この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

7 / 96
記録した日時 疲れ切った休みの日は退屈だけど暇ではない

「本人が目の前にいるのに何書いてるんだよ」
「別に良いだろ。どうせ同じ自分なんだしさ」
「で、大枚だろうな?」
「勿論。ホラ」
「どうも。けどそんなに金をかけることなのか?」
「入れ替わりがバレてみろ。提督っていう人間が戻る気があったとしても、脱走するんだぞ?」
「…それもそうか」
「んじゃ頼んだ。多分明日の朝はお前に艦娘が何人かストーカーして来るだろうから気をつけろよ」
「はいはい。で、通信機は持ってくんだよな?」
「流石にな。でもそれが?」
「一つだけなのか?」
「一つだけ…あ、そういうことか」
「どうするんだよ。そん時に持ってなかったら疑われるぞ」
「出すのめんどくさいって理由でストーカーから貸してもらえ」
「…この国の未来が心配になってきた」
「お前が提督になってくれよ。お前なら何でも上手くいくだろ?」
「めんどくさい。やりたくない。そして俺はノーマル。お前みたいにアブノーマルじゃないんだよ」
「美人な彼女いるくせに何言ってんだ」
「うるせー」アッ、ホントニイルノ
「それじゃあ行ってくる。留守は任せたぞ」
「あぁ。死神に死なないよう祈っておくよ」


調査書 No.6

【長門の調査(近代化改修について)】

結論から言おう。あれは複合体だ。知らない人から見れば多重人格者に見えるだろうな

 

長門は結構豪快に見えるが、かなりの几帳面だったらしく、手帳をつけていたらしい。そこに彼女の歴史があった

 

長門との喧嘩の後。長門が最後の瞬間に手帳を大将に渡していたらしく、それをコチラでも見せてもらった

 

直接の内容はここにかけない。しかし彼女がどのような問題を抱えていたのかを手帳が分からせてくれた

 

中身は彼女が生まれた場所で近代化改修を受けた事。そしてここに来ることになった経緯と過程。自分が消えていく恐怖が綴られていた

 

どうやら碌でもない近代化改修を受けてしまった様だ。言わば正規から外れた。いや、これは外れたと言えるのだろうか?

 

妖精さん達がどの程度他の提督達に干渉しているか分からないからな。自分の事ばかり考えていた弊害がここに来てやってくるとは。何とも複雑な気分だ

 

ともかく自分の知っている近代化改修とは違う方法で近代化されたのが大将の所の長門だ

 

解体される中、アイツは抵抗したのだろうか。それとも無理矢理押さえつけられてでも実施されたのだろうか。それを自分にも知る理由があるにはあったが、聞かない事にしておいた。どうせ分かりきっているし、無理に辛くなる必要は無い

 

近代化改修を皆に受けさせたかったが、今回の件で少し考えさせられる。心をこれ以上痛めたくないっていう、現実を逃避した者の言い訳としてここに記録しておく

 

やはり超えられない。非情という感情のリミッターを。これを超えてしまえば自分は劣等感や嫉妬で誰彼構わず殺す事になってしまいそうで、どうにも出来ない

 

過去の自分なら恐らくはただの妄言として受け止めていたが、今は力を得てしまった。これからは妄言ではなくなり、ただの現実として行われるかも知れない。それだけは何としても阻止せねば

 

…長門もこんな気持ちだったのだろうか。最後の最後で大将に手帳を渡すなど、後の事を気にかけた行動が出来るなんてあの長門では考えられないしな

 

それが元の長門なのか。それとも別人と成り果てた別の長門だったのか。もはや知るすべはない

 

しかし気になる。何故正規と言えない近代化改修を行うことになったのだろう?その始まりが知りたい

 

誰がきっかけだ?その理由は?目的は?

