この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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pixivに投稿したハロウィンが出来た時点でこの小説の進捗は約4割。タイトルすら決まっておらず、マジでこの数日はずっとイベント挑んでる気分だった…
仕事の時間はそのままで一日が32時間位に増えないかなぁ。ぶっちゃけ8時間くらいずっと小説のネタ考えては作っていたい


焦って負けて何をしり得るのか?

「大淀、これの確認頼む」ペラッ

 

大淀「はい。了解しました」

 

「電、演習メンバーのコンディションはどうだ?」

 

電「全員やる気いっぱいです。キラキラしてると言って良いですね」

 

 

演習メンバー

電改(47):旗艦

山風改(42)

時雨改(31)

夕立改(30)

天龍改(36)

龍田改(38)

 

 

「良し。それじゃあ各自の装備を点検しておいてくれ。演習中に故障しても相手は待ってくれないぞ」

 

電「了解なのです!」

 

大淀「提督、こちらの書類ですが…」

 

 

山風「提督忙しそう…」

 

夕立「ほらほら、私達は演習の準備をするよ〜」

 

時雨「ヲ級とル級達は参加しないのかい?」

 

夕立「二人を演習で出すには早いんだって。深海棲艦を見たらパニックを起こす艦娘だっているかも知れないからね」

 

時雨「まぁ…ね。それに僕にも言えた事じゃないし」

 

夕立「そういえば最近変わらないね。愛宕さんも普通の姿のままだし」

 

時雨「アレ結構疲れるんだよ…精神的にも肉体的にも」

 

山風「…イメチェンでもするの?」

 

夕立「そっか。そういえば山風は知らないんだっけ」

 

時雨「まぁちょっとね。変身みたいのが出来るだけだよ」

 

山風「変身…!」キラキラ

 

時雨「いや、キラキラした体になって服が出てくるとかじゃないからね。単純に髪と肌が変わる程度だよ」

 

山風「…なーんだ」

 

「あ、それと山風。今回はお前が演習に参加すると決まっているが、大丈夫か?」

 

山風「うん。やれるよ」

 

「良し。それじゃあ周りのサポートを頼んだぞ。お前は電に次いで二番目に経験豊富だからな」

 

山風「分かっ…んんっ。分かりました」ビシッ

 

「それと時雨と夕立、二人は山風の指示に従って行動してくれ」

 

時雨「えっ?提督は何か作戦とかないの?」

 

「無い。現状奇策を使わなきゃ相手に勝てない作戦しか思いつけないんだ。提督としての能力が低いからな」

 

時雨「でもそれじゃあ旗艦の電は…」

 

電「もし私が轟沈判定を受けたら通信は出来なくなってしまいます。それに備えて山風さんに第二の旗艦としてお願いしたいのです」

 

山風「もし私が先に轟沈判定を受けた時は?」

 

「天龍達のどちらかが旗艦を受け持つ事にしている。それに関しては既に二人に通達済みだから後で聞いておいてくれ」

 

夕立「了解しました!」

 

 

元気に答える夕立。普段の提督とは違ってやる気を感じさせる様子に夕立以外の皆も士気が高いみたいだ

 

程よくリラックスした体に落ち着いている頭の中。呼吸をすれば体の調子が手に取る様に分かる

 

負ける気がしない万能感にも似た陶酔感が体の隅々から感じるが、それに溺れない様に心ではキュッと覚悟を決める

 

提督の事だ。もしかしたら元師の時みたいにとんでもない相手を選んでくるのかも知れないが、流石に勝てない相手では無いだろうと思いたい

 

 

大淀「提督、演習のお相手からお電話です」スッ

 

「お電話変わりました。こちら提督です」

 

電「そういえば演習の相手は誰なのです?」

 

夕立「え?電ちゃん知らないの?」

 

電「はい。まだ司令官さんから教えて頂いてなくて…」チラッ

 

「はい。今回は耐久でお願いします」

 

全員「???」

 

「では、失礼します」ピッ

 

電「あ、あの…?」

 

「演習相手が着いたそうだ。もう既に海で準備してるらしいから皆も行ってこい」

 

