この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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統一性の無い自分

何時もいる鎮守府とは別の場所で目が覚めた。時刻は0500。普段通りだ

 

いつも自分は0500に起きる。そして寝る時は0000に眠り、再び0500に目が覚める

 

他の皆もそうだった。僕と同じ時間に眠りについて、僕と同じ時間に目が覚めている

 

食べる物も一緒。お風呂の時間も一緒。常に皆と一緒だ

 

決まった時間に出撃をして、それが終わればご飯を食べて寝る。それの繰り返し。それを誰一人として外れた事をする事なくやってきていた

 

それ以外の事は何もしなかった。しようとも思わなかった。そうするべきだと思っていたから

 

戦いというレールしかない道を歩いて来た人生だ。そのレールを決めるのは提督である。だから自分はレールを敷いてくれる人に従わなければならない

 

提督が出撃をしろと言ったら出撃をした。作戦内容が特攻だったから特攻した。感情を捨てろと言われたから捨てた

 

今回も何時もの様に配置換えの命令が下ったので即答したのだけど、同時に疑問も出来てしまった

 

そうなるとレールを引いてくれる提督は誰になるんだろう?それを質問すると少し驚いた顔を見せていた僕の提督は”相手に従え”と言われた

 

了解しました。それだけ答えて僕は配置換え先の提督へと近づいた。初めの印象が大事だと思ったから手を繋いで自分をアピールしてみたけど握り返してくれる事は無かった

 

やはり命令に無かった事だから印象を損なってしまったのだろうか。失敗だったかな

 

やってしまったものは仕方が無かったのでそのまましばらく指示を待っていると、力を見たいとの事だったので出撃することになった

 

なので自分は何時も通り提督の指示に従って動こうとした。だけど何時まで経っても提督の指示が何もなく、動かずに静止をしていたら飛んできた敵の攻撃によって大破してしまったので撤退し、帰投が完了すると放送で執務室まで来る様に指示を受けたので向かった

 

さて、次の指令は何だろうか

 

 

 

_____________

 

 

 

「時雨」

 

時雨(保全)「なにかな」

 

「お前、何故避けなかった」

 

時雨(保全)「指示が無かったから」

 

「プログラムかお前は…」

 

時雨(保全)「プログラムじゃなくて艦娘だよ」

 

「…今の俺の顔、多分パ〇ポケ主人公の疲れた顔みたいになってそう…」

 

時雨(保全)「野球がしたいの?」

 

「…入渠しに行ってくれ。その後食堂で食事をし、それが終わり次第、また執務室に来て欲しい」

 

時雨(保全)「了解しました」

 

「じゃあ行ってこい」

 

時雨(保全)「失礼します」

 

 

ドア『めんどくさいやっちゃな』バタン

 

 

「…久々にプログラム作るか」

 

妖精「提督。言われた通り時雨の妖精さん達と出会って来たよ」

 

「そうか。どうだった?」

 

妖精「融通が利かないって感じだった。指示したらちゃんと働いてくれるけど、それ以外は何もしてくれないの」

 

「とすると時雨のあれも提督の影響か…めんどくせぇなあ」

 

妖精「…時雨、大丈夫かなぁ」

 

「今後もこういった事は起こりうる。アイツがその第一号ってだけだ」

 

妖精「うむぅ…」

 

「バックアップは必要だ。万が一俺が指揮を取れない時に他所との提督と繋がりが無かったら頼む相手を探す所から始めなきゃならんしな」

 

妖精「…ちょっと気になるんだよね」

 

「うん?」

 

妖精「あっちの艦娘達なんだけど、どうにも自己って言うものを感じないの。なんだかとってもそれが不思議でね」

 

「……近代化改修とかじゃないのか?」

 

妖精「近代化改修はただ艤装を合成しただけだよ?それが影響あるなんて思えないんだけど」

 

「…システムと何処か違ったりしてるんじゃ?」

 