 

考えれば考える程自己的な理由しか思いつかない。大方艦隊運用に困った提督が考え出したとかそんなのだろう。窮地に追い込まれた人間ガ考えついたのなら称賛ものだな

 

そうなると沈んだ艦娘のサルベージを行えた理由は?ゲームだから沈んだ艦娘は助けられない。という理由だけで片付けるには現実をゲームとして見る必要がある

 

そうなるとこの件に関わっていそうな所と言えば…やはり山風を拾ったあそこだろう。というか実験に色々協力したから何となくは知っているし

 

…近々山風のメンタルケアをしておくか。あそこと関わるのは必然だろうし、もしかしたら何かの影響で深海棲艦化が始まってもおかしくない

 

さて、関係無い事も書いてしまってるしここで終わりとしよう。近代化改修をする時はシステムを使用するか、妖精さんに近代化改修の事をもう少し詳しく聞いておこう

 

 

 

_____________

 

 

 

【予知夢に向けて】

 

腕の切断から数十秒は耐えられた。高速修復剤による回復も問題なし。忍耐はボチボチといった所だろう

 

長門との喧嘩でより明確に自分の限界と死の狭間らしきモノを体験出来た。彼女は良い踏み台となってくれた。まことに感謝している

 

度胸はこれでいい。後は糸が針の穴を通る様な精密性と落ち着きが必要だ。それさえ出来れば確実に成長出来ている筈だ

 

しかし予知夢はまだ見れていない。こんなところで死ぬわけにはいかないのに

 

子供の頃から度々見ていた予知夢だったが、歳を取るに連れて段々と見られる間隔が離れていき、高校生の頃に見た時は数年後に発生した出来事を予知していた

 

だからこそ夢にはより一層警戒をすることになった。リアルであればあるほど予知夢である可能性が高くなり、見た夢はほぼ必ず現実のものとなっていた

 

そんな認識をしていた夢の中で俺は死んだ。現実と区別がつかなくなりそうな程のリアリティのある夢の中で、確かに死んだ

 

だが…それも高校を卒業する直前に見た夢。思い出しては恐怖をし、経験則から来る確実に起こると確信している未来のせいで、、、くそっ。言葉がまとまらない

 

大地震が発生し、恐らくビル内のフロアらしき一室で棚から落下した物が窓ガラスをブチ破って、そこから部屋内の空気を外へと吐き出す穴を作っていた

 

そこから身長の高い女性が一人外へと吸い出され、不味いと思った自分はすぐ近くに置いていたサラリーマンが使いそうな自分のビジネスバッグを手に持って部屋の出入り口から逃げようとそこへ駆けだしたが、吸い出す力に勝てず自分も外に吸い出されてしまった

 

自分が飛び出した割れた窓を見ながら地面に背中を向けて落下していく途中、すぐさま自分は手に持ったバッグをクッションにしようと自身の背中へと置いた

 

これで少しは衝撃を和らげられる。もしかしたらこれで助かるかも知れない。そんな希望は地面に落下した瞬間に全て破れた

 

衝撃が背中から腹へと貫き、板チョコを割って半分にするかのように自分の腹は真っ二つに裂けていた

 

腹は赤い血で染まり、下半身は砕けて動けなかった。血を流している腹からは血以外の何かが液体の様に垂れ出ているのを確かに感じつつ、次第に寒くなっていく自分に確かな死を感じていた

 

呼吸を三回した辺りでやけに眠気を感じ、更に二呼吸挟むと睡魔に耐え切れず目を閉じてしまい、一呼吸しようとする直前で自分の意識は完全に途絶えた

 

そこで自分は夢から目が覚めた。体から出血はしていないし、足だってちゃんと動いていた

 

しかし途端に痛みが走った。まるで鋭い線の様な痛みが脳の一部分から脳幹へと伸びていき、それは背中へと伝わって自分はそこから動くことが出来なかった

 

死んだ。確実に。その経験は先程の痛みによって体へと刻み込まれたような気がする

 

あの夢は起こりうる未来の可能性の一つではあるが、それでも必ず死は何らかの形で自身に降りかかるのだと過去の経験から確信に近い形で思っていた

 

未来の話で有名な逸話がある。目的地へ向かう為の乗り物は違えど、行きつく目的地が同じであるならば必ずそこへ着くという事だ

 

この場合、目的地となるのは死であるのか。それとも地震という災害なのか。これがどちらか分からないのだ

 

例えとして旅行をあげよう。自分は家から少し遠くの温泉旅館に泊まろうとする

 

自分は乗り物に乗り、目的地である温泉宿に到着した。ではそこで旅行は終了であるのだろうか?