電「いや、あの…相手の事を教えて頂かないと…」

 

「あー、今回はちょっと特別でな。何時もみたいに艦娘が相手じゃないんだ」

 

時雨「…深海棲艦と演習するってこと?」

 

「あーいや。そういうわけでもないんだが…まぁ行ったら分かるよ」

 

「ただ一個言えるのは、相手がヤバイ奴だとは言っておく。攻撃を喰らったら一撃でやられるぞ」

 

電「わ、分かりました…」

 

 

 

海上

 

 

 

天龍「それで何もわかんなかったのか?」

 

電「はい。電話で耐久とか良く分からない事を言ってましたが…」

 

天龍「なんじゃそりゃ?」

 

放送『え、えー。互いに配置に着いたとの事ですので今から演習を始めます』

 

放送『制限時間は99秒。その間、電さん達は攻撃をせずに回避だけに徹して下さい。一応攻撃しても良いらしいですが、当たらないから意味が無いとの言伝を提督から頂いています』

 

龍田「島風ちゃんみたいに速くて当たらないから意味が無いって事かしら?」

 

時雨「流石に島風でも当たる時は当たるからなぁ…それよりも速い人って事なんじゃない?」

 

 

放送『それでは演習を開始して下さい。あ、これを押す…(カチッ)』

 

BGM『U.N.オーエンは彼女なのか?』

 

 

山風「お、音楽が流れてきた…」

 

夕立「…めちゃくちゃ嫌な予感がするっぽい」

 

電「総員!全方位を警戒!耐久と言うことは何処かから不意打ちの攻撃がずっと飛んでくるのかも知れません!」

 

 

電の言葉が言い終わると同時に、何処からか大小様々な色鮮やかな玉が誰もが目視出来る程の少し早いスピードで辺りを囲む様にして飛んできた

 

 

山風「こ、これ、一体何処から飛んできてるの!?」

 

龍田「砲撃音すら鳴らずに飛んでくるって厄介にも程があるわよ!」

 

電「玉は遅いですが物量で攻めてきています!隙間が存在するので囲まれる前にそこから抜け出して下さい!」

 

 

電のその言葉に皆が頷き、陣形を崩さない様にしながら回避を行う。初めに見た時は驚いたけど、確かに隙間が存在しているし、速度も遅いという事があって回避は結構容易いが、集中を切らした瞬間にぶつかってしまいそうだ

 

それにしても玉をギリギリで避けるとカリカリという音が聞こえると共に、自分の中で何かが僅かだが積み重なっていく物を感じるのは気のせいだろうか?

 

 

夕立「敵影が見つからない…まるで夜戦をやってるみたい」

 

天龍「しっかしよ~、こんな遅い玉にぶつかったって何とも無さそうだけどなぁ」スーッ

 

電「!触っちゃ駄目なのです!」

 

天龍「大丈夫だって。こんな玉に触れたくらいで何も変わんねぇよ」ピトッ

 

 

服 ピチューン

 

 

天龍「……は?」E.勝負下着

 

放送『天龍、轟沈判定』

 

龍田「天龍ちゃん体!体隠して!」

 

天龍「う、うおぉっ!?何で服が弾けたんだ!?」

 

放送『考えなしのアホバカ天龍。始める前に当たるとヤバいって言ったろうが』

 

天龍「だからって服が弾けるとは思わないだろ!っていうか暴言が酷い!」

 

放送『あー、皆見ての通り、当たると服が弾ける。天龍を見て分かったと思うが当たれば即轟沈してほぼ全裸となるので気をつけるように』

 

時雨「…電」

 

電「聞いてないのです…」

 

放送『それじゃあ引き続き頑張れ。ちなみにまだ7秒しか経ってないぞ』

 

 

そこからは訓練ではなく、自分達の尊厳を守ろうとした者達の戦いだった

 

砲撃で玉を壊そうとした山風だったが、まさかすり抜けるとは思わなかった。そのまま山風も天龍と同じく服が飛び散った。負けた

 

