この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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ちょっとお知らせ

仕事を始めて忙しくなってきており、もしかしたら投稿のし忘れや小説作成が間に合わない時が今後訪れるのではないかと危惧しています。忘れる事も制作が遅れる事は決してあると思えませんが、念のためご報告させていただきます


対話の手段と方法

時雨(保全)『対話?』

 

提督『あぁ。この話をする前に聞いときたいんだが、お前が見聞きした内容をお前の中にいる奴らは知らないんだよな?』

 

時雨(保全)『うん。今は僕が抑えてる。仮に入れ替わったとしても分からないよ』

 

提督『そうか。じゃあ話すが、まず対話が必要な理由。それについて話そうと思う』

 

提督『お前は今後も近代化改修を重ねるだろう。だがそれを重ねていけばある一つの問題に辿り着く』

 

時雨(保全)『意思の衝突だね』

 

提督『あぁそうだ。お前のやってる近代化改修は、使用した艤装に宿った意思がお前の中に蓄積されていき、やがて一定量を超えるとお前は自分じゃ無くなる。ここまでは知っているな?』

 

時雨(保全)『うん。提督(保全)が言ってたね。近代化改修をすると自分の中に別の意識が混じるって』

 

提督『そうだな。混じる意識は少ない訳じゃない。だから近代化改修を今後も行えばいずれ意識はお前よりも大きくなり、お前という意識は寄せ集めた意識の一つとなる時がやがて来るだろう』

 

提督『それがお前がお前で無くなる瞬間だ。だからそうなる前に一定の近代化改修を重ねた艦娘は』

 

提督・時雨(保全)『解体される』

 

時雨(保全)『そうなったら僕は提督の命令に従えないから。だよね』

 

提督『そう。だから少しでも多くの近代化改修を重ねる事が出来る様に一つの対応策が立てられた』

 

提督『それが艦娘の感情喪失。艦娘から感情を奪い、命令を遂行するだけの艦娘に変化させる』

 

時雨(保全)『僕らはその実験だった』

 

提督『そしてそれは成功した』

 

時雨(保全)『話が早くて助かるよ。何故感情を奪ったのかについては知ってるのかい?』

 

提督『いや…そこまでは知らない』

 

時雨(保全)『分かった。なら更に本題からそれてしまうけど説明して構わないかい?』

 

提督『頼む』

 

時雨(保全)『理由としては単純で、そもそもの意識さえを無くしてしまえば良いって考えだから』

 

時雨(保全)『火のない所に煙は立たない様に、そもそも感情を無くしてしまえば触発される意識もない。意識が混じるというのも、混じるための意識さえ機能しなくなってしまえば混じり合う事さえ起こらない』

 

時雨(保全)『だから僕達は感情を捨てた。いずれ完全に消え去る意識を失くすために』

 

提督『…相変わらず気分の悪い話だ』

 

時雨(保全)『命令なんだから仕方ないよ』

 

提督『嘘つけ。何とも思ってない癖に』

 

時雨(保全)『バレた?』

 

提督『今のお前にとってはどうでもいい事だろ。ま、それでも流石に完全にとはいかなかったみたいだけどな』

 

時雨(保全)『だね。まだ自分の中に僅かながらにそれらしいものを感じてるよ』

 

提督『対話するなら多少は必要になってくるものだ。今はその残りカスとも言える感情をフルに使ってやってみろ』

 

時雨(保全)『でもどうやったらいいんだい?』

 

提督『…そうだったな。お前は命令を受けなきゃ出来ないんだもんな』

 

時雨(保全)『具体的な方向性さえ示してくれるならある程度は自分でも出来るよ』

 

提督『おっ。それは助かる』

 

提督『なら要点だけ伝えるぞ。そこを掴んだら後は相手が勝手にペラペラと喋ってくれる筈だ』

 

時雨(保全)『了解』

 

提督『まず会話だが、あくまでお前は受けに回るんだ』

 