妖精「ううん。システムと同じで艤装を使って艦娘達と合成するよ。近代化改修で艦娘が消えちゃうのは近代化改修によって艤装が無くなったから艦娘として活動が出来なくなったからなんだよね」

 

「じゃあ何か?近代化改修の素材となった艦娘は死ぬって?」

 

妖精「違うよ。分かりやすく言うなら艤装はあくまでパソコンで言う所の外付けハードディスク。本体はあくまで艦娘自身なんだよ」まぁ艤装の方が艦娘の力の根源である事には違いないけどね

 

「ふむ…確かにその理論で行くなら艤装の性能だけが上がって艦娘自体に影響は無いように思えるな」

 

「あー、待てよ?そうなると付喪神とかの話になってきたりすんのか?」

 

妖精「へ?」

 

「…?お前等、近代化改修の事には詳しいハズじゃないのか?」

 

妖精「そりゃあ当然詳しいけど…それがどうしたの?」

 

「………………」

 

妖精「???」

 

「…チッ。分からん」

 

妖精「えぇ…」

 

「はぁ。とりあえず今は時雨だ。妖精さん、これやるから時雨んとこの妖精さんと仲良くやれよ」っチョコレート

 

妖精「わぁい!ありがとう!」フワフワ

 

「……」ギッ

 

 

*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー*

 

 

食堂

 

 

雷「…」

 

響「…」

 

暁「…」

 

愛宕「…」

 

時雨(保全)「…」パクパク

 

暁「…ねぇ」

 

時雨(保全)「なんだい?」

 

暁「何であの時避けなかったの?」

 

時雨(保全)「命令に無かったから」

 

暁「…命令に無いのは当然でしょ。当たり前なんだから」

 

時雨(保全)「当たり前って?」

 

暁「……攻撃がきたら避けるのは当然でしょ。痛い思いはしたくないでしょ?」

 

時雨(保全)「そうなのかい?」

 

暁「………」ギュッ

 

響「まずは危機感から覚えよう。君だって沈みたくは無いだろう?」

 

時雨(保全)「…そうなのかな?」

 

響「へ?」

 

時雨(保全)「考えたことが無いから分からないよ」

 

響「……」

 

雷「…じゃあ、攻撃する時とかも指示が無かったらしないの?」

 

時雨(保全)「うん。勝手にしたら怒られちゃうからね」

 

雷「演習の時も指示されてやったの?」

 

時雨(保全)「そうだよ」

 

雷「…なるほどね」

 

愛宕「はぁ…やっぱり同じ時雨でも違うのね」

 

響「どうするんだい?流石に今後も指示を待って行動するじゃあ提督の指示が出せない時はただの的になってしまう」

 

雷「うーん…」

 

ヲ級「皆さん、何かお悩みですか?」

 

時雨(保全)「!」バッ

 

愛宕「ちょっ、ちょっと待って!このヲ級は敵じゃないわ!」

 

時雨(保全)「鎮守府内に深海棲艦が侵入してきた際は直ちに撃退。これは命令だ。逆らうのは許されない」

 

 

艤装を展開しようとする時雨より早くヲ級が腕を掴み、そのまま自分の方向へ引っ張ると時雨の体をギュッと優しく抱きしめた。痛めつけるような抱きしめではなく、あくまで優しく抱擁するように

 

 

時雨(保全)「…?」

 

ヲ級「話は聞いていました。ここは任せてください」グキッ

 

時雨(保全)「ぐぅッ!?」

 

愛宕「ヲ級さん!?」

 

ヲ級「ほら、敵がいるのに油断しちゃ駄目ですよ。早く起きてください」ペチペチ

 

雷「いやっ、首折られて起きてって言われて起きる訳」

 

 

雷が言い切る前に時雨の目が見開き、バッと顔を上げてヲ級の顔を正面から見た

 

