この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ   作:七福えると

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マネージャーの仕事は裏方で光る

青葉(元帥)「選手!入場してください!」

 

 

整列した艦娘と深海棲艦達がドームの中へと入場する

 

観客席では提督、艦娘、深海棲艦、そして大勢の一般人がいる。比率的には一般人が一番多く、次いで深海棲艦、その次が艦娘で最後に提督だ

 

こんなに多くの深海棲艦がいても問題ないのか?という点についてだが、正直大問題でしかない

 

敵の数が多い。その事を目の前の事実が提督と艦娘達の心にナイフの様な物を突き立て、一般人については全員が恐怖しているだろう

 

しかも殆どが人型だ。人型は深海棲艦だと強敵に当たる部類で、恐らくここを火の海にしようと思えば一瞬だろう

 

では、そんな深海棲艦達の様子はどうかというと…

 

 

深海棲艦A「あっ!以前カレー洋でボコされた奴だ!」

 

深海棲艦B「アンタはその10倍位にボコされてるでしょ」

 

深海棲艦C「姫様〜!負けないでくださいね〜!」

 

深海棲艦D「艦娘!手加減したら承知しねーぞ!」

 

深海棲艦E「普段負けてる私達が言えたことじゃないよね」

 

 

…艦娘側が強すぎて深海棲艦側が半分諦めモードみたいになってる

 

というか随分と謎が残る声援だな。戦争してるんだから一度死んだら終わりのはずなのに、さも自分が蘇るかのような発言と、後ろ向きすぎる内容の数々

 

あちらの求めている物がどうにも不穏な気がしてならない。まるで自分達を負かしてくれと言わんばかりだ

 

…いや、それは考えすぎだろう。破滅願望持ってる相手でも無いだろうしな

 

それに何より、今の状況を純粋に楽しんでいる。悲観的な声が多いが、どれも自虐っぽくはあるものの、それ以外の表現方法を知らないだけだろうな

 

 

青葉(元帥)「では、これより球技大会を始めます。代表として元帥チームの磯風さん。選手宣誓をお願いします」

 

 

ま、そんな事は一旦後にして、今は球技大会を楽しもう

 

にしても磯風か…最後に料理を食わされたのは病院の時だったけど、アレから少しは進歩してるんだろうか?

 

自信を感じさせる佇まいで、ピンと伸びた背筋を一切曲げること無く舞台の上へと歩いていく

 

磯風はそれだけしっかりしてると言うことだろう。今回の宣誓に選ばれたのも納得だが、料理に対する自信については少々見直して欲しいものだと思う

 

 

磯風(元帥)「宣誓。私達はスポーツマンシップに則り、正々堂々戦う事をここに誓います。そして」

 

 

……そして?

 

 

磯風(元帥)「私達のチームが勝った暁には、とある提督にプロポーズしたいと思う!」

 

 

周囲からどよめきが起こる。そんな中、何故か磯風の目がコチラを見ていた様に感じた

 

普段は強気である少女であるが、微笑みを見せて小さく手を振っている姿はとても愛らしく思う…が、今はそこではない

 

周りには自分以外の提督もいる。恐らく自分の勘違いだろう。妙に視線がチクチクとしている気がするがきっと気のせいだ

 

 

磯風(元帥)「以上で宣誓を終わらせてもらう。だがプロポーズだけは宣誓だけで終わらせないから、覚悟しておけよ」

 

「何の覚悟だよ」

 

 

ボヤく様に呟いた言葉に、周りも同調するかの如く頷いた。自分の周りにいる人達は恐らくコチラ側に相手がいるのを察してはいるだろうが、何処となく見えない相手を可哀想に思っている気がしていた

 

…まぁ、磯風の料理は強烈だもんなぁ

 

 

青葉(元帥)「これは良いネタが…っと、失礼しました。では気を取り直して、早速始めて行きたいと思います」

 

青葉(元帥)「まず各陣営から代表者一人が前に出て、番号が書かれた紙をコチラのボックスから引いてもらいます」

 

