この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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我儘を押し通す力

ル級の相手をするべく、自分と雷が前に立ち、島風と時雨が後ろで二つの砲門をル級に向けながら深海棲艦の入ったドラム缶を守るようにして立つ

 

最終防衛線として島風と時雨を立たせている。万が一自分と雷が突破された時の免罪符として、そして(ル級)に何時でも子供を撃てると脅す為でもある

 

怒りに狂いながらも、それでも頭の片隅では下手な動きをすれば子供が撃たれるという事を分かっているのだろう。無理矢理に突破する事はせずに、ただ自分達に向かって砲撃してくる事しかしない

 

だが、それも最早限界の様に感じていた。何故なら先程からル級の顔が初めと比べて明らかに変わってきているからだった

 

恨み積もった怨念でも飛ばして来そうな程に憎悪に顔を変え、コチラも砲撃に回らなければ危ないのではないか。そんな考えが頭を過ぎっていた

 

 

天龍『島風!あれから何分経った!?』

 

島風『およそ15分!推定時間まで残り15分です!』

 

天龍『くそっ。まだ半分か…!』

 

時雨(保全)『どうするんだい?また鬼ごっこでもする?』

 

天龍『いや、今それをするのはあぶねぇ。さっきからル級の顔つきがだんだんやべぇ事になってきてる』

 

時雨(保全)『具体的には?』

 

天龍『ぐ、具体的?えっと…電が司令官の我儘に振り回されて3回目位の顔してるぞ』

 

島風『…ホントにヤバいヤツだね』

 

雷『二人して結構余裕あるわね!?あっちもうブチギレよ!?』

 

 

島をぐるっと一周する事による鬼ごっこも2度目があるとは思い辛い。今度も同じ様な逃げ方をすれば相手に読まれて攻撃を食らってしまうだろう

 

だからといって新しい手があるかと言えば無い。何もない。だからこそ、だからこそ何か閃かないかと思考を巡らせる

 

そんな都合の良い閃きなんて起きはしない。しかしこちらでは無く、あっち(ル級)が何かの変化が見られた

 

先程までいきり立っていたル級の体が力なく曲がり、今にも膝から崩れ落ちそうな位に足をガクガクと揺らしながら、何とか転ぶまいと一歩、また一歩と歩を進めた

 

 

雷「な、何…?」

 

天龍「わ、分かんねぇ…」

 

ル級「……」ギリギリ

 

 

遠目で何とか歯ぎしりをしている様子が見えた。とてもイライラしているのが分かったが、それだけでは無い様な気がする

 

だが直感的に理解した。何故あの様な事になっているのか、直感的に理解してしまった

 

恨みだ。ル級の力無い動きは深い恨みを体現していた

 

子供を取り戻せない力無い自分への無気力と、それでも諦めず、しかしどれだけ追いかけようとも決して届かない物への怒り。負の全てを混ぜ込んだ物で動いていた

 

瞬間、ル級の目に色が灯る。それは先程まで通常のル級と同じく水色であったが、それはみるみる内に黄色く変化していった

 

続いて黄色のオーラが身体から飛び出す。そのオーラは燃え上がる様に激しく立ち昇り、自分達に絶望感を与える結果になった

 

 

天龍『……全員、聞け』

 

天龍『逃げるぞ。死ぬ気で』

 

 

了解の合図も無く、皆が一斉に後ろを振り向いて逃げ出した

 

子供の入ったドラム缶を側に手繰り寄せ、曳航では無く両手で抱える様にして持ち上げる

 

指の一本でも力の加減を間違えてしまえばすぐさま海に落とす事になるだろう。だがそうでもしなければすぐにでも攻撃が飛んで来るように思えたからだ

 

後ろで砲撃音が鳴り、腕の直ぐ側を通って砲弾が海に着水した

 

自分の僅か数メートル先で水飛沫が上がり、勢い良く水が身体に打ち水の如く降りかかる

 

