猫に選ばれた彼は十二神将の護衛役   作:塩なめこ

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予約投稿3話目
書きだめ終了

シャトラの最終までにシャトラまで書きたかった。


西の守護神マキラは技術力が高すぎる

 

「ふっ! はっ! ⋯⋯やぁっ!」

 

 

 刀に”氣”を込めては振るう。同時に”氣”を身に纏うことも忘れない。

 ”氣”の練成速度を上げるには”氣”を作り続けなくてはいけない。”氣”の絶対量を増やすには”氣”を使い続けなくてはいけない。

 同時にこなすのが最も効率がいい。

 

 

「ふん! そりゃ! てぇえやぁ!」

 

 

 刀に乗せる”氣”は次第に多く、重くする。刀の刀身は”氣”に反応して黒く変色し、硬度と切れ味が上がる。

 肉体の方も同様だ。こちらは変色などしないが、下手な鎧よりも硬い身体を得ることが出来る。

 

 ”氣”が尽きる寸前まで、こうして使い潰す。

 ニャンえもんによる師事が始まってからというもの、俺は忙しい日を除いてほぼ毎日、この修行は行ってきた。

 

 

「ふぅー⋯⋯! ふぅーー⋯⋯。ふぅー⋯⋯」

 

 

 限界まで来たら、あとは静かに体を休めるだけ。酷使からの超回復を促し、平時の”氣”の回復量と必要な体力を鍛える。

 息を整え、瞑想して体を落ち着かせ、日常生活に支障をきたさない程度に”氣”が回復するのを待つ。

 もしもの時に動けないと困るので、この修行を行うのは1日に1回だけだ。

 

 

「⋯⋯さてと」

 

 

 時刻は午二つ時くらい。

 隣の彼女は未だに色々やっており、止める気配がない。

 飯を作るとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

「ここはこうして⋯⋯と。おかしいですね、理論上はこれで浮力を得られるはずなのですが。曲面の加工が甘いのでしょうか」

「おーいマキラ?」

「むむむ⋯⋯確かに凹凸が⋯⋯。もっと加工しやすい素材に変えるべきでしょうか? でも、そうすると機体強度が⋯⋯」

「マキラさーん?」

「これはもう一度作り直すとして、推力の方も上げるべきでしょうか? 必要なエネルギーは⋯⋯」

「マキラっ!!」

「⋯⋯はっ! すみません、集中していました。どもです、イオウ君」

「はいどもー。飯だよ」

「おっと、もうそんな時間でしたか」

 

 

 テキパキと、彼女が広げているレジャーシートに品物を並べていく。

 最近は夏の季節を感じさせるかのように気温が右肩上がりだ。急な気温変化に負けないよう、今日の献立は冷やしそばである。山菜の天ぷら付き。

 

 

「これは⋯⋯とても美味しそうです」

「食後には甘味としてまんじゅうを用意してある。ま、とりあえず食べようか」

 

 

 ふたつのお椀に麺つゆをいれ、大皿にはつゆと大根おろしを混ぜたものを用意する。天つゆは2人でシェアだ。

 

 

「それではいただきますね」

「うい、いただきます」

 

 

 しかし、鳥神宮の敷地内とはいえ、こうして森の中でシートを広げてそばを食べているとピクニックに来たような気分になるな。まぁ、ピクニックには似つかわしくないものが目の前に広がっているけれど。

 

 

「イオウ君はなにをしていたんですか?」

「ん? いつも通り修行してたよ。横でやってたんだけどな⋯⋯」

「すみません、気が付きませんでした」

「いや、いいんだ。そっちは今日も今日とて機械いじりか?」

「そです。と言っても、やってることは空力ですけど」

「物理の話か⋯⋯」

 

 

 正直、まともに学校に行っていた訳でもないのでそっち系の話はよく分からない。

 

