2024年内完結発表を記念して作りました!
というのは建前で、去年の年末最後の本誌からどうなるかは薄々分かってたので二次創作始めました。本当はもっと早くに出したかったんですが執筆が遅過ぎて新年初ジャンプより後になりましたが許してください!
ビル群が立ち並び、地はコンクリートで埋め尽くされ、その道は交通整備された構造が見て取れる。
さまざまな用途の建物がこれでもかと密集している。
それは、都市である。
しかし
これが今の日本のかつての首都、東京の姿である。
現在の日付は2018年12月24日。例年であれば、観光地はクリスマスツリーが現れ、人工物や木々がイルミネーションで飾り付けられ、アイススケートが開き、サンタが現れ、ケーキやチキンなど豪勢な料理が振る舞われる冬の風物詩で溢れたクリスマス一色の光景が広がっていたはずの街は、
そんなゴーストタウンと化し、その中でも荒れ地に変わり果てた新宿で
その喧騒の中心人物は、一般的な人の形から
まず、筋骨隆々の立派な体躯。六
その顔は筋肉質な身体に負けない獅子の如く雄々しい顔立ちで、顔の右半分は赤味のあるくすんだ肌色の皮膚が
左右で二
このような外見から、彼は日本書紀に記された伝説上の存在に
そしてその異形の大男を囲むように複数の人が集い、共闘している。
学生服の者、黒スーツの者、トレンチコートの者、全身黒尽くめの者、白黒の
彼らは呪術師である。
負の感情から生まれる呪いの力を扱い、人から生まれた呪いを祓う専門家が呪術師だ。
彼らは今、呪いを私利私欲に悪用する呪詛師の大男を倒さんと挑んでいた。
この変わり果てた東京を作り出した主謀者と要因に宿儺は噛んでいる。
その事実を抱えた男を倒さんと彼ら呪術師は決死の戦闘を繰り広げていた。
しかし、両面宿儺という伝説上の名を冠するに相応しいのは見目だけでない。呪いを扱う術─呪術においても強大で洗練されており、呪術による戦闘によって呪術師達は血を流し、宿儺に蹂躙され、一人また一人と戦闘から引き離されていく。
宿儺は圧倒的な身体能力と、斬撃を飛ばす固有の呪いの力─術式で圧倒していた。
その宿儺が終始狙い続けていたのは黒スーツの男だ。
左胸の襟に俗に言う弁護士バッジを付けた
それは彼の術式と才能にある。
彼の術式は平たく言えば、模擬裁判。それもかなり無法な裁判形式で術師の呪いに関する力を、軽度の犯罪であれば
一見魅力的な術式だが、それを扱う上で必要な高度な法律の知識、呪術への深い理解力が求められるが、彼はそれらを容易く習得する弁護士・呪術師として天才。
だが、この術式と性能を以てしても宿儺には叶わない。
現在、宿儺から奪えたのは
しかし今、彼の手元には剣が握られている。
それは処刑人の
それは斬られた者を例外なく死に至らせる剣。
これが宿儺への一撃必殺の対抗手段であり、宿儺が乗っ取られ──受肉時の変身を果たした事で既に面影一つ無い──身体を奪われた
それでも、処刑人の剣を手にしても宿儺を追い詰める事は出来なかった。
いくら呪術の天才でも、呪術が目覚める前は弁護士。
日車は呪術における戦闘センスはあれど、呪力強化なしの
その為に彼には複数人の格闘術や呪術など戦術に長けた呪術師の味方が着いていたが、宿儺の手で孤立され、危機的状況にある。
先の戦いで日車が宿儺に投げ飛ばされ、行き着いたのは自走式駐車場。
周囲は
日車の入った場所に宿儺が大きく跳躍し、下部の両腕を激しく振り、それに合わせ斬撃─
建物が包丁で切られた豆腐のように亀裂が入り、そのまま侵入した。
そこへ時速60キロ──自動車と同等の速度──という
虎杖は
それは術式の発動。術式を発動する前の呪力の起こりを察知したその瞬間に、建物は凄まじい速度で刻まれ崩壊した。
建物が崩落し、宿儺と日車の姿が虎杖から目視出来た。非常に足場は不安定な中、日車は駆け出し宿儺に攻撃を仕掛けようとしている所だった。
宿儺は目にも止まらぬ速度で、
そして、日車の目前で石は破裂。目潰しを喰らってしまった。
その隙を突いて日車の後ろに宿儺は瞬時に回り込んでいたが、その間に虎杖が豪速で割り込み、両腕に
宿儺はその殴ろうとした右腕を上下の左腕で受け止め、上部の右腕は虎杖の脇腹を無遠慮に掴んだ。
宿儺の手が虎杖の左腹部に触れられた直後、直に捌が刻まれ血肉が吹き飛んでいく。
虎杖は
完全に廃墟は陥落し瓦礫の山になった所から、まだ建物の形の色濃く残る町中の高速道路の上へ戦いの舞台は移る。
遂に一人になってしまった日車はもはや格好の
置き去りにされた虎杖は地を
瓦礫が彼に降り注いだものの、建物の端側だった為そこまで多くはない。捌で斬られた学生服の上着や中に着ていたパーカーは完全に千切れており、傷跡が露出している。腹の一部が削れはしたが、呪力を練れなくなるほど
このままでは日車の命が危ういと分かっていた虎杖の決断は早い。
虎杖は戦いに身を投じる為、再び立ち上がった。
その一方で、宿儺から大きく引き離されようとも一矢報いらんと動く者が居た。
白黒の法衣を着た鼻に横一線の痣を持つ青年。
彼は虎杖が大怪我を追った事を、持ち前の感応能力で感じ取り混濁した意識から目覚めた。それは血の繋がりを通して、命の危機を察知するというもの。
服や四方八方に毛先が跳ねた二つ結びの髪に大した乱れはない。戦闘開始時に彼は宿儺に真っ先に攻撃を喰らい、横たわり動けなくなっていた。
彼が戦線離脱した原因は、胸と腹の中央に貫通した穴だ。
戦闘不能と言える状態。もはや、人として生きている事が不自然なレベルの怪我を負っていた。
それにも関わらず、彼は紫掛かった
この程度で先に休むなど、お兄ちゃんではない!
