将の顔が少し困った様子であった

 

この時、自分はこの人の事の本音が見えたようで少しワクワクし、新たに見直すきっかけとなっていた

 

 

 

_____________

 

 

 

「こちら終了しました」

 

大将「良し。次は…『コンコン』入れ」

 

電「失礼します」

 

 

綺麗な所作でドアを開き、扉を開けて一礼をする電。ここまで綺麗な所作だと最早どこぞの貴族ではないか?と存分に親ばかっぷりを脳内展開させておく

 

 

電「深夜に発生した長門さんを筆頭に発生した暴走ですが、長門さんを除く他の方達の暴走が終了しました。被害や経緯等の詳細はこちらに記載してあります」ピラッ

 

大将「ご苦労だった。夜遅くまですまなかったな」

 

電「いえ。夜勤は慣れているので大丈夫です」

 

大将「今日はこの後の遠征を終われば予定は明日まで無い。遠征が終了次第休憩に入る様に」

 

電「了解しました」ビシッ

 

 

失礼しますと言って執務室から退出する電。ドアを閉じる瞬間、電がキラッとした笑顔をしたのを見逃さなかった

 

うん。午後からも頑張れるな!

 

 

大将「…好かれてるな」

 

「お陰様で」

 

大将「俺もそろそろ休暇を取るか…」

 

「分かりました。何時頃にしますか?」

 

大将「休みを取る時は本人以外が申請を行っても意味ないぞ」

 

「僕らは提督何ですからそこら辺はちょっと破りません?確かにここでは厳格なルールが必要でしょうが、誰か一人が誰にもバレずにルールを破った程度で崩れる鎮守府なのですか?」

 

大将「軍だからこそ上は頭が硬くなくてはならない…というのもお前に言うのは意味が無いか」

 

「では後ほど貴方の信頼する艦娘に伝えておきますね」

 

大将「いや、そこまで言わせてなんだがそれは無理だ。暴走期に入ってしまった以上、連鎖的に暴走期の発生が起こる。それをどこかで発散させなければ甚大な被害が出るからな」

 

 

この口ぶりからして実際に被害にあった事があるのだろう。どうやら自分ではその暴走期を抑えられないと推測されている様だ。まぁその通りなんだけど

 

 

「参考までに聞きたいのですが、初めて艦娘が暴走期に入った時はどんな被害が出たのですか?」

 

大将「うむ。あの時は突然の出来事という事もあって艦娘達の半数が中破以上になった。当時暴れたのは異動して数か月経った頃の赤城だ」

 

「赤城が?」

 

大将「今こそ落ち着いてはいるが、ここに異動したては過去に色々あったせいで精神的に不安定でな。自分の感情に処理がしきれなくなったんだろう。そのまま暴走して…ってとこだ」

 

「なるほど…」

 

大将「…良し。当時の資料をお前に渡す。それを見て何か良い対処方法があれば教えてくれ」

 

「分かりました」

 

 

少し行って来ると言って席を立ち部屋を出る大将。しばらくすると大将が手に厚手のファイルを持ってきて、日付の書かれた付箋の箇所を開いて見せてくれた

 

 

大将「この日が赤城の来た日。そしてここが暴走期が終了した記録だ」

 

「…反抗期なんですかね?」

 

大将「おそらくな。アイツ等は生まれてすぐ戦場に出る事になる。生まれていきなり戦えと言われてすんなり受け入れられるのは艦娘だからこそ出来るんだろう」

 

大将「だが精神的なモノは生まれた時点で植え付けられたものでしかない。だから精神的に未熟な赤ん坊が起こすようなイヤイヤ期が起こったのだと推測している」

 

「まぁ当然ですね。いくら戦う為の力を生まれながらに持ちつつも、それにすぐさま順応して完璧に扱う事が出来るなんてのは無理と言っても良いでしょうし」

 

大将「まるで知ってるかのようないいぶりだな?」

 

「似たような経験があったので。といっても車のハンドル切ってみろって言われただけですが」

 

 

自分が小学4年生位の頃。助手席に乗ってお出掛けしようというその日。少し上機嫌だった父親に将来は車を運転するんだからと、人のいない真昼間の車が走る道路で突然ハンドルを渡された