 今年の歳神であるマキラは、機械いじりがとても得意だ。若干16歳ながら、多くの分野の知識を網羅しており、発想力にも飛んでいる。そのため、外のエンジニアも顔負けな発明品を日々開発している。

 

 例をひとつあげるなら、応援隊屋敷内に設置されている『おこた』だろうか。机の天板と足の間に布団のような布を挟んだもので、足の側には暖房器具を取り付けられている代物だ。

 この暖房機能によって布団内部を温め、この空間に足を入れた者の体を温めるという機構になっている。

 この発明のすばらしさは、布団が外の空間との壁になっており、内部の熱を逃がさないということと、布団独特のもふもふ感を味わうことが出来るという2点に尽きると思う。

 

 現在は季節的に暖房機能を切って、机としての運用をしているが、冬になると隊の皆がこぞって席の奪い合いをする人気商品である。

 

 

「魔法とかでなら少しは協力できるんだがな」

「ども。超小型騎空艇開発は私の趣味のようなものなので、お気になさらず。それに私だって、趣味のために他の人に迷惑をかけるような半熟者ではありませんから」

 

 

 マキラはそう言ってそばを啜る。

 だが、彼女の機械いじりはもはや趣味の領域の話ではない。

 

 彼女はあるコンプレックスを抱いている。

 鳥神宮の歳神には代々”飛力”と呼ばれる不思議な力が宿る。これはその名の通り物体を浮かべることができる力だ。

 だが、マキラ自身にだけはこの力は作用しない。彼女はそのことについてずっと悩んでいた。

 

 鳥神宮の歳神なのに、飛ぶことができない。彼女は自身のことを鶏のようだと話していたものだ。

 

 必ず己の力だけで空を自由に飛んでみせる、というのがマキラの夢だ。だからこそ、己の技術と発想力のみで超小型騎空艇を完成させたいんだろう。

 だが、普通の騎空艇を作るのだって1人でできるようなことじゃない。実際に造船所に言ったことはないが、あんなに巨大なものなのだ。それぞれの職人たちが力を合わせているであろうことは想像に固くない。

 

 いくらマキラが天才でも、なんの知見もなしに騎空艇を作れるとは思えない。作れたとしても膨大な時間を必要とするだろう。

 

 やっぱり⋯⋯あの話に誘ってみるか。

 

「って、マキラ?」

「⋯⋯」

「おーい?」

 

 

 気がついたらマキラはそばをすするのをやめてこちらをじっと見つめているではないか。また、一人考え事にふけっているようだが、一体何を見て⋯⋯? 俺、もう食べ終わっちゃうけど⋯⋯。

 

 

「⋯⋯イオウ君、今どうやって饅頭を?」

「饅頭? ⋯⋯あぁ、なるほど」

 

 

 ”氣”というものは人だけではなく物にも宿る。それは自然エネルギーだとか魔力だとかって言われているらしいけれど、とにかく見えない何かを纏っているのだ。

 ”氣”を操ることの出来る俺は他者のそれに干渉できる。

 

 戦闘においては実際のリーチを誤認させるために使ったり、遠くにある武器を拾ったりするのに使う。

 

 実際の生活においてもこの技能はもはや欠かせないものとなっている。俺ちっちゃいからね。うん。手の届かない高いところにあるやつとか、椅子に座ってると届かないところに置いてある料理とかを掴むのに使うわけだ。うん。小さいからね。うん。

 

 

「てなわけで、遠くの饅頭を掴んだわけだ。ご感想は?」

「なるほど⋯⋯。一度、掴まれる者の気持ちを味わってみたいです。お願いできますか?」

「いいのか? こう、脇の下を掴む感じになるけど⋯⋯」

「どぞ、よしなにお願いします」

 

 

 そいうことなら少し失礼して⋯⋯ほい、高い高ーい。

 しかし、こうして抱き上げてみると本当に人形みたいにかわいいなこいつ。

 

 

「どう?」

「これは⋯⋯温かいですね。ただ、飛ぶと言うより持ち上げられているという感じです」

「実際、俺からしたらそういう感覚だな」

「”氣”というのは誰にでも扱えるものなんですか?」

「鍛えればできるとニャンえもんは言ってたけど、”氣”の量や使ってできることは才能によって変わるって聞いてる」

 

 

 抱き上げたまま問答始まっちゃったけど良いのかな? 