 

島風『天龍!!』

 

天龍『大丈夫だ!当たってねぇ!』

 

 

装填の隙に更に距離を離そうとする。しかしそれに追いつこうとあっちも速度を上げてきて、その速度も先程と比べて速くなっていた

 

 

天龍『ヤバイぞ!アイツ、俺の腕だけを正確に狙い撃ちしてきやがった!子供に当てない自信があるって事だ!』

 

島風『しかもさっきより速いよ!追いつかれるって事は無いだろうけど、振り切るのは多分無理!』

 

雷『装填が約4秒で完了するとした場合、後15分と計算しても225発!避けきれないわ!』

 

雷『このまま逃げても何も変わらない!天龍、どうする!?』

 

天龍『くっそ。何か手はないもんか…』

 

時雨(保全)『子供を手放したら良いじゃないか。相手の狙いは連れてる子供達なんだから、それさえ手放せば追ってくることは無いと思うよ?』

 

天龍『それは無理だ!アイツは今回の事を絶対に根掘り葉掘り聞いてくる!敵がいたけど子供だったんで見逃したは通じない!それに今回の事を命令で聞きだされたらどうにも出来ねぇぞ!』

 

時雨(保全)『それならこの通信は?記録されてるんじゃないのかい?』

 

雷『ウチの提督がそんな所にまで気を回すと思う?』

 

時雨(保全)『(思わ)ないね』

 

 

後ろで再び砲撃音が鳴り、直感的に左へ一歩程移動する

 

すると先程まで立っていた場所で水飛沫が飛び散り、背筋が凍り付いた

 

一発目と比べてより正確にこちらを狙ってきている。とてもじゃないがこれ以上逃げおおせるのは無理だと感じ始めていた

 

 

時雨(保全)『駆逐艦時雨より、旗艦天龍に提案』

 

天龍『コチラ天龍。手短に頼む』

 

時雨(保全)『超近距離戦闘を提案。理由としては砲撃戦より被弾率は高まるものの、現状のままではいずれ被弾するとの判断によるもの』

 

天龍『……』

 

時雨(保全)『この作戦成功の裏付けとして、あまり艦娘が行わない近接訓練を定期的に行っている事からの提案。敵の能力は未知数ではあるものの、砲撃よりかは精度が低いとの推測』

 

 

…確かに。それに持ち込めたら可能性としてはゼロではない

 

だが体力が問題だ。流石に15分もの間、戦闘を続けるのは正直不可能に近い

 

集中力や精神的な気力は長い航海や敵との砲雷撃戦で培われている為に15分程度は余裕で持つだろう。しかし肉体を動かして行う戦闘については無理だ。必ず何処かで綻びが出る

 

 

島風『駆逐艦島風、先程の提案ですが、一人で請け負うのではなく、私・雷・天龍の三人でしたらどうでしょうか?』

 

雷『駆逐艦雷、その提案に同意します』

 

 

…なるほど。それは良い考えだ

 

二人して近接戦の能力は皆と比べて高い方だ。それに駆逐艦の機動力も活かして回避に徹するのは勿論のこと、ヒットアンドアウェイ戦法を取っても上手くいくだろう

 

 

天龍『旗艦天龍。提案を受理。コレより作戦行動に移る』

 

時雨(保全)『駆逐艦時雨。自分は子供の警護に回ります』

 

天龍『了解。頼んだぞ』

 

 

作戦実行を合図に島風がコチラに合流し、三人同時にル級へと突っ込んだ

 

砲撃の対象を増やすべく、左右に1人が入る程の間隔を開けつつ、回避に専念する為に邪魔な主砲は解除する

 

ル級の主砲がコチラに向き、僅かな腕の動きから先程まで向かい合っていた自分に目が向いた

 

砲撃のタイミングを見計らう。距離はもうそこまで遠くなく、敵の一撃を見てからの回避は不可。ならば直感と推測で敵の攻撃を避けるしかない

 