 

あまりに怖くて嫌だと拒否していたものの、父親の圧に押されて助手席に座りながら車のハンドルを舵でも切るようにゆっくりと動かして曲がった事がある。何とかその時はそれで乗り切れたが、正直あの経験を二度としたくなくて車の運転が少し怖い。だから免許を取る気も無いんだよな

 

ここで注目すべきは運転をしたという事実ではない。父親からの強制という突然の順応を強いられた事だ

 

艦娘達は力を持っていた。だから戦いに挑むことになった。自分はすぐにでも運転できる助手席に座っていたから。したくもなかった運転を出来そうだからという理由で父親から圧を受けてハンドルを回して曲がるという事を挑む事になった

 

どちらも理由を付けるなら”出来る”から。この言葉にどれだけ重みがあるかを知っている人間は、同じ立場に立ったことのある人間でないと難しいだろう

 

 

大将「お前の感じたそれとはズレてる気がするが…」

 

「僕にはどれも同じ様に感じますけどね」

 

大将「…俺は時々お前が何を考えてるかさっぱり分からん」

 

「僕も大将みたいな普通の人間でしたら少しは大将の事が分かったんですかね?」

 

大将「お前…あぁ、そういう事か」

 

「他人なんてそんなもんです。問題なのは人を知っていても、どんな人なのか分からないのが難題なんですよ」

 

大将「認識の有り無しで人が分かるとでも言うのか?」

 

「それは無理です。精々分かるのは人をグループ…いや、この場合は傾向と言った方が正しいでしょうか」

 

大将「傾向?」

 

「例えば背が高く筋肉質な男性と背が低く貧弱そうな男性。どちらの男性が自信を持っていると思いますか?」

 

大将「筋肉質な方だ。筋肉は強さの証みたいなものだからな」

 

「では質問ですが、どうしてそれが成り立つと思うんですか?」

 

大将「そういうものだからだ。人間の、いや、生物としての本能とも言うべきか。ライオンが生まれながら自身を捕食者だと自覚する力を持っており、ライオン以外の生物は逃げるしかない。力という能力で劣っているからな」

 

「それは思い込みです。世にある漫画にはどうして筋肉質なのに性格が弱弱しいキャラが登場したりすると思うんですか?」

 

大将「…ふむ」

 

「それが厄介なんです。どんなに人を研究して理解したとしてもイレギュラーは絶対存在します。しかしイレギュラーには必ず共通点がある。それがイレギュラーを隠す隠れ蓑の様な存在になっているんです」

 

「ここにも丁度良いイレギュラーがいますしね」ピシッ

 

大将「まるで詩人だな」

 

「考える事を吐露したらこうなってたんです。誰にも話そうとしたこと無いですから、会話になる言い方が全く思いつきませんでした」

 

大将「…お前の言っている事はアレか?アイツ等が暴走を起こすのは何か原因があると?」

 

「ですね。じゃなければこんなに頻発するわけ無いでしょうし」

 

大将「ならば聞くが、それを見つけられる自信はあるのか?」

 

「…正直分かりません。ただ大将のやり方は間違っていませんが正解でもない。そしてそれは僕にも言えます。ならば只管にやらなかった事を行い、少しでも良い結果が得られそうな事をすればいいんじゃないですか?」

 

大将「…そうだな」

 

 

何処か分かっている様な声で答える大将。この人も色々あるのかも知れないが、それを探るのも聞くのも野暮だと思ってそれ以上考える事はしなかった

 

皆が幸せになるやり方なんて存在しない。そんなものがあれば世の中に戦争は存在しないし、ゲームで勝敗を決めよう何て事自体起こらない。結局はマイナスを出来るだけ無くせる様に常に考えて行動するしかないんだ

 

一息付くかのように書類を捌いていた手を止める。手を心臓のある場所に押し当て、心臓の鼓動を手と音で感じ取りながら大将に向かって顔を振り向いた。自分がここに来てから考えては悩み抜いた事を伝えられるように、しっかりと気持ちを落ち着けて

 

 

「大将、近々自分は鎮守府に帰ろうと思います」

 