 

答えは【No】。旅行に来たのに目的地に着いて即帰る。なんておかしいだろう?

 

目的地へは間違いなく辿り着く。だがそこで終わりではなく、目的地に着いたのならその目的を果たさなくてはならない。でなければ何故自分はここに来たんだ?って話になってしまう

 

ここで夢の話に戻ろう。あの夢の目的地が地震という災害である場合、災害は回避不可能の絶対に起こる出来事である。だがその後に付いて来た死は一体何であろうか?

 

自分は災害によって命を落とした。では死ぬと言うのが自分の目的であったのか?

 

否、絶対に違う。俺は絶対に死なないし、例え何があっても死だけは選ぶまいと決めている

 

目的は災害から身を守り切って生きる事。だが自分の行動がお粗末だった為に自分は死んだのだ

 

あの夢による死は恐らく避ける事が可能だ。もっと自分が成長を重ねる事が出来ればきっと…

 

あの夢を最後に予知夢は見ていない。それが自分が死ぬ事が確定しているので未来が見えないのか。それともただ単に見れないだけなのか。前者でないことを祈るばかりだ

 

必ずこの死は乗り越える。そして俺は生き続ける。生き続けてやるんだ

 

しかしだ。それはあくまで前までいた自分の世界での話であり、ここに来てからの話では無いのだ

 

ここに来てから見た夢は悪夢銃によって見た夢がほとんど。夢占い等で調べられる程度の夢も見たが、どれも予知夢という程の内容では無かった

 

俺が見ないのはただ見る時期でないだけなのだろうか?それとも死ぬ未来が確定しているから未来が分からないのだろうか?

 

悪夢銃で見る夢は予知ではない。純粋な悪夢であるのは身をもって体験した。最早自分に向けて使う必要も無いだろう

 

…これ以上考えると気が滅入りそうだ。これを書くのはここまでにしておこう

 

※忘れない事:生きる為にも成長を忘れないようにするのと、後悔しない様に生きること

 

 

 

_____________

 

 

 

【提督・艦娘・深海棲艦について】

 

深海棲艦の受け入れを開始した。元帥によると初の試みであるとのことだった

 

建造によって艦娘を増やす事は良いとされている反面、深海棲艦の受け入れに関しては建造をするより何倍も面倒くさい事があった

 

増える書類作成。深海棲艦側とのコンタクト。艦娘との軋轢を生まないための手段。メインとなるのはこの三つくらいか

 

外出に関しても深海棲艦一人で出ることは許されない。必ず重巡以上。練度によっては駆逐艦娘の同伴でも許されてはいるが、最低でも50以上というかなりの制約がかけられる

 

くそめんどくさい。しかしコレをしなければ仕事として成り立たなくなる

 

しかし、ぶっちゃけてしまうと上記手順は必要ないのではないかと考えている。真に敵対している深海棲艦ではなく、一部の友好的な深海棲艦が時々入り込んでるらしいのは一部の人間が噂程度に囁かれているので、そんな事になっているのならアピールとして大々的に歩かせて良いのではと思う

 

…ま、そんな簡単に歩かせてしまえば大抵の人間は逃げ惑い、軍人に対する不信感。そしてそのきっかけとなった司令官は即軍法会議に掛けられて射殺でもされるだろうな

 

けど分からない事がある。何故敵対している深海棲艦はコチラへやってこないのだろうか?

 

深海棲艦で内部分裂が発生。それにより深海棲艦内部でコチラ側へやって来ようとしている深海棲艦を足止めでもしているのだろうか?