ル級の砲撃。コンマ1秒でも速く動いて避ける。その瞬間がやってきた

 

砲撃を知らせる轟音よりも先に砲弾が飛んでくる。それよりも先に身を屈め、砲弾が髪を焼き切りながら後方へと飛んで行った

 

安堵と喜びが入り混じる様な感情が頭の中で湧き出ており、ル級には驚きの感情が湧いて出たのを、その表情からハッキリと読み取ることが出来た

 

 

天龍「しゃぁっ!避けたぜ!」

 

雷「天龍!島風!行くわよ!」

 

天龍・島風「「了解!」」

 

 

やる事としては至極単純。ル級を中心に円を作り、三方向からの打撃攻撃だ

 

艤装の砲門や徒手格闘で三人してル級の背中を、頭を、足を、艤装を殴打する。しかしどれだけやってもダメージは微塵も見られなかったがコレでいい。コレで良かったんだ

 

自分達のやる事はあくまで時間稼ぎ。流石に今回の様な相手には攻撃(砲撃戦)が出来ない

 

提督にこの事を報告したらなんと言うだろうか。甘い馬鹿だと罵られるのか、良くやったと言ってくれるのか。全ては提督次第…いや、どちらかと言えば気分次第かも知れない

 

そんな事を頭の片隅で考える余裕を持ちながら連打を続けていると、ル級の表情に余裕が見えた

 

どうやら時間を掛けたことで落ち着いてしまったらしい。打撃による攻撃がダメージにならないのを悟ったらしく、すぐさま本気でル級の顎を狙って拳を打つ

 

的確に顎を捉えた拳は僅かでもダメージになるかと期待したが、現実はそこまで甘くなかった

 

拳を振り切る事が出来ない。確かに当たった筈の拳は、ル級が少し顔を動かした程度でしか無かった

 

ル級の砲門がゆっくりと、そして正確に狙おうと自分の目前に構え、砲門の穴が見え、その中に装填されている砲弾の輪郭すらハッキリと見えた

 

瞬きをする事しか出来なかった。もう無理だと体が悟ってしまったのか、死への恐怖感というものが体から完全に抜けきってしまい、今の自分は抜け殻だと思えてしまう

 

ル級の腕から砲撃音が鳴る。しかし島風がル級の膝を蹴りによって曲げ、雷の掌底突きによって腕が上へと打ち上げられ、砲弾は見当違いの方向へ着弾していった

 

 

ル級 ギロッ

 

島風「天龍!しっかりして!」

 

 

その言葉にハッとしてすぐさまル級に前蹴りを入れる。鋭く伸びた脚は見事にル級のみぞおちへと入り、僅かにえずく様子が伺えた

 

 

天龍「すまん!助かった!」

 

雷「気を引き締めてよ!」

 

 

まだ時間は一分も経っていない。それでも我儘を押し通す為に今はこれ以外で方法は何もないのだと自分に言い聞かせ、再びエンジンを掛け直した

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

漁船を港で待機していた海上保安官に引き渡し、ついでに人間も相手に引き渡す

 

お疲れ様でしたと言う労いの言葉を受け取り、すぐさま踵を返して皆の所へと戻る

 

すぐさま向こうの状況を把握すべく通信を開き、不安と焦燥に駆られながら耳を澄ませた

 

 

山風『コチラ山風。状況は?』

 

天龍『…終わったよ』

 

天龍『子供は無事に引き渡せた。もう問題は無い』

 

 

その割に声に元気が無い。というより、その声に生気を感じさせなかった

 

 

山風『どうしたの?何かあったの?』

 

天龍『……』

 

 

返らない答えにさらに不安が積み重なる。だが聞かないことには始まらず、ジッと答えが返ってくるのを待った

 

 

天龍『…子供を引き渡せた所までは良かったんだ。だけどそれで終わる訳なかったんだ』

 