そして何らかの法則性を見つけた電だったが、それを伝えようとする前に攻撃パターンが変わった玉にぶつかってあえなく轟沈判定となってしまった。まだ僕が勝っている

 

龍田は攻撃パターンが変わった玉にすぐ慣れて最小限の動きで回避を続けていたが、電がやられてしばらくすると龍田が玉による集中砲火を受けて囲まれた玉にぶつかって服が弾けた。流石に軽巡には勝てなかった

 

いよいよ夕立と二人きりになってしまった。時間を確認したかったが、確認した瞬間やられてしまいそうなのですぐさま目の前の出来事に集中した

 

夕立とは離れて躱す様に提案し、それに夕立も頷いて互いに離れた場所で回避をしようとしたが、これが悪手だった

 

今までは二人の距離が近かったから互いに注意を呼び合っての回避が出来た。だが離れて動くという事は必然的に玉が出てくる場所に近づくという事であり、突如出現した玉に夕立とほぼ同タイミングでヒットして同時に服が破けた。揺れる程の胸はちゃんとあったが夕立にも負けた。悔しい

 

 

「はーいお疲れ。それじゃあ次の演習いくぞ」

 

天龍「せめて服を着替えさせてくれ…」

 

電「…酷い目にあった」

 

「君もお疲れ。またお願いするよ」

 

金髪少女「うん!またね提督さん!」

 

山風「さっきの子って確か…提督が保護した子?」

 

「おう。ここで働いてる人達と買い物行ったら偶然見つけてな。知り合いだってんで連れ帰ったんだ」普段はここで働いてもらってる

 

夕立「…世間は狭いけど世界は広いっぽい」

 

龍田「変態ロリコンとか救い様がないわよね~」

 

「悪かったって」

 

龍田「…もうちょっと何か反応してよ」

 

 

 

_____________

 

 

 

提督             艦娘保全

電改(47):旗艦       電(24)

山風改(42)         山風(17)

時雨改(31)         時雨(15)

夕立改(30)         夕立(15)

天龍改(36)         天龍(22)

龍田改(38)         龍田(19)

 

 

「ミラーマッチか…」

 

電「……」

 

「どうした?何か言いたそうだな?」

 

電「いや…どう見たって相手の司令官さんのお名前が偽名っぽいっていうか、明らか偽名って言いますか…」

 

「何でも相手のコードネームらしい。わざわざ艦娘の為を思ってアレにしたそうだ」

 

天龍「…なんつーか、アレだな」

 

山風「重い…」

 

龍田「保全って所にイラっとするわね~」

 

「さて、リストを見てもらった通りだが今回はミラーマッチだ。艦娘達の練度はお前等より低いが、相手の提督がこちらよりもキャリアが長い人だ。おそらく作戦で負けると思うから力でゴリ押せ」

 

時雨「了解。最初から提督の作戦に期待はしてなかったけど、提督の期待に応えられるようには頑張るよ」

 

「…まだ怒ってる?」

 

時雨「さぁ、どうだろうね?」ニコニコ

 

「とにかく頼んだぞ。それと作戦だが、倒せる奴から倒していけ。相手は未改造の駆逐艦だから今のお前等なら一撃で中破はほぼ確実だろうからな」

 

電「しかし相手もこちらを一撃で中破一歩前まで持っていける筈です。相手の行動一つ一つに警戒していきましょう」

 

演習メンバー「了解!」

 

 

海上

 

 

放送『それでは演習を開始してください』

 

時雨「時雨、出るよ」

 

夕立「夕立も出るよ!」

 

電「あくまで牽制程度でお願いします。深入りすると囲まれますよ」

 

 

分かってると言いながら笑顔で応えるが、先程の演習が記憶に新しい為か多少強張った笑顔だった

 

本隊と離れて夕立と二人で出たのは相手を挑発する為だ。それに乗せられてくれるとは思わないけど、先入観を相手に植え付ける事が出来る事が目的だ

 

舐めている。それを心の何処かで植え付けておくだけでも、それは後々の行動に積み重ねて生まれてくる筈だ

 