 

 

「ふむ。私も使えるようになるでしょうか」

「できるとは思うけど、マキラには飛力があるしなぁ」

「? 、同じものなんですか?」

「俺にはそう見えるよ」

 

 

 彼女の飛力が付与されたものの”氣”は少し変質する。俺は彼女の”飛力”なる能力は、浮力を与える”氣”を練成したものであると認識している。

 

 

「なるほど⋯⋯。ども、ありがとうござい⋯⋯あ」

「あ?」

 

 

 ポンポコポンポン! 

 

 と、マキラが何か言い淀んだ瞬間、彼女の背後に無数の鼓が音を鳴らしながら現れた。彼女曰く、気分が高揚していると出てくるらしいけど⋯⋯? 

 

 

「どうした?」

「い、いえ。少し今の状況を認識しただけと言うか、なんというか⋯⋯。⋯⋯とにかく大丈夫です」

「???」

「お、降ろしてくれませんか?」

「おう?」

 

 

 なんか少し体温が上がったような⋯⋯って、そういえばマキラはまだそばを食べてるじゃないか! 食事中に抱き上げるなんてお行儀悪すぎか? 反省反省。ぱっぱと降ろそう。

 

 

「あ⋯⋯」

「?」

「い、いえ。改めてありがとうございました」

「いや、俺も食事中に持ち上げてすまんと思ってる」

「⋯⋯?」

 

 

 こてんと首を傾げてあらかわいい。

 ていうか、どうしてこういう話になったんだっけ⋯⋯? 

 

 

「あ」

「どうしました?」

「いや、マキラに相談したいことを思い出した」

「珍しいですね、イオウ君が相談なんて」

「あぁ。実は俺、最近騎空艇が欲しくなっちゃっててな」

「そうなんですか?」

 

 

 マキラに昨年、アンチラと話したことを伝えた。

 旅に行く彼女に同行するための船兼、応援隊として自由に使える船が欲しいという話だ。

 

 

「そですか。アンちゃんも苦労しているんですね」

「まぁ一人旅は自由な反面寂しくなると聞くからな」

「⋯⋯」

「それでな? 俺も騎空艇のことなんてよく分からないからさ、懇意にしてる商人に相談してみたんだ。そしたらこれをくれてな」

「『ガロンゾの造船所見学ツアーチケット』⋯⋯? い、イオウ君、もしかしてこれは⋯⋯!」

 

 

 お、ナイスな食いつきぶり。

 ガロンゾと言えばこの空でも有数の騎空艇職人が集まる島だ。彼女が気を引かないわけが無い。

 

 

「『実際に見て、聞いて、相場を知るところから始めてはいかがでしょうか〜?』って言われてな。そこで相談なんだが、マキラも一緒にどうだ?」

「私も、ですか?」

「あぁ。マキラは俺より騎空艇の見識がある方だし、専門的な見方ができるだろ? 正直、ぼったくられるのが怖い」

「で、ですが、それなら私以外にも⋯⋯」

「理由はもう一つある。俺の”お役目”だ」

 

 

 俺の”お役目”。もはや確認するまでもないが、歳神たる十二神将の護衛である。これがあるため、俺には神宮の外での行動の自由がほぼないと言ってもいい。

 しかし、十二神将はそうでもない。年末年始が終われば神宮の管理をするくらいで結構暇だ。

 歳神の事情で外に行くとなれば、当然護衛役の俺もついていくことになる。季節的にも夏休みが近く、神宮を抜け出す口実作りは容易い。

 

 

