この学生、元放置提督 世界が変わっても、やることが変わっても、いつも通りにする。ただそれだけ 作:七福えると
利根「……暇じゃあ」
筑摩「暇ですねぇ」
利根「…なんか儂ら、以前も似たような事を話さんかったか?」
筑摩「どうでしょう…私達、重巡なんですからもう少し出番くらいあってもいいはずなんですけどねぇ…」こんな扱いだから過去に何してたか忘れるんです
利根「ぶっちゃけ愛宕の方が愛用されとるよなぁ…」
筑摩「…タンクが大きいですもんねぇ」
利根「…デカいなぁ」
筑摩「私達も大きいですね」
利根「愛宕には敵わん」
筑摩「…出番、ないですねぇ」
利根「…じゃなぁ」
筑摩「……いっそ、出かけてみますか」
利根「…へ?」
執務室
提督「すいませんでした」ドゲザッ
筑摩「謝罪は結構です。それで、どうなさるおつもりですか?退屈で殺されるかと思いましたけど?」
提督「いや〜…それでも演習なんかは」
筑摩「へぇ?命の危機も感じられないただの演習で、しかもそれだけでお給料を頂くという、あの頂いたお金の使い辛さ…わかりますか?」
利根「おかげで貯金は40万位貯まっとる。必要最低限にしか使っとらんせいじゃな」精々おやつ代じゃ
提督「今すぐお二人の出撃を選ばさせていただきます!」
筑摩「はい。楽しみにしております」
大淀「…提督、だからあれほど海域解放以外にも出撃を選びましょうと…」
提督「誠に申し訳ない…」
筑摩「それと、今より出かけてもいいですよね?どうせ私達、出番が無いんですから」
提督「……はい。どうぞ」
筑摩「やりました」フンス
利根(我が妹ながら容赦ないのう…)
大淀(提督の自業自得…と言いたい所なんですが、こればかりは私も強く言うべきでしたね。もっと個人の事を考えなければ…)
利根「…のう筑摩。なんか大淀にも流れ弾がいっとらんか?」ヒソヒソ
筑摩「提督の秘書艦歴が長いですから。故に私達のスケジュールとかも把握してるんでしょう」ヒソヒソ
利根「提督にそこまでの頭は無いからのう」ヒソヒソ
提督「でも何処に行くんだ?あんまり遠くだと心配だぞ」
利根「そういう事なら心配いらん。当てもなくぶらぶらするだけじゃからのう」
提督「ふーん…じゃあまぁいいか。楽しんでこいよ」
利根「勿論じゃ!土産話を待っとれよ!」
筑摩「うふふ。では提督、行ってまいります」ガチャッ
バタリと音を立ててしまる扉。その向こうからは提督が再び書類仕事を始める音と、少しの心配の声が聞こえてきていた
大方、提督からしたら散々ほったらかされている艦娘が外に出ようと言っているんだ。おそらく脱走や他鎮守府に行ったりするのではないか。といった不安だろう
流石に提督の能力は分かっているつもりだ。今回の件は改めて自身の能力改善が必要だと考えてもらおう
筑摩「では姉さん。どこにいきましょうか?」
利根「さっきも言ったがあてはない。せっかくじゃから、我らが守ってきている街を渡り歩く…というのはどうかの?」
筑摩「はい。賛成です」
利根「んじゃ、準備して行くか。楽しみだのう!」
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街
人々が歩く交差点。駅前の大型テレビには巨大な広告が流れており、時折それに視線を向ける人もいれば、自身の持ってるスマホに目を落とす者、興味深そうにコチラを見る人など、様々な人が生活をしていた
私達が守っている人。艦娘がして当然の事など、周りからは褒められる事はありはしないと分かっているが、それで良かった。この平和を見られるのだったら、それで…
筑摩「…姉さん。どうしました?」
利根「ん?いや、何でもない」
利根「それより何処に行く?何か、いい店があると助かるんじゃが…」
筑摩「んー…せっかくですし、服でも買いませんか?それならしばらく使えますし」
利根「服…うん。いいかも知れんな」
筑摩「姉さんは何かいい店を知ってますか?」
利根「うむ。提督から借りたスマホだと…服屋がそこら中にあるな」
スマホ『服屋 近場』
スマホを覗き込むと、ズラーッと店の一覧が出ており、マップには店を知らせる赤いポイントが何箇所にも渡って出来ていた
せっかくだしお洒落をしてみたいが、それでも店を知っている訳では無い。何かいい店はないかと記憶を巡らせる
???『このコスプレって、私達に似てるわね』