提督が僕達に良く見せていた舐める様な態度。アレはこちらの油断を誘ってお前等のペースに合わせてやると思わせる一つの演技だ

 

このミソは相手に思わせるという点だ。表では相手を舐めるという楽観的にも見える態度でも、裏ではしっかりと戦闘態勢を取って常に警戒を崩してはいない。舐めると言うのはあくまで戦意を隠す為のモノだ

 

だがそれも通じない相手がいる。その答えが今、これから起ころうとしている

 

 

夕立「…そろそろ相手の天龍さん達の射程距離だよ」

 

時雨「うん。だけど…」

 

夕立「…動く気配が無いね」

 

電『二人共、電達もそちらへ向かいます』

 

時雨「了解」

 

夕立「……」

 

 

夕立の顔がずっと強張っている。それは緊張ではなく、相手への警戒を表に出しただけの事だった

 

何故表へと出したのか。その理由は簡単で、相手の反応が一切変わらないからだ

 

以前川内達がいた鎮守府であった演習で実弾を使っての演習を行っていた艦娘達がいたが、それと同じ様な雰囲気を感じたからだろう

 

だけど…今回は悪意ではなく、何も感じないというものに見えない危機感を抱いていた

 

 

電「時雨、夕立、相手の動きはどうですか?」

 

夕立「何も変化なし。寝てるのかと思う位にピクリとも動かなかったよ」

 

天龍「…いやーな予感がするぜ」

 

龍田「また突っ込んで自滅しちゃうの?」

 

天龍「もうしねぇよ!…俺は川内程に鋭くねぇけどさ、アイツ等を見ると過去の俺達より強い気がしてな。練度では俺達が勝ってる筈なんだが…」

 

山風「…多分、近代化改修だと思う」

 

電「近代化改修…」

 

天龍「なんだよそれ?」

 

山風「簡単に説明すると…沈んだ艦娘をサルベージして、その時に取れた艤装を他の艦娘達の力に変換するの」

 

龍田「…なるほどね」

 

時雨「待ってよ。サルベージって…そんなことが可能なのかい?」

 

山風「出来るよ。ただそれなりに資材を使うから出来ないって提督と出会った鎮守府で聞いたことがあるけど、デメリットもあって…」

 

夕立「皆、話してる暇は無さそうだよ」

 

電「…相手、動きました」

 

 

全員が一斉に構えを取ると、あちらもそれを見て同じく構えながら接近してきた

 

距離は中距離に入った。それと同時に龍田が砲撃を行ったが、相手の龍田も寸分違わぬタイミングで砲撃し、同じ軌道を描きながら二つの砲撃は宙でぶつかりあった

 

 

龍田「…めんどくさい事してくれるじゃない」

 

電「魚雷、いきます」

 

 

四連装魚雷が電から発射され、相手の電も同じ様に魚雷を飛ばして来たが、電と違って一つ少なかった

 

相手の装備は三連装魚雷なのだろう。これなら数で押し切れると思っていた矢先、相手の魚雷が僅かに速い気がした

 

 

電「総員回避態勢!酸素魚雷が来ます!」

 

天龍「砲撃も来るぞ!備えろ!」

 

 

電の合図で全員が回避の姿勢を取り、天龍の警告と同タイミングで砲撃が飛んできた

 

水柱が高く立ち昇り、それを目隠しにでもするかのように魚雷が足下までやってきている事実に危険を感じた

 

自分と夕立は後ろに魚雷を流すことで回避したが、後方で爆発が発生し、そちらを見ると山風が魚雷に被弾していた

 

水柱がようやく収まると、先程まで中距離辺りにいた相手が近距離にまで接近していた

 

電の指示を待つ暇もなく、コチラが攻撃に転じる前に相手の方が僅かに早く攻撃を繰り出してきた

 

顔や体に当たるであろう着弾までの軌跡を常に予想しながらギリギリの所で砲撃を見切っては避ける。一つ前の演習で行っていた事が功を奏しているのを感じていた

 

だがそれは周りも同じかと言えば違った。少なくとも山風は大破に近い中破となっており、軽巡の二人は小破。それ以外は小破未満だ

 