「てなわけでマキラ、2人でガロンゾ行かないか?」

 

 

 ポンポコポン、と鼓の音が森に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 ファータ・グランデ空域、ガロンゾ島。

 騎空艇職人の宝庫とも言えるこの島の外見的特徴は、なんと言っても立ち並ぶ巨大クレーン群だろう。

 

 そんなクレーンの根元に、俺たちは立っている。

 

 

「イオウさん、お待ちしておりました〜」

「今回はお世話になります、シェロカルテさん」

「そちらの方が十二神将の?」

「ども、マキラです」

「どうも〜。シェロカルテと言います〜。どうぞ気軽にシェロちゃんと呼んでください」

「では、シェロ君と。よしなにお願いします」

 

 

 今回の見学ツアーを手配してくれたシェロカルテとのあいさつを終えると、ぱっぱとホテルへと向かい荷物置く。そしてその勢いのまま騎空艇ドックへと来た。

 

 

「すごい⋯⋯!」

「外から見てもかなりの大きさのクレーンだったけど、こうして根元から見るとその大きさを実感するなぁ」

 

 

 なんて感想を漏らしてみたが、マキラの耳には入っていないように見える。あんなに目をキラキラと輝かせた彼女を見るのは何年ぶりだろうか。

 

 

「ここからはこちらの職人さんが案内をしてくれます〜。私はお仕事があるのでお暇しますが、騎空艇をご購入したくなったら是非連絡を下さい。駆けつけますよ〜」

「了解です」

 

 

 ではでは〜と手を振って、シェロカルテさんとは別れた。

 

 職人さんからのお話は大変興味深いものだった。

 俺もこうして間近でバラバラになった騎空艇姿を見るのは初めてだったので結構興奮していたと思う。

 

 騎空艇は主に4つのパーツからなるらしい。

 騎空艇の核となる竜の骨のような構造の柱、船体、高高度維持のための気球部分、そして推力を発生させた時に浮力を得るための羽だ。

 

 戦艦などは推力に機械でできたエンジンを取り付けたり、気球部分を船体に格納して被弾しづらくしているらしい。

 まぁ俺は戦艦なんて買うつもりはないのだが、異様にマキラの食いつきが良かった。

 

 

「なんでだ?」

「私が作りたい超小型騎空艇の設計思想の元となっているからです。すべてのパーツを小さくしなければいけませんから」

「なるほど」

「ほう! そちらのお客さんは騎空艇作りに興味がおありで?」

「そです。今は設計の段階ですが⋯⋯」

「超小型騎空艇ですか⋯⋯。なるほど、でしたらあちらのドックの見学に参りましょうか」

「あっちには何が?」

「走艇と呼ばれる小型騎空艇ですよ」

 

 

 そう言われてやってきたのは、先程いた騎空艇ドックの半分以下の大きさのドックだった。そこには気球がなく、羽すらもほとんど無い小型騎空艇が並べられていた。

 

 

「これは⋯⋯! こんなものが⋯⋯」

「驚いたでしょう? スカイレースと呼ばれる速さを競うレース専用に作られた船たちです」

 

 

 ある島でこいつらを使ってレースをしている輩がいるのだという。飛行高度が低くなるぶん、かなり軽量化されているらしく、地上での速度は凄まじいのだとか。

 

 走艇の特徴は搭載されたエンジンにあり、魔力や熱エネルギーを利用した推力発生装置により、マッハを超える速度をたたき出すことができるという。

 

 

「設計図を見せていただくことはできますか!?」

「レース用はさすがに見せられませんね、守秘義務がありますから。ただ、ファン向けに一般販売されているものもあるので、そちらでしたらお見せすることができます」

「よしなにお願いします!!」

「よしなに⋯⋯?」

 

 

 ⋯⋯いや、本当にすごい食いつきぶりだ。こんな彼女は見たことがない。

 