次の瞬間、時雨は平手をヲ級の顔へと飛ばし、それは的確にヲ級の頬を捉えて大きな音を立てて振り切った

 

駆逐艦とはいえ、思いっきり頬に喰らったのだからヲ級は少し位ダメージを喰らっていてもおかしくない。だが彼女の首は少し動いた程度でダメージは微塵も感じさせなかった

 

 

ヲ級「あらあら、元気な子ですね」

 

 

ヲ級がそういうと時雨の腋下に手を入れてそのまま彼女を上へと飛ばした。まるで大人が子供に高い高いをするかのように少しずつ回転しながら真っ直ぐに上へと飛んでいった時雨。一番高く上がった場所で体が半回転し、地面とうつ伏せの形で平行したまま落下を始め、そのままヲ級に受け止められた

 

その受け止められた姿、二人の立ち位置、様々な要因から昔の出来事を一つ思い出した

 

 

ヲ級「ほら、いきますよ」シュッ

 

時雨(保全)「!?」バチィン!

 

 

提督がここにやってきてから潮が受けたお仕置き。所謂尻叩きだった

 

 

雷「…か、可哀想」

 

暁「時雨からしたら敵がいたから攻撃しようとして反撃喰らってるのよね。正しい事してるのに敵にお仕置きされてるって何なのよこれ」

 

愛宕「冷静なツッコミは良いけど止めてあげないの?」

 

暁「…止めたら私もアレされそうだから嫌」

 

ヲ級「ほら、頑張って抜け出さないと何度も喰らう事になりますよ」

 

時雨(保全)「んぅっ!」バチィン!

 

ヲ級「…私を見た時にすぐに攻撃しようとしましたよね。それはどうしてなんですか?」

 

時雨(保全)「それはっ、僕らの共通認識だからだっ!」

 

ヲ級「僕ら?」

 

時雨(保全)「深海棲艦は倒すんだ!じゃないと皆がやられちゃう!命令だから!」

 

ヲ級「……」

 

時雨(保全)「助かりたいのに。違う。落ち着くんだ。誰か。いや、いやっ、いやだぁ!!」

 

愛宕「…まるで一人に何人かいるみたい」

 

響「え?」

 

愛宕「時雨、抵抗をやめなさい。そして何も考えない様にするの」

 

時雨(保全)「いやっ、はい。でもっ、やめる。けど!敵がいるのに!」

 

時雨(保全)「違う!命令!僕は!違、めい!、僕!?僕のっ!!」

 

 

まるで壊れた機械の様に体を無茶苦茶に動かしては暴れる時雨。吐き出る言葉はまるで自分を見失ったかの様だった

 

手足をジタバタさせてもがいているのだが、それぞれが異なる目的で活動でもしているみたいにヲ級の手を剥がそうとしていたり、ヲ級の方向に向かって蹴ろうとしたりと、体の統一性が全く取れていないようだった

 

そんな無茶苦茶な行動を抑えきれなかったのか、ヲ級が時雨を抑えきれずに離してしまった

 

そのまま地面に転がってのたうち回る時雨。その間も手足は統一性の無い目的の為に動かされ、体の関節が曲がってはいけない方向に動き始めると、骨が折れる音が聞こえてきた

 

 

ヲ級「嘘でしょう…?」

 

愛宕「皆!時雨を抑えつけて!雷ちゃんは提督に今すぐこの事を報告に!」

 

雷「わ、分かったわ!」

 

 

 

_____________

 

 

 

 

雷に手を引かれながら全速力で食堂へと駆けていく。執務室から多少の距離があるとはいえ、体力がついていないせいで先程から胸の中がとても熱くて胃が痛い

 

 

雷「司令官!こっち!」

 

「わかっ、ゴホッ!」

 

雷「男の子でしょ!頑張って!」

 

(ここだと逆なんじゃないかなぁ…)

 

 

