この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ 作:七福えると
何があったんだろうか?全く覚えていない
確か…筑摩に練度がいよいよ10に到達したのを話していたことは覚えている。だがそこからぷっつりと記憶が消えている
だがそんな事は今はどうでもいい。そう考えてしまうのは仕方ないだろう
ガチッ、ガチッ
現在、無機質な壁と正面にドアがある窓のない部屋で椅子に拘束されて監禁されている。手首や体にベルトをがっちりと巻き付けられてだ
さながら死刑を待つ身だ。あまり気分が良いものではない
それに気になる事が一つある。それは目の前にあるドアの下に小さな隙間がある事だ
そしてその向こう側からカサカサという音がまるで脳に響くかのように鮮明に聞こえてくる。しかもかなりの大きさだという事がドアの隙間から時折見せる足で想像がついた
全長は少なくとも1Mを超えるだろう。しかもあの脚の形からして、おそらくゴキブリだ
しかしあんなサイズが現実にいる訳無い。つまりこれは夢だ。夢のはずだ
だがこんな夢だ。オチの想像を考えると体が震え、動悸が激しくなり胸が苦しくなってくる
額から汗が噴き出しているのが分かる。いつか訪れるであろう扉の向こう側にいる存在がコチラに向かってくると考えるだけでとてつもない恐怖心に襲われる
ドア カシャン
…今、何の音がなった?
いや…自分はその音が何を指し示すのか分かっているはずだ
ギギギと音を立てながらドアがゆっくりと開き、扉の向こう側にいる存在が扉を通ってこの部屋へと入ってくる
何とか拘束から脱しようと体を動かすが抜け出せない。それどころか拘束がますます強くなっている気がする
体の半分が見えてきた。そしてその口からは涎のような物を垂らしながら少しずつ自分に迫り、足先にへとその巨大を触れさせた
それはやがて膝、腿、腹、胸へと脚を這わせながら登ってきてやがて顔の高さまでのしかかるように立っていた
涎が頭に付着し、次の瞬間には頭の髪を口で覆われる様に吸われる感覚がしたところで
利根「うぉぉぉぉ!!?」
「うわっ!?」
天龍の頭に付けていた道具を手に持った提督が、何故か自分の自室にいる状況で目が覚めた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「で、本日の出撃に関してだが…」ヒリヒリ
島風『おっきい赤紅葉…』
夕立『何かあったの?』ヒソヒソ
電『さぁ…?でも多分原因は…』チラッ
利根 ハァ…
「どうした利根?調子でも悪いのか?」
利根「いやスマン。何でもない」
「そうか。今回はお前が旗艦なんだからちゃんとしてくれよ」
利根「うむ。承知した」
夕立『あんまり仲は変わってなさそう?』
島風『うーん。付かず離れず?』
「…夕立、島風。無線で内緒話はやめなさい」
島風「えっ!えっと…!」
夕立『何でバレたの!?』
島風『分かんないよ!提督に聞こえるはずないのに!』
「いや…お前らのそばにいる妖精さんがな?」
妖精A『今は朝礼中ですよ』E.カンペ
妖精B『気を抜きすぎないように』E.カンペ
「お前らの会話スピードに合わせて妖精さん達がカンペ書いて教えてくれた」
夕立「うっ…」
島風「…ごめんなさい」
「…まぁ良い。今回は良いが以降は気を付けるように」
「利根。今回はお前の旗艦としての経験を積ませることが目的だ。お前についていく仲間は皆お前より練度も経験も全て上だが、お前が第一の命令権を持つ。その立場をよく感じ、判断を下すという責任の重さを知れ」
利根「うむ。了解した」
「筑摩、お前はもう少し後だ。お前の性格を掴みきれん俺のせいでもあるんだが、お前の活躍出来る場をいずれ用意してやる。だから姉に遅れを取った。助けが出来ないと悲観するなよ」
筑摩「はっ」ビシッ
「では本日の朝礼は終了する。解散」
艦娘達「お疲れ様でした!」ケイレイ