筑摩「…姉さん。コスプレって入れてみませんか?」
ふと、誰が言ったか記憶はないが、コスプレという単語が出てきた。私達に似ている。という単語から、何かしら着飾る物なのだと推測が立つ
姉さんもそれを聞いて先程調べた内容の後ろに打ち込む。すると、先程より範囲は搾られて数店舗を指し示した
利根「ふむ…それぞれ近場じゃな。せっかくだし行ってみるか」
筑摩「ふふ、なんだか楽しくなりそうですね」
店に向かう途中で様々な店が目に映る。飲食店、服屋、工芸品、ゲームセンター等々、目に映る全てが新しく、煌めいている様に見えた
店の近くでは談笑している男女や、仲間内で騒いでいる者達、親の元を離れて先へ行こうとする子供。こういう人達を見るだけでも、その店への期待感が持てる
やがて、スマホに映った店が見える。黄色い外見が特徴的で、店内はその店を知らしめる様な音楽が絶えず流れている
利根「服に雑貨に食べ物まで。最近はこういう店もあるんじゃな」
筑摩「姉さん。服はあちらみたいですよ」
利根「…ふむ。これは確か、パーカーというやつか」
筑摩「このジーンズというのも、以外とヲ級さんとか似合いそうですね」
利根「…しかし、調べた様な服はないな。もっと別の所にあるんじゃろうか?」
D店員「何かお探しですか?」
利根「あぁ、すまん。実はコスプレって服を探しておってな…」
その言葉を聞いた瞬間、店員の顔が一瞬だけ驚きに包まれる。しかし、すぐさま笑顔を浮かべ、物腰を低くして教えてくれた
D店員「それでしたらアチラのコーナーを左に曲がっていただくとございます」(コスプレみたいな格好してるのに何言ってんだろう)
利根「おぉ、そうか!助かったぞ!筑摩、早速行くぞ!」E.制服
筑摩「はい。ありがとうございます」E.制服
D店員「ごゆっくりお楽しみください」
案内された所では、確かに様々な服があった。ナース服と呼ばれる服や、警察官の制服以外にも、軍服まで取り揃えてある
商品棚の奥には隠された様に赤い服とカチューシャがセットになっている物や白黒の服に大きな帽子など、大きめなセットなんかも取り揃えてある
自分達がここに来るまでに見ていた人達はこの様な服は着ていなかったが、着る人も幾人かいるんだろう。しかし数が少ない為か、服売り場から離れて規模も小さくなっている
利根「試着…は難しいか。全部袋に入ってるしな」
筑摩「でも、どれも可愛いですね。先程見比べた服と違って、特別感を感じられます」
利根「ふーむ…しかし流石にナース服は着る場所が違うしの。警察官の格好は、なんか誤解されそうじゃから嫌じゃし…」
筑摩「じゃあ、この赤と白黒の服にしますか?」
利根「それも考えたんじゃが、流石に似合わんじゃないか?第一、赤や白黒なんて着ないしな」
筑摩「では、先程見かけたパーカーでも購入して、本格的な服についてはまた別途…というのはどうでしょう?」
利根「そうしよう。他にも店はあったしの」
姉さんはパーカーとジーンズを。私も同じペアルックになりそうな物を選び、購入をして店を出た
人目に付かない所で制服を着替え、少し大きめなパーカーを被りながら街をゆく
まだまだ散歩は始まったばかり。新しい服を手に入れて少し気分も浮かれつつ、姉さんの後ろを守るように再び歩を進めた
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利根「おっ、コレはカッコいいぞ!」E.キ〇ン装備
筑摩「姉さん…」E.ゴ〇装備
利根「そういうお主もノリノリじゃろう」グイグイ
C店員「では、写真いきますね」
はいチーズと言われて写真がパシャッと撮られる。ゴツく禍々しさを感じる黒い衣装に身を包んだ筑摩と、白く布面積が少ない衣装に包んだ自分が写真に映っていた
恥ずかしさ50。楽しさ50。提督が聞いたら楽しそうじゃないかなと笑って答えてきそうだ
今着ている副以外にも、提督に見せてもらった日曜日のアニメや特撮に出てきそうな衣装。或いは漫画やゲームに出てくる様な服まで、幅広く取り揃えてある
せっかく服を買うのだから、少し特別感があった方が面白い。そんな考えでやってきたが、考えに間違いは無かった様だ
そんなココはコスプレ専門店。気に入ったコスプレがあればその場で撮影可という、スマホで見た評価はかなり高い店だ
評価★★★★★『私の服が売られていて助かった。同じ物が無くて困っていたから』