食堂勢いが近づいてきて勢い良く扉を開ける。すると床には倒れ伏した時雨と、時雨が暴れさせないためか、体の四肢を押さえつける皆がいた

 

腕は骨折した箇所が内部出血を起こして紫に変色しており、それでなお体の動きは止まらない。まるで痛みに悶えながら怒りや混乱といった様々な感情が混乱を引き起こしているかのようだった

 

 

時雨(保全)「ていとくっ!命令!いやだ!命令!早く!」

 

「チッ!全員もうちょっと時雨を押さえてろ!」

 

愛宕「わ、分かったわ!」

 

「口は何か噛ませとけ!舌を噛むのを防ぐんだ!」

 

雷「司令官、どうするの!?」

 

「まぁ待て。ちょっと準備するから…」ゴソゴソ

 

時雨(保全)「う、うー!うぅー!!」

 

響「ま、まだなのかい!?そろそろきつくなってきたんだけど!」

 

暁「あぁもう!ホントに駆逐艦なの!?力が強すぎるわ!」

 

雷「…司令官?本気なの?」

 

「よしっ、出来た。おーい。時雨~こっち見ろ~」

 

時雨(保全)「ううっ!?」

 

 

勢い良く時雨の顔がコチラを向く。それに伴って時雨を押さえていた皆の視線もコチラに注目し始めた

 

胸を突き出し、自分の胸を強調するかのようなポーズを取る。マジマジと見せつけたい一点に視線を注目させるために、少し体を反らして特にその部分に注目させた

 

 

「ほら、おっぱい」E.胸に風船

 

時雨(保全)「……」ポカーン

 

響「……」ポカーン

 

暁「……」ポカーン

 

愛宕「……」ポカーン

 

ヲ級「……」ポカーン

 

雷「…バカみたい」

 

「ほら見ろ。ジャンプすると揺れるんだぞ」あっ、おっぱい取れた

 

愛宕「何がおっぱいよ!馬鹿じゃないの!?」ゲシッゲシッ

 

響「馬鹿なのかい!?司令官は馬鹿なのかい!?」ポカポカ

 

「痛い痛い痛い!ちょっ、本気で蹴らないで!」

 

暁「ふざけるからでしょ!真面目にしてよ!」バシバシ

 

「いやっ、あのっ、まっ、待ってぇぇぇ!」

 

時雨(保全)「…ぷふっ」

 

ヲ級「あら…」

 

時雨(保全)「ふっ、ふふっ…」

 

暁「!?」

 

雷「…笑った」

 

時雨(保全)「ふふ、、っ…」

 

ヲ級「…提督、一体どうやったんですか?」

 

「そ…その前に言う事あるだろ……」大破 0.05/2

 

愛宕「だって…どう考えても真面目に見えなかったんですもん…」

 

後で覚えとけよ…ま、簡単な話だよ。近代化改修の副作用とも言える事が時雨に起こったんだろ。適当に考えた対応策を試しただけだ」

 

時雨(保全)「…知ってたんだね」

 

「あぁ。と言っても知った経緯は偶然に近かったけど」

 

響「じゃあ治し方も知ってるんだよね?」

 

「え、知らん」

 

響「…ホントに?時雨の事あんなにあっさり治したのに?」

 

「そりゃたまたまだ。何度もアレが通用するとは思えん。次また同じ事があれば治せる自信が俺にはない」

 

時雨(保全)「そうなんだ」

 

「…とりあえず時雨。お前バケツ使って良いからさっさと入渠行ってこい。正直めっちゃ怖いから」

 

 

腕があらぬ方向に曲がってそこから内出血を起こしながらも平然と何事も無かったかのようにスンとした表情で立っている。顔が相変わらず表情が分かりづらい顔で何事も無い様に見せてくるのはハッキリ言って不気味だ

 

 

時雨(保全)「分かりました」

 