そう強く心の叫びを上げ、自身を奮い立たせた。彼にとって、虎杖は血の繋がった──関係上は異父異母兄弟──家族。生を受けた時期も親の血筋も大きくかけ離れているが、ある因縁深い人物の子として共にこの世に生まれ落ち、生き延びた最後の弟だ。兄として弟を思い、守るのは当然の責務。ならば、今ここで力を使うべきだ、と彼は思っている事だろう。
だがそれは、精神論でどうにかなるものではない。
例え、彼の類稀な体質である呪霊という人の呪力から生まれる特異な存在の混血でも、その体質と彼自身の術式により呪力で血が補い、血を固め塞いだり、内臓の役割を無理矢理再現しようと内臓の欠損は十分な重症。人であれば即死でもおかしくない身体に鞭を打ち、脹相は手を前に出し、指先を突き出すように
それは術式の技を出す為の構え。
辺りは少々の瓦礫はあるが更地。しかし、その場から宿儺は肉眼では確認出来ない。
ではどうするか。それは呪力を感じ取る事だ。呪術を扱える者は呪力を知覚し、自身から生まれる呪力を操る術を持つ。
よって、周囲の空間から呪力を纏ったものを感じ取ろうとすれば、それを阻害するような呪力が無い限り建物や距離をある程度無視して感知出来る。呪力を纏い、多大に扱う戦闘中の術師は
呪力感知により宿儺の位置は捉えている。
脹相は技を放った。
場面は宿儺と日車の戦いに戻る。
日車は膝を付き、
右腕が欠け、その腕から血が垂れ流しになっていた。
剣だけは離すまいと左手に握られているが、そこから動けずにいた。
既に防御技である
日車の顔に大粒の汗が滲み、滝のように溢れ出す。
「……。治せ、治してみろ」
動けなくなった日車に、宿儺はただ言葉を投げ掛ける。
それは慈悲から来る言葉でなく、少しはたった一人になろうと
それでも日車は立ち上がろうと気張る。
「そんなものか?」
宿儺が軽口を放つと同時に、今度は剣を持った左腕が斬り飛ばされた。
その場に再び
「ツ゛ア゛ア゛ァ゛!!」
そんな様子もお構いなく宿儺は話し掛け続ける。
「次は首をとばす。反転術式だ。分かるだろ?」
「ほら頑張れ頑張れ。治せなければ死ぬぞ」
人面獣心とは
宿儺の言う反転術式とは、負のエネルギーの呪力を反転させる事で正のエネルギーを生み出し、傷付ける力でなく癒やす力に変える高等技術だ。その中でも、身体の欠損の修復は高度な部類に入る。デメリットとして、反転術式はとても燃費が悪い為、乱用すれば呪力の余力がなくなり継戦能力が低下するリスクを抱えている。
日車が重症で動けない中、突如頭上から真っ赤な液体がレーザー状になって宿儺に向かう。
まるで
脹相が扱う
穿血は非常に強力な速度と切れ味を誇る技。並大抵の術師では触れるだけで一溜まりもない危険な攻撃。
が、此処は人外魔境。その最上位に当たる宿儺には手で受け止め切れる程度の代物でしかない。
穿血を見て、
「しぶといな」
だが、それで十分時間稼ぎになった。
脹相の助力により、宿儺の視線と意識を一時的に反らした隙に、日車は歪ながら腕を生やし、剣を手に取っていた。
その姿に宿儺は即座に振り返る。
宿儺の右上部の掌を狙った日車の刺突が決まった。
だが、一歩上手だったのは、宿儺だった。
日車が見た光景は、剣に串刺しにされた右手。それの手首から下は無かった。
「まぁまぁだ」
右手は刺されるより先に宿儺自ら切り離していた。
驚愕に染まった日車は隙を晒してしまう。それを宿儺は見逃さない。
虎杖がやられたものと同じ捌によって腹を裂かれ、鮮血が噴き出す。
処刑人の剣の光はなくなり、手にはその剣の中心にあった小さな十字架のみ。