少しだが押され始めている。練度はコチラが上だが、相手の戦略が上手く進んでいたのを目に見えて理解出来ている

 

 

電「総員、攻撃開始!」

 

 

電の声で皆が砲撃を開始しようと砲門を相手に向けた。だがそれを想定していたかの様に副砲による攻撃が飛んできた

 

しかも相手との立ち位置がいつの間にかT字不利になっている。これでは味方が相手を隠す壁となってしまい、コチラの攻撃が当てづらい

 

副砲による攻撃が幾つも飛んでくるが、それにも関わらず僕の頭の中は落ち着いていた

 

しっかりと砲撃を行う為の姿勢をとり、相手へと照準をしっかり合わせて引き金を引く

 

砲撃は仲間のギリギリを掠めて相手へと飛んでいき、同じ時雨へと着弾した

 

 

放送『艦娘保全、時雨、夕立、共に轟沈判定』

 

 

夕立も?そう考えていると側にいた夕立から喜びの声が上がっていた

 

どうやら夕立も同じく狙っており、それがヒットしたのだと理解したが、夕立の顔に相手からの砲撃がクリティカルヒットした

 

 

放送『提督、夕立、轟沈判定』

 

 

…アレは後で提督のお説教だろう。そう考える位の油断も自分はしていた

 

相手の副砲が止んだと思ったら再び主砲による砲撃が飛んできた。それを肩で受け、中破判定をされてしまった

 

流石に不味かった。唯一の大ダメージを狙える魚雷が使えないのは痛すぎるし、何よりもう時間が無い

 

相手は未だ傷が浅い。対してこちらはギリギリ。最早自分達に出来る事と言えば一つしかない

 

 

時雨「電」

 

電「…致し方ないのです」

 

天龍「作戦は?」

 

龍田「ガンガンいこう?」

 

山風「後で怒られるんだろうなぁ…」

 

 

単縦陣の陣形となり、相手に向かって速力を全開にして進む。完全な捨て身戦法であったが、もはや勝つにはコレしかない

 

その後は装填が完了しては撃つだけだった。途中で逃げ場を無くす様に向かってくる魚雷を相手に接近しながら避けては副砲による攻撃を掠る程度に喰らいつつ、主砲による攻撃を起こさせる前に何とかこちら側の攻撃を当てようと無理矢理にでも腕を前に出して照準を相手に合わせておく

 

アナウンスが鳴る数秒前。何とかこちらの主砲装填が完了し、やぶれかぶれに放った主砲が相手にヒットして爆発を起こした所で終了のアナウンスが鳴った

 

 

放送『演習終了です。互いにその場で静止して下さい』

 

放送『演習の結果、艦娘保全の戦術的勝利とします』

 

 

…ちくしょう

 

 

 

_____________

 

 

 

完全に相手を舐めていた。それは提督もそうだったろうけど、それでも自分達の慢心も確かに存在した敗北だった為に、尚悔しかった

 

電を除いた皆が食堂に集まって反省会を開いていた。そこに鎮守府の警備をしている人達も集まっての反省会が行われたのだが、意外にも戦闘に関する学びが非常に多かった

 

まぁ、途中から空を飛ぶとか弾幕ごっことか良くわからない単語が行き交っていたが、単騎だけでの活躍が多く聞かされた

 

やがて報告を終えた電も食堂に集まってしばらく反省会をしていると、同じく食堂にやってきた演習相手が入口にいた

 

 

巫女のコスプレをした少女「…それじゃ、私達は仕事に戻るわ」

 

白黒服の金髪少女「じゃあまたな!今度は私とも演習やろうぜ!」

 

電「はい。また」フリフリ

 

夕立「…ここの風紀ってどうなってるんだろう」

 

天龍「突っ込んだら負けだ」

 

龍田(保全)「…ここいい?」

 

龍田「どうぞ」

 

天龍「…わざわざここに座った意味あんのか?」

 

山風「て、天龍さん…」

 

天龍(保全)「…ない」

 

 

…目の前で視線がバチバチとぶつかっている気がする。だけど相手の方は見られているから見返しているみたいだった

 