青葉(元帥)「紙に書かれた番号がトーナメントの開始位置となります。以降の試合で体力を持たせるためにも、これはかなり重要と言えるでしょう」

 

青葉(元帥)「尚、12チームが今回の球技大会に参加となっている為、一つだけシードを設けています」

 

 

※試合想定

12チーム→6チーム→3チーム(シードあり)

 

 

青葉(元帥)「シードを勝ち取れる者は運に恵まれている証拠。しかしその過程には戦いが求められます。戦いの果てに幸運を味方につけるのはどのチームなのでしょうか?」

 

青葉(元帥)「それでは早速引いていきましょう!まずは選手宣誓を行った磯風チームから!」

 

磯風(元帥)「出来る事ならあそこのチームと当たりたいんだがな…」ゴソゴソ

 

青葉(元帥)「7番!シード候補に滑り込みました!」

 

磯風(元帥)「む…少しだけ可能性が減ったか」

 

青葉(元帥)「さぁ、ここで溜めても仕方ありません。次の方!ドンドン引いていきましょう!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「うーむ…」

 

ヲ級「どうかなさったんですか?」

 

「いや…レ級なんだがな…」

 

ヲ級「レ級さん……あぁ。何となく唸っている理由が分かりました」

 

「分かってくれるか」

 

ヲ級「えぇ。危ないですもんね。あの尻尾」

 

「ん、あぁ。それもあるな」

 

ヲ級「それも?」

 

「というよりアイツ……ちゃんとルール把握してるよな?」

 

ヲ級「勿論してると思いますけど…どうしてですか?」

 

「わんぱく坊主っぽく見えてなぁ…何と言うか、頭では分かってるが不安なんだ」

 

ヲ級「ふふっ。大丈夫ですよ。あの子だってちゃんと理解しています。私達と練習した時にもルールだって一番初めに覚えたんですから」

 

「何個かのボールが犠牲になったけどな…」

 

ヲ級「妖精さんに特注のボールをお願いすることになりましたもんね。書類にも今回の球技大会までにサッカーボールの特注が頻発したことによる対策案がきてましたし」

 

青葉(元帥)『では、ただいまより始球式を行います』

 

「お、そろそろか」

 

 

サッカーコートへと目を向ける。中央には青葉が周りにアピールするように周りに手を振り、ゴール前ではゴールキーパーとして長門が立っていた

 

緊張した面持ちは見せていない。さながらエンターテイメントとして舞台に立つ役者の様であり、凄いと感心すると同時に驚きも混じっている。ホントに何でも出来るなアイツ…

 

 

青葉(元帥)『来場者の皆さま。スタジアムに設置されている巨大モニターをご覧ください』

 

青葉(元帥)『ただいまより、来場者の中からランダムな人を画面に映させていただきます。画面に映った方に今回の始球式を執り行っていただきたいと思います』

 

「へぇ~。そんな事するのか」

 

ヲ級「知らなかったんですか?」

 

「こういった演出系は他に任せたんだよ。その方が楽しみが増えるだろ?」

 

ヲ級「やり投げとも言いますね」

 

「…良いじゃン別に」

 

 

確か海外の野球でもこんな事してるんだったな。動画サイトの野球面白集とかで見たことあるぞ

 

ドラムロールが流れ、謎の緊張感が漂う。唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえ、画面が一瞬の内に切り替わった

 

金髪のショートヘアー、ドアノブカバーの様な白い帽子、血の様な赤い瞳の少女が画面に映し出される。映し出された少女は自分に向かって指を指し、首をコテッと傾けている

 

……あれぇ?何か見たことあるなぁ?