「あ、そうだ。それと時雨。お前はそろそろ荷物をまとめておくように」
時雨(保全)「はい。承知しました」
痛む頬を顔に出さない様にしつつ、自室に入るまでその顔を崩さないでおく
部屋の冷蔵庫から冷やしタオルを取って頬に当てる。中々気持ちいいが、手も一緒に凍りそうだ
この後の予定は時雨が帰ってくるのでその出迎え。2人を交換した後に再度演習を行い、それであの提督との付き合いは終わりだ
時雨が帰ってきたらどうしようか?労うべきか。それとも会えなかった寂しさをいっその事告白してみるか
うちに来た時雨についても良く頑張ってくれたと労うべきだろう。となると最後にお別れ会でも開いて別れるべきか
…そんな事を考えるあたり、ホントに寂しかったんだなぁ。そう思う相手に時雨はなったんだ
この感覚は…あれだ。小学校の頃に行った修学旅行で感じた家族のいない寂しさに良く似ている
仮にコレが電達だった場合も同じだろう。やっぱり彼奴等は自分になくてはならない人達なんだ
時雨(保全)「提督。準備出来ました」
「ん、そうか。忘れ物はないな?」
時雨(保全)「はい。問題ありません」
「良し。今日まで一緒にいてくれてありがとう。とても楽しい日々だった」
時雨(保全)「私も良い経験になりました。ありがとうございます」ケイレイ
「それじゃ、行きますか」
鎮守府正面玄関
「長旅ご苦労さまでした」ビシッ
保全「出迎えありがとう。ウチの時雨はどうだった?」
「皆の良い刺激になったと思います。一週間という長くも短い日でありましたが、彼女はしっかりとやってくれました」
保全「うん。そう言われると僕も鼻が高いよ」
「それで、その、うちの時雨はどうでした?」
保全「前にも話した通り優秀だったよ。けど今の君と同じく寂しかったみたいだね」
「ゔっ」
保全「その素直さが出てくるのは日によって違うのかい?何時もは自分の気を隠してるツンデレみたいな感じなのに」
「ほっといてください。人にはその日の調子ってものがあるんです」
保全「君の場合は極端すぎる気もするけどね。それはさておき、愛しの時雨を返してもらおうか」
「…のりませんよ」
保全「ありゃ?」
時雨「提督。ただいま」
「おかえり。良く頑張ってきたな」
時雨「別に。大した事してないよ。普段通りの生活だったさ」
「こっちは…いや、コレを言うのはそっちの時雨に悪いか」
時雨「?」
「とにかくよく帰ってきた。しばらくは慣らしの為に利根達と組んでもらうぞ」
時雨「はっ」ケイレイ
保全「それじゃ、僕達も演習が終わり次第帰らせてもらうよ」
「では、2人の総決算と行きましょうか」
保全「サシでやり合うのはどう?今回のメインはこの2人だからね」
「…良いですね。どちらがより時雨を成長させたか見れるいい機会です」
時雨(保全)「…今って僕を応援されてる?」
保全「うん。コレは提督としての素質勝負みたいなものだからね」
時雨「…浮気者」
「酷くない?」
保全「うーん。じゃあせっかくだしご褒美も賭けよう」
「ご褒美も?」
保全「そちらの時雨が勝てば僕に資材をALL10000譲る。というのはどう?」
「……でっかい賭けですね」
保全「うちの時雨が勝てば~……」
保全「良いコ紹介するよ?」ボソッ
「乗ったぁ!!」
時雨「何を話したの!?」
時雨(保全)「とりあえず碌でも無い事は確かだと思うよ。悪巧みする時のウチの提督って大分悪い顔になるし」
時雨「…僕、今凄く複雑な気分だよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時雨達の放った魚雷が海を走る。保全の時雨は初めて見た時と少しも変わらないポーカーフェイスのまま、速度に緩急を加えながら魚雷をジグザグと回避していき、ウチの時雨は魚雷が当たる直前で海を強く踏み、揺れた波で魚雷が後ろへと流れていく