何も気にしていないかの様な冷たい表情はまるで…機械みたいだ

 

 

時雨「ねぇ。そっちの鎮守府ってどんなところなの?」

 

電(保全)「普通なのです」

 

時雨「普通って、どんな?」

 

電(保全)「答えられません」

 

時雨「ケチだなぁ」

 

電(保全)「仕事ですから」

 

天龍「…同じ電でもこうも違うのはちょっと不気味だぜ」

 

龍田「天龍ちゃん。失礼でしょ」

 

天龍「そうか?俺としてはコイツらが顔色一つ変えない方が気持ち悪いよ」

 

山風(保全)「……負けた腹いせに怒ってるだけだもんね」

 

天龍「んなっ」

 

山風「天龍さんはよく怒ってるから…」

 

天龍「……」シュン

 

龍田(保全)「勝てたのは作戦のおかげでもある。そうでしょ?」

 

夕立「…そうね」

 

龍田(保全)「提督の代わりに貴方達が考えた作戦の方が上手くいくんじゃない?」

 

電「どうでしょう。それだと司令官さんの成長になりませんから…」

 

龍田(保全)「別に良いじゃない。駄目ならリサイクルすれば良いんだから」

 

電「…?それってどういうことですか?」

 

龍田(保全)「その作戦が駄目なら次の作戦に一部だけ組み込んでそこから何かを考える。そうすればあの時はこうすれば良かったっていう可能性が見えるかも知れるでしょ?」

 

電「確かにそうですが、それは何が駄目だったかを明確に理解してる時だけです。もし悪い点を組み込んでしまえば、そこから穴が大きくなるだけなのです」

 

龍田(保全)「別に良いじゃない。そこで駄目だったとしてもまたリサイクルすれば良いんだから」

 

電「…さっきからそのリサイクルって言うのは「電」」

 

 

山風が電の口に静止をかけた。その理由が自分達には良く分からなかったが、何か言い難い事なのだろうと理解した

 

静止をかけた山風だったが、その顔は何処か複雑そうな表情をしていた。まるで何かの判断が付かない様な、やりきれないモヤモヤとした顔だった

 

 

曙「アンタ達、ご飯出来たわよ」

 

天龍「おっ、待ってたぜ!」って、おにぎりの山…

 

潮「あの、良かったら皆さんもどうですか?」

 

夕立(保全)「いただく」

 

時雨(保全)「ありがとう」

 

 

…感謝まで無機質だとビックリだよ

 

 

曙「それにしても酷い作戦だったわね」

 

潮「あ、曙ちゃん」

 

曙「正論だと思ってるけど?最後に関してはやぶれかぶれだったじゃない。そこまでさせなきゃ駄目だった作戦ってことでしょ?」

 

 

言葉が痛い。曙は提督の作戦だと思ってるけど、半分位は僕らの作戦と油断が原因なんだよね…

 

 

曙「で、さっきから無言でおにぎり手に持って食べてるけど大丈夫なの?炊きたてだから結構熱いわよ」

 

電(保全)「平気です」

 

曙「そっ。だけど少し位は笑って食べたら?」

 

天龍(保全)「俺達はこうでなきゃ駄目なんだ」

 

曙「は?」

 

天龍(保全)「そうしないと自分じゃなくなる」

 

曙「…コイツ何言ってんの?」

 

潮「曙ちゃん!失礼だよ!」

 

 

だけど曙の言い方も分かる。遠目で見ても熱そうな湯気が立ち上るおにぎりを何て事のない顔で食べている。その顔でさえも無機質で少し怖かった

 

揃って食べるさまは正に補給。一口食べては数回咀嚼した後に飲み込んではすぐに一口食べる。この短い動作でも誰一人として僅かな違いさえ出さない一連の動きを行っていた

 

やがて全員が同時に食べ終わり、手に付いた小さな米粒を取って手を綺麗にし終わると一斉にこちらを向いたのでちょっと驚いて身構えてしまった

 

 

艦娘達(保全)「「「…熱い」」」

 

曙「…ぶふっ。当たり前でしょ」

 