 それからというもの、マキラは案内役の職人と熱い討論を繰り広げ続けた。自らが設計した騎空艇の設計図を職人に見せた瞬間から、話は一気に専門性が増し、俺は着いて行けなくなった。

 

 ただ、これだけは言える。今日のガロンゾの中心は彼女だったと。

 彼女の繰り広げる理論は、職人にとっても革新的な内容だった。同時に、彼一人では対応できない分野にまで手が伸びきっており、彼は別の職人を救援に呼んだ。

 そこからは一人、また一人と職人たちが増えていった。あれべんきょうになるからだだの、あれ新商品開発に繋がるだので、口伝が広がり、見学ツアーに全く関係のない人まで集まってきたのである。

 

 俺はもう完全に蚊帳の外であった。ただ、マキラの楽しそうな顔が見れたので良しとする。ついでに騎空艇のことについても色々といい話が聞けたし。

 

 

「空域を渡るなら魔物との戦闘は避けられないよ」

「そういうものなのか。ってーことはある程度の戦闘力が必要なのか?」

「航路次第、だね。キミの言うように空域の端を回るようなコースだと戦闘は避けられないかも」

「なるほど」

 

 

 このノアという少年はとても騎空艇に詳しく、様々な相談に乗ってくれた。カタログを見てもさっぱり分からない俺に、パーツごとの特徴や機能を親身になって教えてくれた。お陰様で2隻買うのに50万ルピかからなくて済みそうである。

 

 

「騎空艇は中型サイズでいいかなと思ってるんだけど」

「それはやめておいた方がいい」

「どうして?」

「⋯⋯これは僕の勘なんだけど、きっとキミの周りには多くの人が集まるだろうから」

「???」

「そういう星の巡りに⋯⋯いや、そういう気配がするんだよ。懐かしい気配が」

 

 

 変なことも言っていてかなりの不思議少年だったけど。

 

 

 ともかく、こうしてガロンゾ滞在の一日目と二日目が過ぎていった。

 

 三泊四日のこの旅もはやいもので三日目。明日は朝起きて直ぐに帰るので実質最終日だ。

 今日は皆へのお土産を買うため、港ではなく街の方へと足を伸ばしていた。街中じゃなくて港ばかり行く旅行というのも、ガロンゾでしか味わえないだろうな。

 

 

「だからそう申し訳なさそうにする必要はないんだぜ?」

「いえ、そうも言っていられません。せっかく2人きりでの旅行なのに私、ずっと夢中になってばっかりで⋯⋯。二日も⋯⋯」

「でも職人さん達にお呼ばれするくらい人気だったお陰で、色々と割り引いてもらえることになったわけだし、俺も騎空艇について色々知れた。何よりマキラが楽しそうな姿が見れて俺はめちゃくちゃ嬉しかったぞ?」

「うぅ⋯⋯」

 

 

 なにをそんなモジモジする必要があるのかね! 言っとくが世辞とかじゃなくてマジだからな! 美少女が楽しそうにしてて楽しくない男がいるだろうか、いやいない! 

 まぁ、割り引いてもらう代わりにマキラが十二神将だってバレちまったのはちょーっと困ったけど、まぁそこは護衛役である俺が頑張れば言い訳ですし。

 

 

「じゃあこうしよう。今日一日、めいいっぱい俺と楽しもうぜ。旅行なんて、終わり良ければ全て良しだからな」

「⋯⋯イオウ君は色々とずるいです」

「え?」

「いえ、そうしましょう。では本日も、よしなにお願いしますね」

「そ、そうか? んじゃ、まずは腹ごしらえだな!」

 

 

 ガロンゾは騎空士と職人の島ということでファータ・グランデの中でも一際賑わいのある島だ。やはり自由人が多いからか料理も様々だ。

 

 