時雨(保全)『相手を先に話させるんだね』

 

提督『そうだ。だが初めだけはお前が主導権を握れ。でないと始まるもんも始まらん』

 

提督『あくまで手綱を握っているのはお前だ。握って道を示した後はそこを走る様に誘導すればいい』

 

時雨(保全)『具体的には?』

 

提督『まずは話せそうな奴を見つけ出せ。お前の中に何人もいるのなら、その中で一番話をしやすそうな奴を選び出すんだ』

 

提督『その後の会話は他の奴にも聞かせろ。そうすればその時にした会話は無駄にはならない筈だ』

 

提督『話す内容はあくまでお前が話す内容をベースに進めさせてやるんだ。だが強要ではなく、強制させてやるんだ』

 

時雨(保全)『どんな風にすれば良いんだい?』

 

提督『今みたいに対話する課題を見つけて話す内容を促してやるだけで良い。だけど何を聞かせろ。といった明確なのは強要になってしまうから気をつけろ』

 

時雨(保全)『分かった』

 

提督『後一つ。これが一番対話をする上で大事な事を教える』

 

提督『相手に嘘をつけ。甘言とも取れるキツい嘘をな』

 

時雨(保全)『嘘をつくのかい?』

 

提督『あぁ。対話での嘘ってのは相手にとってとんでもなく不都合な事である場合と、相手の立場がお前より下の時に使える。いわばとっておきの決め手とも言える技みたいなもんだ』

 

提督『後が無い奴にホンの僅かな希望が見える嘘を作れ。ある程度の現実味があり、かつやろうと思えば出来てしまう。そんな嘘を相手に突っ込んでやるんだ』

 

提督『その嘘を利用して取引を持ち掛けろ。その取引に持ち込む事が出来たのなら後はお前の意思を相手に伝えてやれば良い。そうすれば相手が取引に見合う対価を勝手に判断してくれる』

 

時雨(保全)『分かった。やってみるよ』

 

提督『…って、対話の目的を話さなきゃいけなかったのに、対話の持ち込み方になっちまったな』

 

時雨(保全)『大丈夫。もう目的は分かったから』

 

提督『そうなのか?』

 

時雨(保全)『相手を自分の言う事に従うコマとする。それが目的だよね』

 

提督『そうだ。根幹の部分は分かってるな』

 

提督『お前と言う意識を主とし、他の意識はお前という主を尊重して動く手足として存在する。いわば騎馬戦の様な同じ目的を持った人達の統率が必要なんだ。その為に相手への信頼を築き上げる。その方法が対話という訳だ』

 

提督『あの時俺が風船でお前を驚かせ、そして笑わした様に。全ての行動がお前とお前以外の意識で一致させるんだ。そうすればお前は意識に呑まれる事は今後無くなるだろう』

 

時雨(保全)『ありがとうございます』

 

提督『時雨、命令だ。もし対話で何かあれば俺の所に来い。やれるだけの手助けはしてやる』

 

時雨(保全)『承知しました』

 

 

 

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ル級「それで提督。お話って何ですカ?」

 

ヲ級「時雨さんの事ですね?」

 

ル級「時雨?」

 

「一部そうなんだけど今回は違う。ってのも…ちょーっと困った事になってな」

 

ヲ級「というと?」

 

「ヲ級にさ、時雨の相手をしてもらうよう頼んだじゃん?」

 

ヲ級「そうですね。結果あの様な事になりましたけど」

 

「でさ、時雨についてきた妖精さんもいるって話は聞いてる?」

 

ル級「モチロン。ここの妖精さん達と同じ様に扱ってほしいんですよね」

 

「そうそう。それがマズかった」

 

ル級「はい?」

 

「妖精さん達も書類上ではないにしろ、鎮守府に所属してくれている状態でしょ?だからね、根が真面目な妖精さん達が…」

 

ヲ級「…まさか」

 

「うん。ここが深海棲艦を匿ってる鎮守府だと思われて、時雨の提督(保全)から電話がかかってきたの」

 