時雨「感覚は普通なんだね」クスクス

 

電「ほら、お水です」

 

電(保全)「…ありがとう、なのです」

 

電「どういたしまして」

 

 

おにぎりの山を昼食に食べていると食堂のドアが開き、演習での反省会が終わったのか互いの提督達が話し合う声が耳に入ってきた

 

だけど声のトーンは妙に重々しい。片方は言葉に軽快さを感じさせるが何か潜ませているかのようで、もう片方はそれにウンザリする様子で答えている

 

 

???「本当に良いの?せっかくの機会だよ?」

 

「断らせて頂きます」

 

???「ま、そういわずに」

 

「しつこい人だなぁ」

 

???「君のためを思っていってるんだよ。艦娘達のためにもさ、一度決断してみようよ。ね?」

 

時雨「…悪徳セールス」

 

夕立「しつこいナンパ」

 

電「話の長い上司」

 

曙「怒られるわよ…」仮にも上官よ?

 

 

立て板に水という言葉がある様に、まさに流れ出て止まらない言葉をずっと受けている提督。肝心の提督には全く響いて無さそうだけど

 

そして助けを求めるかの様にウンザリとした顔でコチラへ向かってくる。その間もずっと話を続けているのだが、チラリともコチラを見ずに提督の方しか見てない様だった

 

 

「演習お疲れ」

 

保全「ん?誰に向かって言ってるの?」

 

「周りを見てくださいよ…」

 

 

やっと顔を提督から周囲へと向けるようになり、しばらく辺りをキョロキョロ見回していると自分が何処へ来たのかようやく理解した様だった

 

 

保全「あぁ。ここに来てたのか」

 

電(保全)「お疲れ様です」

 

保全「お疲れ。そろそろ帰るよ」

 

電(保全)「了解しました」

 

 

横でふぅっと息を吐く提督。正直失礼すぎるとは思ったが、全く気にしていないのかボーっとしていた

 

艦娘達は皆表情を表に出していないのはもしかしたらこの人の影響もあるのかもしれない。はっきりと断定は出来ないけど、なんとなくそう感じた

 

 

電(保全)「さ、いきますよ」グイッ

 

時雨「え?」

 

「おう。気を付けてな」

 

 

笑顔で送り出す提督。その傍には僕じゃないけど僕がいた

 

無機質な笑顔で手を振って、こちらに向かって振られる手とは反対の手でギュッと提督の手を握っている

 

 

【挿絵表示】

 

 

人違いだ。そう言いたかったけど、提督の隣に立つ時雨が提督の手を優しく握っていて、間違いの訂正よりもずるいの一言が出てきそうになっていた

 

 

「駆逐艦時雨。この場にて任務を言い渡す」

 

時雨(保全)「はっ」ビシッ

 

時雨「そっ、それを言うのは僕なんだけど!?」

 

「本日より一週間、時雨同士による配置換えを行う。七日間の任務に当たり、任務が終了次第再度配置換えによる異動を行う事となる」

 

夕立「えっ」

 

天龍「ちょっ、ちょっと待てよ!」

 

「なんだ?」

 

天龍「いくらなんでも急すぎるだろ!第一なんでそんな事を!」

 

「単純に提督同士の繋がりを持つためだ。それをそちらの提督と話し合った結果、配置換えを行ってはどうかとの意見を頂いてな」

 

時雨「ぼ、僕の意見は!?」

 

「何故それを考慮しなければならないんだ?」

 

時雨「…分かり、ました」

 

夕立「時雨!?」

 

時雨「駆逐艦時雨、行ってまいります」

 

「あぁ。相手が他所の提督だからと言って失礼な態度を取るんじゃないぞ」

 

時雨(保全)「ここは任せてよ。君の分までしっかりとやってみせるさ」

 

時雨「……」

 

電(保全)「ほら、いきますよ」

 

 

言葉を返すことが出来ずに電の手に引かれて自分もそちらを振り向く。最後にチラッと時雨の方を見ようと目線だけそちらへ向けたが、見えたのは相変わらず何を考えているか分からない無機質に笑っている顔だった

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