二人の距離が次第に縮まって良き、やがて二人の射程距離に入った瞬間、砲撃音が寸分の狂い無く同時に鳴り響いた
二人の汗が弾け、上半身をフル稼働させて砲撃を避ける姿は正に映画に出てくる様な喧嘩師。体を揺らし、或いは捻り、荒々しいながらも確かな避けの技術が次に繋ぐ動きへと行動の中に組み込まれている
上半身を揺らして避ける動きは次の攻撃の場所を探らせない様に。体を捻った回避は自分の軸を大きくずらさない重心を強く意識された行動となっている
ウチの時雨が動だとしたら、保全の時雨は静。一見派手に見える動きには彼女達が積み上げてきた経験が確かにあった
保全の時雨は以前は動きについて正道があった。所謂パターン化された動きと言うのだろうか
攻撃をする際は構え、そして撃つ。回避をする際は砲塔を構えず、砲撃を見て回避に徹する。基礎を徹底的に固めたものとなっている
至極当然の事だ。狙わなければ当たらないし、避けるためには相手の攻撃を見なければならない
だが時雨の練度上昇に伴って身体能力も向上した。それによって動きに幅が出来、ここでの個を尊守する生き方によって時雨も個性を手に入れた
これが良いか悪いかは分からない。だが正道という基礎を積んできている
一方でこちらの時雨だ。こっちはこっちで中々に興味深い進歩を見せている
ウチの時雨は天才だ。それ故に教えた事は吸水性の良いスポンジの如く学んでいく
それ故に時雨は基礎を疎かに成りがちで、学んだ事だけが尖っていく様に伸びていった
技術とは基礎を固め、その上にそびえ立つ塔のような物だ
塔は地盤が緩ければ少しの地震で崩れ落ちてしまう。どれだけ頑丈な塔であったとしても、地面そのものが弱ければあっさり倒れてしまい、話にならない
しかしその地面がアスファルトの様に硬ければ。例え地震や津波であったとしてもそう簡単に崩れることは無い
今の時雨はその危うさが無い。動きに呼吸があるみたく冷静で、落ち着いてリラックスした状態を維持しながらも動きに余裕があるように見えた
二人共に成長が出来た様で何よりだ。時雨の成長が目覚ましいものなので、コレなら今後も他所との交換はアリかも知れないな
時雨『ねぇ提督』
『ん?どうした?』
時雨『この勝負に勝ったらさ、ご褒美をくれない?』
『褒美?別に良いけど…』
時雨『決まりだね。それじゃあ勝てたらキスしてよ』
『…は?』
時雨『じゃ、戦闘に戻るよ。忘れないでね』
『え、ちょっと待っ』ブツッ
…切れた
ボーっとしている訳にもいかず、すぐさま二人がいる海上に目をやる
その瞬間、保全側の時雨の足元で爆発が起きた
まさかと思い双眼鏡でよく見ると、被弾したのは足が殆どで、アレでは動くことは出来ないだろうが生命活動に問題は無いレベル。つまり大破状態と言える状態であった
そのままウチの時雨が背後を取りに後ろへと回り込む。それを予想していたかのように保全の時雨が最後の魚雷を投げて相打ちに持ち込もうとしたが、当たる直前に掴まれてしまった
それを見て驚きと諦めの様な表情をして、投げ返された魚雷が爆発して戦闘は終わった
音声『保全鎮守府の戦術的敗北です』
時雨「……」
「…お前さぁ、あんな至近距離で魚雷当てたら自分も被弾する事くらい想像つくだろ…」
時雨「……//」ポカポカ
「痛い痛い。ったく。舞い上がりすぎだっての」
時雨の額へと約束のキスをして離れ、周りの厳しい視線が一斉にコチラへと向くのを感じながら保全提督と握手を交わす
保全「最後のアレは時雨らしくなかったね」
「目の前の褒美に釣られて飛んだアホです。それでも勝ちはしたんですから約束は守らないと」
保全「良し。それじゃ、誠実な後輩にはプレゼントをあげよう」
「プレゼント?」
保全「というわけで挨拶をお願いね」
ビスマルク「Guten Tag。私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。よおく覚えておくのよ。」
……はい?