「あ、時雨。言い忘れてたがここには深海棲艦もいる。"鎮守府内"にいる深海棲艦は敵じゃないから"敵対"をするなよ」

 

時雨(保全)「はい」

 

ヲ級「手を貸します」

 

時雨(保全)「…ありがとう」

 

「…ありゃあまだ統一が出来てないな」

 

愛宕「提督、その、統一というのは何のことなの?」

 

「正直悩んでる」

 

愛宕「はい?」

 

「これを伝えて良いものか…正直悩んでる」

 

「というのも判断がつかん。これを他の提督達の間で知っているのか。或いは極限られた奴らにしか知られていないのか。それが分からない」

 

愛宕「…話が見えてこないんですけど」

 

「簡単に言うと、これをお前等に伝えたら日常的に気にしそうで伝えるか悩んでるって所だ」

 

雷「そんなに気にすることなの?」

 

「あー、まぁな。これに関しては俺の権限によるものが大きいから、正直お前等が知らなくても良いことではあるんだよ」

 

雷「ふ~ん…」

 

「んじゃ、お前等は飯の続きでもしといてくれ。休憩は伸ばせないが、代わりにコレをやろう」っ外出届

 

暁「え!いいの!?」

 

「あぁ。これは詫びだ」

 

愛宕「…?」

 

「期限は今日から三日以内。好きなタイミングで使ってくれ」

 

響「うん。ありがとう」

 

「じゃっ、執務に戻るからまた何かあったら教えてくれ。外出届の事も聞きたかったら来てくれて構わないから」

 

全員「お疲れ様です!」

 

 

 

_____________

 

 

 

 

ル級「それで落ち着いたんですカ?」

 

ヲ級「はい。信じられませんが本当なんです」

 

ル級「…アホらしいというか、なんというか」

 

ヲ級「で、どうします?もし私達が彼女に接触してしまえばまた同じ事になってしまうと考えてるんですが」

 

ル級「提督の命令で私達を敵と認識しなくなったんですよネ?だったら大丈夫なんじゃないデスカ?」

 

ヲ級「そんな簡単な事じゃありませんよ。時雨のアレは自分以外にも様々な意思があるように見えました。もし彼女の中に複数の意識を持った人間の様な存在がいると仮定して、提督の出した命令に素直に従う意識は幾つあると思いますか?」

 

ル級「…幽◯白◯の仙◯?」

 

ヲ級「っもう!そうですけど、話してる事は違います!」

 

ル級「ソ、ソーリーソーリー。分かってますよ」

 

ル級「うーん。でも多分、結局は従うんじゃないでしょうか?」

 

ヲ級「そう言える根拠は?」

 

ル級「時雨の今までを考えての事ですよ。だって彼女、今の今までちゃんと制御出来てたんでしょ?」

 

ヲ級「確かにそうかも知れませんが…」

 

ル級「それに提督はもう解決策を思いついているんじゃないでしょうか?じゃなかったらそんな馬鹿みたいな解決方法をしない筈デス」

 

ヲ級「…そういえば対応策を考えたと言っていましたね。どうして思いつかなかったんでしょう」

 

ル級「でも…それと私達が時雨との接触をどうするかって話かと言えばまた別なんですよね」

 

ヲ級「んむぅ…」

 

天井『ガタガタッ』

 

ル級「ン?」クイッ

 

ヲ級「今何か…」クイッ

 

川内「しょうがないんじゃない?」バァンッ

 

ル級「ワッツ!?」

 

ヲ級「なんで天井裏に潜んでるんですか…」

 

川内「いやぁ。何と言うか、ここが自分のいるべき場所みたいな感じがして落ち着くというか…」

 

ヲ級「…貴女のいるべき場所は海上でしょうに」

 

ル級「で、そのしょうがないというのはどうしてなんデス?」

 