大将「そうか」

 

「ですがその前に私にやる事があるのは大将もご存知だと思います。その為に大将のお力を借りたいんですが、明日辺りお時間ありますか?」

 

大将「内容による。流石に資材を寄越せと言われても困るしな」

 

「大丈夫です。ちょっと長門と喧嘩するだけですから」

 

 

その言葉に一瞬驚いた顔を見せる。しかしすぐさま顔が元に戻り、やがて目に真剣さが秘め始めていった

 

 

大将「自殺でもしたいのか?」

 

「そんなわけないでしょう。至って大真面目です」

 

大将「…理由と勝算を教えろ。内容によっては許可してやる」

 

「理由に関してはちょっと気になる事がございまして。ここの艦娘が深海棲艦化とでも言いましょうか。飛龍みたいになった事はありますか?」

 

大将「いや。それは無いな」

 

「でしたら暴走は深海棲艦化と関係があるのか?暴走を収める一つの方法として喧嘩したらスッキリ出来るのか?試さずしてどうするんですか?」

 

大将「だから喧嘩をすると?」

 

「世の中喧嘩で深まる仲ってのがあるじゃないですか」

 

大将「深まるのは溝だと思うがな」

 

「その方が都合が良いです。好きよりも嫌いの方が色々落ち着きますし、知ろうとしている事を探るには丁度良いです」

 

大将「…まぁ何もしないより良いだろう。じゃあ勝算は?」

 

「面白い事をする時は勝算とか考えない人間なんで。やるにしても備えと準備くらいですね」

 

 

頭の痛そうな顔をして目の間をつまむ大将。というか実際痛いのだろう。好き勝手してホントにすいません。お詫びに全力で事態の解決に望むんで許してください。無理でしょうけど

 

 

大将「…元師の指示じゃなかったら止めてるからな。やりすぎるなよ」

 

「ありがとうございます」

 

大将「で、具体的に何をしてほしいんだ?」

 

「私に…技術を教えてください」

 

 

 

_____________

 

 

 

いったい皆どうしたというんだ?あの提督がここにやってきてから…いや、大将だけに視点を絞るならもっと前からおかしさの前兆があったんだ

 

大将が大本営に召集を掛けられる前はもっとまともな奴だったはずだ。私を常に前線で戦わせ、駆逐艦達は後方からの支援で済ませていた

 

おかげで私も何も気にせず戦う事が出来た。例え轟沈してもその度にチャンスを利用して蘇っては何度も掴み取って来たし、私に期待してくれている皆の為にその身を削って生きてきたんだ

 

いつも演習が終われば相手してくれていた駆逐艦達が笑顔でこちらを向いていた。何処か不安そうで、それでいてとても怯えた顔だったのをよく覚えている

 

それを見て私は更に精進せねばと考えていた。もうこれ以上あの様な顔を見ない為にも。私がこの戦争を終わらせてもう二度とあのような顔を見ない為に努力すれば全てが良くなる。あんな偽の笑顔でなく、心から笑った笑顔が見れるはずだ

 

…だが大将はある時突然方針を変えてきた。駆逐艦も戦闘に参加させる様になり、満遍なく皆を育てる様になっていった

 

駆逐艦達の怪我は増えていき、駆逐達を守る為に軽巡や重巡達も傷が増えていった。演習を終えた時に私に向けられた笑顔も無くなり、笑う力も無くなってしまったのだと理解した。それが私は許せなかった

 

あんなに私を前線に出しておきながら急な方針転換だと?一体何を考えているんだ?

 

あの大将は前いた鎮守府の提督と比べてまともだと思っていた。私より脆く、力も無く、儚い程に弱い皆の代わりに私を使っていたのに…どうしてあんなにも傷つける事が出来るんだ?本当に正気と思えなかった

 

駆逐艦達の笑顔がやがて鎮守府から完全に消え去るのではないか。そう思うと私は自分の無力さが酷く嫌になった

 

この現状を変えられないのが歯痒かった。どれだけ提督に意見申請しても一向に変わることは無かった。そのせいで鬱憤だけが只管に積み重なっていった

 