 

感情という、全ての生物が持つものをより正確に察知を出来るという深海棲艦である為か。もしかしたらそういった敵対する相手の感情を見極める事が出来ているのかも知れない

 

…仮にそいつらが街で暴れたとしたら返り討ちにあいそうな気がしてならないのは何故だろうか。そうなる前にこちらでぶちのめしてやるのが深海棲艦にとっても良い事だろう

 

しかしだ。たまたま流れてきたネットニュースには、深海棲艦が初めて現れ、そして侵略された町が今日で10年という記事を見つけた

 

初めて出現してからの数年は深海棲艦の侵略により付近の町や村は壊滅的な打撃を受け、死傷者総数も優に10万は超えていたそうだ

 

艦娘が出現しても尚、その勢いは留まることを知らず、元帥が就任したと思われる深海棲艦の侵略から7年の時を経て、ようやくその様な被害を減らせたという

 

元帥の活躍は日本に知れ渡った。そして彼女が艦娘を自身と同じ人間として扱っている姿を国民の前で大々的に発表。おかげで艦娘に対する嫌悪感も大分無くなっているようだった

 

唯一つ、軍人を除いて

 

艦娘という存在の力を。強さを知っている軍人からすれば艦娘は何時爆発するか分からない爆弾の様なものであった

 

それが深海棲艦と同じく人知を超えた力であるなら尚更である。そして彼女達の精神が一定を超えると闇堕ち…いや、深海棲艦化してしまう事を知っている者ならば、尚の事警戒をするだろう

 

だが疑問がある。それを分かっている筈なのに、何故艦娘に対する扱いが改善されないのだろうか?

 

何時でも解体や轟沈という処分がとれるから?心から守るべき対象だと思われているから?提督としての能力を過信しているから?

 

或いは…そうなっているのか?

 

…無茶苦茶な理論だがこれな気がする。というか艦娘と深海棲艦の存在がそれを裏付ける証拠ともなっている為、もはやコレな気がしてならない

 

人類の敵である深海棲艦。人類の味方である艦娘。相対する二つの存在と、艦娘の総督である提督。或いは存在を認知出来ていないだけで深海棲艦にも提督はいるのかも知れない

 

…いや、入れ替わったのか?

 

提督がコチラにいるんだ。向こうにもいないってのはバランスが取れない

 

それに男と女の貞操概念が反対になっているんだ。提督としての心構えも入れ替わったと考えたらどうだろうか?

 

いやでもなぁ…それだと元は深海棲艦側が艦娘達みたいな扱いになってるんだろ?それはストレスたまるよなぁ…というかイライラしてその矛先が人類に向かってた。なんてアホみたいなオチになりそうであんまり考えたくないんだよなぁ

 

というかその説を推すと今のアッチは結構気のいい奴って話になるんだよなぁ。ぶっちゃけやりづらくなるから勘弁してほしい

 

…やはり検証がしたい。どこか手ごろな提督が死んでくれないだろうか?そうすれば艦娘の異動とかでウチに来た時に本心を聞くことが出来るし、提督死亡によって深海棲艦の行動も起こるだろうからその時に記録が取れるしな

 

それか自分から死にに行ってみるか?そうすれば何かしらのアクションが向こうの方からやって来るだろう

 

そうと決まれば話は早い。流石に今提督を殺すと問題の収拾が出来そうにないので自分から死にに行く方向で考えよう

 

大淀のおかげで休みはある。コレを利用しない手はない

 

樹海だと人知れず死にに行く自殺者だ。そうではなく、深海棲艦と顔を見合わせることが出来る場所に向かうべきか

 

深海棲艦によって壊滅した町はココからだとかなり遠い。明日の朝に出発しては何も得られずに帰ることになりそうだ

 

電車も深海棲艦に壊滅させられた町とあってそこは通っていない。なので車やバスが必要となってくる

 

タクシーだと金が掛かりすぎるので、寝台バスに乗って向かおう。ただそうなると寝ている間の身代わりが必要だな

 

それに出ていく時には門前にいるバイトの人達に必ず見られるだろう。黙秘の為の袖の下として…5枚で良いか

 

入れ替わりに関しても丁度アイツがいる。3枚位で了承してくれるだろうし、早速頼み込んでみるか

 

念の為、艦娘が寝室にやってくる事を考えて幾つか警告をしておこう。それと朝の段階で艦娘と一緒になるだろうから、外出費も考えて先払いで2枚握らせるか

 

それじゃ、やる事も決まったしそろそろ準備をしよう。明日が楽しみだ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。