 

 

青葉(元帥)『おぉ!可愛らしいお嬢さんですね!早速コートの方に来てください!』

 

 

画面に映る少女がパァッと明るい顔をしてルンルンとその場を立ち上がる。近くにいた二人が少女に対して何かのアドバイスを送っている様だったが、モニターでは何を話しているかまでは分からなかった

 

階段を一段一段と降りていき、そのまま一番下へと降りると近くにいた艦娘に案内されてコートの上に立つ

 

靴はブーツであったのでスパイクへと履き替えてもらい、スカートを指さして何かを話している。恐らくスカートだからあまり勢いよく付けない様に。的な話だと思うが、中を見せようとしていたので大慌てで画面が切られ、スカートが上げられる前に抑えられたので何とか事なきを得た

 

 

青葉(元帥)『お嬢さん初めまして。早速ですが今のお気持ちは?』

 

金髪少女『えっと、こんなにいーっぱい人がいる所で何かをするのは初めてだから、ちょっと緊張してます』

 

青葉(元帥)『そうですよね。実は青葉も大分緊張してるんです。ここは一つ、すっごいシュートを見せちゃって周りの人の緊張を吹き飛ばしちゃいましょう!』

 

金髪少女『はい!精一杯頑張ります!』

 

 

本人はウキウキだが、先程少女がいた席の近くにいた二人の少女を双眼鏡で眺める。二人して何処か諦めた顔をしており、その二人の心情を一緒の職場で働いている仲間として何となく察しがついていた

 

後で二人には何か奢ろう。そう考えていた矢先、いよいよ始球式が開始しようとしていた

 

 

青葉(元帥)『では、あそこのお姉さんが守っているサッカーゴールに向けてそのボールを蹴ってください!』

 

金髪少女『…これ、私が蹴ったら壊れちゃうかな?』

 

青葉(元帥)『あはは。大丈夫ですよ。これは普通のボールなので例え一般の方でも足は壊れません』

 

金髪少女『そうじゃないんだけど…まぁいっか』

 

 

ボールから一歩二歩と後ろに下がり、少し勢いを付けてサッカーボールへと蹴りを出す

 

瞬間、サッカーボールを起点に爆発音が会場に響いた。蹴りを入れたサッカーボールは案の定というかバラバラになっている。それを見ていたその場にいるほとんどの者達は口を開いて呆然としていた

 

 

金髪少女『あー…やっぱり…』

 

青葉(元帥)『ち、ちょーっと待ってくださいね?今別のボールを用意しますから』

 

 

慌てた様子で何かへと連絡し、すぐさま別のボールを持って来た妖精さんが青葉へと手渡す

 

少し不安そうな様子でボールをコンコンと叩き、少女にもそれを叩かせて大丈夫かを尋ねる青葉だが、それをしている自分の行動に不安を感じていた

 

このボールも駄目ならどうしよう。そんな不安があ彼女の心にあったのだろうが、少女の大丈夫という満面の笑みにホッと胸を撫でおろしていた

 

ゴールキーパーをしている長門も少し心配そうな様子で見ていたが、そのやり取りを見て頬が緩んでいた。隣にいるヲ級も少し頬を緩ませていたが、あの子の力を知っている自分としては冷や汗が止まらなかった

 

 

青葉(元帥)『えー、では気を取り直して、もう一度お願いします!』

 

金髪少女『行くよー!お姉さんは受けちゃ駄目だからね!』

 

 

その言葉にフッと笑う長門。大丈夫だからドンと来い、そう言っているかのような気概を見せていた

 

少女が再び数歩後ろへと下がり、今度は先程よりも更に勢いを付けた様子でボールを蹴る

 

ボールが少女の足から離れてゴールへと飛んでいく。だがその速さは蹴りだした少女からは信じられない程のスピードで飛んでいた

 

先程まで余裕を見せていた長門の表情は焦りへとうってかわり、少女が蹴りだそうとした瞬間には既に長門の身は地面へと伏せていた。そうしなければ自分の身が危ないのだと直感したのだろう

 

ボールはゴールの縁へと飛んでいき、当たった個所はひしゃげながらサッカーゴールごと空へと打ち上がらせた

 