天龍『雷、島風、時雨。三人は轟沈一歩手前の大破。俺は被害こそ無いが、正直つれぇよ』

 

山風『…何があったの』

 

天龍『増援だよ。お前の予想通り、増援がやってきた。だけどソイツがヤバかったんだ』

 

 

一気に背筋が凍った。自分の提案で作戦を進めた結果、酷い結果になるという現実にショックを受けたのもそうだが、また自分のせいで。そんな以前の思考が再びフラッシュバックでもするかの様に舞い戻った

 

 

天龍『見たこと無い深海棲艦だった。多分クラスは鬼か姫級クラスなんだろうが、正直助かったのは運が良かったとしか思えねぇ』

 

山風『どんな相手だった?』

 

天龍『ツインテール。ソレと半裸だった。ありゃ痴女だぜ』

 

山風『…相手の悪口言えるくらいには無事だって分かったよ』

 

天龍『……けど、そんな奴にボロ負けだ』

 

天龍『ありゃあ多分…大将や元帥の艦娘でも運が悪かったら勝てない。そんな相手に思えた』

 

山風『……』

 

 

南方棲戦姫。特徴から考えて、自分の知っている相手の中で最悪の相手が候補に浮かんだ

 

しかしそんな相手なら全員無事では済まない筈だ。というより南方棲鬼相手でも無事で済むわけないのだが、それ以外に考えようも無い

 

 

山風『とりあえず状況は把握した。今から私もそっちに行くから、天龍は鎮守府に入渠の連絡を入れておいて』

 

天龍『了解』

 

 

重く動くタービンの音。まるで自分の気持ちが乗り移ったかの様に、それはゆっくりと動き始めていた

 

 

 

「お帰り」

 

山風「ただいま戻りました」

 

天龍「……」

 

「今すぐ大破者をドックに運べ。って言いたい所なんだが…時雨、起きてるか?」

 

時雨(保全)「……」

 

「…命令だ。起きろ」

 

時雨(保全)「……」

 

天龍「無理だ。コイツ完全に気絶してるんだよ」

 

「しょうがない。じゃあ時雨だけ高速修復剤か」

 

天龍「待てよ。雷と島風は?」

 

「そのまま入渠させとけ。今回の事はショックがデカいだろうからな」

 

天龍「了解。あとよ、もう一個良いか?」

 

「なんだ?」

 

天龍「何でマントなんか羽織ってんだよ。似合ってねぇぞ」

 

「ほっとけ」

 

山風「天龍、行こ?」

 

「時雨が高速修復剤で回復したら執務室に呼んでくれ。俺も後で向かう」

 

天龍「了解」

 

 

2人が遠ざかる。山風は時雨に手を貸し、天龍が片腕ずつ2人をおんぶして運んでいる。かなり器用な事をしていた

 

意識が片う、運ばれていく2人を見送った後、額の脂汗を拭いながらレ級を探す

 

どうにもバランスが取りづらいか、動きで海沿いの堤防を歩く

 

自分のしている行動はただ歩いているだけ。その行動に全霊を注いで集中し、自分が何をしているのか分からなくなってしまいそうになる頃、パーカーに身を包んだ人物を見つけた。あちらも自分を探していたのか、コチラに気づくと手をブンブンと振って近付いてきた

 

 

レ級「いたいた。やっと帰ってきたんだな」 

 

「やっと見つけた…」

 

レ級「ほら、コレ」ブンッ

 

 

少し勢い良く飛んできた凍った腕。それを右手で掴んだ瞬間、足腰に力が入らず膝から崩れ落ち、左肩に尋常でない激痛と吐き気がした

 

すぐさま口に折り畳んだハンカチを咥え、力一杯に噛んで痛みを堪える。しかし吐き気によって胃から這い上がってきた汚い胃酸が僅かに口から零れ落ちた

 

 

レ級「良く叫ばずにいれるよな。片腕無くなってんのに良くやるよ

 