「で、それを知った二人を派遣してくれた所がね…」

 

ヲ級「二人をコチラに返す事。或いは危機的状況を抜け出せなかったら、ここを深海棲艦が襲撃してドサクサに紛れて二人を回収する…といった所でしょうか?」

 

「大・正・解」

 

ル級「え、えぇ〜!?」

 

「と、言うわけで現在ウチの鎮守府が大ピンチ状態。そこで二人に相談なんだけど」

 

ヲ級「私達に深海棲艦達のいたところへ帰れと言うわけですね」

 

「それも考えたけどね、流石に無い」

 

ル級「フウッ…」

 

ヲ級「でしたらどうなされるおつもりで?」

 

「…二人共、出撃準備は出来てるか?」

 

ル級「大丈夫です」

 

ヲ級「私も出来てます」

 

「…良いんだな?」

 

ル級「既に決めていた事です。提督は何時も通りに出撃を命じてくれるなら、それで構いません」

 

ヲ級「はい。それにようやく演習ではない実戦に出られるんです。今からワクワクします」

 

「良し。ではコレから数時間後に出撃するメンバーの調整を行う。二人には龍田達のいる第一艦隊に一時編入とし、現在攻略中の海域に赴いて貰う。ここまでで何か質問は?」

 

ル級・ヲ級「「ありません」」

 

 

迷いなく答えて敬礼まで返してくれる二人。自分のミスから産まれた事なので、彼女達からの怒りがあるかと思ったが、意外にも杞憂で終わったことに安堵している自分がいる

 

 

「良し。じゃあ龍田達と合流しといてくれ。龍田達にはこっちから知らせとくから」

 

ル級・ヲ級「了解」ビシッ

 

ル級「…で、それは良いんですけど提督。時雨は大丈夫なんですか?」

 

「んー、まぁ大丈夫だろ。今まで何とかなってきてたしな」

 

ル級「相変わらず不安になる物言いデスネ」

 

「何時も確信が無いしなぁ。頭で分かっちゃいるけど、自分の能力にそこまでの自信がない」

 

ヲ級「ル級、提督から指示を受けたのなら早く行動しなさい。提督も答えるのではなくて任務に向かう様言ってくださいね」

 

「す、すまん…」

 

ル級「ご、ごめんなさい…」

 

ヲ級「あ、それと提督。こういう事は事前に想定していてください。でないと対策もたてられないですから」

 

「わ、分かった」

 

ヲ級「まだまだ言いたい事は沢山ありますが、ひとまずこれくらいにしておきます。提督のやり方を否定するわけではありませんが、提督らしくいるのではなく、提督になるという事をしてくださいね」

 

「…努力します」

 

ル級「…ヲ級の方が沢山喋ってマース」ボソッ

 

ヲ級「何か言いました?」

 

ル級「ナ、ナニモイッテナイデスヨ!?」

 

ヲ級「全く…では提督。失礼します」

 

「あ、あぁ。無理するなよ」

 

ヲ級(…無理するなって、そういう所が提督らしくないんですよ)

 

ル級(早く出撃を終えてティータイムでもしたいデスネ〜。警備の人達でも誘ってみましょうか?)

 

「…さて、早めに龍田達に連絡いれないと」プルルル

 

龍田『こちら龍田。提督、何か御用ですか?』

 

「出撃を目前にすまん。実は急遽編成を変える事になった」

 

龍田『どうしてなの?』

 

「鎮守府壊滅の危機」

 

龍田『…ホントにどういう事?詳しく説明してくれるのよね?』

 

「こっちもついさっき連絡が入った事なんだ。説明するには過程やら何やらまで説明しなくちゃならんから、今は置いといてくれ」

 

龍田『…それ程直近で起こった出来事にも関わらず、編成を変えるだけで済むと分かる根拠はなに?』

 