もはや限界だった。頭の中がグチャグチャになりそうな程に思考が回転しては出口のない部屋を回って何とか出ようとしているみたいで、どうやって吐き出せば良いのかも分からなかった

 

そんな時にあの提督がやってきた。とても提督とは思えない程に弱そうで、見ていて何故か嫌悪感が頭の中を離れなかった

 

理由は分からない。でもなぜかアイツは観ていて不快感を感じさせた。まるで…そう。とても嫌な物を見ているかの様な嫌悪感だ

 

初めにアイツを見た時は確かに嫌な気持ちではあった。だが同時に期待もした。コイツがここを変えてくれるかもしれないと、ほんの少しだけ期待したんだ

 

だがアイツも大将と同じだった。寧ろ大将より最悪だと言った方が良いだろう

 

言葉にするならとにかく無茶苦茶だ。艦娘と喧嘩する奴は見た事が無い。そんな事をするのは考え無しの大馬鹿だと思うのだが、アイツはそんな大馬鹿を乗り越えてしまった

 

人間と艦娘が喧嘩して人間が勝つ。まるで法螺話だが、現実に起こった。提督という頭しか取り柄が無い知的なバカが艦娘に勝ったんだ

 

ふざけるな。それならなぜ私達は存在しているんだ?私達を一体何だと思っているんだ?私達に勝つことが出来る位に力があるんだったらその手で深海棲艦を打倒してもらおうじゃないか。それが良いだろう?

 

なのにアイツは…それでも尚、艦娘達を戦わせていた。あそこまでの力を持っているのに戦わないのはただの怠慢だ。力を持っているのに振るう時は自分のしたい事にしか使わない最低な奴だった

 

そしてそんな奴が今、私の目の前にいる。営倉に閉じ込められた私を牢屋越しに

 

 

「よっ。気分はどうだ?」

 

 

ただ一つ、その人物が外にいるのではなく、隣の部屋越しに話しかけているというのはどういうことかと問いたかった

 

 

長門「…何してるんだ?」

 

「眠れないから場所を変えに来たんだよ。ここで寝るから起こすなよ」

 

長門「ふざけてるのか?」

 

 

あぁイライラする。ホントにコイツは何故にここまでイライラさせられるんだ

 

 

「お前のせいだよ」

 

長門「…はぁ?」

 

 

いきなりの罵倒を受けた。しかも内容は私に関する事らしい。私が一体何をしたと言うんだ?

 

 

「私が何をしたんだって言いたげな反応だな」

 

長門「当たり前だ!一体何を根拠にそんな事…!」

 

「自分のしたことを分かっていないのか?」

 

長門「それ以前の問題だ!私は正しい事の為にやってきた!こんな所に入れられる事なぞ私はしていない!」

 

「…ここまで来ると重症だな。だからこそ変化していないのか?」

 

 

また何かを知ったかの様な口で話している目の前のコイツに腹が立った。今にも掴みかかりたい気持ちを必死に抑え、思い切り息を吐いてイライラを何とか抑えておく

 

 

長門「…っはぁ。お前は人を怒らせたいのか?」

 

「違うな。そこまで性格悪くないよ」

 

長門「だったら言え。一体何を笑っているんだ?」

 

「笑ってる?」

 

 

…コイツ、気づいてないのか?さっきからニタニタと張り付いたとも思える笑みを浮かべている事に

 

いや、惑わされれるな。コイツの挙動に一々反応していたらペースをどんどん飲まれてしまう事になる

 

 

長門「さっきから薄気味悪い笑みをずっと浮かべてるじゃないか。まるで狂人だぞ?」

 

「…」ペタペタ

 

長門「……」

 

 

……ついに言葉を発せなくなる位に頭が逝かれたのか。それとも自分が何をしてるかも分かっていない馬鹿なのか。もし後者ならコイツにだけは命を預けたくない。心からそう思った

 

 

「…お前のせいだよ」

 

長門「っ!さっきから口を開けばそればかり言って何がしたいんだ!!お前は私を怒らせるのが目的だとでも言うのか!?」

 

「んー?あー、違う違う。ただの独り言だよ」

 

長門「あ、あぁ?」

 

「お前に言いたい事は一言だけだよ。五月蠅くするな。俺が眠れないだろ?」

 

長門「なっ、くっ、うっ…!!」

 

 

お、落ち着け。これもアイツがペースを乱そうとしているだけだ!演習の時を思い出せ!あの時負けたのはこちらのペースを乱されたからであって私の力不足という訳では『ぶぇっくし!』人が考えてる最中にくしゃみを入れるな!