日車は十字架を上へ弾き飛ばし、力尽きていく。十字架はそのまま宿儺の右後ろへ飛んでいった。
その時、宿儺の背後に駆け付けた虎杖が回り込み、十字架を手に取った。
宿儺は右に視線を向けて、不愉快な顔を隠そうともしていない。
虎杖はあまりの惨状に顔を
初めて出会い、交戦した日以降、一度も合わせてもらえなかった日車と目が合い、虎杖は目を見開いていた。
日車の剣は、思いは虎杖へと託された。
───思い出すのは、かつて、渋谷事変と呼ばれる
その術師は焼け
『後は頼みます』
その記憶と重なるように、虎杖に思いという名の呪いを託した日車はフッと笑みを零し、呟いた。
「それでいい…………」
その瞬間に迷いのなくなった虎杖は、凄まじい剣幕で再び光を取り戻した剣を高速で振りかぶった。
虎杖の攻撃が入る直前に宿儺の身に異変が起きる。
日車や虎杖を筆頭とした面々が宿儺の前に現れ、戦闘に入った直後に虎杖に受けた打撃と似た目眩。まるで地面が大きく揺れたような目眩が走った。
突如起きたこの症状に宿儺の動きは鈍り、硬直してしまう。
そして遂に───
宿儺に処刑人の剣が触れた。
そのまま剣が彼の左
その瞬間、宿儺の体は脱力し、その勢いもあり姿勢が前へ崩れ始める─が、
彼は即座に足を踏ん張り転倒する事はなかった。
そして、虎杖の手に収まっている処刑人の剣は役目を終えたかのように光が弱まり、数秒もしない内に彼の手には小さな十字架だけが残され、宿儺の背に一本線の傷が出来ていた。
辺りは静寂に包まれた。
宿儺は踏ん張った際の姿勢のまま下を向き、微動だにしない。威圧感のあった呪力も鳴りを潜めていた。
虎杖はその異常な変化に対し、処刑人の剣の力が引き起こしたものだという事を理解はしていた。
宿儺が動かない今、日車は
しかし、これまで宿儺は相手の策を上回る結果を何度も起こしている事や、もし宿儺の魂が死刑に下されても、長い事宿儺に乗っ取られさまざまな“最悪”を体験したであろう伏黒の精神状態がどうなっているか分からず、安易に警戒を解けられなかった。
攻撃を当てた後、虎杖は即座に後ろへ下がった。
その時、乱れた息遣いが耳に入った。例えるなら、それは恐怖や寒気、疲労で
よく見ると、宿儺の頭は小さく動き、肩で息をし、その肩は強張り、欠けた上側の右手を除いた三つの手は全て半開きになっていた。指先は時折
それを見た瞬間に、伏黒が戻って来た可能性を見出していた。だがその様子は、ハロウィンの日に渋谷の任務に当たった際、自身が宿儺に乗っ取られ暴虐の限りを尽くし、辺りを更地に変えた後、
余りに大き過ぎる衝撃、自身の人を助ける価値観を真っ向から壊される感覚、強い自負の念、取り切れない重責。
それらの記憶がフラッシュバックし、虎杖は顔を
互いに
彼は恐る恐るといった様子でゆっくりと虎杖の方へ振り返る。
彼の左目が虎杖の姿を捉え始め、徐々にこちらへと身体の向きを変えた事で、虎杖はその顔色を知る事が出来た。
先程までの好戦的で傍若無人な態度は一変し、顔は引き
視線は
そして、彼は真っ直ぐに虎杖の顔を見据えた。苦痛に歪んだ顔は薄らいで全身の緊張が緩み、目を丸くして自然と口を開いていた。
「虎杖……?」
声質や姿形は何一つ変化していない。
それでも虎杖にはそれが、宿儺は消え去り、伏黒の
「……! 伏黒!!」
例え虚構でしかなくても、本誌の虎杖に仮初でも希望を与えたかった。
きもう-とかく【亀毛兎角】
この世にあり得ないもの、実在するはずがない物事のたとえ。もとは戦争の起こる兆しをいった。かめに毛が生え、うさぎに角が生える意から。▽「兎角亀毛とかくきもう」ともいう。
引用:三省堂 新明解四字熟語辞典