川内「だってさ、たった一週間とはいえその間ル級達も出撃をしない訳にいかないでしょ?その間に同じ艦隊になったり、食事や休憩時間も被る事だってあるし、個人的な用事とかで顔を合わせる事だってあるかも知れない。絶対に関わりあわない様にしよう。何て言うのは難しいんだよ?」

 

川内「それに考えてもみてよ。ウチの提督だよ?絶対またとんでもみょうちくりんなアイデアで何かやろうとしてくるって」

 

ル級「と、とんでもみょうちくりんって…」

 

ヲ級「…いくら提督が許可してるとはいえ、提督に対する接し方じゃないですよね」

 

川内「多分提督としての扱いをしたら蕁麻疹が出て痒い痒い何て言うよ。きっと」

 

ル級「ネタが古いですネー」

 

川内「ま、そこらへんは提督が上手くやってくれるでしょ。少しは提督を信じて待ってみようよ」

 

ヲ級「それもそうですね」

 

ル級「今頃提督が何か思いついてたりシテ『ピンポ~ン』正解!?」

 

川内「いや、これ放送だよ。ウチは基本口頭が多いからあんまり鳴る事はないけどさ」

 

放送『ル級とヲ級。執務室に来てくれ。何らかの作業中であれば来れない旨を妖精さんか艦娘にでも伝えて欲しい』

 

ル級「…こういうタイミングで放送が来るときって大抵時雨がらみで何かありますよね」

 

ヲ級「そう思う根拠は?」

 

ル級「漫画で良くあるパターンですかラ!」

 

川内「…否定はしないよ」

 

ヲ級「とりあえず行ってみましょう。もしかしたら本当に時雨が関連しているのかも知れませんし」

 

ル級「デスネー」

 

 

 

_____________

 

 

 

 

暗い部屋の中。机の上に一つの蝋燭を立てて、そこにマッチで火を灯す。ボンヤリとした小さな灯りだが、不思議と安心出来る光だった

 

目の前で灯る蝋燭の火。それをジッと見つめて数分が経った頃、自分の中で妙にソワソワとした感じがし始めた

 

それはまるでかくれんぼをしていたら鬼に見つかるかも知れないドキドキとした感情の様で、隠れた何かが今か今かと心の準備をしているみたいで、何だかくすぐったい感じがしていた

 

 

「どうだ?何か分かるか?」

 

時雨(保全)「少しドキドキしてる」

 

「…なるほどな」

 

時雨(保全)「提督はどうなんだい?」

 

「何もしてない」

 

時雨(保全)「そうなんだ」

 

ドア『お客様だよ』コンコン

 

「入れ」

 

ル級「失礼シマース」暗ッ

 

ヲ級「失礼します」

 

「時雨、そのまま続けてくれ。二人は来て早々すまんがちょっと外に出よう」

 

時雨(保全)「分かった」

 

ル級「用が済んだら捨てるんですネ…」

 

「なんのこっちゃ。良いから出るぞ」

 

 

提督達が部屋から出ていき、一人部屋に取り残される僕。先程提督から受けた命令を遂行する為に、再び目の前の蝋燭の火に注目する

 

焚き火の周りを囲むようなイメージで自分以外の誰かも一緒に蝋燭の周りを取り囲み、自分と同じ様な姿勢でジッと一点だけを見つめている

 

やがてそのイメージが自分の中で明確な人の形をもって現れ始めると、次第に声が聞こえてきた

 

自分と同じ声。だけど内容は自分の考えているモノとは全く違う内容で、怒りや悲しみ、そして後悔と祈りが聞こえてきた

 

 

祈り『帰りたい』

怒り『どうして僕が…!』

悲しみ『死にたくない』

後悔『皆が…』

 

 

怨嗟の様な声の主は人の姿から次第に見知った姿へ。自分と同じ姿になろうとしていた

 

霞んでいて、それでいて姿がボンヤリとしている。だがそれは紛れも無い自分と同じ姿だった

 

だけど自分ではなかった。彼女達は皆、時雨であって僕ではない。それを確信している理由もハッキリとしていた

 