レ級「痛みを我慢すんのに限界だろうから伝言だけ伝えるぞ」

 

レ級「奪われた者は取り返した。だからコチラも返す」

 

レ級「ってさ。お前も運が良かったな」

 

 

運が良いもんか。そんな言葉をグッと飲み込んだ

 

すぐさま携帯していたバケツを懐から取り出し、片腕が落ちない様にレ級に支えて貰いながらバケツを肩から腕にかけて流す

 

切断された腕がみるみる内に繋がっていき、やがて腕に血が通い始めると、今度は先程よりも強い吐き気とふらつきが襲って来た

 

 

レ級「おいおい、大丈夫か?」

 

「…血が足らない」

 

レ級「吸うか?」グイッ

 

「……」ジトッ

 

レ級「冗談だって」ケラケラ

 

 

喉にまで昇ってくる胃酸を無理矢理飲み込み、未だ感じる強い吐き気を何とか我慢して立ち上がる

 

立ち眩み、目眩、吐き気、胃の不快感、全てが強い不快感として体と脳を攻撃する。痛みも強いせいか、心にも多量のダメージを負っていた

 

 

レ級「おいおい。ここで吐くなよ?」

 

「分かってるよ」フゥッ

 

レ級「聞きたいんだけどさ、片腕が無かったのにどうして発狂せずにいられたんだ?普通は混乱したり錯乱したりするだろ」

 

「意識を逸らしたんだよ」

 

レ級「意識を…逸す?」

 

「痛みを気にしない様にしたって言えばいいか。そもそも傷すら負っていることに気付かないレベルにまで無視し続けたんだ」

 

レ級「……お前本当に人間か?」

 

「人間じゃなかったら何に見えるんだよ」

 

レ級「…人外?」

 

「……間違っちゃない」

 

 

レ級は哨戒の時間だった為にその場で別れて執務室へと向かう。別れる際に土産としてピアスをプレゼントしたのだが、どうやら良く分かっていない様だった。また今度教えてやろう

 

執務室に向かう道中ですれ違う皆に今の格好を怪訝な顔をして見送られながら、既に執務室で待機していた時雨に遭遇した

 

怪我は無い。耐久値も既に全快している事から大破する前に負っていたであろう傷も綺麗さっぱり消えているのだろう

 

 

「まずは良く帰ってきた。そこは褒めよう」

 

「だけどお前…命令を守らなかったな?」

 

時雨(保全)「何のことでしょうか?」

 

「傷だ。あの命令はお前も対象だった筈だぞ」

 

 

一瞬、時雨の顔に驚きの表情が浮かんだ。何故知っているのかと不安と驚愕が入り混じった顔に、観念したのかぽつりぽつりと話し始めた

 

 

時雨(保全)「…天龍達がル級と超近距離戦闘の間、コチラにもイ級が数体やってきていました」

 

時雨(保全)「応戦して各個撃破しましたが、最後にイ級の放った砲撃が僅かに足を掠り、報告する必要も無い程度のダメージを負いました」

 

「だから子供を撃たなかったと?」

 

時雨(保全)「はい」

 

 

連絡を受けた時からずっとウィンドウで全員の様子を見ていた。その時に時雨の耐久が1だけ減っていたのを自分は見逃さなかった

 

…これは完全に自分のミスだ。俺はこいつに…いや。艦娘達を甘やかしすぎた

 

 

「…つまり隠し通せば子供を撃つ理由も無い。だから殺らなかった。そういうことだな?」

 

時雨(保全)「そうなります」

 

「…この事は報告させてもらう。お前の方針を変えてしまった事も謝罪しなければいけなくなったしな」

 

時雨(保全)「申し訳ございません」

 

「構わん。抜け道を残したコッチのミスだ」

 

「だが罰は受けてもらう。このままじゃ示しがつかんからな」

 

時雨(保全)「…はい」

 

 

状況はウィンドウで確認していたから万が一があっても大丈夫だと高を括っていた

 