評価★★★★ 『素材が本物みたいで怖い。でもクオリティが高すぎて買っちゃう』
評価★ 『狩られる立場になってください。とても痛いです。怪我はいずれ古傷になりますが、生えるのは中々に大変なんです』
筑摩「個性的な評価ですね」
利根「筑摩、さっきの服とこの中国服みたいなのはどっちがいいと思う?」E.中国の服
筑摩「でもそれ、普段の私達と似てませんか?特にここの下の部分が…」
利根「まぁの。やはりやめるか」
筑摩「ではせっかくなので、購入してみたいんですが…」チラッ
ゴ〇装備一式 350万円
C店員「ウチは出来うる限りの本物をモットーにしてますから。値段もそれなりに…」
利根「…こっちのチャイナ服は7000円なのにの」
ありがとうございましたと見送られながら店を出る。世の中には高い物もあると思っていたが、あの値段はこの世の広さという物を教えられたような気がした
服は流石に良いだろう。という話になり、どこか適当な店でも見つけて昼食を取ろうとしていた所、良さそうなカフェがあったのでそこに入る
店内に流れる落ち着く雰囲気と音楽が、一時の癒しをもたらしてくれる。窓際へ腰を落ち着け、中から外を眺める
利根「…平和じゃ」
筑摩「…ですね」
利根「…出番のない儂らがやらなくても、良いんじゃないかと思うてしまう。だがそれでもやるべき時はきっと来る筈じゃ」
筑摩「私達、ちゃんと出来ますでしょうか?」
利根「出来る。でなければ今までの訓練は何じゃったのかと思う」あ、すいません。ケーキセット二つ
筑摩「でも提督、最近はビスマルクさんにお熱じゃないですか。平和だから出番がないのと、贔屓にされて出番がないのでは違います」
利根「所謂海外艦と言うやつじゃからな。性能を考えたら、一番大きな力となるのは間違いなくビスマルクじゃし」
筑摩「…それは、嫉妬してしまいますね」
利根「儂らには出来ること…ビスマルクに出来ないこと…それぞれに役割というものがある」
利根「ビスマルク一人では敵は倒せても発見は困難じゃ。しかし儂らだけでも、敵は見つけることは出来るが、倒すという事はビスマルクよりかは簡単にはいかんじゃろう」
利根「それに、我等には味方の深海棲艦もおる。今後、更に艦娘と深海棲艦を増やしていくとしたら、今後は力のある者が上に立ち、鎮守府での過ごし方を教えてやらねばならん。そういう意味では、ビスマルクの育成は必須と言える」
筑摩「でも、最近は特に指令は無いですよね?提督の書類仕事も主に資材管理や誰もやりたがらない雑務系の書類ばかりしていますし」
利根「そうか。筑摩は秘書艦経験があるんじゃったな」
筑摩「球技大会の最中に少しですが…何というか、納得するしかなかったです」
利根「というと?」
筑摩「こちらの書類が1枚と半分が終わるタイミングで、提督の書類1枚分が終わります」
利根「お、おう…」ケーキセットオ待タセシマシタ
筑摩「それと、アレはなんだっけ。コレはなんだっけって、そればっかり。大淀さんの苦労が身に染みて理解出来ます…」ありがとうございます
利根「…吾輩たち、ここにいて良いんじゃろうなぁ?」ありが…うん?
筑摩「まぁ、正直お休み自体はありがたいのでいただきたいのですが、やるべき時とやらない時がはっきりしなさすぎてメリハリが付かないんですよね」モグモグ
利根「…まぁ、そこら辺は提督に頑張ってもらうとして、それならウチの作戦事情にも納得よな」ズズ…
筑摩「提督の場合、ポロッと重要な作戦を忘れていそうですからね」
利根「かなわんな。連携ミスでいつの間にやら味方と逸れて敵に追い込まれるというのは…」
筑摩「でも、正直他の鎮守府と比べたらかなり自由ですから。そこだけは評価したいです」
利根「する事がないし、人も少ないからの。ユルユルなんじゃろうて」
筑摩「仮に人が増えたとして、今の雰囲気が変わるでしょうか?」
利根「うーん……いや、ないじゃろうな。提督もああ見えて結構頑固じゃし」
筑摩「プライドが高くて変化を恐れる人とも言えますね」
利根「…筑摩、もう少しこう…手心と言うか、言い方をじゃな…」
筑摩「姉さんは優しすぎるんです。そんな事では、提督に良いようにされてしまいますよ」
利根「い、いやぁ…流石にそれは…」
筑摩「提督が手籠めにしている皆さんが、今まで提督に何されたかご存知ですか?」
利根「手籠めて…んなことされとらんじゃろう」