ゴールの後ろにいる観客席へとゴールポストが飛んでいき、あの勢いでは確実に被害が出るかと思われたが、何処からか緑色の光弾がゴールポストへと向かって飛んでいくのが見えた

 

恐らくこぶし大位の大きさである筈のソレはゴールポストに触れるとそのままゴールポストごと空高くへと飛んでいき、光り輝きながらやがて何もない空へ完全に飛び出すと大爆発を起こした

 

 

「………」

 

ヲ級「………」

 

青葉(元帥)『………』

 

観客『『『………』』』

 

金髪少女『わぁ〜!綺麗〜!』

 

青葉(元帥)『…というイベントでした!』

 

観客『『『嘘つけ!』』』

 

 

…いやぁ。まさかあそこまでとは

 

サッカーボールが特注品だが、それはサッカーゴールも同じく特注品だ。艦娘が本気で蹴ったサッカーボールがポールに当たると同じく大破してしまう事が分かった為、そうそう大破する事はない物になってるんだけどな

 

 

ヲ級「…あの子が凄い事は知っていましたが、能力だけで言えば艦娘以上ですよね?」

 

「その分誓約みたいなアレルギーがあるけどな。日光の光に当たると体調崩すじゃ済まないんだ」

 

ヲ級「あ、そういったアレルギーは聞いたことがあります」

 

ヲ級「…でも、思いっきり日差しに当たってますよ?」

 

「妖↑精↓さんに作らせた、特性の日焼け止めを使ってるからなぁ」

 

ヲ級「…それは分かったんですけど、そのイントネーションがおかしな喋り方はなんですか?」

 

「気にするな!それよりヲ級。艦載機を一個出してこの紙と水をアッチに届けに行ってくれ。届ける相手は提督なら誰でも良い」

 

ヲ級「分かりました」

 

「届けたらバレない様な位置で会話を盗聴しといてくれ。何だったらあっちの提督達に渡し歩くとかでも良いから」

 

ヲ級「…それが目的ですか」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

青葉(元帥)『おおっと、深海棲艦チーム強い!私達には無い体の部位を巧みに利用している!』

 

衣笠(元帥)『え〜、体の一部ということでアリということにしています。しかし危険なプレーやボールを蹴る以外での使用は認めず、退場処分となります』勿論ゴールキーパーはセーフです

 

青葉(元帥)『現在の成績は1-0。深海棲艦チームが1点リードした状況です』

 

青葉(元帥)『試合終了まで残り半分を切っています。勝利を飾るのはどちらのチームになるのでしょうか?』

 

衣笠(元帥)『…けど、一つ言わせてもらって良いかしら?』

 

青葉(元帥)『なんでしょう?』

 

衣笠(元帥)『この大会って艦娘と深海棲艦だけじゃなかったの?』

 

 

一般人チーム VS 深海棲艦チーム

 

 

一般人A「ヒャッハー!いくぜぇー!」

 

一般人B「しかし、どうにもやりにくいぜ…こんな綺麗な女ばかりが相手なんだからな」

 

一般人C「構うことはねぇ!勝負の世界に男も女も関係あるか!」

 

深海棲艦A「クッ!何ナンダコノモヒカン男達ハ!?」

 

深海棲艦B「何デ世紀末ニ生キテキタ様ナ肩パッドヲシテルンダ!?反則ダロウ!?」

 

一般人A「スレスレのお前等に言われたくねぇなぁ〜!」

 

深海棲艦C「怯ムナ!気迫ニ押サレズ攻メルゾ!」

 

青葉(元帥)『特別枠として一般人枠と提督枠も作成しています。本来の想定では提督枠とぶつかる予定だったんですけどね』

 

衣笠(元帥)『あの3人はともかく、その後ろに控える他の人達が私は個人的に気になるんだけどなぁ…』

 

太い眉毛の男「……」

 

白髪の医者「大丈夫か?」

 

独特なヘルメットを被った男「チッ、相手が女子供と知って腑抜けたか」

 