「ル級とヲ級の出撃によって味方であると示すのが目的だ。だから二人にMVPを取らせる為にも、急遽お前達の部隊に入れることにした」

 

龍田『つまりその二人が何かしらの原因となっていて、その二人が出撃で活躍しないと不味い状況なのね』

 

「そういう事だ。連携に関しては鎮守府内演習で何度か行っていたから可能だろ?」

 

龍田『はい。ただそうなると今回の出撃では航路が逸れる可能性がありますが…』

 

「それで良い。今必要なのは、その二人が出撃をしていたという事実だけだ」

 

龍田『分かりました。では編成に関してですが、詳細に決めている時間は無いのでコチラで判断し、帰投した時に提出する書類で確認をお願いします。抜ける二人に関しては提督に報告をお任せしますので、そちらで確認を行ってください』

 

「分かった。ありがとう」

 

龍田『失礼します』ブツッ

 

 

報告に関してはこれで言い訳が立つ。慌てて出撃したとも思われる。演習では艦娘達としているからそっち方向で言い訳を考えておくか

 

 

「…あ、執務室使えないからここから動けないじゃん」

 

ドア『出てきたよ』ガチャ

 

時雨(保全)「提督、終わったよ」

 

「お、そうか。話はちゃんと出来たのか?」

 

時雨(保全)「うん。ちゃんと分かってくれたよ」

 

「じゃあ頼んておいたアレは?ちゃんと聞けたか?」

 

時雨(保全)「アレ…?何か聞くことってあったっけ?」

 

 

わざとらしくため息を吐き、報告にやってきている二人が近くにいないかキョロキョロと辺りを確認する

 

やがて誰も近くにいないことが分かると、時雨の耳を貸すように小さく手招きとジェスチャーをして近づいてもらった

 

 

『胸のサイズだよ。何cmだったんだ?』ヒソヒソ

 

時雨(保全)『あぁ。それなら答えたくないって言われちゃってさ、聞いてないんだよ』ヒソヒソ

 

「チェッ。やっぱりそう上手くは行かないか」

 

時雨(保全)「でも、何でそんな事知りたかったんだい?」

 

「決まってんだろ。さっき適当に考えた嘘だよ」

 

時雨(保全)「…!」

 

「…お前さ、時雨じゃないだろ?」

 

 

 

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【挿絵表示】

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響「提督も突然だね。緊急変更なんて」

 

曙「しょうがないでしょ。それを含めて私達が聞きに行くことになってるんだから」

 

響「おかげで半日以上も暇になっちゃったよ。せっかくだから以前貰った外出でも使おうかな」

 

曙「行くならちゃんと予定建てときなさいよ。せっかくの外出なんだから」

 

響「分かってるよ。私も時間の大切さは十分理解しているつもりさ」

 

曙「…ん?ねぇアレ。提督じゃない?」

 

 

曙にそう言われて顔を少し上げる。曙が指しているであろう方向を向くと、二階の窓から背中を向けている提督が見えた

 

だが肩が前に出ている。まるで何かを威嚇している様に誰かと対立しているようだ

 

提督がそのまま窓から消え、しばらくすると窓が開き、提督がそこから顔を出した。だがその顔は何処か怖い

 

提督がニヤリと笑ったかと思うと、そこから時雨が外へと放り出された

 

空中から落下を始める時雨に追撃するように提督が窓から飛び出し、時雨の顔に足を踏みつけながらそのまま地面へと落下していく

 

地面にぶつかるギリギリの瞬間で時雨が足を払い除け、バランスを崩した提督が地面に着地しながら転がる事でダメージを分散させての受け身を取り、時雨も背中からの落下となったが、先に手を地面に着くことで衝撃を地面へと流していた

 

 

響「時雨っ!」

 

曙「クソ提督!どういうつもり!?」

 

「ん?あぁ、なるほど。龍田が言ってたのは二人の事だったのか」

 

曙「話をそらさないで!どういうことか説明しなさい!」

 

「喧嘩中だ。邪魔しないでくれ」

 