筑摩「あら。艦娘とはいえ女性と一緒に入ったり、嫌がる女の子に苦手な物を食べさせたり、たまに逢引したりしてるのにですか?」
利根「…いや。一緒に風呂ってのは艦娘との相談にじゃろ。苦手な物を食わせるってのもピーマンを食わん曙のせいだし、逢引については…うん。我等も女じゃしの」
筑摩「…むろ提督が良く耐えれてると思いますね。男性とはいえ、溜まるものもあるでしょうに」
利根「それでも月に何回かは何処かに出かけとるらしいがの。その間に発散してるんじゃないか?」
筑摩「…提督って、そんなホイホイ鎮守府を出られるものなんですね」
利根「さっきも言ったが、ウチが特別じゃ。というか艦娘と風呂に入る提督が一番おかしいんじゃ」
筑摩「…まぁ、嫌われてるよりかはマシですね。それに、悪い気はしませんし」ご馳走でした
利根「じゃな」ご馳走でした
席を立って店を後にする。外に出ると夕暮れの日差しがそろそろこの散歩も終わりが近づいてきているみたいだ
そろそろ鎮守府に戻るか、再び街へと足を進ませるか。決断の時が迫る…が、答えは決まっていた
利根「んじゃ、帰るか。我等の提督が待つ鎮守府に」
筑摩「姉さん、もしかしてさっき話したから帰りたくなったのでは…?」
利根「まぁの。筑摩も気持ちは同じじゃろう?」
筑摩「…私は、別に」
利根「そう思うのも不思議ではない。提督を好くのは艦娘の本能みたいなものじゃ。なんだかんだ言うて、我等もその本能からは逃れられん」
筑摩「…不便な物ですね。艦娘って」
利根「ウチの提督が一番それを感じとる。じゃから提督もそれを感じて我等に自由を与えてくれとるし、出来るだけ不自由な思いはさせんと、スマホまで貸す位じゃ。ぶっちゃけお人好しを超えとる」
筑摩「良く言えば好意的。悪く言えば考え無しです」
利根「だがそれも信用されとるという証拠じゃろ。コイツなら変な事をせんと、我らは信頼されておるんじゃ」
筑摩「……」
利根「不安か?」
筑摩「…はい。ここまでされる私達って、どうして存在してるんでしょうか?」
利根「…悩みが飛躍したの。言いたいことは分からんでもないが」
不安を訴える目。自分の考えが上手く言葉にならず、かと言って伝える術を持たない様なもどかしさ。筑摩も吾輩も、提督からの優しさというものに慣れていないのだ
提督は不器用だ。それでいて掴みどころのない提督という存在が、我等の混乱を更に引き伸ばしていく
……しかし、その理由が分かっていない。という訳でも無いのだ。寧ろ提督という人間を知ったからこそ、私達は混乱をしつつも何とか受け入れてきている
提督はズレているのだ。普通の人間と比べて劣り、欠陥が多いと自称しているが、それでも芯の部分は決して曲がっていない。提督はその芯を自身の心と思っているようだが、その芯自体が弱さであり、強さとはき違えている馬鹿である
提督の事だ。どうせ我らの知らぬ所で危機がその身を襲っても受け入れ、傷つき、そして生き残って来る。それは危険を認知出来ていないただの馬鹿なんだ。結果生き残ったから強いと信じて疑わない、ただの結果論者である
利根「提督は、それこそが我らの幸せだと信じておるんじゃ。人の気も知らないで、勝手な憶測だけで我らの幸せの定義を決めてきおる。そういう人間じゃ」
筑摩「……だから出撃で出されなくても、最終的に私達が提督を信頼すると確信しており、その過程で私達が何と思おうと、なんと考えていようと気にしていないと?」
利根「そこまでは分からん。単に考えてないだけかも知れんしの」
筑摩「……」
利根「…さ、気分が暗くなりそうな話題は辞めて、さっさと帰ろうか。家が我らを待っておる」
筑摩「でも、姉さん」
利根「やめよ。今日はせっかくの散歩だったんじゃ。細かい事はまた気が沈んだ時にでも考えればよい。そうすればその悩みと一緒に解決するかも知れんじゃろ?」
筑摩「…はい。分かりました」
利根「うむ」
筑摩は納得のいかなさそうな顔であったが、何とか言葉を飲み込んだ。といった様子だ。それを見て、自分も喉まで出かかっていたモノをグッと我慢する
…提督のあの身勝手が、我らの心を本当は無視しているのじゃと、提督は気づいておるのだろうか。それとも気づいていないのだろうか
どっちにしろ、提督にはその事をちゃんと理解してもらわねばならぬ。我らが艦娘ではなく人間として思うのなら、道具のような思い込みで我らを取り扱わないで欲しいと、切にそう思うのだった