保全「じゃ、そういうことだから」
「待って待って待って待って???」
保全「どうしたんだい?コレでも忙しいんだけどな」
「いやいやいやいや。あの金髪ロングのデカい暁みたいな人は誰ですか?」
ビスマルク「誰って。紹介したでしょ?ビスマルクよ」
「あ、うん。それは理解した」
保全「じゃあ良いよね」
「良くねぇよ!ウチの艦娘達が全員口広げてポカーンとしっぱなしなんだよ!プレゼントにしてはデカすぎて全員アホ面晒しちゃってるよ!」
保全「じゃあ今回の話は無かったと言うことで…」
「すいません。ウチにスカウトさせてください」
保全「じゃあ決まりだ。細かい手続きなんかはコッチで既に済ましてるから。後はここにハンコを押すだけで成立だよ」ピラッ
書類『Bismarck級 1番艦 戦艦 ビスマルク 異動届』
「…この書類、何か隠し文字とかあったりしないですよね…?」ジロジロ
保全「そんなものないよ。明らかに危ない内容でもない」
ビスマルク「もうっ。疑い深いんだから」
「いきなり出会った人に大金ぶん投げられた気分なんですから多目に見てください…」ポンッ
保全「じゃあ成立と言う事で。機会があればまたよろしくね」
その言葉を最後にサッサと帰ってしまう保全提督を見送りつつ、傍で手を振っているビスマルクへと目を向けた
…賄賂として渡されたと考えるべきか。或いは別の何かを見出されたのか。真意は今のところ不明だ
ビスマルクといえば子供っぽくてデカい暁って事くらいしか知らないんだよな。海外艦なんて自分の所には一人しかいなかったんだぞ
確かなのは性能は全て折り紙付き。ということくらいしか知らない。ついでに言うと特定の艦娘と仲が悪いって事くらいか(その特定が誰かは知らんけど)
まぁ、どちらからしても当時戦争で争ってた訳だしな。そこら辺で問題を起こすようなら自分がキッチリ取り締まったら良いだろう
…けど、一つ言いたい事がある
ビスマルク「?私の顔に何か付いてる?」180cm以上..?
「…でかいな」
ビスマルク「戦艦だもの。当然よ」
「国外の人間は背が高いけど、女性でビスマルクレベルの身長はあんまし見た事無いな」
ビスマルク「ふふん、当然よ。私のタフネスは歴史が物語っているわ」
「んじゃ、部屋割りだけど「ち、ちょっと待ってくれない?」」
ビスマルク「その…不快じゃないの?」
「は?」
ビスマルク「その…私ってほら、あのっ、えっと、顔が……」
「…?いや、何も付いてないけど」
ビスマルク「そっ、そうじゃなくって!私の事、気持ち悪いとか思わないの!?」
「……あっ」
そういや美醜逆転してんだっけ。話に出てこないから忘れてた
「逆に聞くが、お前を連れてきた提督はお前の事をどう言ってたんだ?」
ビスマルク「えっ?それは特に何も…」
「じゃあ口を出す程に醜くないって事だろ。それでいいじゃんか」
ビスマルク「なっ、なんでよ!普通私を見たら敬愛して出会い頭に口説き文句の一つや二つしてくるもんじゃないの!?」
「……そっちかよ」というか自分を醜いって言ってる上でこの発言は凄いな
電「…司令官さん。ちょっとこの人とお話してきて良いですか?」
「う?うん。別に良いけど…」
なんだ?時雨の件はまぁ予想はしてたから分かる。けどビスマルクの登場でこうなるってのはどういう原理だ?