「全体的にカロリーの多い……。やっぱたくさん食べる人が多いからかな」

「ガロンゾは住人よりも外から来る人の方が比率的に上だそうです」

「よく知ってるな」

「はい。調べはバッチリです。実を言いますと、もう行きたいお店は決めていたりするのですが……イオウ君は何か希望などありますか?」

「いや、特にはない」

「ども。それではよしなに行きましょうか」

 

 

 データを重視する彼女のリサーチだ。信じない手は無い。

 結構ウキウキそうでなによりである。かわいい。楽しそうにしてくれればくれるほど誘った側としては嬉しいものがある。

 

 

「ここは?」

「街でも有数のパン屋さんです」

「ほう」

 

 

 主食であるが故にパンの店はどの島においても多い。そこで有数とはどれほどのものか見せてもらおうか。

 

 と、意気揚々と入店した直後、俺は直感した。あぁこの店おいしいわ、と。

 

 

「匂いからしてもう美味い」

「そですね。種類も豊富です」

 

 

 騎空士向けの保存用から、一般向けの菓子パンまで幅広い。その中でも特に目を引かせるのは、翼の形をした白いパンだろう。

 

 

「米粉のクリームパンか」

「これは……凄いですね。パンなのにこんなに真っ白で」

「そちらの商品は騎空艇の羽をイメージしたパンとなっております。なかでもクリームパンは幸運を運ぶと評判なんですよ!」

「幸運?」

「えぇ! このパンを2人で分けて食べたら商談が上手く言っただとか、喧嘩した友達と仲直り出来ただとか、恋人になれただとか、ご報告を頂いています」

 

 

 ははーん。それで『人々を繋ぐ白い羽』ってキャッチコピーなわけね。よっしゃ! 

 

 

「これ2つください」

「えっ」

「あらあら、毎度ありがとうございます!」

「イオウ君?」

「マキラ、ここで食べてこう。できますよね?」

「はい、もちろんです。それにしても、大胆ですね〜!」

 

 

 大胆? いや、確かに即断即決気味ではあったけど。

 

 

「イオウ君、その、……意味分かってますか?」

「うん? 多分? いやーおいしそうだ」

 

 

 我ながら良いチョイスだと思う。

 今回の旅は出会いの数々だった。ガロンゾの多くの職人たちという知己を得れたし、ノアくんという新しい友達もできた。それもひとえにマキラのおかげだと言えるだろう。

 

 

「本当に分かってますか?」

「このパンの意味か? わかってるよ。いやー、鳥の羽という形がいいな。マキラにピッタリだ!」

「……やっぱりずるいです」

 

 

 幸せを運ぶ鳥とはまさに彼女のことを言うのだ。西へ向きながら食べるとしよう。

 

 

 

 

 それから俺たちは街を練り歩いた。

 応援隊への皆へのお土産と他の十二神将たち皆へのお土産、そして超小型騎空艇の素材を買っては回った。それはまぁたくさんの荷物ができてしまったので、これらは先に配送してもらうことにした。

 

 配送の手続きが終わった頃にはもう日が暮れそうだった。

 

 

「なんとか間に合うかな」

「珍しいですね、イオウ君がどうしても行きたいだなんて。どこへ?」

「それは着いてからのお楽しみ。ちょっと急ぐよ」

「わぁっ……!」

 

 

 港から街に出るともう店仕舞いを始めている所があった。夜は酒場が賑わうのはどこも変わらない。酒場が開く頃、他の店はみんな終わってしまう。

 マキラには悪いが、彼女を抱き上げて走ることにした。どうしても、俺はここに来たかった。

 

 

「ここは……!」

「午前中、マキラが素材に夢中になってる時に見つけたんだ」

「すごい、絵物語がこんなにたくさん……」

 

 

 そこはガロンゾの本屋だった。騎空士が集まる島だからこそ、この街にはたくさんの本が集っていた。絵物語も同様だった。

 

 

「……改めまして、どもです、イオウ君」

「いや、俺は普通に本が見たかっただけだよ?」

「……そういうことにしておきますね」

 

 