白髪の医者「そう言うな。私達はあくまで楽しみに来たんだ。それを忘れては元も子もないだろう」

 

独特なヘルメットを被った男「だからといって負けるのは癪に触る。俺はいくぜ!」ダッ

 

様変わりする前の男の子「お、おいおい!相手は戦争のエキスパートなんだぜ!?戦略も無しに突っ込んじゃあ負けちまう!」

 

赤毛の女性「あら、ここにいる2人も、さっき走って行ったあの男も戦闘のエキスパートよ?そうそう負けることは無いはずよ」

 

目つきの鋭い青髪の男「そんなに心配する必要はないと言うことだ。見ろ」

 

青葉(元帥)『おーっと!背番号1番の人が飛び出したぁ!その勢いのままボールを奪取!』

 

衣笠(元帥)『あのヘルメットは反則じゃないの?』

 

青葉(元帥)『何でもあの下はここにいる人達が卒倒する位のイケメンだそうで。それを配慮しての事らしいです』

 

衣笠(元帥)『ルールよりも大事って、どれだけなのよ』

 

青葉(元師)『ちなみに後ろから忍び寄って取ろうとしても駄目ですよ。私や川内さんでさえ気配を察知されて捕まりましたし、力づくでいこうとすれば体を突かれて何故か体が動かなくなります』

 

衣笠(元帥)『えぇ…?あんたはともかく、川内がバレるなんて信じられないんだけど?』

 

青葉(元師)『尚、私の手元にバレて動けないのを良いことにあんな恰好やそんな恰好にされた川内産の写真があります』

 

独特なヘルメットを被った男「はぁ!?」ブォン

 

深海棲艦A「!空ブッタゾ!今ノウチニ奪エ!」

 

深海棲艦B・C「「オウ!」」

 

独特なヘルメットを被った男「し、しまった!」

 

深海棲艦A「ヤハリ人間!マダマダ我々ニハ敵ワナイトイウ事ダナ!」

 

 

「ヲ級。首尾はどうだ?」

 

ヲ級「艦載機の皆さんが観戦に夢中で現在不明です」

 

「あー。まぁしゃあない」

 

 

サッカーの試合はつつがなく進んでいる。今は三回戦目。番号で言うと⑤と⑥の勝負だ

 

一般人VS深海棲艦。スポーツという競技ではあるが、やはり勝負は勝負。互いにぶつかりあい、ボールを奪ってはゴールへと向かって走る。それを防いでは切り返し、またも同じ様なパターンで切り返して攻める。正に一進一体の攻防だ

 

観客席から聞こえる声はそれこそ深海棲艦や人間を貶めるかのような声が飛んでいたが、試合が進むにつれて声は少しずつではあるものの、互いに誰かを応援する声へと変わっていった

 

純粋な声援(エール)に思わず笑みがこぼれ、少しは目指したい世界に近づけたのかと思い、頬が緩んでにやけてしまう

 

今までは仲間である艦娘達やバイトの皆との交流しかなかった。あくまで内での会話や人との交流やイベントはあったものの、このような大きなイベントに沢山の人が囲んで楽しく笑い合っているこの景色だけは、どうにも嫌いじゃない

 

 

「さ、そろそろお前等の番だ。早いとこ準備してきな」

 

ヲ級「はい。行ってきます」ニコッ

 

 

スッと席を立ち、コチラに優しい微笑みを向けてタッタと建物のなかへと消えていく。その足取りから聞こえてくる足音には隠しきれていない楽しさが聞こえてきた

 

あぁ。悪く無い日だ。本当に最高と言っても良い日だ。こんな日だからこそ……

 

 

携帯 ピリリリ

 

 

俺達が気を引き締めなければならない日となるんだ

 

 

妖精A『提督、緊急連絡です』

 

『どうした?』

 

妖精A『テロのリークがありました。今、現場に元師が向かっています』

 

『分かった。他にも何人かの人間を寄越してくれ。深海棲艦の介入が起こりそうなら鬼、姫級にのみ伝えろ』

 