電とビスマルク…いや、よく見れば他の皆も何だか目が怖い。全員艦時代にビスマルクと関係あったっけ?
というか皆が一斉に演習場に向かってるんだけど。面白そうだし妖精さんにカメラでも回してもらおうか
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ビスマルク「…………」燃料・弾薬:0
「……お疲れ様」
ビスマルク「なんなのよぉ…」
「こっちが聞きたいよ…」
ビスマルク「新人いじめは提督の趣味じゃないの?」
「そんな趣味は無い。ただお前と演習しろなんて命令すら出してないしなぁ」
ビスマルク「……つまり私、独断で演習挑まれて補給も無しにさせられたって事?」
「……そうなるな」
ビスマルク「提督、流石にこういうことは控えるように言ってくれない?」
「残念ながらそういう訳にはいかん」
ビスマルク「どうして!?」
「元々そうするつもりだった」ピラッ
書類『演習依頼 ビスマルク 申請承認:大淀』
ビスマルク「……これ、何時作られてたわけ?」
「俺もついさっき確認したんだが……昨日時点で申請が出されてた」
ビスマルク「……私が建造された一時間後?」
「あの二人元々組んでやがったみたいでな。それならさっさとお前の練度上げをした方が良いと今思った」
ビスマルク「…こんな提督で大丈夫かしら」
「いや、流石に大淀のスケジュール何て把握してないよ。というかそもそも知らなかったし」
ビスマルク「提督なんだから部下の隠し事位見破って欲しいわね」
「無理を言いなさるな…」
ビスマルク「でも提督が承認していないって事は、これは私怒って良いのよね?」
「んー。まぁ別に良いと思うけど、どうせ初めて会った奴にはまず演習させるからな。提督としてはまぁ別に良いかってレベルの考えだ」
ビスマルク「…そう言われちゃったら理解はするけど納得はしないからね」
「しかしお前…なんか恨みでも買う事したか?」
ビスマルク「知らないわよ!あるにしても、過去の大戦位だと思うけど…」
「えーっと、『ビスマルク 浸水日』っと。それと『第二次世界大戦 何時』」Wik◯で調べたら出るだろ
「…ん?お前さ、日本がアメリカと戦争した時に産まれてなくね?ていうか既に沈んでない?」
ビスマルク「へ?」
ビスマルク進水日 1939年2月14日
ビスマルク轟沈日 1941年5月26日
第二次世界大戦開始 1939年9月1日
太平洋戦争 1941年12月8日
ビスマルク「嘘ッ!日本とアメリカって戦争したの!?」グイッ
「だな。そういや中学の歴史授業で先生が話してた時にチラッと学んだ気がする」チョッアタッテル…
ビスマルク「…でもそれなら尚更私があんな目に合うのが分からないんだけど?」
「ん〜…分からん」
ビスマルク「つかえないわね…」
「寧ろ分かってたら確信犯だろーが。流石に新入りイジメする様な事はしない様にはしてるよ」
ビスマルク「それがあったんだけどね…私、ここでやっていけるのかしら」
「とりあえずビスマルクは今日一日皆と交流を深めてくるしかないな。遊んだりトレーニング何かで交流は出来るだろ」
「それと明日は秘書艦をお前に任せる。しばらくはお前の練度上げだ」
ビスマルク「分かったわ」
「んじゃ、話は以上だ。ちなみにル級とヲ級がウチにいるけど喧嘩するなよ」
ビスマルク「わかっ…え?」
「どうした?」
ビスマルク「えーっと、聞き間違いだと思うからもう一回言ってもらえない?」
「ル級とヲ級がウチにいるけど喧嘩するなよ」
ビスマルク「…聞き間違いじゃなかったのね」