その結果(慢心)がこれだ。自分がいよいよこの世界をゲームだと見そうであまり使用しなかったが、コレでは今後も使わざるを得なくなってくる

 

ウィンドウを駆使してより艦娘に規制と成長を促す。そうでもしないと今の皆はリードを外れた犬同然だからだ

 

自分にそんな事が出来るわけが無いと思っていた。だがそんなもの、結局はやらない理由を探していた自分への言い訳だ。その結果が遠征で3人大破という結果と、時雨の様な艦娘を生み出してしまった

 

過去の自分の行動。それも含めての時雨が取った行動というのは、提督として舐められている。未だ軽んじられているのは流石に駄目だ

 

 

「明日の朝イチでここに来い。お前の提督と会う前にやっとく事がある。それがお前の罰だ」

 

時雨(保全)「はっ」ビシッ

 

「今日はもう休んで良い。下がれ」

 

時雨(保全)「失礼します」バタン

 

「…妖精さん。いるんだろ」

 

妖精「いるよ〜」

 

「妖精さんから見てさ、提督としての自分と艦娘達の関係はどう見える?」

 

妖精「職場の先輩後輩。だけど経験は後輩の方が積んでいて、先輩はコネ入社したぼっちゃんってとこですかね。気分良くしたぼっちゃんが後輩の面倒見てるって感じです。後輩側は先輩の裁量に合わせて自分がこう動くべきだと判断してるってところでしょうか?」

 

妖精「肝心な事を伝えない先輩を持つ後輩ってのは苦労しますね~?それを引き起こした先輩もまた然り。ですが」

 

「良し。それを聞けて良かった」イラッ

 

妖精「何するつもりですか?」

 

「ぼっちゃんらしい事をするだけだ。コレ(ウィンドウ)を使ってな」イヒヒ

 

妖精「…ザ・小者の悪役みたいな笑い方しますね」

 

「ほっとけ。それより今一度これの確認をしたいんだが良いか?」

 

妖精「はい。では出撃・演習・遠征に関してご説明させて頂きます」

 

 

そこからなっがーい説明を聞いたのだが、何度も同じ点を質問する程に理解が進まなかった。だってこれ使ったのまだ数回程度だし…

 

おさらいを要約すると、ウィンドウで行った作業は全て現実的な動きをして行われるとの事だ

 

つまり、出撃ボタンを押してさぁ出撃。という訳ではなく、艦娘達に妖精さんから指示を出し、出撃に必要な準備などの諸々の過程を行った上で出撃させるとの事だ。キ〇クリは出来ないと覚えておこう

 

演習や遠征も似たもので、鎮守府との演習は予め約束を取り付けないと適当な鎮守府があてられるらしい。遠征も途中で終了した場合は帰還するまでの間は遠征に出した艦娘達を待たないと駄目らしく、自分もしっかり仕事する必要があるとの事だ

 

書類も勝手に作られるわけでは無いのでそこは自分の頑張りだ。ゲームと違ってちょっとめんどくさいし、自分が指示を出すのと何ら変わりない気がするが、それでも艦娘を動かせるという事実だけでも充分だ

 

 

「頼り切りは無理って事だな」

 

妖精「はい。ついでにいうと、明日1日だけだとちゃんとした鎮守府との演習は不可能だと思います。すぐに対応出来る所くらいですね」

 

「それくらい分かれば充分。明日は忙しくなりそうだな」

 

妖精「…で、時雨さんについてですけど」

 

「あぁ。どうだ?出来そうか?」

 

妖精「貰うもん貰ってからにします」

 

「間に合わせてくれよ。ほれ」っ麩菓子

 

妖精「…コレだけぇ?」

 

「後1キロ分あるけども」ドサドサ

 

妖精「今すぐ取り掛かりましょう!」

 

「単純だなぁ」

 

 

…よし。たまには真面目にプレイでもしようか

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