時雨(保全)「…提督の癖に、やるじゃないか」

 

「褒めて貰えるなんて光栄だな。さっさと続きするぞ」

 

 

提督が挑発する様に手を動かし、時雨がいきり立って接近していく

 

拳を固く握って提督に殴りかかろうとするが、明らかにその腕は大振りで、楽々と提督に受け流されていった

 

人間が艦娘と正面から喧嘩なんて成り立つ訳が無い。ただし喧嘩のド素人である相手ならば話は別だ

 

軽く武術をかじったことのある人間でも、まず初めに学ぶのは受けである。武術は弱者が強者から身を守るために使われる技術であり、それ故に誰しも始めは受けから学ぶ

 

おそらく提督も軽くかじった程度の武術である為か、攻撃に武術を使う訳では無かった。それが提督と時雨の喧嘩がすぐに終わらない理由なのかもしれない

 

 

「視線を一点に向けるな。視線は真っすぐにして相手の全身を見るんだ」

 

時雨(保全)「喧嘩の相手に指導って、随分余裕じゃないか」

 

「学べる内に学ばせておくのが俺のやり方だ。それが喧嘩だろうと、お前が俺の部下である以上はそうする」

 

時雨(保全)「…そうかい」ピクピク

 

 

続けざまに時雨が拳を振る。だがそれも大振りであるのは構えの時点で明確だった

 

間合いを見切られ、一歩下がって顔のスレスレで回避され、続く二撃目と三撃目も同じ様に回避がされた

 

脇を締めろ。腕を伸ばしきるな。相手を一撃で倒せると思うのか。アドバイスを避けながらに行う提督に、時雨の顔が更に怒りに染まっていった。その度に時雨の攻撃はますます大振りになっていく

 

提督は只管に受けに徹し、対して時雨は攻めに徹している。その為か数分もしない内に時雨の息が上がっていくのが分かった

 

 

「怒りに身を任せすぎだ。余分な力が入りすぎてるから息切れも早くなってるぞ」

 

時雨(保全)「う、煩い!」ブンッ

 

「はぁ…」

 

響「時雨!もう良いだろう!?提督も、どうしてやめないんだ!?」

 

「黙ってろ。今会話中だ」

 

響「はぁ!?」

 

曙「…アンタ、いい加減に何してるか位教えなさいよ。こうして大人しく見ていてあげてるのに、このまま待たされる位なら無理矢理にでも中断させるわよ」

 

「…時雨の対話相手になってる。今言えるのはそれだけだ」

 

曙「ふざけてんの?」

 

「お前等は知らなくて良い。良いからもうちょっと待ってろ」

 

時雨(保全)「…息を整える時間をくれたのかい?」

 

「俺の攻撃はお前相手じゃ決定打にならん。逆手に取られて反撃されるのがオチだ」

 

時雨(保全)「良く分かってるじゃないか」

 

 

駆け出して近寄る時雨の攻撃に対し、提督も構えて受けの姿勢を取る

 

だが先ほどまでの時雨と違い、今度は脇をしっかりと締めてあり、前進する動きも何処を狙っているか分からない様にする為、左右に揺れながらの接近をしている

 

提督の顔に焦りが見え、受けの構えからガードの構えを取るが、時雨のボディブローがガードをすり抜けて提督の体を捉えた

 

拳が肺にメリ込んでいき、提督の顔が苦痛に顔を歪め、そのまま数メートルほど吹っ飛んでいった

 

足が地面を一瞬擦り、バランスが取れずに腰から地面へとぶつかっていき、二回転して地面へと横たわった

 

 

響「提督!」ダッ

 

 

すぐさま駆け寄って提督を持ち上げて安否を確認するが、意識が無いのか口から血のあぶくが私の服へと付くだけだった

 

殴られた場所へ手を当てると触った箇所が少し凹み、血液の流れる音がおかしな音で感じ、胸を触れた手は赤黒いペンキに手を突っ込んだかの様な色をしていて生々しく温かった

 