「ある作戦なんだ。だから敵としてではなく味方として接してくれると助かる」
ビスマルク「…もう無茶苦茶ね」
2100
夜、この時間帯ならば各々が好きな時間を過ごしている時に、風呂上がりの火照る体で部屋の扉をノックする
ビスマルク「はーい。って提督」
「夜にすまんな。今いいか?」
ビスマルク「構わないわ。とりあえず中に入りましょ」キイッ
「すまんな」
中は備え付けのベッドに椅子と机。まだ私物は置かれていないが、何やら机に部屋の間取りを写した紙が見えた。おそらくリフォーム計画書だろう
部屋着は長袖長ズボンの赤の体操服。見た目も相まって日本文化をかじって日本にやってきた外国人という感じだ
普段の服はしっかりとハンガーにかけられており、よく見ればベッドにもシワがない。几帳面な性格らしい綺麗に整頓された部屋だ
ビスマルク「それで、どうしたのかしら?」
「あぁ。お前が始めて顔合わせた時に演習でボコボコにされたろ?その理由が分かったからな」
ビスマルク「あぁ良かった。自分から聞いても良かったけど、流石に悪手な気がしてたのよ」
「それで理由なんだが…嫉妬だった」
ビスマルク「…へ?」
「しかもその理由なんだが…馬鹿らしいというか、アホらしいというかなぁ」
ビスマルク「…で、結局理由は?」
「俺の好みにピッタリの人が来たことによる焦りによる物だった」
ビスマルク「ますます意味が分からないことを言わないでくれる?」
「いやあの…ホントにコレはスマンとしか言えなくて…」
そう言って私用スマホの検索履歴を見せる。正直こんな事はしたくないのだが、仕方ない
長身 外国人女性 落とし方
長身女性 強い 勝ち方
女 魅力 伝え方
女性 幼い 魅力
金髪ロング 外国人 美人
髪 抜け毛 10代 育毛剤
ビスマルク「…提督。まさかその歳で髪に関して気にするなんて…苦労してるのね…」
「そこじゃねーよ!いやっ、確かにシャンプーで髪洗ったら10本以上は抜けてるけどそうじゃなくって…」
「俺のスマホは仕事中の時だけ皆に貸すことがあるんだよ。その時に何となくで調べた物を皆に見られて、それを全員が勘違いしたってのが事の経緯だ」
ビスマルク「ふーん。ま、しょうがないんじゃない?」
「へ?」
ビスマルク「だって私凄いもの。それくらいの嫉妬を受け止められなきゃやってられないわ」
「…その自信のあり様は素直に尊敬するよ」
「じゃっ、話はそれだけだ。夜遅くに邪魔したな」
ビスマルク「あら?それだけなの?」
「?他に何かすることあったっけ?」
ビスマルク「こんな時間に女性の部屋に来たのよ?コレからやる事って分かるもんじゃない?」
妖艶な笑みでジャージのジッパーを下ろし、胸を強調する様なポーズを取りながらゆっくりとジャージを脱ぐ
二つの山が脱ぎ去る瞬間にシャツの中で揺れ動き、その下に何も付けていないのを連想させた
ズボンに手が伸びた瞬間、肌身離さず持っていた悪夢銃でビスマルクを撃ち抜き、ズボンを半分下ろしながらゆっくりと眠りに落ちていった
見た目とは裏腹に意外にも軽いビスマルクを抱え上げ、ベッドへと運んで寝かしつけておく。目覚まし時計も早めにセットさせたから、翌朝には起きるだろう
「…海外艦との接触は今後気をつけよう」
僅かな不安と踏み切れなかった後悔と安堵を少し心に残しつつ、静かに扉を閉めるのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
0400
「ZZZ…」
ビスマルク「ほら、起きなさい。もう朝よ」
「ん…ふぃ?何で上に乗ってんの?」