妖精A『了解しました』ピッ

 

 

肩をがっくりと落としながら電話を切り、すぐさま荷物を持って現場へのルートが記された携帯を見ながら現地へと向かう

 

現場へ向かう途中まで人はまばらにいた。しかし現場近くまでやってくる頃には、既に周囲に人の気配は感じさせられなかった

 

しばらくすると男の怒声と元帥の声が聞こえてきた

 

男は興奮した声で何かを高らかに語っている。一方で元帥はと言うと、半ば諦めと呆れの様な声で話半分程度に聞いている様な相槌を返していた

 

 

「…応援するのは叶わなさそうだなぁ」

 

元帥「来たか」

 

男「…!お待ちしておりました!」

 

「は?」

 

男「早くこの人を何とかしてください!私はただ貴方に会いに来たんです!」

 

 

やけに声を張り上げては自分を肯定するかのトーンで話しかけてくるこの男

 

見たこともなければ聞いたこともない普通の一般人。服の一部がやけに盛り上がっているが、その下に何かを持っているのだろうか?

 

 

元帥「提督?」

 

「俺も何のことだか分かりません。何なんですかコイツ?」

 

元帥「…ついさっきテロのリークがあったと情報があっただろう。アレのリークをした人間らしいんだが…」

 

「だが…?」

 

男「はい!自分です!」

 

元帥「…何故そんな事をリークしたんだ?お前はテロに加わる一味の一人だろう?」

 

男「それは勿論!この人の手を煩わせる事態になると思ってのことです!」

 

「……」

 

男「今回の球技大会を一番楽しみにしていたのは貴方です!ならばそんな人の邪魔をする事なんて、私にはとてもとても…!」

 

「…そうか。なら後何人のテロ犯がいるか教えてくれるか?」

 

男「はい!私を除いた3人です!それぞれスタジアムの隅で待機しており、爆弾を設置して離れ次第、爆弾を作動させる予定です!」

 

「そんな事をする理由は?」

 

男「深海棲艦と艦娘がいたからです!」

 

「…そうか。じゃあ話もさっさと終わらせたいからパッと聞くが、爆弾はどんなタイプだ?それと詳しい設置場所を教えてくれ」

 

男「爆弾は時限式です。重さは400gのプラスチック爆弾で、20分すれば爆発を起こします。設置場所はドームの四隅に配置してます」

 

「……」

 

 

爆弾400gって本気なの?少し大きめのステーキじゃないんだから…なんて冗談は置いておく

 

プラスチック爆弾って事は冗談抜きでヤバい。分かりやすく言うならC4爆弾だ

 

一般人がそんな物を持ってるとは思えない。確実に軍部の誰かだろう

 

今回の球技大会は多くの提督が存在を知っている。調べようにも候補となる人間が多すぎる為、そう簡単には見つからないだろう

 

だがそうなると一つ引っかかりを覚える。何故コイツは艦娘や深海棲艦のどちらか一方だけではなく、わざわざ両方を狙ったというのか?

 

正直メリットが思い浮かばない。こんな事をして一体何の得があるというのか

 

どちらにしても、一先ずこの男からもう少し情報を聞き出さなくては。何時心変わりが起こるか分かったものじゃない

 

 

「元帥、自分はこの男を何処かに拘留させておきます。それと爆弾もコチラで処理いたします」

 

元帥「……よし。爆弾解除は妖精さんにでも頼め。お前では無理だろう」

 

「はい。分かってます」

 

 

早足で何かを連絡しながら立ち去る元帥を背に、コチラも男を拘束して男から聞き出した爆弾の解除をしている妖精さん達を見守る

 

爆発の脅威が無くなったのを確認してから解除方法を元帥に共有し、さっさとその場を後にする

 

ただでさえ問題が多いのに考えなければならない事が幾つも増えた。球技大会中は試合を見られるのか怪しいものだが、責任というものがある。それを背に感じながら、楽しくもない野郎と共に並んで歩く事になった

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