血管がおそらく折れた肋骨で千切れ、その骨は心臓に突き刺さっているのか、聞こえる鼓動が弱々しくなっていた

 

目の前にいる人物の死。後少しすれば完全に心臓が止まり、その数秒後には死ぬ。確信に満ちた目の前の現実を考えると思考が慌ただしく回転し、呼吸がままならなくなっていく

 

 

響「ていとく…ていとく…!」ユサユサ

 

時雨(保全)「…」ザッ

 

曙「もう良いでしょ。アンタの一撃で決まったわよ」

 

時雨(保全)「分かってる。僕も終わりにするつもりだよ」

 

曙「トドメでも指すの?ならそうはいかないわよ」

 

時雨(保全)「違う。僕はもう満足したからやる気は無いよ」

 

時雨(保全)「響、提督の内胸ポケットを探って。そこに修復剤があるからそれを提督にかけるんだ」

 

響「ていとく…ていとく…」

 

曙「あぁもう!しっかりしなさい!」

 

 

曙が駆け寄ってきてすぐさま提督の服の中に手を突っ込んだ。そこから服に見合わないサイズの中身が入ったバケツが出てきて、それをすぐさまぶっかけた

 

陥没していた体の近くからメキメキという音が聞こえ、そこから骨が飛び出しては修復剤と共に筋肉が骨を覆いはじめ、すぐさま皮膚が見えていた筋肉を隠した

 

次に聞こえたのは水が勢い良くホースを通る様な音が僅かに聞こえ、血液が体を循環しているのだと理解した

 

やがて鼓動が体で感じれる程に強く脈打ち、脈打つ毎に体も動きを始めていく。そしてゆっくりと目が開いていくのが分かると一気に安堵の気持ちが押し寄せた

 

 

「いっ、いだだだだっ!!」ガバッ

 

響「て、提督!!」

 

曙「…アンタ、まさかさっき…」

 

「ウッ…ブハッ!」ビシャッ

 

響「提督!血が…!」

 

「だ、大丈夫。胃に入った血が逆流してきただけだから…」

 

時雨(保全)「大丈夫かい?」

 

「…三途の川が見える所で鎌を持った赤い死神に出会った位だ」あそこまでハッキリとした幻覚は初めてだった

 

曙「死んでるじゃない!」

 

「生きとるわ!縁起でも無いこというな!」

 

時雨(保全)「そこまで行くと死んでると言ってもいいんじゃないかな」

 

「味方はいないのか…」

 

響「提督…」ギュッ

 

「ところでお二人さん。この子()どうしたら良いと思う?」離れてくれないんだけど

 

曙「仕方ないでしょ」

時雨(保全)「自業自得だね」

 

「半分位はお前のせいだけどな?」

 

「ま、それはともかくとして時雨、対話は上手くいったみたいだな」

 

時雨(保全)「うん。納得してくれたよ。唯一駄目だったのがさっきの奴でさ」

 

「ラストのアレは俺が対峙してた奴じゃなかった。あの動きが変わった瞬間、お前に入れ替わったな?」

 

時雨(保全)「正解。どうだった?」

 

「艦娘と喧嘩するもんじゃねーな。命が幾つあっても足りんわ」

 

時雨(保全)「それが賢明だね」

 

「…でも、次は負けねぇぞ」

 

時雨(保全)「……」

 

曙「良いわ。そこまで言うなら私が相手してやろうじゃない」ボキボキ

 

「チッ。うるさいやつだな」

 

曙「なんですって!?」

 

「はいはい。分かったよ」

 

時雨(保全)「提督。二人が来たのは僕達を見に来たわけじゃないでしょ?」

 

「そうだった。書類作り直すから二人も執務室に来てくれ。自分だけだと忘れそうだから」

 

曙「了解」

 

響 ギューッ

 

「…離れてくれない?」

 

響 ブンブン

 

「…ま、いいか」

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