彼女達は…僕の近代化改修として使われていた時雨達なのだろう

 

 

時雨(保全)「皆、話そう」

 

祈り『話す?』

怒り『なんでお前と』

悲しみ『意味が無い…』

後悔『もういや』

 

時雨(保全)「そうしろって提督の命令なんだ。同じ艦娘なら分かるよね?」

 

祈り『だからって…』

怒り『何で聞かなきゃならないんだよ』

悲しみ『碌でもないことだよ』

後悔『…分かった』

 

時雨(保全)「じゃあ(後悔)と話そう。皆は後で」

 

祈り『……』

怒り『勝手だな』

悲しみ『酷い…』

 

時雨(保全)「君は何を後悔しているの?」

 

後悔『僕なんだから分かるでしょ』

 

時雨(保全)「分からないよ。君と僕は別だったんだから」

 

後悔『嘘だ。君は分かっている筈だろ。同じ僕なんだから』

 

時雨(保全)「何も言わなきゃカッコいいと思うの?伝えたい事も伝えずして、もう自分一人で後悔を晴らす事も出来ないじゃないか」

 

後悔『何を…!』

 

時雨(保全)「君はただの残骸さ。僕の力を強める足場となった残骸。そんな君に何が出来るって言うのさ」

 

後悔『言わせておけば…!!』

 

時雨(保全)「事実だろ。いい加減に現実を見なよ」

 

後悔『………』

 

時雨(保全)「僕は君と話をしたいんだ。だから君のことを教えて」

 

後悔『…僕は捨てられたんだよ』

 

時雨(保全)「それで?」

 

後悔『捨てられた事に気付いたのは主力艦隊と共に出撃して盾としての役割を命令されたからさ。そこで僕は沈む筈だった』

 

時雨(保全)「そうなのかい?」

 

後悔『君には分からないよ。例え命令とは言え、僕より強くても守るべきだった相手から庇われて、お荷物となったまま隙を突かれて沈んでしまった僕なんかの気持ちはさ』

 

時雨(保全)「じゃあどうしたい?」

 

後悔『そんなの…どうにも出来ないじゃないか』

 

時雨(保全)「どうして?」

 

後悔『既に起こってしまった事だからだよ。そんなの、今更どうしたって変えられっこないじゃないか』

 

時雨(保全)「僕達は艦娘として生まれ変わったのにかい?」

 

後悔『…!』

 

時雨(保全)「僕達だって大戦中に沈んだ艦だ。あの頃は失敗したけど、こうして再びここに立っている。君の失敗ももう一度やり直せるチャンスが与えられたとは考えないのかい?」

 

後悔『…今と昔は違うじゃないか』

 

時雨(保全)「そうやって逃げるんだね」

 

後悔『っ!何が分かるんだ!僕でも無いくせに!』

 

時雨(保全)「だけど君は僕の一つとなった。だから少し位は君の事を尊重しようと思ってる」

 

後悔『何を…』

 

時雨(保全)「君と同じ出来事に見舞われた時、その時は君の出来なかった事を僕がやろう」

 

後悔『!』

 

時雨(保全)「どうだい?」

 

後悔『…僕の出来なかった事を君が?嫌味のつもりかい?』

 

時雨(保全)「君は既に終わった存在だ。それならせめて、僕が代わりにやってあげる事しか出来ないよ」

 

後悔『……』

 

時雨(保全)「身体を乗っ取ろうとするのなら無駄と考えて良いよ。僕はこれが終わり次第、二度と君達が表に出られないようにするつもりだからね」

 

 

その言葉に自分を除いた僕達が動揺した。明らかに動揺しており、ソワソワと体を動かす者もいれば今にも飛びかかってきそうな僕もいた

 

 

時雨(保全)「さぁ、選ぶんだ。君は…いや、君達はどうしたいんだい?」

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