 

 

「あー違う違う。分かってるんだって。そうそう。いやでも分かってないからこうなってて…」

 

長門「だぁぁ!!!さっきからボソボソ何なんだ!言いたい事があるならさっさと言ったらどうなんだ!?」

 

「だからーさっきから言ってるだろ?五月蠅くするなって」

 

長門「そっちじゃないっ!!!」

 

 

も、もう限界だ…というかコイツの話を聞いてるだけで頭がおかしくなりそうだ。というかコイツはさっきから一体何と喋ってるんだ!?

 

 

「…良し。まぁこんなものか」カリカリ

 

 

そう独り言が聞こえたかと思うと次はペンを走らせる音が聞こえてきた。その音を聞いているだけでも不快に感じ、耳を手で塞いで何も聞こえないようにした

 

ようやく訪れた静寂。数分程耳を抑えていたおかげで少し耳が聞こえずらくなってしまったが、これくらい時間が経てばいい加減アイツも独り言が止むだろう

 

 

携帯『アズールレー』ピッ

 

 

…何かキャラクターの様な物が画面に映ったかと思えば速攻で消えた。かと思えば今度は大音量で音楽が流れ、再び私は耳を塞ぐ事になってしまった

 

 

長門「勝手にも程があるだろう!人がいるんだから少しは遠慮したらどうなんだ!?」

 

「分かった分かった。悪かったよ」カチカチ

 

長門「…私に殴られる前に一つ答えろ。お前は一体何を企んでいるんだ?」

 

「知ってどうするんだ?」

 

長門「お前に振り回される位なら、その首をへし折ってやろうと思っているだけだ。だからさっさと答えろ。答え次第では楽に折ってやる」

 

「…まぁ良いか。何も知らずにボコボコにされるのは可哀想だし」

 

 

…?コイツいま何と言った?ボコボコにされる?誰が?誰を?

 

 

「お前の事だよ」

 

長門「…ふっ」クスクス

 

長門「ははははっ!!ボコボコにするだと?誰が!?お前がか!?」

 

「あぁ。”俺”が”お前”をボコボコに負かしてやるんだよ」

 

長門「ふ、ふふふっ。そんな事を言ってきた馬鹿はお前が初めてだ」

 

長門「良いだろう!その挑戦受けて立ってやろうじゃないか!」

 

長門「いつするんだ?今ここでやろうとでも言うのか?それとも負けた時に備えて誰か側にいてもらうか?」

 

「すぐにはしない。無策で挑んだって負けるのは目に見えてるだろ」

 

長門「ふん。少しは利口みたいじゃないか」

 

「その時になったら呼んでやる。だからそれまでここで大人しくしておくんだな」

 

長門「大人しくしていただろう?ここでは足を繋がれてるだけで、何もしてないからな」

 

「…そうだな。ま、今の内に楽しんでおけよ」

 

長門「…?」

 

 

その言葉に何故か引っ掛かりを覚え、問いただそうとしたら耳栓とアイマスクをして五秒と経たずに眠ってしまった

 

だがそんな考えも一瞬の内に吹き飛んだ。コイツをボコボコに出来ると考えれば今までの悩みなんて嘘の様に吹き飛んでいったからだ

 

提督という恨むべき人間を合法的に殴れる。こんな良いことがあるのだろうか?まさに夢の様な出来事で、ずっとこの夢から覚めないで欲しいと考えている

 

しかし…何だろうか。この違和感は

 

言葉にすると難しい。だが何か見落としている様な。変わってしまったかの様な。何とも言えない不思議な感覚がふわふわと自分の中で蠢いているのを感じていた

 

まぁ良いだろう。どうせそんな事も気にしないで良くなるんだ。あの提督を好き勝手に出来る事に比べたら些細な事なんだからな

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