ビスマルク「起きないからよ。触っても起きなかったんだから圧力をかけてやろうと思ってね」
「…じゃあ次、なんで部屋に来たの?」
ビスマルク「秘書艦だから起こしに来たのよ。悪い?」
「…二度寝するから起こさないで」
ビスマルク「駄目よ。そう言って何時間も寝るつもりでしょ?学校に遅刻しちゃうわ」
「こんな時間に学校行っても閉まってるよ」
ビスマルク「じゃあ朝のラジオ体操に遅れるわ」
「ラジオ体操もこんな時間からしてないよ…良いから寝かせて…」
ビスマルク「……あっ!あそこに愛宕が時雨に首輪を付けて散歩してる!」
「はぁっ!?」
ビスマルク「嘘よ」
「……」ピキッ
「おかしな事を言うのはこの頭かなぁ〜?」グリグリ
ビスマルク「あーっ!痛い痛い痛い!拳で頭をグリグリするのやめてぇ!」
「ったく。アホな事言ってんじゃねぇよ」
ビスマルク「くぅっ…こんな国民的なお仕置きを受けるなんて屈辱だわ…」
「…君大分ここに染まったね」
ビスマルク「そんな事より!暇だから構いなさい!」
「…しょうがないなぁ。ゲームでもするか」
ビスマルク「私ポ◯モンやりたい!」
「今天龍に貸してるから無理。マ◯パ8ならあるけど」
ビスマルク「じゃあそれしましょ!」
…このノリついていけねぇよ。俺陰キャだもん
ビスマルク「提督、何してるの?早くやりましょう?」
「あー、はいはい。分かりましたよ」
ビスマルク「ね、この棒はどうやって使うの?」
「それはそこの先端をテレビに向けて…」
妖精『……ゲームを始めました』
大淀「ありがとうございます。妖精さん」
妖精『何か気になることでも?』
大淀「都合が良すぎると思いませんか?」
妖精『確かにそれは思いました。でもだからといって彼女が何かを企んでここに来るというのは難しいと思います。建造されてすぐに来たんですよ?』
大淀「私もそう思います」
妖精『じゃあ…』
大淀「私の考えですが、彼女は何も知らないまま提督の元へ連れられてきたのでは無いかと思います。その目的はおそらく、敵対派閥の調査かと」
妖精『…そう思う根拠は?』
大淀「都合の良すぎるという点。言ってしまえばそれだけですが、いままで私達がやってきた演習相手を考えるにコレだけの言葉で済ますにはいささか難しいです」
妖精『馬鹿なことを言わないでください。そんな理由で演習に連れて燃料と弾薬が無くなるまでこき使ったんですか?』
大淀「はい。それだけです」
妖精『…整合性の欠片もないその言葉を受け入れるとして、その言葉に私的な感情は入っていませんね?』
大淀「……」
妖精『沈黙は肯定と受け取ります』
大淀「……だって」
大淀「だってあの人、私達というものがありながらあんな物を調べてたんですよ?少し位嫉妬してもいいじゃないですか!」
妖精『…はぁ。結局、そういう事ですか』
嫉妬。他者を羨んだりする気持ちが暴走してしまったもの
…あの人は優しすぎた。そしてとても臆病だった
人生を作る上で大事な物があの人には欠けている。それが今回の様な出来事を産んだと言っても差し支えがない
成功。それが彼の人生で欠けているものであり、それゆえに自信を無くしてしまっている
もし提督としての自信ではなく、あの人個人の自信が無い限り、こういった出来事は何度も起こるだろう
この様な亀裂が出来た以上、一度や二度で済むはずがない。そしてそれを私達は望んでいない。あの人を選んだ以上、選んだ責任というものを持つべきだ
妖精『妖精全員に連絡。ただちに執務室に集合してください。今より緊急会議を始めます』
そうだ。私達もこうなってしまった原因の一つなのだから、責任は取らなければ