 時間的にはギリギリだったが、お店の人は優しく「ゆっくり見ていきなさい」と言ってくれた。お言葉に甘えて店内を練り歩く。

 

 

「イオウ君は医学書、ですか」

「まぁな。”氣”による治療が主だけど、薬草とかは使うから」

 

 

 あくまで”氣”は本人の治癒力を活性化させるに過ぎない。その力の元となる成分や、傷口の悪化を防ぐ成分を持つ薬草を併用することで、効率的に治療ができるのだ。

 

 

「知識は力だ。これがあればもっとみんなを助けられる。マキラだって、きっと空を飛べるはずさ」

「……シャトラ君が言っていた通りです。イオウ君は本当に絵物語出てくる王子さまのようです」

「それほど尊い(たっとい)つもりはないけどな」

「私にとってはそうなんです」

 

 

 流石に、真正面からそう言われると少し恥ずかしいものがあるな。よーく見なくてもマキラは美少女だし、華がある。いかん、鼻の下伸びそう。

 

 

「さっき、少しだけ騎空艇の完成が遅れてもいいかなって、思っちゃいました」

「それは……どうしてだ?」

「イオウ君は本当に鈍くて頭にくる時がありますけど、それと同じくらいかっこいいということです」

「それは褒められてるのか?」

「えぇ、これ以上ないくらいです。思いやりと優しさに溢れたイオウ君が、私は大好きですよ」

 

 

 ニコリと笑う彼女に、俺の心臓は思わずドキリとしてしまう。心の中で鼓がポンとなったような痛快さがあった。

 

 そうだ。これだ。俺はずっと彼女のこんな笑顔が見たかったのだ。ずっと森の中で悩んで苦しんでいる姿ではなくて、こんな姿になって欲しかったのだ。

 

 

「ありがとう、マキラ。でも、これだけは約束して欲しい」

「なんでしょうか?」

「諦めずに超小型騎空艇を完成させてくれ。俺はお前の”夢”が叶う姿が一番見たい」

「……ふふっ、あははっ! 本当にイオウ君は鈍いですね。さっきのは冗談ですよ」

「マキラ」

「分かってます。約束します。私は必ず騎空艇を完成させます。それまで、どうぞよしなにお願いしますね」

「あぁ、もちろん! よしなに、な!」

 

 

 

 

 

 翌日、この約束がとんでもない事態を巻き起こすことになる。

 ガロンゾの島に宿る『契約』を司る星晶獣ミスラの力により、俺たちは超小型騎空艇を完成させるまでガロンゾから出られなくなってしまったのだ。

 

 いくら規則の緩い鳥神宮と言えど、歳神が年末年始までに神宮に戻れないのは不味い。

 

 そのため、ガロンゾの職人たちに協力を仰ぎ、マキラの指揮の元急ピッチで超小型騎空艇の開発が進められた。

 

 そして、半年の歳月をかけて超小型騎空艇改め『こっこ』が完成し、マキラの”夢”は叶うのである。

 

 予想よりも随分とはやく、変な道を通ってしまったけれど、その時に見せたマキラの笑顔は本物で、やはり俺の鼓をポンポコポンと鳴らせたのだった。

 

 





イオウ プロフィール
CV???
年齢 23歳 身長 140cm 種族 ヒューマン
得意武器 刀 趣味 料理全般
好き 十二神将の笑顔


マキラ プロフィール(以下グラブル公式より引用)
年齢 16歳 身長 85cm 種族 ハーヴィン
趣味 機械いじり、絵物語
好き 早朝、数学、インドア 嫌い 徹夜、暗記、スポーツ


筆者の十二神将所持状況
ノーマル神将
シンダラ マコラ以外所持 2024年 マコラ未所持

季節神将
所持 クリマキラ 水着アンチラ 浴衣アニラ ハロビカラ

未所持 水着アニラ 水着ヴァジラ 水着クビラ クリシャトラ 水着ビカラ

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